あらすじ
私たちは会話を通じて何を伝え、何を企んでいるのか。あるいは相手の心理や行動にどんな影響を及ぼそうとしているのか。気鋭の言語哲学者が、『ONE PIECE』や『鋼の錬金術師』などの人気のフィクション作品を題材に、「会話」という営みを徹底分析! コミュニケーションとマニピュレーションという二つの観点から、会話という行為の魅力と、その実態をわかりやすく解き明かす。
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Posted by ブクログ
読んでいてハンターハンター24巻でイカルゴがキルアを助けた後のシーンを思い出しました。
今まであの会話がずっと引っかかっていたのですが、この本を読んでようやく腑に落ちました。
キルアは助けてくれたイカルゴに対して、今後はお礼なんて言わない。お前も俺が助けたときにありがとうなんて言うな。友達がサポートし合うのは特別なことじゃないから。と言っています。
これは、『ありがとうと伝えること』と『友達がサポートし合う関係』について、お互いの中での約束事(定義)をしていると言えるのではないかと思いました。
キルアにとっての『ありがとう』は、普通はしてくれないことなのに、してくれて助かった。という意味として捉えられると考えました。
またキルアにとって、友達とはお互いサポートし合うことが当然の関係と思っている。
よってキルアにとって『ありがとう』を言うことは、お互いサポートし合うことが当たり前の関係ではない。と表明しているようなもの。つまり友達ではないと言っているに等しいので、それは『ダサい』ぞということなのだと解釈しました。
この本のおかげで長年の疑問が解決した気がします。
Posted by ブクログ
コミュニケーションは話し手と聞き手との間に約束事を形成するものであり、マニピュレーションは聞き手を話し手の意図通りに操作することであり、両者は区別される必要がある。この両者の様々なズレやバリエーションについて漫画や小説などのフィクション作品における会話を題材に解説していく。素晴らしくわかりやすかった。この本を読むことで実際の会話におけるコミュニケーションやマニピュレーションについてもアンテナを貼ることができるようになるし、小説や漫画の読解力を上げることもできるように思います。
それにしても『鋼の錬金術師』はおしゃれなマニピュレーションの宝庫だな。取り上げられてたところ以外にもたくさん思い浮かんだ。
前半でおしゃれなマニピュレーションの良さを解説しつつ、後半では同じ効果を悪意を持って使用する場面について、こちらはフィクションではなく現実の場面で指摘されており怖さも感じたがなおさら理解することの重要さを痛感した。
Posted by ブクログ
なるほど会話とは意味のやり取りだけでは無い
とこの本から学べます。
すでに分かりきっていることではありますが、
本人の口から言わせることに意味があったり、
逆に反対の行動を取らせるための発言などが
会話には存在します(「押すなよ〜」「押す
なよ〜」のアレです)。
意味のやり取りを会話のバケツリレーだとす
ると、本人の口から言わせる言動を促すため
の会話はマニュピュレーションと表現するら
しいです。
日本語では「操作」ですね。
この本では漫画作品を例に挙げて、行動をマ
ニュピュレイトする会話とはどういうことな
のかを知る一冊です。
あの「うる星やつら」の最終回における、諸
星あたるの最後のセリフの深さはここに繋が
ります。
Posted by ブクログ
相手との約束の形成。
共通の認識を持つ(約束する)ことがコミュニケーションとしての基本。
それを実現してるように見せて共通の(意図的な)認識に仕向けるマニピュレーション。
好きな作品を見返したくなった。
愛らしい会話が溢れてる。
Posted by ブクログ
非常に興味深いテーマの新書が目に入り手にしたお陰で、楽しく読むことができました。
ふだん、私たちがしている、「会話」というものを考察しました、という内容でした。
導入も内容も順序も、とてもよく整っていて、古今東西にあるお馴染みの漫画・小説・映画の中での「会話」を分析しながら、コミュニケーションとマニピュレーションの2つの面から光を当てて、読み解いてあります。
やはり、どのような会話にも、マニピュレーション(=操作)の要素が含まれていると考えた方が良さそうです。
話者は、ある程度自覚的にマニピュレーションを行うのですが、最終的に、それが個人的な善意か、悪意か、はたまた勘違いからか、陰謀か。
相手のマニピュレーションは、いったい何に基づいているのか、や、相手のことをどこまで信頼できるのか、という問題と関係するような気がしました。
