的場知之のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
生命進化は、どこまでが必然で、どこまでが偶然なのか。そのテーマで書かれたのが、この本である。
眼、翼、各種の防御機構、生物の持つ多くの機能は異なるパスで独立に進化してきた。基本でもある多細胞化も何度か進化したと言われている。いわゆる収斂進化であるが、自然界にはその収斂進化はあふれている。その観点からは進化は必然であるように見える。一方で、人間が進化の積み重ねによって生まれたのは多くの偶然が重なった結果のように思える。進化は必然か、偶然かというのは興味を惹くテーマなのである。
この進化生物学という新しい分野における第一人者でもある著者の主張は、「進化は繰り返す」という。
カリブ海のアノールトカゲ、ガラパゴスフィンチ、グッピー、大腸菌、イトヨ、ショウジョウバエなどの研究事例を取り上げて、環境に適応した個体群の進化がどのように進むのかについて、実フィールドでの観察記録や慎重に設計された環境で実験について解説されている。それらの真実探求に向けた努力は、フィールドワークの実態として地味なところもあるが、読んでいるとどこかワクワクする。
多くの実験を通して、この本で言われていることのひとつが、「進化は時に急速に起こる」ということである。例えば、その環境における捕食性の魚の存在の有無は、グッピーのオスの体色の進化に大きく速やかな変化を与える。グッピーに環境が与える影響は、ときに数か月、二世代ですでに集団における分化の兆しが見えるということがわかっている。自然淘汰が強く働くとき、進化は急速に起こりうる、しかも予測可能な形で。
この本ではそのことに触れられてはいないが、おそらく進化の速度において出てくる問いが、「それでは人間についてはどうだろう」である。肌の色はおそらくは紫外線の強さに対する適応によって変わってきた。高地に対応したり、寒冷地に対応するための身体的特徴は世代を経て適応が進んできた結果であると言われている。それ以外の社会的環境による集団間の差異はどの程度の強さで人間の集団に現れるのだろうか。この問題は、優生学や人種差別の問題として常に付きまとう。遺伝学の世界と、個々人の領域と、社会学の観点は互いに混同しないということがまずは原則になるのだろう。そして、それには誠実で正しい知識が必要なのである。 -
Posted by ブクログ
●「言語」に対する固定観念を根底から揺さぶられる本。
●動物にも言語があるのか知りたくて読む。→動物たちの多彩なコミュニケーションの手法については知れた。
●本書は、動物たちの多様なコミュニケーションの手法から、それぞれの動物たちが言語をもっていると言えるのかを検討している。注目すべきは、動物のコミュニケーションを「単語と文」という人間独自の物差しで測ることを明確に否定した点にある。特にテナガザルの章で語られる「意味と単語の一対一対応を捨てる」という視点は、まさに目から鱗だった。我々はつい「この鳴き声は『ヘビ』という意味だ」という辞書的な正解を求めがちだが、動物たちはもっと流動的で、文脈やシークエンス全体に意味を宿らせる、全く異なる知性のあり方をこの本では提示している。 -
Posted by ブクログ
鈴木俊貴先生の「僕には鳥の言葉が分かる」を
読み、こちらの本のタイトルが気になり
読んでみた。
一見、難しい内容のような気もするけれど、
動物についての知識はあまり必要ない。
オオカミ、イルカ、インコ、ハイラックス、
テナガザル、チンパンジー、ヒトを含め
種によってそれぞれ全く異なるコミュニケーションをとっているらしいことの観察、研究内容などが
紹介されている。
たとえば、イルカ(水族館のイルカも含めて)は、
仲間とコミュニケーションをとる際に、自分自身の名前を表すひとつの特別のホイッスル(イルカが出す音)を発するが、人とイルカの他には通常のコミュニケーションの中で自分の名前つける動物はいないという。
ハイラックス(モルモットとウサギのような見た目)は耳ざわりな吠え声だが、複雑な歌を歌う統語あるらしく、歌が歌らしく聞こえるようにしていることや、テナガザルは家族で合唱し、子どもに歌い方、配偶相手を魅了する方法、一緒に子育てしてくれる適切なパートナーを見つけて繋ぎ止める秘訣を教え、子どもは親の複雑な歌を真似しつつ自分の歌のスキルを磨くなど、かなり面白い内容が紹介されている。
ただ、動物は仲間に対して、様々なコミュニケーションをとってはいるが、それは言語でなく方法で
あり、言語とコミュニケーションは異なる、ということが、現在での研究結果らしいことに少し残念に感じる。自分は全くの素人だが、本当に動物は言語を持たないのだろうか。
著者にぜひ一度、鈴木俊貴先生の「僕には鳥の言葉が分かる」を読んでもらいたいが‥大きなお世話か。
終章で著者の言葉が紹介されているが
『ヒトのコミュニケーションと動物のコミュニケーションを比較するとき、人間は地球という広大な生態系のほんの一部を構成するひとつの種でしかなく、言語はいかに驚異的といえども、コミュニケーションへの無数の適応のうちのひとつでしかない』という箇所に共感した。
カバーイラストが可愛い -
Posted by ブクログ
進化を実験によって研究する分野があり、外圧があると進化は意外と短期間でも起こり得て、それは予測し得るというのがまず面白い。遺伝子的に違う種族でも、同じような環境では同じような形質に進化しがちで、中には見分けのつかない生物もいたりする(ウミヘビとか)というのもびっくりではある。
科学者の著作だけど、内容はエンタメ的だ。もちろんすべてが予測通りに進化するわけでなく、そこには偶然のブレークスルーによる進化の飛躍があるというわけで、その意味では今人間がこうしているのは、ラッキーの積み重なりというわけだけど、それと地道な外圧に対処する短期的進化とのバランスがよくわかるらない(そんな簡単に理解できるものではないでしょうが)。正直三章くらいから中だるみしてしまうが、好奇心はそれなりに満たせる。しかし、ほんと文章がみっちり詰まってて長い。そこは覚悟が必要。