齊藤正高のレビュー一覧

  • 円 劉慈欣短篇集

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    全13遍の短編集。本当に読み終わりたくなかった...涙

    デビュー作「鯨歌」はデビュー作なわけないだろってくらい既に仕上がってる。「郷村教師」は偶然が重なって農村の幼い子供達が受けた教育が地球を地球外生命体の破壊から救うんだけど、人類の歴史の中で培った科学や文明を今の世代が知っていることがどれだけ大切かわかりような気がした。「詩雲」もすごいね...。神が詩を気に入っちゃって、膨大なリソースを戦争とか征服のためじゃなくて、全ての漢詩(とくに五言絶句や七言絶句)を発見することに投じられるロマンに痺れた。
    「栄光と夢」は収録作の中で一番好きだった作品。教科書に載せることを強く勧めたいくらい考えさせられる話だった。富める国と貧しい国の間では倫理水準で合意得られるはずないよね。だから武力になるんだけど、だって今日1日の命や食糧すら危ぶまれる状況でオリンピックで決着つけようや、は先進国の傲慢とご都合主義が過ぎてグロかった。読みながら吐きそうなったの初めてかも。
    「円円のシャボン玉」は劉慈欣先生がよく書いてるテクノロジーで天気操っちゃう系で発送が純粋に面白かった。娘ぶっ飛んでてよかった。
    「月の光」もすごい。結局何も起こらないんだけ地球の未来がほとんど2回変わってる壮大さがすごく短い話に圧縮されてて、読後感の置いてけぼり感が心地よかった。「円」は「三体」一部の人間計算機が別の文脈で再現されててファンにはたまらない話。「三体」だと次いつ安定期が訪れ、いつ混沌期が来るかを予測するシミュレーターだったけど、今回は円周率の計算用途で真の軍隊が総動員してた。

    SFって読んだ瞬間現実の見え方が変わるから読むことによって得るものが大きい。
    最近よく空見るようになったし足元の蟻とかもよく見るようになった。

    0
    2026年06月21日
  • 風起隴西 三国密偵伝

    Posted by ブクログ

    長かったが、面白かった。
    スパイ、と一言で言っても、敵地に潜入する者もいれば、自国に潜入したスパイを探し出す者もいるなど、色々なパターンがあり、それぞれの大変さがある。
    しばらくはミステリーというよりスパイもの、ではあるが全体を通じて燭龍は誰か、という謎はあり、最後の謎解きはまさにミステリー。

    三国志の時代だが劉備は亡くなっており、劉璋の時代。孔明は生きており、存在感がある。ただ有名人はそんなに多く出てこないので、三国志知らなくても楽しめると思う。

    中国の人の名前や固有名詞が最初中々入らなかったが、2段組で500ページもあれば慣れる。登場人物名の入った栞があるのも助かる。

    映画とかになりそうと思っていたら、すでにドラマ化されているようで。(とはいえ、結構ストーリーとか違うようだが)

    0
    2026年05月18日
  • 西遊記事変

    Posted by ブクログ

    2026.1 西遊記をモチーフにしたお仕事物語、という何ともユニークな小説。作家が縦横無尽に好きなように書き殴ってっている(?ちょっと失礼な表現か)が、そこが面白い。訳者の力量もあるのでしょう。頭の中に夏目雅子や堺正章、岸部シロー、西田敏行を描くとうまくマッチしないのでそのイメージはクリアして読み進めました。
    今後 寺で仏像を見ると思わず微笑んでしまいそうです。

    0
    2026年02月18日
  • 風起隴西 三国密偵伝

    Posted by ブクログ

    出会いはNHKで放送された中国ドラマ『三国志外伝 愛と悲しみのスパイ』だった。このドラマがとても良くて、原作を読みたいと思ったのだ。
    1ページが2段構成の521ページ。あとがきを読んだら、「二十数万字」(漢字で?)とあったから、ボリューム満点。
    それにも驚いたが、もっと驚いたのは、ぜんぜんドラマと違う話だったってこと。ふつうドラマの原作と言ったら、まあ、多少の違いはあれど同じストーリーだよね。それが、同じなところは登場人物の名前(コードネームが違ったりはする)と中国三国時代の蜀と魏のスパイの話ってところかなあ。
    ドラマと原作がこんなに違ってしまって作者はどう思っているのだろう?と心配になってしまったが、訳者のあとがきを読んだら、