(コミュニケーションレベルではなく)、マニピュレーションレベルでの、話し手のメンタリティについてしっかりと考えれば、(お互いに)さらに楽しくて、実りの多い会話が続けられるのだとも思えました。
そんなことに思いをめぐらせ、著者の論じた哲学の奥深さや楽しさを、涙しながら味わうことができました。たいへん有意義な読書でした。
Posted by ブクログ
「哲学」という難しい響きに先入観があった私ですが、三木那由他さんの語り口は淡々としているようでどんどん読み進めたくなる柔らかさがあったように感じました。
普段無意識に行っている会話についていざ言語化されると「そういえばあのとき私は…」と自身の過去の発言なんかが思い返され、読んでいてずっと不思議な気持ちでした。面白かったです。
Posted by ブクログ
普段からなんとなく分かってると思って、見聞きしたり使ったりしてる会話を改めて考えるのが新鮮だった。「お互いに今、○○という約束ごとを作ってそれに沿って会話する」という、コミュニケーションは約束の積み重ねだというのが面白かった。特に意識してなかった分、確かになぁ…と思った。
漫画や本・ゲームから会話をとり上げて考えるというのも身近に感じられて読みやすかった。
マニピュレーションに関する話が印象的。本心を潜ませたり相手を操る為に使う次元の会話、マニピュレーションがもつ怖さや独特の味わい等、面白いと同時に怖くもあった。
会話について考える面白い本だったし、自分の日常にある会話をこっそり観察してみようとも思った。
かと言って、あまりに当然に使っているからいざ意識するってなると難しいだろうけど…。
Posted by ブクログ
三木由那他さんの文章が好きになって読みやすい本を読んでいます。
『会話を哲学する』難しそうですけれど、丁寧に身近なマンガや小説などから引いた会話を使って説明されていて解りやすい。
まだまだ会話を分析する迄には全く至らないが、自分のした会話を顧みて「あぁなるほどね。こういう会話が著者があそこで書いていたことかぁー」っと思い当たる時があって、結構感動もの。
マニピュレーションという著者の概念を使うと説明がしやすい会話も多い。
"おわりに"で掲げてある本にも手を出して、もう少し深く。もう少し長く会話の哲学について考えてみたいと思う。
読めば誰でも必ず得るものがあると思います。
Posted by ブクログ
演劇におけるサブテキストや、スタニスラフスキーの「目的」の話と本当によく似ていて、というよりも同じもののように思えてすごく納得できる内容でした。
ふだんの会話への思考も深まるのですが、何よりも創作に携わる人(とくに演じる仕事に携わる人)はぜひ一度読んでみてほしいと思うような本です。
フィクション作品を見るときの脚本や画面への解像度をあげてくれるのもとっても良いところ。
Posted by ブクログ
面白かったです。
コミュニケーションとマニピュレーション
会話とは影響の与え合いであり約束事が作られ、会話が続くと約束事が積み重ねられていく
著者は
コミュニケーション…発言を通じて話し手と聞き手のあいだで約束事を構築していくような営み
マニピュレーション…発言を通じて話し手が聞き手の心理や行動を操ろうとする営み
この2つを区別して、コミュニケーションとぴったり合った「誠実な」マニピュレーションだけではなく、ずれをもった「不誠実な」マニピュレーションも小説や漫画を用いて解説。
マニピュレーションのまったくない会話はつまんないだろうなぁ。でもフィクションを読んでると口が立つ不誠実なマニピュレーションをする登場人物のことはなかなか好きにはなれない(笑
取り上げられた作品、『言語の七番目の機能』があったのが驚き
勝手にふるえてろ/綿矢りさ(未読)
同級生/中村明日美子(未読)
うる星やつら/高橋留美子(一部既読)
ウルトラスーパーデラックスマン/藤子不二雄(未読)
オリエント急行の殺人/アガサ・クリスティー(既読、のはず)
金田一37歳の事件簿/天樹征丸原作(未読)
マトリックス(映画)(未視聴)
クイーン舶来雑貨店のおやつ/山内尚(未読)
HER/ヤマシタトモコ(未読)
背筋をピン!と~鹿高競技ダンス部へようこそ~/横田卓馬(未読)
しまなみ誰そ彼/鎌谷悠希(未読)
ロミオとジュリエット/シェイクスピア(既読)
マカロンはマカロン/近藤史恵(既読)
めぞん一刻/高橋留美子(既読)
魔女の猫探し/別役実(未読)
魔人探偵脳噛ネウロ/松井優征(未読)
違国日記/ヤマシタトモコ(一部既読)
チェンジリング(映画)(未視聴)
ONE PIECE/尾田栄一郎(未読)
パタリロ!選集/魔夜峰央(一部既読)
鋼の錬金術師/荒川弘(既読)
ポケモン不思議のダンジョン救助隊DX(ゲーム)(未体験?)
