的場知之の作品一覧
「的場知之」の「カタニア先生は、キモい生きものに夢中!」「親切の人類史――ヒトはいかにして利他の心を獲得したか」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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ビジネス・実用
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Posted by ブクログ
タイトルにひかれて購入しました。私のような門外漢にもわかりやすく書かれていて面白かったです。ただ1つひっかかった点があります。日本語のタイトルが「まじめに動物の言語を考えてみた」とありますが、現題はAnimal Communicationであり、著者は本書の中でも動物の「言語」を考えることに対する警鐘を鳴らしています。たしかに「動物の言語を考えてみた」のほうがキャッチ―で、私のように手に取る読者は増えるかもしれませんが、著者の意図をくむなら「動物のコミュニケーションを考えてみた」が正しいはず。
他方、中身はとても面白かったです。本書ではオオカミ、イルカ、インコ、ハイラックス、テナガザル、チンパンジー、そして「ヒト」がどうコミュニケーションしているかを紹介していて、全部を読んだ印象ですが、コミュニケーションスタイルは、その生き物の社会構造と密接に関係しているということです。私が読み取ったのは、①生活集団の規模(メンバー数が少ないか多いか)、②メンバーの固定度(顔ぶれは固定的か流動的か)、③生活環境(例:海の中、ジャングルの中など視野が極端に悪い環境か)、あたりがコミュニケーションスタイルを規定する強い要因になっていそうということです。
たとえばイルカは、シグネチャーホイッスルと呼ばれる「私だよ」というホイッスルを発しますが、この背景には、イルカの社会が小集団で離散流動型であることがあります。イルカは固定メンバーでずっと一緒に生活することはなく、離れては違う集団と合流し、またすぐ離れて違う集団と合流します。その際に「私だよ」というホイッスルが重要なわけです。他のイルカからすれば「ああお前か」となって受け入れるか、知らない奴が来たな、となるわけです。
このあたりの記述を読んでいて、人間社会の多様性も、動物社会の多様性から説明できそうという印象を持ちました。たとえば米国では個人主義がなぜ発展したかを考えると、米国社会がイルカの社会のように、基本的に小集団で離散流動的であることと関係があるのかな、という仮説です。現在は違うかもしれませんが、西部開拓時代から1970年代くらいまで、米国人の多くが州をまたぐ引越しを頻繁にしていたと読んだことがありますが(タイラー・コーエン『大停滞』)、そのような社会のメンバーは「私だよ」というシグネチャーホイッスルを強化しがちなのかもしれません。本書で最後の章が「ヒト」になっているように、人間を動物の一種として、他の動物との比較の中でコミュニケーションスタイルを考えるきっかけになる本でした。
Posted by ブクログ
かなり面白かった。
生物系の論文って、素人でも理解できて面白いものが多いけど、ひとつひとつ漁るのはさすがに骨が折れるからこういった1つのテーマに沿って色々な話を紹介してくれるる学術書の存在はほんとうにありがたい。
・イルカは死を認識できているが、『自らもいずれ死ぬ』という死の叡智には辿り着いていない。すべての動物の中でヒトだけが、死の不可避性を完全に認識できる
・死の叡智は、エピソード的未来予測の波及効果の避けられない帰結であり、ほかの認知能力と分かちがたく結びついている(つまり、「いずれ死ぬ」という懊悩だけ都合よく回避しつつ、他の認知能力を育てることはできない)
・ヒトの道徳的推論(たとえば、同性愛者を否定するなど、他の動物では規範的な問題にならないことを問題とみなす)進化的な意味では単によくないものかもしれない。機能というよりバグかもしれない。
・娘を育てる上で、オペラント条件付けという方法が役に立つ。ポジティブな話をしたらチーズポップコーンをあたえるだけでよい(これは子供ができたら使ってみたい)
・臓器提供意思表示フォームの形式によって、臓器提供への同意率が27.5%から98%まで変わる可能性がある。
・ホヤは、幼体から成体になる際、頭、尾、脳、脊髄の機能をあえて大きく捨てる。
『ホヤに成功をもたらす最適経路は、あらゆる思考が起こりうる可能性を積極的に排除することであると、自然淘汰は結論づけた』←この文章かっこいい。
よくある動物の本って、「この種の動物はこんなこともできてすごく賢い」とか、「この動物の機能にはこういった価値がある」ということを強調する場合が多い。
だけどこの本は、動物の認知機能がヒトより制限されていることを説明したうえで、それではヒトは動物より“善く”生きることができているのか?という命題にフォーカスしている点が興味深く、おもしろかった。
Posted by ブクログ
1章から6章までは人間の利他行動に関する理論の要点とその妥当性を検証。ハミルトンの血縁淘汰と包括適応度、ウィン=エドワーズの群淘汰、マルチレベル淘汰とプライスの共分散方程式、アクセルロッド、アレキサンダーなどの互恵性理論など進化生物学の理論を手際よくまとめており、数学の知識が無い自分でも進化理論の進展についてポイントを摑めた気になった。
この部分で特に印象深かったのはプライスの共分散定理。利他行動が優位となる淘汰の働きをたった一行の方程式にしてしまうのだから驚き。畏敬の念さえ覚える。
また筆者はアレキサンダーなどの間接互恵性理論を現代人の利他行動を進化的に説明する概念として有望と評価している。ただし互恵性(reciplocity)と評判(reputation)だけでは友人関係あるいは古代社会のような小規模集団における利他行動を説明できても現代社会のような大規模な集団での協力体制を説明することは困難としてもう一つのR、理性(reason)の働きをあげ、7章以下で理性と社会構築に関する人間の能力の歴史的考察を展開している。
筆者の歴史認識は全般的に楽観論に貫かれており12章(戦後復興と福祉国家の時代)までは同意できるのだが、ポスト福祉国家、新自由主義的イデオロギーが跋扈する時代(13章)の記述などは自分の実感とはやや異なる。
生活保護受給者に対する虐め、冷酷な自己責任論など利他行動や社会的な協力を行う能力は少なくとも日本に於いては退化しているとしか思えない。
Posted by ブクログ
人間がいかにして利他的な心を持つようになったのか、歴史の大きな流れとともに考察していく一冊。
気になっていた本だが、少し高めの価格にたじろぎながら、借りられるまで待ったが、借りられる期間である2週間で読み切るのはなかなか難しかった。
読むこと自体はできても、理解するのにかなり苦労させられた。
他人への寛大さは、一対一のものではなく、集団にとって利益になるからであり、また、他人への思いやりは「お返し」「インセンティブ」「活発な知的能力」「論理的思考」の四つからなっているそう。
人間は様々な苦難を乗り越えながら、他人を思いやることが世界をより豊かにしていくことを学んでいった。もちろん、思いやりだけで全てが解決されるわけではないが、1日のうち一度でも他人を思いやる行動をすることができたなら、この本を読んだ意味がある気がする。