三木那由他のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
コミュニケーションとは、お互いの中に何らかの約束事をもたらすものである、という考え方はわかりやすかったと思う。だから、言葉尻や、言葉の表面的な意味が持つ辞書的な(シニフィアンとシニフィエ的な)意味が、コミュニケーションにおいてお互いの中でどのように頭の中に期待と約束として残るのかというのは、本当に単純な文字面だけで決まるものではない。
そもそもよく考えてみれば、人類はこれだけ言葉を流暢に操るけれども、そう進化する前もコミュニケーションは散々していたのだと思う。他の動物だってそうで、言葉がないとコミュニケーションができないわけではないとも言える。
それから、マニピュレーションの考え方。これも同じで、言葉の字義的な意味では人を傷つけたり、人に何かをさせたりすることが必ずしも認められないようなケースにおいても、言葉が発されるシチュエーションや関係性、力関係によって、その発話やコミュニケーションが相手にどういった行動を暗黙のうちに強要するのか、という観点がある。
そしてそれは、リテラルな発話の意味とマニピュレーションのレイヤーにおいて、発話者の意図が矛盾したり、一致していないようなこともあり、それをもって発話者が「自分はマニピュレートしようとはしていない」と主張するようなこともある。
そういう構造をよく理解しつつ、自分がコミュニケーションやマニピュレーションにおいて、不均衡な力関係や相手を傷つけるようなやり方をしないようにすること、そういうマニピュレーションをしようとする人には注意することが、やっぱり大事だなと思った。 -
Posted by ブクログ
コミュニケーションは約束。
権力勾配によりその意味をずらしてしまう暴力性。共同的コミットメントを形成すること(金田一少年の恋人同士の嘘)。謝罪は他人との間に共同的コミットメントを形成するため今後他人から非難される可能性を引き受ける、つまり謝罪は終わりではなく始まりである(ヒロアカの爆豪勝己)。
どうやら哲学者たちはコミュニケーションについて論じる時な、理性的な例のみを考えすぎているらしい。私は、世界はもっといい加減で、再現性がない、意味のないやり取りだって溢れていると感じる。
また、言葉について研究するうえで筆者の一人称問題のように言語間の差異も無視できない。そうなると日本語についての研究の意義は(もちろん他のどの言語とも同じく)軽くないものになるだろう。
また、私は平たく言うとジェンダー論に興味があるのだが、そのような話をしているとよく指摘される「そんなに言葉を作るのは良いことなのか」という問題についてのヒントがあったように思う。「言葉の空白地帯」の章で、フリッカーの「解釈的不正義」について述べられている。
>どのような言葉や概念がつくられ、蓄積されるかは社会的な営みの問題だが、ときに一部のグループがそもそもそうした営みへの参加を制限されてしまい、そのためにそのグループにとって大事な言葉や概念が提案されなかったり、されても蓄積されることなく消えるがままされていたりすることがある。<
ほどよく頭を使いほどよく易しい、勉強になるが個人的な話も聞ける、私にとって良い塩梅のエッセイであった。トランスジェンダーに限った話ではないが、自分とは違う経験をしてきた人の思っていること、感じてきたことを知りたくてもこちらからの要求で赤裸々に語ってもらうのはやや抵抗があるので、本人の意思で書いてもらえるのは有難いことだと思う。そうしたものを今後も探して、一人一人として知っていきたい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ面白かったです。
コミュニケーションとマニピュレーション
会話とは影響の与え合いであり約束事が作られ、会話が続くと約束事が積み重ねられていく
著者は
コミュニケーション…発言を通じて話し手と聞き手のあいだで約束事を構築していくような営み
マニピュレーション…発言を通じて話し手が聞き手の心理や行動を操ろうとする営み