    映像化は非常に専門的な領域で小説を書けることがドラマを撮れることではありません。だから、じゅうぶんに専門の方々を尊重し、彼らに創作の自由を与えたいと思います。

    訳者あとがきより
    というインタビュー記事の中の作者の言葉が載っていたので、了解済みなのねと安心した。
    それにしても、あまりの変貌である。
    でも、どちらもとてもおもしろく、2度楽しめた感があるので、読者としてはラッキーと言えるのかも。

    冒頭、陳恭(ちんきょう)が『白帝』でないってところから、あれれ?となり、どこまで読んだらドラマとつながるのか?と思っていたら、いつまでたってもつながる気配がない。笑
    私としては、もう少し陳恭にも活躍して欲しかったけど。
    一方、主人公の荀詡(じゅんく)についてはドラマより若干暴れん坊っぽかったけれど、一番差異が少なかったキャラクターかも。まあ、主人公が違っちゃったら、さすがにどうなの?ってなっちゃうよね。
    ストーリー的には、スパイの話なのでハラハラドキドキはもちろん、最後のところで、いやあ、そうだったのか~っていう着地。すばらしい。

    ドラマの方は、小説にはない恋愛要素もあり、女性にも楽しめるかな。
    それに、映像と音楽が素晴らしく良くて、DVDも買ってしまった。

    まだ読んでない観ていないという人には、とてもオススメしたい2作品だ。

    あ、そうそう、もう一つ驚いたこと。
    小説の作風に似合わない、あとがきの文体。
    馬伯庸さん、ちょっと面白そうな人である。

    0
    2026年01月29日
  • 風起隴西 三国密偵伝

    購入済み

    ミステリ好き、三国志好きは是非

    同じ作家の「両京十五日」が面白かったので、期待してましたが最高でした!
    今回は「三国志」の時代、蜀と魏の連弩の設計図を巡っての密偵同士の駆け引きから、中盤の友好国・呉での諜報戦、スパイ・燭龍の正体を巡る駆け引きと最後まで飽きさせない展開、そして驚愕の真相……!と最高の読書体験でした。
    密偵・諜報機関の人物が主役ですが、三国志の英雄達も登場し、ファンも楽しめる作品です。

    #ドキドキハラハラ #深い #憧れる

    0
    2025年11月04日
  • 風起隴西 三国密偵伝

    Posted by ブクログ

    三国志✕スパイ小説✕馬伯庸

    はいもう面白いー
    はいもう★5ー

    という期待に違わぬ面白さでした
    まーさんやるなー

    そもそも『三国志』が大好きなんでね
    ずるいわ〜『三国志』にスパイ小説ねじ込むてずるいわ〜

    史実と史実の間にちょうどよくフィクションという名の妄想をねじ込む度合いがかなーり絶妙
    ずるいわ〜

    でもって諸葛孔明先生ですよ
    舞台は劉備亡き後の諸葛孔明の北伐のあたりなんだけど、魏延と楊儀がめちゃくそ仲悪いとことか、李厳が平民に落とされた事件とかマニア必涎のエピソードに絡めて蜀漢と魏の諜報戦が展開

    でもって諸葛先生が超かっこよくてずるい
    わい大好きな姜維もしゅっとしててずるい
    一番好きな費禕は出てなくてずるい

    ちぃ〜と粗はあったけど、ぜんぜん許せる範囲でした

    次は何を舞台に書いてくれるんか楽しみ

    0
    2025年11月02日
  • 風起隴西 三国密偵伝

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    両京十五日ですっかり気に入ってしまった馬伯庸の新作で、三国志の後期の史実を背景に、蜀と魏のスパイ大作戦が繰り広げられる。ただしアクション要素は少なく、自国に潜入したスパイを知的に探すミステリ的展開が主で、最後の首謀者判明に至るまでとても面白く、一気に通読できる娯楽作品となっている。多彩な登場人物の構図と中国の土地・風土の把握が導入のネックになるけど、最近よく入れられているハヤカワの人物表の栞(でかいけど)が大変役に立つ。好みとしては両京の方だけど、本作も良く、とてもおすすめ。どんどん翻訳が進むことを願う。

