【感想・ネタバレ】会話を哲学する~コミュニケーションとマニピュレーション~のレビュー

あらすじ

私たちは会話を通じて何を伝え、何を企んでいるのか。あるいは相手の心理や行動にどんな影響を及ぼそうとしているのか。気鋭の言語哲学者が、『ONE PIECE』や『鋼の錬金術師』などの人気のフィクション作品を題材に、「会話」という営みを徹底分析! コミュニケーションとマニピュレーションという二つの観点から、会話という行為の魅力と、その実態をわかりやすく解き明かす。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

面白かったです。

コミュニケーションとマニピュレーション

会話とは影響の与え合いであり約束事が作られ、会話が続くと約束事が積み重ねられていく

著者は

コミュニケーション…発言を通じて話し手と聞き手のあいだで約束事を構築していくような営み

マニピュレーション…発言を通じて話し手が聞き手の心理や行動を操ろうとする営み

この2つを区別して、コミュニケーションとぴったり合った「誠実な」マニピュレーションだけではなく、ずれをもった「不誠実な」マニピュレーションも小説や漫画を用いて解説。

マニピュレーションのまったくない会話はつまんないだろうなぁ。でもフィクションを読んでると口が立つ不誠実なマニピュレーションをする登場人物のことはなかなか好きにはなれない(笑

取り上げられた作品、『言語の七番目の機能』があったのが驚き

勝手にふるえてろ/綿矢りさ(未読)
同級生/中村明日美子(未読)
うる星やつら/高橋留美子(一部既読)
ウルトラスーパーデラックスマン/藤子不二雄(未読)
オリエント急行の殺人/アガサ・クリスティー(既読、のはず)
金田一37歳の事件簿/天樹征丸原作(未読)
マトリックス(映画)(未視聴)
クイーン舶来雑貨店のおやつ/山内尚(未読)
HER/ヤマシタトモコ(未読)
背筋をピン!と~鹿高競技ダンス部へようこそ~/横田卓馬(未読)
しまなみ誰そ彼/鎌谷悠希(未読)
ロミオとジュリエット/シェイクスピア(既読)
マカロンはマカロン/近藤史恵(既読)
めぞん一刻/高橋留美子(既読)
魔女の猫探し/別役実(未読)
魔人探偵脳噛ネウロ/松井優征(未読)
違国日記/ヤマシタトモコ(一部既読)
チェンジリング(映画)(未視聴)
ONE PIECE/尾田栄一郎(未読)
パタリロ!選集/魔夜峰央(一部既読)
鋼の錬金術師/荒川弘(既読)
ポケモン不思議のダンジョン救助隊DX(ゲーム)(未体験?)
オセロー/シェイクスピア(既読)
言語の七番目の機能/ローラン・ビネ(既読)
同志少女よ、敵を撃て/逢坂冬馬(既読)
ブラック・クランズマン(映画)(未視聴)

0
2025年12月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

話し手と聞き手との間に“約束事”を形成する「コミュニケーション」。
相手の行動や心理を自分の望む方向へ誘導する「マニピュレーション」。

それぞれを分けて解説してくれているので、比較的理解しやすかったように思う。
漫画や小説、映画からの引用も多く、楽しく考えながら読み進めることが出来た。

高橋留美子の「君がいるだけで」の唐揚げ弁当注文のシーンを例にした“意味の占有”については、しばしば見かけた権力者への忖度などの理由が明確に言語化されたようで腑に落ちた一方で怖さも感じた。
何かを決定したり動かせる立場にある人は常に言動が与える影響を意識しないと
他人を利用して誰かを傷つけてしまう可能性があると肝に銘じておかねばならない。
また自分自身がそうした意味の占有の働きかけに利用されていないか、冷静に俯瞰することも大切だと感じた。

また、ワンピースの一場面を例にあげた倫理観と人情の葛藤は、
さまざまな作品を観る中で特に印象的な場面に多く登場しているのではないかと
振り返ってみて改めておもう。
(私はドラマSHOGUNのエピソード8の名場面を思い浮かべた)

0
2025年09月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

コミュニケーションとマニュピレーション。会話が単に情報を伝達するものではない。というのが本書の主張である。
マンガなどの作品を引用している箇所が多い。できればそういうった作品を事前に予習(復習)してから本書に望むことが望ましい。というのもネタバレになっている。もしくはコンテキストを十分に堪能できない可能性があるからだ。
コミュニケーションの問題とはそもそも何か。それを知るには読んでおきたい。

0
2024年06月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

コミュニケーションとは作中で言うバケツリレーのような形で
情報を受け渡すものだと考えていましたが、
共通の約束事を形成することだという見方は目から鱗でした。
確かに会話というのはただの情報のやり取りではなく
お互いに何かしら合意をすることなのだというような漠然とした
思いもありましたのでそれをうまく言語化してくれたような気がします。

具体的な作品の会話を分析してくれていますが
登場人物の心情などは分かりにくいものもなく
理解しているつもりだったところをちゃんと解説してくれることにより
理論的な裏付けを得られたみたいな感じです。

また、本の終盤ではマニピュレーションに関する話も出てきますが
悪意の無さそうな言動の裏に秘められた悪意を垣間見た気がして少し怖くなりました。
マイノリティに対して向けられたマニピュレーションというのは
恐ろしいものなのだなということも意識しました。

なお、著者が性的マイノリティということもあり、
LGBTの話が前半から多めな印象を受けました。
ただこういう著者の背景があるからこそコミュニケーションに関する
緻密な分析にも繋がったんだろうなとも思いました。

0
2023年12月29日

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