岡本美月のレビュー一覧
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事実に徹する
体験に変な解釈をせず、あくまでも体験者が事実と信じる出来事を書くということに徹している。霊を信じる・信じないは個人の自由だが、体験者にとっては、それがどれだけ信じ難い現象であっても、体験したことが事実なのである。第三者が余計な解釈をするのは良くないというのが著者の態度で、その通りだと思う。
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ネタバレ 購入済み
日常の怪異譚
実話怪談集と言えどもこわい話ばかりではない。
最後の「クボタ常務」のエピソードは、適度なユーモアがあり、ほっこりとした気分になる。作中の「クボタ常務」曰く、「あっちの世界でも同じような仕事をして忙しい」あの世でも仕事はするのである(笑) -
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ネタバレ毎年刊行されているシリーズの最新作である。筆者の在地が岩手県ということもあり、今巻にはあの「東日本大震災」前後に起きた不可解な出来事も収録されている。
まだ震災の傷が癒えきらないこの時期にそんな話を出版するのは不謹慎だ。そう主張する方もいるかもしれない。
だが以前にも紹介した、稲川淳二さんが語った戦争に関わる怪談と同様、多くの人々が亡くなった事象に関わる怪談というものは、一般的な怪談のそれとは大きく異なる。
単に読者を怖がらせるものほど、「創り」であることがほとんどだ。本物の戦争や震災に関わる怪談は、恐怖を抱かせるものはほとんどない。むしろ生存した方々、亡くなった方々双方への「鎮魂慰撫 -
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怪談とは言え
作者があとがきで記している通り、怖い話ばかりではなく、哀切な話、心温まる話なども収録されていて、
バラエティーに富んでいる。こういうのは、集めようとするのではなく、自然に集まって来るものなのだろう。これが最後と言いつつ、本書がシリーズ六作目。次回作が出るのも時間の問題か。 -
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岩手と言ったら、新型コロナウイルス流行期の日本47都道府県で、感染者ゼロを長いこと記録していた県という記憶が強い私ですが、本作はお勉強になりました。
座敷わらし、大蛇、大百足など、いわゆる古風な怪談話は岩手に限らず、全国各地で語り継がれていると思います。一方で東日本大震災後の怪異は岩手の県民性が垣間見える話もあり、なんとも複雑な気持ちになります。
ついつい怪談話と聞くと肩に力が入って身構えてしまいますが、本作冒頭の「怪異を書くことは供養にもなる。」に背中を押されて、最後まで読むことは出来ました。振り返ってみると怖さより、そういう怪異をどう捉えるか考えさせられる作品だったかなと感じます。
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Posted by ブクログ
平谷美樹、岡本美月『岩手怪談』竹書房怪談文庫。
2人とも初読み作家。2人とも岩手県在住作家とは知らなかった。しかも、平谷美樹に至っては女性作家と思っていたら、髭面の男性作家であったことに驚いた。
竹書房怪談文庫の存在は以前から知っていたが、『岩手怪談』というズバリのタイトルに飛び付いた。
岩手県を舞台にした怪談の掌編集である。
東日本大震災の津波被害を題材にした怪談や座敷童、狐、民話の古里遠野を舞台にした怪談、全日空機と自衛隊機とが衝突し、遺体が散乱した雫石の慰霊の森で起きた怪異、親戚が亡くなる際のお知らせ、などなど、既視感の強い掌編ばかりが並ぶ。
東日本大震災による津波被害を題材