    0
    2025年10月07日
  • 風起隴西 三国密偵伝

    Posted by ブクログ

    ★5 三国志の魏と蜀の境界線、漢中郡の隴西における間諜たちの戦いの記録 #風起隴西 #三国密偵伝

    ■あらすじ
    中国は三国時代が舞台。蜀の間諜である陳恭は、情報を盗むために魏に潜入していた。彼は魏の反諜機関の追手を掻い潜り、さらに魏にも間諜がいることを知る。

    魏は先の戦で蜀の兵器連弩に軍隊を壊滅させられており、連弩の設計図の略奪が懸念されていたのだ。陳恭から情報を得た荀詡は、機密を守るために奔走する…

    ■きっと読みたくなるレビュー
    ★5 三国志のスパイ小説、もうこの設定だけで優勝ですよね~

    私と三国志の出会いは横山光輝のマンガ、大学生の頃でした。それまで時代ものなんて全く興味なかったのですが、友人に勧めらて手に取ってみると、まぁ面白いのなんのって。全60巻を立て続けに読んだ記憶があります。

    そんな三国志の魏と蜀の境界線、漢中郡の隴西における間諜たちの戦いの記録です。

    本作は主に二人の目線で物語が進行、ひとりは魏に潜入中の蜀のスパイ陳恭(ちんきょう)。もうひとりは蜀の反諜機関に従事する荀詡(じゅんく)。

    どちらも知略に富んだ人物であるんですが、常に差し迫る敵に追われ、上官からは難題を課せられ、ずっーーとスリリングな展開にヒヤヒヤしっぱなしですよ。また書きっぷりがエンタメなんすよねー、ほんと上手でぐいぐい読んじゃう。

    潜入中の陳恭が大変なのは理解できるのですが、むしろ反諜機関の荀詡のほうがめっちゃ大変なんです。魏のスパイを見つけるべくギリギリの攻防をするんですけど、もうこれハリウッド映画ですね。手に汗握るとはこのこと!

    さらに後半には燭龍なる宿敵が現れ、蜀がえらいことになっていくのです。個人的には、この後半のストーリーが大好きでして、ぜひじっくりと読んでみて下さい。魏のスパイから自国を守るため、いわゆる防諜するべく荀詡が奔走するんです。

    地味に地味に情報を積み上げて、少しずつ謎に近づいていくんですが、このプロットがぶ厚すぎんのよね。胃の底にガツンと来る読み応えがたまらない。もちろん終盤にかけては海外ドラマみたいにパワフルで、まさしく一気読みでした。

    三国志ファンはもちろん、スパイものや海外ドラマが好きな方にもおすすめですね。また映像化もされてるようで、こちらもチェックしたいと思います!

    ■ぜっさん推しポイント
    酒場の娘、柳瑩(りゅうえい)のくだりがエモくって好きですね~、高堂秉(こうどうへい)との会話が初々しいんですよ。ヒリヒリする物語の中で唯一ほっこりするシーン、特に本作は女子の活躍が少ないので際立ちますね。

    人間を信じるか疑うかの狭間で生きているスパイ、同僚や仲間同士の人間ドラマも深く描かれます。現代社会でも人間関係は大切ではありますが、人を信じることの重要性と意味合いをよく理解しないといけないと思いました。

    0
    2025年10月02日
  • 円 劉慈欣短篇集

    Posted by ブクログ

    SFの短編集は初だったが、読みやすくて面白くてよかった。
    好きなのは、郷村教師、繊維、詩雲、円円のシャボン玉、月の光、人生、円。多いな…(笑)。
    上位の知性が登場する話が好きだ。

    0
    2025年08月06日
  • 円 劉慈欣短篇集

    Posted by ブクログ

    三体が面白すぎたので、劉慈欣短編集も読んでみた。全13遍漏れなく面白かったけど、印象深かったの作品は以下の通り。三体のモチーフにもなってる作品もあるから、好きな人は是非読んでほしい一冊。
    郷村教師…あとがきでも触れてたけど、広大な宇宙と小さな個体の描き方がえぐい。2つが交わった瞬間は痺れた。
    カオスの蝶…バラフライ効果の意味は知ってたけど、それが物語になるとこんなに面白いのかと。
    詩雲…これがダントツ好き。テクノロジーが芸術を超越することはないというのがよく分かって痛烈。
    栄光と夢…2国間オリンピック。ありそうで怖い笑
    月の光…何度も歴史が動いたようで結局何も起きてないのが面白い。1エンジニアとして、化石燃料依存を救うアイデアが面白かった。