オセロー/シェイクスピア(既読)
言語の七番目の機能/ローラン・ビネ(既読)
同志少女よ、敵を撃て/逢坂冬馬(既読)
ブラック・クランズマン(映画)(未視聴)
Posted by ブクログ
文字通りの内容を伝達するコミュニケーションと、言外の意味を伝達するマニュピレーションについて、漫画のセリフをたくさん引用して説明する本
無意識に使ってるテクニックを言語化してもらえた。
引用する漫画が筆者の好みで偏っている気がした…
でもそれはそれで漫画紹介になってていいような、、複雑
Posted by ブクログ
話し手と聞き手との間に“約束事”を形成する「コミュニケーション」。
相手の行動や心理を自分の望む方向へ誘導する「マニピュレーション」。
それぞれを分けて解説してくれているので、比較的理解しやすかったように思う。
漫画や小説、映画からの引用も多く、楽しく考えながら読み進めることが出来た。
高橋留美子の「君がいるだけで」の唐揚げ弁当注文のシーンを例にした“意味の占有”については、しばしば見かけた権力者への忖度などの理由が明確に言語化されたようで腑に落ちた一方で怖さも感じた。
何かを決定したり動かせる立場にある人は常に言動が与える影響を意識しないと
他人を利用して誰かを傷つけてしまう可能性があると肝に銘じておかねばならない。
また自分自身がそうした意味の占有の働きかけに利用されていないか、冷静に俯瞰することも大切だと感じた。
また、ワンピースの一場面を例にあげた倫理観と人情の葛藤は、
さまざまな作品を観る中で特に印象的な場面に多く登場しているのではないかと
振り返ってみて改めておもう。
(私はドラマSHOGUNのエピソード8の名場面を思い浮かべた)
Posted by ブクログ
帯に惹かれて買った。好きと言わないことで互いに何を伝えているのか。会話という誰にとっても日常的な行為の面白さと複雑さ。言葉の豊かさをより味わいたくなった。
・会話やコミュニケーションを論ずる哲学者はちょうどいいオリジナルの例を挙げている:それはだいぶ偏った例になる。映画や演劇や漫画や小説では様々な会話観がある。
・フィクション作品に「誠実」なコミュニケーションしか登場しなかったら飽きてしまう。人間的な魅力が発揮される部分。
・嘘だとわかっているコミュニケーションをすることで話し手の人情や切なさが現れる
・伝わらないとわかっているけどひょっとしたら伝わるかもしれない発言。伝えることの恐怖から伝わらないと分かっている伝達方法を選ぶ。それが伝わって欲しいという願いも、ある。
・死者への語りかけは、話し手が心の底から誠実に語っている言葉を描く演出。もはや約束事を形成することが叶わない相手とそれでも約束事を形成できたら、という祈りのような想い。
・マニピュレーションに対して責任を求めるときは言ったことを認めろという責任を問うのではなく、それによってどのような結果がもたらされるか・それを予見して発言したのか、を善悪の次元で問うべき。言説的責任と倫理的責任をしっかり区別する
Posted by ブクログ
マンガや小説といったフィクション作品の会話を事例として取り上げ、「会話」をコミュニケーションとマニピュレーションとに分けることで考察している。
本書においてコミュニケーションとは、前の発言を前提に次の発言がなされるという意味で「約束事を形成する側面」を指している。
またマニピュレーションとは、コミュニケーションを通じて相手に影響を与えようとすることを指している。
