あらすじ
【紹介文】
岩手県には不思議も奇妙もたくさんある――。
遠野に現れた黄金の狐
深夜の釜石で現れる死者たち
盛岡のビルに絡みつく巨大な蛇
宮古の国道に出る女の怪異
立ち入ってはならない雫石の森
岩手県在住の作家・平谷美樹と岡本美月が、自らの怪異体験談と共に、友人知人たちの怪談を綴る。
・未曽有の震災から4年、沿岸部に釣りに行ったのだが…「海の声」
・幼いころ遊びに行った遠野市近郊の親戚宅。蔵の二階から窓を覗くと…「蔵から見た風景」
・深夜、友人宅から車で帰る道すがら辿り着いたのは…「呼ばれる」
・東日本大震災の体験者たちから聞いた不思議「震災にまつわるもろもろの話」
・フライフィッシングに入った遠野の川で遭遇した美しく奇妙な光景「川面の蝋燭」
など、怪異もまた日常の一部と受け入れる人も多い岩手ならではの、土地と死者の記憶の怪談65話収録。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
隣県で風景が浮かぶところも多く身近なためか臨場感を感じられて一際ゾクッとできたと思います。
今後、訪れた時にも「あの話にあった場所か」と思うことができて、その土地での想い出が一つ増えそうで楽しみです。
岩手県の怪談
幸福な幻影。実家に行くと亡くなった両親と犬と猫(おそらく両親と一緒に消えてるので亡くなってる)を見つける。一瞬で消えたようですが、幽霊といゆうより家の記憶に思えた。
Posted by ブクログ
岩手と言ったら、新型コロナウイルス流行期の日本47都道府県で、感染者ゼロを長いこと記録していた県という記憶が強い私ですが、本作はお勉強になりました。
座敷わらし、大蛇、大百足など、いわゆる古風な怪談話は岩手に限らず、全国各地で語り継がれていると思います。一方で東日本大震災後の怪異は岩手の県民性が垣間見える話もあり、なんとも複雑な気持ちになります。
ついつい怪談話と聞くと肩に力が入って身構えてしまいますが、本作冒頭の「怪異を書くことは供養にもなる。」に背中を押されて、最後まで読むことは出来ました。振り返ってみると怖さより、そういう怪異をどう捉えるか考えさせられる作品だったかなと感じます。
あまり読まないシリーズですが、また店頭で気になった〇〇怪談に手を伸ばしてみようと思います。
Posted by ブクログ
平谷美樹、岡本美月『岩手怪談』竹書房怪談文庫。
2人とも初読み作家。2人とも岩手県在住作家とは知らなかった。しかも、平谷美樹に至っては女性作家と思っていたら、髭面の男性作家であったことに驚いた。
竹書房怪談文庫の存在は以前から知っていたが、『岩手怪談』というズバリのタイトルに飛び付いた。
岩手県を舞台にした怪談の掌編集である。
東日本大震災の津波被害を題材にした怪談や座敷童、狐、民話の古里遠野を舞台にした怪談、全日空機と自衛隊機とが衝突し、遺体が散乱した雫石の慰霊の森で起きた怪異、親戚が亡くなる際のお知らせ、などなど、既視感の強い掌編ばかりが並ぶ。
東日本大震災による津波被害を題材にした怪談。創作なのか、伝聞なのか知らないが、当時、岩手県で暮らしていた自分からすると複雑な気持ちになる。自分も波乗りや釣りと週末ごとに海に行っていたが、東日本大震災以降は三陸では波乗りも釣りも行っていない。津波の犠牲者に申し訳ない気持ちになるのだ。
昭和46年の夏に雫石で全日空機と自衛隊機が衝突し、162人が犠牲となった事故で、遺体や機体が散乱した慰霊の森を題材にした怪談。色んな話は耳にした。当時、盛岡の小学生だった自分は友だちと遊んでいて、その衝突音を聞いている。大学時代、夜中に慰霊の森にドライブに行った友人は何か横切ったのを目にして、ハンドルを切り、側溝にハマってしまう。車を置き、何とか自宅に戻り、翌日に先輩の車で現地に行くと、タイヤ4本が無くなり、車体がコンクリートブロックの上に載せられており、愕然としたらしい。
親戚が亡くなる際のお知らせは自分も何とか経験したことがある。中学校の同級生が亡くなった時にお知らせがあったし、祖母が亡くなった時にも夜中に胸騒ぎがして、電話の前で佇んでいたら、親戚から祖母の死を知らせる電話が鳴った。昨年末に特別養護老人ホームに入所していた父親が老衰で亡くなった際に、自分にはお知らせが来なかった。が、前日、父親に面会に行った母親は帰り際に父親に大学ノートを見るようにと言われたようだ。そのノートには葬儀のことなどが細かく書かれていた。
本体価格730円
★★★