    0
    2025年06月11日
  • 円 劉慈欣短篇集

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    中国の方である劉慈欣が描くSF短編集。『三体』も文庫化されたらすぐ書いたいと思う。「鯨歌」「詩雲」「円」が特に面白かった。

    「鯨歌」鯨にチップを埋め込むことにより外部からの制御ができるようになった世界。その技術を利用して薬物の密輸をするマフィアとその技術者。密輸自体は成功したものの密猟者たちによって鯨が狩られて2人とも死んでしまうというもの。新旧の価値観の皮肉が描かれていた。

    「地火」石炭労働をメインとした話。技術革新により炭鉱夫の仕事が楽になるはずであったが、技術を過信しすぎたために自然にやられてしまう。父親と局長の言葉が刺さった。

    「郷村教師」中国の農村地で一生を終えようとしている老教師。周りから変な目で見られても彼は農村地の少年少女たちに学問を教えることをやめなかった。一方で、天の川銀河の中心地では超高度に栄えた文明があった。彼らは宇宙間戦争で疲弊しており、新たな火種が生まれないように宇宙を整理しているところであった。
    老教師の最後の教えが、地球を救うことになるというのが、教育の大切さを説いており、また、超高度文明の人たちが純粋さ、素朴さに気付いたのも作者が伝えたかったことなのかな。

    「繊維」量子力学に基づく平行世界がたくさんあり、その世界が一堂に介してしまう話。いろんな地球の色があったり、同じだが違う人がいたりと面白かった。

    「メッセンジャー」アインシュタインの過去を元にした話。彼が未来の人と交信した、という話を元にしているのだろう。

    「カオスの蝶」バタフライ効果を解明し、一種の気象兵器として用いる話

    「詩雲」高度に発展したテクノロジー文明に飲み込まれた地球文明。その高度に発展したテクノロジーよりも発展したテクノロジーを持つ神との邂逅。精神的な文化はテクノロジーによって越えることはできない、と伝えてている。将棋などのAIの進化も一手の評価は教えてくれるが、全体としての評価や価値は教えてくれない、というのと似ている。

    「栄光と夢」オリンピックが戦争の代わりになった世界。競技での勝利が戦争の行方を左右するというもの。1人のアスリートにより国が一つにまとまるも、競技での勝利が戦争での勝利という勝者の理論には響かず、泥沼化していってしまう。

    「円円のシャボン玉」シャボン玉が好きで美しいと感じる円円が科学者となってシャボン玉によって街を救う話。他に比べて暖かい話だった。

    「2018年4月1日」改延という遺伝子的な延命ができるようになった時代にその手術を受けるという決断をした主人公の話。IT共和国なるものが建国され、実社会に宣戦布告をした。が、これはエイプリルフールのネタであった。この話のどこまでが虚実なのかがわからないのが、この話の面白さなのだろう。

    「月の光」未来の自分から科学のアドバイスをもらうもそれを実行に移そうとすると、さらなる悲劇的な未来になってしまう話。最初に呈示されたせんたくしがやはりベストだったのかもしれない。それを知るためには、他の時間線を旅するしかない。どんな決断にも後悔があるというこれが真理であろう。

    「人生」前世の母親の記憶を持った胎児と母親と研究者が会話をする話。『ドグラ・マグラ』の胎児の歌のような話に感じた。

    「円」円周率には不老不死が宿っているとされるため、秦の始皇帝により、円周率を求めよ命令される。人間を使って0と1の二進法によって円周率を求めようとする。それは、コンピュータの先駆けであったが、人間コンピュータにも裏があったという話。

    0
    2025年04月28日
  • 円 劉慈欣短篇集

    匿名

    購入済み

     