なかなか理解するのが難しい部分もあったけれど、フィクション作品の会話が事例として多数挙げられていて親しみやすさを感じるとともに、会話は本来自然なものなので、説明のためにテキストのような会話の事例が挙げられるよりも現実場面に近い自然さが感じられて良かった。
フィクションにおいてドラマチックに感じるやり取りの場面をコミュニケーションやマニピュレーションの視点で考察していて、そのドラマチックさが具体的に言語化されていたように思う。
また本書は、フィクションだけでなく現実でも出会う場面について考察されている。
特に印象的だったのは、コミュニケーションによってつくられた約束事を一方が都合のいいように捻じ曲げてしまうコミュニケーション的暴力、「意味の占有」の話。
日常生活で出会う場合もあるし、様々な社会問題にも通ずる部分があるように感じる。
「会話」というものを深く考察することで、フィクションのドラマチックさや日常で見聞きするようなモヤモヤを論理的に解説している一冊だった。
Posted by ブクログ
漫画や小説といったフィクションで展開される会話を例に、その会話の裏にある意味を「コミュニケーションとマニピュレーション」という視点で、哲学的に解説する一冊。
特に漫画についてはかなりメジャーな作品の会話も引用されているので、全部を読み切るのではなく、好きな作品の部分だけに絞って読んでも十分に楽しめる本だと思います。
「ここの台詞いいなぁ」とふわっと思った部分をめちゃくちゃ言語化してくれますし、それによってもう一層作品を楽しめるようになる、かもしれません。
Posted by ブクログ
日本の漫画のセリフを引用しつつ、会話というものが、単に情報をバケツリレーの用に右から左へ受け渡しているだけではないということ、先のセリフが後のセリフにどう影響してくるかという、積み重ねみたいなものが会話の根幹にはあるということを説明している。
当たり前と言えば、そうなのだが、無意識に成立しているお約束ごとを分析して説明するのは難しいのだ。
Posted by ブクログ
会話をコミュニケーション(約束事の成立)とマニュピレーション(聞き手の思考を操作)に分けて、その構造を探求している。
フィクションを題材でたとっつきやすい反面、マイノリティや差別に対する会話の危うさというところに論を進めており我身のことと鑑みて考えさせられる深さもある。アガサクリスティの章は作品未読のためネタバレ回避のため読み飛ばし。ここで手をとめて作品を読んでから戻ってきてなんてそんな殺生なー。
会話を単に情報交換や双方のキャッチボールとかいう捉え方は昔からあったけど、約束事というキー概念を軸に単に情報のやり取りでは収まらない会話の奥深さを知らしめてくれています。
自分では納得できていないことに行為を向けさせるための自分の中での会話、伝わらないで欲しいけど溢れる思いを誰かに聞いて欲しいという発散。それは一見して無意味に思われるかもしれない事象は、約束事という概念で重要なことであると認識改まる。
マニュピレーションとしての会話の論考をもう少し深く知りたかったなーという不完全燃焼感がある。そこは、最後の参考文献を頼りに興味関心広げていこうという、良いな契機をもらえたです。
Posted by ブクログ
大好きな作品がたくさん取り上げられていておもしろかったー!
特に中村明日美子さんの『同級生』!
会話の仕組みを知ることで大好きなシーンがもっと好きになりました。
他にも「仕組みはよくわからないけどこういう会話ってなんかかっこいいよね」って会話がなんでかっこいいかわかった気がします。
より登場人物の気持ちがわかるような解説も漫画好きとして楽しめました!
