朱喜哲のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ジョン・キーツの「ネガティブ・ケイパビリティ」を書名に冠している通り、安易に結論を出さずに、様々なテーマの多面性に光を当てながら三人の哲学者の鼎談が進んでいく。ポラリゼーションや単純化・効率化の加速に違和感を感じていたためか、とても多くの含蓄や示唆を得られた。
・ファクトフルであることを手放しに称揚する危うさ
個人的には、ファクトや真実への立脚や反証可能性を主張するカール・ポパーやハンナ・アーレントの論につい賛同してしまうが、そうではないものを切り捨てることは「愚かさの批判」であるという著者の警鐘は肝に銘じたい。これは、本書中でも引かれている『社会はなぜ左と右にわかれるのか』を読んだ時にも感 -
Posted by ブクログ
時宜を得た好著だ。
いま、なぜ「リベラル」がこんなに疎まれ、「権威主義国家」が幅を効かせるのかを、実にわかりやすく解きほぐしてくれる。
トランプ大統領のような「強い男」があらわれ、力による現状変更が国際社会で行われることを30年も前に「予言」していた哲学者がいたことも驚きだ。
おそらく「分断」はもうなくならないし、たったひとつの「正しさ」でそれを乗り越えることもできないだろう。
「目の前に、隣に、自分とはちがうひとが、同じ生身の身体を持ってそこにいる」ことにきちんと向き合うこと、そして「会話」を絶やさないことが、「バラバラな世界で共に生きる」術であるという主張に大いに納得。 -
Posted by ブクログ
哲学者リチャード・ローティの思想を、言語哲学を中心に据えながら分かりやすく解説した一冊。ローティの生い立ちや彼が置かれていた社会状況にも触れつつ、重要な用語を一つひとつ丁寧に説明し、段階的にその思想へと導いてくれる。もちろん、それでも難解な部分は残るが、ローティが何を問題とし、どこへ向かおうとしたのか、その大筋はつかむことができる。
個人的に特に共感したのは、「終極の語彙」をめぐる議論と、それを絶えず再定義していくことの重要性である。私たちは、自分にとって疑うことのできない言葉や価値観によって世界を理解しようとする。しかし、それが「これ以上議論する必要はない」という、とどめの語彙になってしま -
Posted by ブクログ
私が本書を手に取ったのは、世界で進む分断や対立の潮流を乗り越えるためのヒントを得たいと考えたから。また、意見の異なる相手との対話をあきらめずに続けるためには、どのような姿勢が必要なのかにも関心があった。
その答えは、とてもシンプル。価値観の異なる相手を論破したり、自分の考えに変えたりすることではなく、互いの違いを認めながら根気強く対話を続けること。その積み重ねこそが、分断を乗り越えるための現実的な道筋であるという。このローティー哲学にどこまで共感できるかで本書への評価は分かれるだろう。
もっとも、ローティという哲学者を知らない人であっても、彼の対話を通じた共生のメッセージに同調する人はそれ -
Posted by ブクログ
「アンチ哲学」の哲学者ローティから学ぶ「バラバラな世界で共に生きる」を読んだ。以下自分のために抜粋と要約。
共通の足場などないバラバラで誤りうる私たちが出来ることは、どうにか共に生きていかなければいけない、という事実に向き合うこと。
なんの根拠も保証もないが相手のことばに自分を委ねたり、時には手を携えたり、せめてお互いに降りかかる苦しみや痛みについて、それがとりのぞかれるよう願えること──それをローティは「連帯」と呼んだ。
必要なことは「自己の偶然性」の認識。自分が相手に影響されたり、相手が自分に影響されたりする可能性があると認識する。つまり、それぞれが変わりうる存在であり、必然に固執するので -
Posted by ブクログ
分断の時代といわれる昨今、何でもかんでも二項対立したがるから、政治的にも右とか左とか、経済的にも貧とか富とか、メディアも対立を煽って話題づくりするから世の中ギスギスしてきますね。じゃあ、どのように考えればうまく生きられるのか、というのがアメリカの哲学者リチャード・ローティが考えたことであり、その解説書が出ていたので読んでみた。
ローティは脱哲学を考えた人で、真理や本質を見つけることではなく、より現実的でより実際的な対応を考えた。個人個人が違うことを考えているのは当然だ。しかしそれを各自が主張したら喧嘩になる。相手を言い負かして黙らせるのは愚策だ。
個人が私的に考えていることは「偶然性」から -
Posted by ブクログ
学校に行き、社会に出ると、自分とは異なる視点や考え方をもった人が多くいることに気づきます。
そして学生時代に学んだ、 絶対的な正解 というのは、この世に意外とないのだなと気づきます。
本書で取り上げる哲学者のリチャード・ローティは絶対的な真理を追求するよりも、人々が対話をしながら、より良い社会をつくることが大切だと言います。
つまり、真理は一つではなく、「対話によって育っていく」ということです。
私たちの社会がバラバラであることから目を逸らさず、正しさもバラバラであることを受け止めつつ、ただそれを冷笑したり嘆いたりするのではなく、それでもどうすれば共にやっていけるか、それを考え抜くこと -
Posted by ブクログ
3名の哲学、政策学等にバックグラウンドを持つ有識者の対談を編集した一冊。正直、専門用語を追うことに精一杯で理解は半分もできたか怪しい難解さがある。まさに本書にて、拙速に理解した気になる態度の危うさを再認識した。物語的誤謬や陰謀論、マスターアーギュメントの魅力は、複雑さからの逃避でもあると感じた。わからなさに耐え、聞く姿勢を保つことが他者理解の出発点になる。世界は一問一答では動かず、視点を増やし、意見を暫定的に持つ柔軟さが必要だ。結論よりも態度を問い直す読書体験だった。この本は確実に再度決定本。読んで答えを明確にするのではなく、思考を、許容を深くする本。明確に手ごたえが得られなかったため、星は4