この2つを区別して、コミュニケーションとぴったり合った「誠実な」マニピュレーションだけではなく、ずれをもった「不誠実な」マニピュレーションも小説や漫画を用いて解説。
マニピュレーションのまったくない会話はつまんないだろうなぁ。でもフィクションを読んでると口が立つ不誠実なマニピュレーションをする登場人物のことはなかなか好きにはなれない(笑
取り上げられた作品、『言語の七番目の機能』があったのが驚き
勝手にふるえてろ/綿矢りさ(未読)
同級生/中村明日美子(未読)
うる星やつら/高橋留美子(一部既読)
ウルトラスーパーデラックスマン/藤子不二雄(未読)
オリエント急行の殺人/アガサ・クリスティー(既読、のはず)
金田一37歳の事件簿/天樹征丸原作(未読)
マトリックス(映画)(未視聴)
クイーン舶来雑貨店のおやつ/山内尚(未読)
HER/ヤマシタトモコ(未読)
背筋をピン!と~鹿高競技ダンス部へようこそ~/横田卓馬(未読)
しまなみ誰そ彼/鎌谷悠希(未読)
ロミオとジュリエット/シェイクスピア(既読)
マカロンはマカロン/近藤史恵(既読)
めぞん一刻/高橋留美子(既読)
魔女の猫探し/別役実(未読)
魔人探偵脳噛ネウロ/松井優征(未読)
違国日記/ヤマシタトモコ(一部既読)
チェンジリング(映画)(未視聴)
ONE PIECE/尾田栄一郎(未読)
パタリロ!選集/魔夜峰央(一部既読)
鋼の錬金術師/荒川弘(既読)
ポケモン不思議のダンジョン救助隊DX(ゲーム)(未体験?)
オセロー/シェイクスピア(既読)
言語の七番目の機能/ローラン・ビネ(既読)
同志少女よ、敵を撃て/逢坂冬馬(既読)
ブラック・クランズマン(映画)(未視聴) -
Posted by ブクログ
ネタバレ話し手と聞き手との間に“約束事”を形成する「コミュニケーション」。
相手の行動や心理を自分の望む方向へ誘導する「マニピュレーション」。
それぞれを分けて解説してくれているので、比較的理解しやすかったように思う。
漫画や小説、映画からの引用も多く、楽しく考えながら読み進めることが出来た。
高橋留美子の「君がいるだけで」の唐揚げ弁当注文のシーンを例にした“意味の占有”については、しばしば見かけた権力者への忖度などの理由が明確に言語化されたようで腑に落ちた一方で怖さも感じた。
何かを決定したり動かせる立場にある人は常に言動が与える影響を意識しないと
他人を利用して誰かを傷つけてしまう可能性があると肝に銘じておかねばならない。
また自分自身がそうした意味の占有の働きかけに利用されていないか、冷静に俯瞰することも大切だと感じた。
また、ワンピースの一場面を例にあげた倫理観と人情の葛藤は、
さまざまな作品を観る中で特に印象的な場面に多く登場しているのではないかと
振り返ってみて改めておもう。
(私はドラマSHOGUNのエピソード8の名場面を思い浮かべた) -
Posted by ブクログ
連続読書会に参加したことで、ようやく読み終えることができました。タイトルにある「女の子のための」という言葉が印象的で、あえてそう名付けられていることに深い意味があるように感じました。
読んでみると、正直わたしには難しく感じる部分も多かったです。でも、女性哲学者の視点から語られる哲学は、これまでの「哲学」のイメージとは違って、実体験に根ざしたものが多く、心に残る言葉がたくさんありました。
知らなかった学問分野や考え方が散りばめられていて、「わたしが知らないだけだったんだ」と気づかされる場面も。自分が何かを「思い込まされている」ことに気づくこと、そしてそこから一歩踏み出して行動することの大切さを教えてくれる一冊でした。
哲学って、もっと遠い世界の話だと思っていたけれど、実はすごく身近で、自分自身の生き方にもつながっているんだなと感じました。
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Posted by ブクログ
帯に惹かれて買った。好きと言わないことで互いに何を伝えているのか。会話という誰にとっても日常的な行為の面白さと複雑さ。言葉の豊かさをより味わいたくなった。