    面白かった。
    独特の発想から作られる短編たちに圧巻されてた。
    三体の元になったであろう要素がちらほらと見れて楽しかった。

    #ダーク

    0
    2025年03月02日
  • 西遊記事変

    Posted by ブクログ

    ほへ?このミステリーがすごい!2024年1位の馬伯庸さんだよ?ぜんぜん登録数伸びひんなーと思ってたんよね

    うん、これは読む人を選ぶわ

    中国神話、道教、仏教、西遊記の基礎知識がある程度ないと楽しめない
    その代わりある程度あるとめちゃくちゃに面白い

    なのでこの作品の面白さを伝えようとしたら少なくとも道教あたりことも書かないとダメだと思うのね

    うん、でもそんなんめんどくさくてやってられるかー(╯°□°)╯︵ ┻━┻

    西遊記の世界を描いているのに、めちゃくちゃ現代をはめ込んでるところが風刺が効いてるのね
    完全にお仕事小説

    ちゃんとした『西遊記』も読みたくなってきたなー

    0
    2025年02月11日
  • 西遊記事変

    Posted by ブクログ

    私好み。非常に面白い!…故に人にはお薦めするのが難しい(笑)

    物語は西遊記のスピンオフ…というより『裏事情』を描いたもの。仙人の李長庚(太白金星)は仏門の観音大士に助力する仕事を受ける。それは天竺に向かう三蔵法師に課す八十一の難行を企画立案する仕事だった…。

    この作品、現代的な視点で読み解いても面白い。太白金星と観音大士は、それぞれ『仙界』と『仏門』からなる合弁会社で一大プロジェクトを任されたプロジェクトリーダーのような存在。二人とも事の成否が取締役昇進に関わっている…という感じ(だから観音も『菩薩』じゃない)。太白金星は長年の勤務の末にやっとここまで来たのに、観音大士は若くてやり手の女性リーダー。二人が連携する手段もメールやスマホを彷彿とさせる。よく出来てる。

    しかしこの作品、以下の2点で一般向けとは言い難い。
    ①"本物の西遊記"を読んでいないと、大半のエピソードは理解できない。
    ②西遊記は短いもので上下2冊、長いものは文庫10冊と、読み通すのが大変。(児童向け簡略版ではエピソードも登場人物も大幅にカットされてるため。ましてや堺正章や香取慎吾のTV版ではそもそもの設定が違う。例:沙悟浄をカッパだと思っていると本作の内容が意味不明。カッパではない)
    …更に欲を言えば、西遊記の成立過程なども理解していると分かり易い。西遊記は『中国のお坊さんが、強い弟子を連れて妖怪を退治しながらインドまで行ってお経をもらって来る話』という仏教視点だけでは出来ていない。実は『道教』の視点が本丸のような、複雑怪奇な構成だ。(著者もそこに着眼して"お仕事小説"のようにしている。上手い)

    いずれにせよ、素晴らしい出来です。
    特に、本書のタイトルを『西遊記事変』とした翻訳が上手い。(原題「太白金星有点煩」では、何の話かピンと来ない人が大半でしょう)
    そして表紙画に月岡芳年(つきおかよしとし1839〜1892)の『悟空吹毛図』をもってきたセンスも良い。写生を重視し、"最後の浮世絵師"と呼ばれた芳年の絵は、"日本人の感性に合った悟空の姿"を活写していると思いますが、どうでしょう。

    0
    2025年02月08日
  • 円 劉慈欣短篇集

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    ずっと気にしていた『三体』の作者の短編集ということで、一目見るなり購入し、家で順番待ちしている本をかなり飛ばして読みはじめた。

    訳者のあとがきによると、本書は原著となる短編集は存在しないものの、収録作品は著者側で選考したものだそうだ。
    そのため、訳者や日本の編集者の意向は含まれておらず著者の趣向に近い作品集になっているようだ。
    1999年掲載の処女作から2014年発表の表題作『円』まで13篇を掲載年代順に載せている。

    1つ目の作品は「ぼちぼちだな」と思った程度だったが、
    2つ目の短編を読み終えた時点で「あぁ、これ只者ではないわ」と感嘆した。
    SFだけでなく、作家としての文章が優れている。翻訳の上手さももちろんあるのだろうが、それを差し引いても臨場感が素晴らしかった。あとがきを読むと、この『地火』には著者の生い立ちが多分に含まれているようだが、筆致の凄まじさに納得するとともにそれでも著者の力量を感じられた。