難しくて分からないところもあったけど、より漫画や本を楽しめるようになるかも。
作者さん漫画好きそうなので漫画のエッセイなんかも書いてみてほしいですね
Posted by ブクログ
「約束事の形成」としてのコミュニケーションと
「コミュニケーションを通しての操作」としてのマニピュレーション
マニピュレーションをそれと判定する仕方が気になる
Posted by ブクログ
コミュニケーションとマニュピレーション。会話が単に情報を伝達するものではない。というのが本書の主張である。
マンガなどの作品を引用している箇所が多い。できればそういうった作品を事前に予習(復習)してから本書に望むことが望ましい。というのもネタバレになっている。もしくはコンテキストを十分に堪能できない可能性があるからだ。
コミュニケーションの問題とはそもそも何か。それを知るには読んでおきたい。
Posted by ブクログ
会話の哲学?と思い読んでみました。会話は物理学では音の伝播ですし、発話に関して言えば医学的にも肺からの呼吸が整体を振るわし咽頭・鼻腔口腔で共鳴し口唇で調音し表出されると言えるかもしれません。では哲学の面からとは?
読んで面白かった。言語学にも似た観点があるので読みやすかった。サルプルがみんな知ってるマンガが多く、とっつきやすかったです。
私が一番ハッとしたのは言語的暴力の話です。暴言やモラハラとは違う、言葉の暴力的側面にハッとしました。なんとなく気がついているものの、言語的暴力と言われて、ストンと腹に落ちました。読んでとても良かったです。
Posted by ブクログ
日常的に行う会話という営みを、コミュニケーションとマニピュレーションという観点を持ち込んで捉えるとどういう見方ができるのか、解説してくれる。
いくつかのアニメや映画、などの登場人物たちの会話を分析する過程に、のめり込んでしまう。そして会話という行為の解像度が上がって楽しい。
哲学、という言葉がタイトルに入っていて読みづらいかと思ったら、全くそんなことない。読みやすさはここ最近読んだ本の中で一番だった。
会話の中でマニピュレーションは時に人を傷つけてしまう側面もある。コミュニケーションを曖昧にして約束事を後からすり替えられるようにしておくことは、話し手が圧倒的有利。しかもそれが何らかの差(権力など)がある関係で行われたら、聞き手側は泣き寝入りする傾向が多い。自分も無意識にこういったことをしていたかもしれない。
会話という行為を当たり前のように行い、会話について考えを深めないからこそ、会話をコミュニケーションとマニピュレーションという観点から認識を改めることができたのは面白かった。「そういえば会話って何だろう」と少しでも感じたら、読んでみてほしい。
Posted by ブクログ
コミュニケーションとは作中で言うバケツリレーのような形で
情報を受け渡すものだと考えていましたが、
共通の約束事を形成することだという見方は目から鱗でした。
確かに会話というのはただの情報のやり取りではなく
お互いに何かしら合意をすることなのだというような漠然とした
思いもありましたのでそれをうまく言語化してくれたような気がします。
具体的な作品の会話を分析してくれていますが
登場人物の心情などは分かりにくいものもなく
理解しているつもりだったところをちゃんと解説してくれることにより
理論的な裏付けを得られたみたいな感じです。
また、本の終盤ではマニピュレーションに関する話も出てきますが
悪意の無さそうな言動の裏に秘められた悪意を垣間見た気がして少し怖くなりました。
マイノリティに対して向けられたマニピュレーションというのは
恐ろしいものなのだなということも意識しました。
なお、著者が性的マイノリティということもあり、
LGBTの話が前半から多めな印象を受けました。
ただこういう著者の背景があるからこそコミュニケーションに関する
緻密な分析にも繋がったんだろうなとも思いました。
Posted by ブクログ
漫画や小説の会話を取り上げて解説しているのだが、LGBTの内容だったり殺人事件だったりなど、特殊ケースな会話すぎて現実味がない。
第一章のコミュニケーションとマニピュレーションの違いは面白かった。コミュニケーションは約束事の構築、マニピュレーションは心理や行動の操作が目的。
漫画の引用がかなり多いので目には優しい。