・会話やコミュニケーションを論ずる哲学者はちょうどいいオリジナルの例を挙げている:それはだいぶ偏った例になる。映画や演劇や漫画や小説では様々な会話観がある。
・フィクション作品に「誠実」なコミュニケーションしか登場しなかったら飽きてしまう。人間的な魅力が発揮される部分。
・嘘だとわかっているコミュニケーションをすることで話し手の人情や切なさが現れる
・伝わらないとわかっているけどひょっとしたら伝わるかもしれない発言。伝えることの恐怖から伝わらないと分かっている伝達方法を選ぶ。それが伝わって欲しいという願いも、ある。
・死者への語りかけは、話し手が心の底から誠実に語っている言葉を描く演出。もはや約束事を形成することが叶わない相手とそれでも約束事を形成できたら、という祈りのような想い。
・マニピュレーションに対して責任を求めるときは言ったことを認めろという責任を問うのではなく、それによってどのような結果がもたらされるか・それを予見して発言したのか、を善悪の次元で問うべき。言説的責任と倫理的責任をしっかり区別する -
Posted by ブクログ
タイトルと前書きから、女の子向けにわかりやすく哲学を解説する本と理解し、
500ページ以上の分厚いページをめくり始めた。
最初のうちは確かに哲学の定義?お話で、文字が目の前を通り過ぎた。
ページをめくる手も速くなる。
しかしだんだんわかるようになってきた。
まず先日読んだばかりのフランケンシュタインの著者メアリー・シェリーが出てきた。
これでめくるスピードが戻った。
そしてさらに、テーマが差別になってきた。
差別には敏感。
女性差別を中心に、さまざまな差別について述べられている。
差別は哲学のテーマになりうるんだ、、と理解。
内容は、これまで学んできた内容から真新しいものはなかったが、
再確認にはなった。
しかし、、、
これがタイトルの「女の子のための西洋哲学入門」なのか、違和感は残る。
ましてまえがきで書かれていたことと、、、
通勤と昼休みと整形外科の待合室。1日でこの本に目を通したが、
ちょっと中途半端、消化不良だった。
監訳者まえがき
謝辞
プロローグ ペルセポネー──あなたへの招待状 メリッサ・M・シュー/西條玲奈訳
はじめに メリッサ・M・シュー&キンバリー・K・ガーチャー/三木那由他訳
第Ⅰ部 自己
第1章 アイデンティティ(同一性)──世界内存在と生成 ミーナ・ダンダ/酒井麻依子訳
第2章 自律──自分に正直でいること セレン・J・カダー/筒井晴香訳
第3章 プライド──徳と悪徳の複雑さ クラウディア・ミルズ/飯塚理恵訳
第4章 問い──哲学の核心 メリッサ・M・シュー/横田祐美子訳
第5章 自己知──反省の重要性 カレン・ストール/安倍里美訳
第Ⅱ部 知ること
第6章 論理学──フェミニストアプローチ ジリアン・ラッセル/山森真衣子訳
第7章 疑い──認識と懐疑主義 ジュリアン・チャン/村上祐子訳
第8章 科学──客観性の正体を暴く サブリナ・E・スミス/村上祐子訳
第9章 技術──経験と媒介された現実 ロビン・L・ゼブロフスキー/西條玲奈訳
第10章 芸術──見ること、考えること、制作すること パトリシア・M・ロック/青田麻未訳
第Ⅲ部 社会構造と権力関係
第11章 信用性──疑いに抵抗し、知識を捉え直す モニカ・C・プール/木下頌子訳
第12章 言語──コミュニケーションでの集中攻撃パワープレイ エリザベス・キャンプ/三木那由他訳
第13章 人種──「人間」という概念に見られる存在論上の危険性 シャノン・ウィナブスト/権瞳訳
第14章 ジェンダー──二分法とその先に向けて シャーロット・ウィット/清水晶子訳
第15章 承認──クィア・エイリアン・ミックスの意識を生きる シャンティ・チュウ/清水晶子訳
第Ⅳ部 現実の中で考える
第16章 怒り──抵抗の身振りとしてメドゥーサ話法を利用する ミーシャ・チェリー/西條玲奈訳
第17章 コンシャスネス・レイジング(意識高揚)──社会集団と社会変革 タバサ・レゲット/木下頌子訳