    途中までは「地球上の狭い地域での出来事を現代科学のちょっと先の技術で」というテイストの話が多かったが『詩雲』では激変。
    それまでとは大きく異なり、現代とは遠く離れたレベル、未来のSF設定と中国古代の漢詩を合わせる。それだけでも面白い発想だが、すべての組み合わせを試し全ての詩、最高の詩を科学で作るという試みも面白い。「これは傑作だ」と思った。
    この『詩雲』以降は再び地球上での物語が続くが、扱うテーマが全球的な問題へとスケールアップしており、物語内での時間変化も大きくなり、作品の時空間的な厚みがグッと増している感じがした。
    また、後半の作品群では、別の作品で是とされたものが次の作品では否定的に扱われること(ex. 『円円のシャボン玉』と『月の光』の太陽光発電技術)もあり、一つの技術に対しても多面的な設定の検討をしているようで面白かった。

    表題作の『円』は最後に収録されている。
    荊軻による始皇帝の暗殺未遂をモチーフに、コンピュータ(電子計算機)の原理を融合させるという非常に驚かされるアイディアの作品だった。
    この『円』もそうだが、後半(2000年代後半以降)の作品達は、前半(2000年代前半発表)の作品群で使われたSF的アイディアを複合させたりブラッシュアップさせたりという部分が見られ、より洗練された感じがする。これはネタ切れというより、荒削りで実験的であった初期のアイディアを上手く扱えるようになっている感触で、好意的に受け止められた。

    個人的には4作目の『繊維』の設定が面白く、印象的だった。この作品を読んだせいで、各作品間でSF設定が相矛盾しても何も感じないどころか「遠い"繊維叢"なんだな」と納得する始末で、劉慈欣作品ならどんな設定が来ても楽しめそうである。

    本書を読んでいて漢字の文化圏で良かったと思うことが何度もあった。
    周の文王(: 儒教でよく目標にされる聖人の一人、太公望を見出した人物)や、李白、荊軻、始皇帝といった固有名詞だけでなく、『詩雲』で読み上げられる有名な漢詩を知っていることと、その味わいも(ネイティブには遠く及ばずとも)感じることが出来る。
    同じ内容でも英語で書かれていたら絶対に同じ感覚は味わえないと思う。漢詩の形態のシンプルで規則的な美しさも、ごく短い文字数に極めて情緒豊かな表現を組み込めることへの驚きも、1つ1つの漢字(:表意文字)から浮かぶイメージや読んだ際の韻も、漢字を日常的に使っているからこその味わいだろうなと思った。

    SF的な仕掛けは、著者がコンピュータ技術者ということもあり、機械工学、物理学的なものが多いが、環境工学、バイオサイエンス的なものもあり多彩。
    物語の作りも含めて、13篇を読んで「またこれかぁ・・」と思うものはない。

    「登場人物が(神の目線では)正しいことを懸命に行うも、志果たせず、報われず。しかし、個人としては上手くいかなかったけれど大勢には一定以上(ともすれば英雄的な)の影響を与える」という形態の話が多い。主人公の悲劇的な扱いは、なんとなく日本の近代文学を思い起こしたのだが、これは著者の作風なのだろうか?それともこの短編集の選考によるものなのか?
    ・・と思って読んでいたのだが、文庫版に収録された著者のインタビューで個から宇宙へつながる関係を物語として描こうと意識している旨が記されていた。
    後半の作品では、個としてのバッドエンドは弱まった印象があるが、他の作品はどうなのだろうか。『カオスの蝶』などは物語中盤以降の主人公の境遇が気の毒すぎてページをめくるのがつらくなったので、全体としてはグッドエンドでも個別のキャラクターが不幸になりすぎる物語ばかりだとちょっとイヤだなと思っている。

    巻末の『訳者あとがき』は著者の来歴が記されている点も良いが、作品に対する愛や感動が込められている文章も良かった。

    0
    2024年05月01日
  • 円 劉慈欣短篇集

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    『三体』で著名な劉慈欣のSF短編集。
    風刺とユーモアに溢れた作品群で、作品によっては辛辣なところもあるけれど、それらの底には、人間の営みや知性、芸術への憧れが流れていると感じさせる。
    『郷村教師』『詩雲』などは特に、良い意味でロマンティックな作品だとさえ思う。

    『三体』は未読なので、そちらも今後読んでみたい。

    0
    2024年03月19日
  • 円 劉慈欣短篇集

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    地火
    業務用スーパーの社長が地熱発電やってるけど大丈夫??

