的場知之のレビュー一覧
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ネタバレかなり面白かった。
生物系の論文って、素人でも理解できて面白いものが多いけど、ひとつひとつ漁るのはさすがに骨が折れるからこういった1つのテーマに沿って色々な話を紹介してくれるる学術書の存在はほんとうにありがたい。
・イルカは死を認識できているが、『自らもいずれ死ぬ』という死の叡智には辿り着いていない。すべての動物の中でヒトだけが、死の不可避性を完全に認識できる
・死の叡智は、エピソード的未来予測の波及効果の避けられない帰結であり、ほかの認知能力と分かちがたく結びついている(つまり、「いずれ死ぬ」という懊悩だけ都合よく回避しつつ、他の認知能力を育てることはできない)
・ヒトの道徳的推論(た -
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1章から6章までは人間の利他行動に関する理論の要点とその妥当性を検証。ハミルトンの血縁淘汰と包括適応度、ウィン=エドワーズの群淘汰、マルチレベル淘汰とプライスの共分散方程式、アクセルロッド、アレキサンダーなどの互恵性理論など進化生物学の理論を手際よくまとめており、数学の知識が無い自分でも進化理論の進展についてポイントを摑めた気になった。
この部分で特に印象深かったのはプライスの共分散定理。利他行動が優位となる淘汰の働きをたった一行の方程式にしてしまうのだから驚き。畏敬の念さえ覚える。
また筆者はアレキサンダーなどの間接互恵性理論を現代人の利他行動を進化的に説明する概念として有望と評価している。 -
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人間がいかにして利他的な心を持つようになったのか、歴史の大きな流れとともに考察していく一冊。
気になっていた本だが、少し高めの価格にたじろぎながら、借りられるまで待ったが、借りられる期間である2週間で読み切るのはなかなか難しかった。
読むこと自体はできても、理解するのにかなり苦労させられた。
他人への寛大さは、一対一のものではなく、集団にとって利益になるからであり、また、他人への思いやりは「お返し」「インセンティブ」「活発な知的能力」「論理的思考」の四つからなっているそう。
人間は様々な苦難を乗り越えながら、他人を思いやることが世界をより豊かにしていくことを学んでいった。もちろん、思い -
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他人に親切にするのは自分勝手な人にいいように使われ、進化の過程で不利だったのでは?
赤の他人にまで親切するのはなぜか?って疑問に進化と歴史の観点から答えた一冊。
進化の疑問には
「互恵性」と「評判」の2つが生存に有利だったみたいな話がされている。
赤の他人に親切にするのは、上記の本能的な進化では説明できず、苦難の歴史や理性で説明できる。
思いやりは進化の過程で獲得したものだと思っていたが、実際は他者への思いやりは人間がより大きな集団になったときに初めて得た能力らしい。
思いやり、共感は理性があれば広がると。
実践理性と呼ばれる正しい選択と決断をする能力が、歴史上、他人への思いやりを広め -
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めちゃくちゃ面白かった!
マッカーサーフェロー受賞している神経科学者で、ホシバナモグラの研究者。内容がわかりやすく、写真、図などが効果的、ところどころにQRコードで動画などにアクセスできる。特に序盤のホシバナモグラの星と脳マップの章はめちゃめちゃ面白い。ホシバナモグラ、ヒゲミズヘビ、ワームグランティング、トウブモグラ、トガリネズミ、ミズベトガリネズミ、デンキウナギ、エメラルドゴキブリバチ。
ただ、ものすごく難がある
面白かったが、邦題が酷い。
とても損をしていると感じる。
"Great Adaptations"
Star-nosed Moles, Electric Ee -
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"ありえなさげな運命:宿命と成算と進化の未来”
めちゃ面白かった。良い原題ですねぇ。まあ起こらなさそうなデステニー(自分で切り開くというか、選択的な感じの運命)、フェイト(どうしようもない運命)、成算、それに進化の未来。わくわくするねぇ。5年ほど前の書籍なので、研究系としてはちょっと古いような感じを受ける方も多いと思うが、なんちゅうても163年前の『種の起源』がまだ現役なので、名著に新旧はないと思う(分野と題材によりけりか)。ロソス博士はネイチャーやサイエンス連発の世界トップレベルの有名研究者。ここんところ進化生命学の文献やら書籍を読んでいたので、其の中でもかなり読み物として面白かっ -
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本書の冒頭から「遺伝子改変されたオオカミすなわち犬」が出てくるが、家畜化された=選択交配で遺伝子改変された、という視点は当たり前のようでハッとする事実だと思う。人間が形質を選り好み家畜を増やしていくことで遺伝的多様性が失われていくのは明白なのに、そんな事は考えたことがなかった。