Posted by ブクログ
文体や取り上げる題材が個人的に合わなかったので4章くらいまでで読むのをやめてしまいました。
コミュニケーションは約束事の積み重ねという考え方を知ることができたのはよかった。
Posted by ブクログ
本や漫画を紹介しながら、その会話のシーンを抜き取って「会話に潜む真意」「他者と形成していく文脈」に迫る本。その解説も興味深いが、何より書評本のような感じで登場してくる漫画や本にも興味が向く。藤子不二雄のウルトラスーパーデラックスマンが面白そうだなとか、ワンピースのこのシーンは懐かしいなとか。『同志少女よ、敵を撃て』も読まねば。
会話における「マニピュレーション」。会話を通じてひとは誰かの心理や行動を操作しようとすることで、単なる「コミュニケーション」とは異なる概念として著者は紹介する。その譲り合いや探り合いでも会話は進行していく。
〝誰かの心理操作“とは、自らや事象の印象操作と言っても良いはず。自分自身をよく見せたい、この話を深刻に捉えて欲しい、笑いや楽しみ、悲しみなどの感情を分かち合いたい。情報の共有だけではなく、「相手の感情に働きかけたい」というのが会話の本源的動機にあり、そのチャレンジの蓄積が会話から生まれる互いの約束ごととされていく。
ダラーっと読んでいたが、本書で紹介される漫画に「同性愛」を取り上げたものが多い事に気付く。著者はトランスジェンダーである事を公言しており、シスジェンダーとは異なる感性があるのだろう。不思議な感覚で読む。
何より「表面的な印象と、実際の中身が異なる」、つまりこれは記号であるはずの言語やそれを用いた会話もそうだが、人間自身の属性や見た目もそうなのだ。だからこそ〝真意と文脈“に対し、アイデンティティにギャップを感じる人は繊細な感性を示すのではないだろうか。
権威と実力、欺瞞と本心、建前と本音、欲望と抑圧、真意と表層。このギャップこそ、会話の両極にある揺らぎの源であり、関係性ゲームの本質だという気がした。そんなダラーっとした読書。
Posted by ブクログ
様々な作品に登場する会話を哲学的に捉えるという、初心者にも分かりやすそうな内容で気になって読んでみた。
会話には大きくコミュニケーションとマニピュレーションという働きがあると見ることができるそう。
コミュニケーションは言語化されたやりとりを通じて互いの間に約束事を形成すること。
マニピュレーションは言語化(約束事を形成)せずに相手に何かしらの影響を与えること。
様々な作品に登場する会話を具体例に、この観点で考察を深めていく。
分かりやすいとは思いつつ、当たり前のことでもあるように感じで、それなのにわざわざなんでこんな風に会話を捉え考えようとしてるのか、途中まではその意図を汲みきれずにいた。
読後、そもそもこの本を手に取ったときのことを思い出していた。
何となく会話やコミュニケーションに対して苦手意識を持っていたからで、会話を通じてどこがどう嫌だったのか居心地が悪かったのかを言語化できずにモヤモヤしていたからだった。
この本はまさにそういったモヤモヤを言語化する手助けになると思った。
会話で起きている現象をコミュニケーションとマニピュレーションの2つの層から整理してみると、そこで起きたことを分析しやすくなりそう。
自分の身を守ることにも繋がるだろう。
会話の正体が明確になれば対策もしやすくなる。
気付きを得られる良い入門書だった。
もう少し骨太でも良かったけど、他の書籍もあたって深めていこうと思えたのでよしだと思う。
Posted by ブクログ
Audibleにて 。
面接をこういった2つの側面から見たことはなかったので、なかなか斬新であった。
比喩には、考えを促すというブースターとしての機能もあるのだな。マニピュレーションという視点で見ることで、自分の発話パターン、その意図がよく理解できた。
ある記者会見を見て…
言った言わないではなく、そのような発言(問いかけだったとしても)の裏にどういうマインドセットがあるかを問題にすべきというのは重要なポイントだ。
また、李下に冠を正さず…紛らわしい発言をしないことも重要だろう。
自分の発言がどこから生まれ、そして受け取られ方を含め、どのような影響を及ぼすか、こういった幅のある視点でもって自らの言動を律することが必要だ。臨床場面では特に。