第18章 ツェデク──なすべきことをする デヴォラ・シャピロ/鬼頭葉子訳
第19章 共感──人間と人間以外の動物との絡み合う関係性 ローリー・グルーエン/鬼頭葉子訳
第20章 勇気──作動する改善説 キンバリー・K・ガーチャー/酒井麻依子訳
監訳者あとがき
著者紹介
訳者紹介
索引 -
Posted by ブクログ
マンガや小説といったフィクション作品の会話を事例として取り上げ、「会話」をコミュニケーションとマニピュレーションとに分けることで考察している。
本書においてコミュニケーションとは、前の発言を前提に次の発言がなされるという意味で「約束事を形成する側面」を指している。
またマニピュレーションとは、コミュニケーションを通じて相手に影響を与えようとすることを指している。
なかなか理解するのが難しい部分もあったけれど、フィクション作品の会話が事例として多数挙げられていて親しみやすさを感じるとともに、会話は本来自然なものなので、説明のためにテキストのような会話の事例が挙げられるよりも現実場面に近い自然さが感じられて良かった。
フィクションにおいてドラマチックに感じるやり取りの場面をコミュニケーションやマニピュレーションの視点で考察していて、そのドラマチックさが具体的に言語化されていたように思う。
また本書は、フィクションだけでなく現実でも出会う場面について考察されている。
特に印象的だったのは、コミュニケーションによってつくられた約束事を一方が都合のいいように捻じ曲げてしまうコミュニケーション的暴力、「意味の占有」の話。
日常生活で出会う場合もあるし、様々な社会問題にも通ずる部分があるように感じる。
「会話」というものを深く考察することで、フィクションのドラマチックさや日常で見聞きするようなモヤモヤを論理的に解説している一冊だった。 -
Posted by ブクログ
コミュニケーションってなに、会話ってなに?難しすぎ~~~!無理~~~~!と日頃常々思っている。
不毛なのはわかっているけれど、自分の言葉や相手の言葉がちゃんと齟齬なく届いているか、受け取っているかって考えると、いや意思疎通そのものがかなり無理では?ハードでは?と思ってしまうんであった
「言葉の展望台」は言語やコミュニケーションを専門とする日本の哲学者でありトランスジェンダーでもある三木那由他氏のエッセイ集。『金田一37歳の事件簿』を例に出した哲学的には認められないが、そうはいってもこういうコミュニケーションが好き!というエピソードや『僕のヒーローアカデミア』に見る誠実な謝罪と不誠実な謝罪、いわゆるご不快構文にならないためにはどうすればいいのか、我々はどういう謝罪を誠実だと感じるかというエピソードなどがあり、漫画好きの三木さんらしい漫画を絡めたエピソードがあるのもおもしろかった。学問的な解釈と三木さん自身の価値観を混ぜ合わせたエッセイでコミュニケーションや言語とはどういうものかを考えるには取っ掛かりやすい本だった
言葉って会話ってコミュニケーションって何なの?と思ったことがある人のための1冊 -
Posted by ブクログ
言葉はいつだって新しい旅への呼びかけ。
文中の著者のこのひとことからもわかるように、人同士の会話の中で、ちょっとした1つの発言に意識を向けてみるだけで、その発言者の背後にある意図(発言者当人は無意識であることも多い)や、聞き手への期待などが、複雑に絡み合っていることがわかる。
著者の研究分野である、言語哲学では話し手の意図が聞き手に真っ直ぐ伝わると仮定することも多い。
しかし、実際のコミュニケーションにおいては、そう簡単にはいかないゆえ、面白い現象も起こる反面、時には立ち場の強い聞き手が恣意的に話し手の意図を歪め、言葉の暴力につながることもある。
著者の興味のあることに対して、日常の些細な現象にも深く分析を加えていく姿勢は、私も持っておきたいものだと思いました。
言語やコミュニケーションに限らず、そのような姿勢が、少し大げさに言えば人生の豊かさに繋がるのだと思います。
研究対象は日常生活の中に溢れている。