野生動物よりはるかに多くの家畜がいて、それの飼料のための農地がたくさんあって自然破壊している…どうしようもなく持続不可能で危機的な状況であるが、本書ではテクノロジーによる課題解決を目指す前向きな話もたくさん出ててきて、それぞれが面白く、考えさせられた。
ただ「再野生化」の取り組みについてはあまり良い話とは思わなかった。 -
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ものすごく面白かった(興味深かった)。人間が直接に間接にどんだけ生き物のDNAをいじったり影響を与えたか、そのエビデンスと考察。基本、怖く、そして非常にギルティに感じる。
2006年にグリズリーとシロクマのハイブリッド(ピズリーベア)が発見されて、ものすごい物議を醸し、その後にぼちぼちとエビデンスがでてきて、今でもそこそこ話題です。アークテックエリアの流氷の上で子育てし、生きるシロクマ(ポーラーベア)だが、近年の地球温暖化で北極の氷が解け、このままでは近い未来には夏(繁殖期)に北極の氷は全てなくなると予想されている。が、シロクマが南下するには体毛などが暖かいところに適していないので、そこで、本 -
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オーストラリアでは有袋類が多様に進化し、他の大陸では有胎盤類の種として進化した動物によく似た動物が闊歩している。それぞれに適応放散し収斂進化した結果である。条件が同じであれば同じような進化を繰り返すのだろうか。ところが有袋類でもカンガルーは有胎盤類に似た種は見当たらない。進化の特異点となる。
本書は進化の偶然と必然をテーマに、必然だとするサイモン・コンウェイ=モリスと偶然であるとするスティーヴン・ジェイ・グールドの主張を論評し、生命進化を観察と実験で明らかにしょうとする試みについて紹介する。ロソスは進化生物学は実験科学になりうると述べる。
自然を観察する中で収斂進化の事例は沢山見つかる。本 -
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朝起きて、顔からイソギンチャクのようにうねうねした触手が生えていたらどうしよう。
本書に登場する「キモい生きもの」と呼ばれるホシバナモグラはそんな顔だ。確かにキモい。しかし「キモいと感じる生物がいる」という事実は、この世界が人間に都合よく、人間だけのために存在するものではない事の証明にもなるかも知れない。
とにかく、キモい触手じゃなくて良かった。私の目鼻は、ヒトという種においては大差のない目鼻だ。我々はその形で生まれ、続いてきた。片方は土の中での世界を把握するために、片方の我々は、開かれた空間を視界で把握するために。更に、匂いを嗅ぎ、空気の振動を感じ、手触りで相手を理解する事もできる。
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<目次>
第1章 おなかを見せたオオカミ
第2章 戦略的ウシと黄金のヌー
第3章 スーパーサーモンとスパイダー·ゴート
第4章 ゲーム·オブ·クローンズ
第5章 不妊のハエと自殺するフクロギツネ
第6章 ニワトリの時代
第7章 シーモンキーとピズリーベア
第8章 ダーウィンのガ
第9章 サンゴは回復する
第10章 愛の島
第11章 ブタと紫の皇帝
第12章 新しい方舟
<内容>
予想以上に我々人類は、自然を改変していったことを知った。遺伝子組み換えの話なのかと思っていたが、いわゆる品種改良や自然を破壊した結果、そこにいた生物が、生き残るために自主的に?品種が変わっ -
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生物の進化について興味があったので読んでみた。
結論的にいうと、前半部分(生き物の進化)については非常に面白かったが、後半部分(大腸菌などの微生物の進化)はちょっと難しく冗長に感じた。
どのような生物でも同じような環境で暮らせば同じような進化をするのだろうか?
本書では、そのようなテーマで生物の進化が論じられていく。
語り口は素人にも分かりやすく、科学書といっても初学者でもきっちりと読みこなすことができる。
本書で大きく扱われているのは『収斂化(しゅうれんか)』ということだ。
収斂化とは、生物が互いに異なる性質などを持っていても環境によって変化し、最終的には、同質化・同等化・相似化していく -
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生命進化は、どこまでが必然で、どこまでが偶然なのか。そのテーマで書かれたのが、この本である。
眼、翼、各種の防御機構、生物の持つ多くの機能は異なるパスで独立に進化してきた。基本でもある多細胞化も何度か進化したと言われている。いわゆる収斂進化であるが、自然界にはその収斂進化はあふれている。その観点からは進化は必然であるように見える。一方で、人間が進化の積み重ねによって生まれたのは多くの偶然が重なった結果のように思える。進化は必然か、偶然かというのは興味を惹くテーマなのである。
この進化生物学という新しい分野における第一人者でもある著者の主張は、「進化は繰り返す」という。
カリブ海のアノールトカ