三木那由他のレビュー一覧
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エッセイとしては難しい部分もあったが、とても興味深かった。コミュニケーションは本当に多様なもので、哲学ではカバーしきれない部分もあることがよくわかった。
そのカバーしきれない絡まった部分を、三木さんは丁寧に解きほぐして考えている。コミュニケーションにおいて、心的な関わりを占める割合は高い。なのに、コミュニケーションだけでは人の本心はわからないことが多い。少しでも考えてコミュニケーションをとっていこうと思う本だった。
また、自分もセクシャルマイノリティの当事者なので、気持ちの部分で語られる「哲学と私のあいだで」「『私』のいない言葉」はとても実感を感じながら読んだ。少しでも、(性に関することに -
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地球っこさんのレビューを見せていただき、是非読んでみたいと思った一冊。
すごい。。。
言葉、会話を分析・哲学するって。
こんな分野があるなんて、考えたこともなかった。
最初は頭をフル回転させながら、なんとか食いついていくかんじだったのが、カムアウトされたところぐらいから、すごく作者の意図することが理解出来るようになった。
そもそも一般向けに分りやすくエッセイと解説の間ぐらい というのがコンセプト。
しかし この人たちの頭の中はどうなっているのだろう。
会話を哲学するって・・・
次に読もうと思っている「会話を哲学する コミュニケーションとマニピュレーション 」は準備済み。
次も楽しみです。。 -
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言語哲学に興味が湧いてくる本
コミュニケーションそのものを考えられる本
日々の何気ないコミュニケーションをする中で、コミュニケーションとはいったい何かというもの考えさせられる。コミュニケーションはただの記号の情報交換ではないということはなんとなく同意してきたが、おそらく私はそれが一体何なのかということについて理解していない。私は言語学(英語学)ついてはある程度学んできた自負はあるが、それは主にある言語の特有の表現方法に関わるものがほとんどであり、文字からどのように理解できるかがメインであった。そのため、この本で紹介されている話し手にとっての意味とは何か、聞き手にとっての意味とは何かといった、 -
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ネタバレ話し手と聞き手との間に“約束事”を形成する「コミュニケーション」。
相手の行動や心理を自分の望む方向へ誘導する「マニピュレーション」。
それぞれを分けて解説してくれているので、比較的理解しやすかったように思う。
漫画や小説、映画からの引用も多く、楽しく考えながら読み進めることが出来た。
高橋留美子の「君がいるだけで」の唐揚げ弁当注文のシーンを例にした“意味の占有”については、しばしば見かけた権力者への忖度などの理由が明確に言語化されたようで腑に落ちた一方で怖さも感じた。
何かを決定したり動かせる立場にある人は常に言動が与える影響を意識しないと
他人を利用して誰かを傷つけてしまう可能性がある -
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帯に惹かれて買った。好きと言わないことで互いに何を伝えているのか。会話という誰にとっても日常的な行為の面白さと複雑さ。言葉の豊かさをより味わいたくなった。
・会話やコミュニケーションを論ずる哲学者はちょうどいいオリジナルの例を挙げている:それはだいぶ偏った例になる。映画や演劇や漫画や小説では様々な会話観がある。
・フィクション作品に「誠実」なコミュニケーションしか登場しなかったら飽きてしまう。人間的な魅力が発揮される部分。
・嘘だとわかっているコミュニケーションをすることで話し手の人情や切なさが現れる
・伝わらないとわかっているけどひょっとしたら伝わるかもしれない発言。伝えることの恐怖から伝 -
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マンガや小説といったフィクション作品の会話を事例として取り上げ、「会話」をコミュニケーションとマニピュレーションとに分けることで考察している。
本書においてコミュニケーションとは、前の発言を前提に次の発言がなされるという意味で「約束事を形成する側面」を指している。
またマニピュレーションとは、コミュニケーションを通じて相手に影響を与えようとすることを指している。
なかなか理解するのが難しい部分もあったけれど、フィクション作品の会話が事例として多数挙げられていて親しみやすさを感じるとともに、会話は本来自然なものなので、説明のためにテキストのような会話の事例が挙げられるよりも現実場面に近い自然さ -
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コミュニケーションってなに、会話ってなに?難しすぎ~~~!無理~~~~!と日頃常々思っている。
不毛なのはわかっているけれど、自分の言葉や相手の言葉がちゃんと齟齬なく届いているか、受け取っているかって考えると、いや意思疎通そのものがかなり無理では?ハードでは?と思ってしまうんであった
「言葉の展望台」は言語やコミュニケーションを専門とする日本の哲学者でありトランスジェンダーでもある三木那由他氏のエッセイ集。『金田一37歳の事件簿』を例に出した哲学的には認められないが、そうはいってもこういうコミュニケーションが好き!というエピソードや『僕のヒーローアカデミア』に見る誠実な謝罪と不誠実な謝罪、いわ -
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言葉はいつだって新しい旅への呼びかけ。
文中の著者のこのひとことからもわかるように、人同士の会話の中で、ちょっとした1つの発言に意識を向けてみるだけで、その発言者の背後にある意図(発言者当人は無意識であることも多い)や、聞き手への期待などが、複雑に絡み合っていることがわかる。
著者の研究分野である、言語哲学では話し手の意図が聞き手に真っ直ぐ伝わると仮定することも多い。
しかし、実際のコミュニケーションにおいては、そう簡単にはいかないゆえ、面白い現象も起こる反面、時には立ち場の強い聞き手が恣意的に話し手の意図を歪め、言葉の暴力につながることもある。
著者の興味のあることに対して、日常の些細な -
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会話をコミュニケーション(約束事の成立)とマニュピレーション(聞き手の思考を操作)に分けて、その構造を探求している。
フィクションを題材でたとっつきやすい反面、マイノリティや差別に対する会話の危うさというところに論を進めており我身のことと鑑みて考えさせられる深さもある。アガサクリスティの章は作品未読のためネタバレ回避のため読み飛ばし。ここで手をとめて作品を読んでから戻ってきてなんてそんな殺生なー。
会話を単に情報交換や双方のキャッチボールとかいう捉え方は昔からあったけど、約束事というキー概念を軸に単に情報のやり取りでは収まらない会話の奥深さを知らしめてくれています。
自分では納得できていな -
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会話の哲学?と思い読んでみました。会話は物理学では音の伝播ですし、発話に関して言えば医学的にも肺からの呼吸が整体を振るわし咽頭・鼻腔口腔で共鳴し口唇で調音し表出されると言えるかもしれません。では哲学の面からとは?
読んで面白かった。言語学にも似た観点があるので読みやすかった。サルプルがみんな知ってるマンガが多く、とっつきやすかったです。
私が一番ハッとしたのは言語的暴力の話です。暴言やモラハラとは違う、言葉の暴力的側面にハッとしました。なんとなく気がついているものの、言語的暴力と言われて、ストンと腹に落ちました。読んでとても良かったです。 -
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日常的に行う会話という営みを、コミュニケーションとマニピュレーションという観点を持ち込んで捉えるとどういう見方ができるのか、解説してくれる。
いくつかのアニメや映画、などの登場人物たちの会話を分析する過程に、のめり込んでしまう。そして会話という行為の解像度が上がって楽しい。
哲学、という言葉がタイトルに入っていて読みづらいかと思ったら、全くそんなことない。読みやすさはここ最近読んだ本の中で一番だった。
会話の中でマニピュレーションは時に人を傷つけてしまう側面もある。コミュニケーションを曖昧にして約束事を後からすり替えられるようにしておくことは、話し手が圧倒的有利。しかもそれが何らかの差(権力