    郷村教師
    最後の最後で救われた。
    「今は理解出来なくても暗記しとけ」

    詩雲
    太陽系を潰してまで作った詠詞データベース。取り出し方がわからないってそんなの作る前から予想つくでしょ!? 呑食帝国が気の毒。

    栄光と夢
    泣けた…

    人生
    記憶の遺伝

    円
    「三体」で1番好きなエピソード。
    荊軻のラスト、「チ。」を思い出した。

    こういう短編集、もっと読みたい。

    0
    2024年03月08日
  • 円 劉慈欣短篇集

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    『地火』
    なんとか映像化してほしい作品。
    中盤からもう絶対大変なことになるんだろうな…と思ったら想像以上に大変なことになって興奮した。地火が爆発した時の表現がおそろしくて良かった。
    劉慈欣作品はやらかしたキャラクターが必要以上にしっかり報いを受ける傾向にある。三体の程心をのぞいて。

    『郷村教師』
    解説にもあったが、藤子・F・不二雄のSF短編集を彷彿とさせた。なんか終盤やけに宇宙人が地球の美しさに感動してて地球ホルホルか?と思った。

    『カオスの蝶』
    カオス理論はSFの切り口としてはかなりベタなんだろうけど、目まぐるしく変わる舞台とスリリングな会話の緊張感で楽しく読めた。“著者付記”が誠実で良い。初めて見たこんな注釈。

    『詩雲』
    この短編集の中で1番好きだった。
    Gパンパンダのコントの中で575の俳句のパターンを全部網羅するネタがあるけど、それと発想自体は同じ。俳句に関しては実際にジェネレータが作られていたが、使う文字が漢字になるとここまで壮大な話になるのか…と絶句した。
    なんか恐竜ずっとかわいそうで面白い。
    全パターンの漢詩を作ろうっていう発想は根本的に詩の情緒を解せていないような気がして、それがおかしかった。

    『栄光と夢』
    スポ根。主人公の少女も良かったけど、射撃せずに会場を後にしたヤリク・サリが最高だった。こういう脇役がメインテーマとあまり関係ないところで理知的な判断をする展開好きすぎる。娼婦に堕ちたと見せかけて1番アツかったライリーも好き。

    『円』
    三体で読んだ時にも思ったけど設定が飛び抜けて好き。
    コンピュータの発想に直接辿り着く荊軻がサヴァンすぎる。

    0
    2024年01月14日
  • 円 劉慈欣短篇集

    Posted by ブクログ

    三体より面白いという帯に惹かれて購入。
    短編集だが読み応えがある。
    SFのすごさにも驚くが、ノンフィクションとも思える中国の田舎の現状に胸が痛くなる。
    来年の文庫化新刊が楽しみ。

    0
    2023年12月13日
  • 円 劉慈欣短篇集

    Posted by ブクログ

    買ってはみたものの、SFが苦手な自分を省みると
    『もしかしたら読む事はないかも』と思って積んどいた本。
    DUNE*3冊+DUNE MESSIAH*2冊を読み終わった時
    『円を読むなら今しかないんじゃね?』と読み始め、
    想像を遥かにこえて楽しく読めた。
    短編集にありがちな『何故か入ってる面白くない作品』がひとつもない。

    『メッセンジャー』は唯一ほのぼのとしてる作品だった。
    未来の彼からの言葉は、創造だとわかっていても胸を撫で下ろす。

    どの作品もドキドキしながら読み進められる。
    SFと言えば未来を思いがち、最後の円で『秦の始皇帝』の時代に遡られたのはやられた感。
    やってる事はめちゃ現代。

    こんなに面白く読めたのは翻訳の良さにも起因すると思うと同時に、心からの感謝を。

    読み終わった瞬間、目の前にあったみなとみらい丸善で『三体』買ってしまったわ。

    0
    2023年10月21日