伏尾美紀のレビュー一覧
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「百年の時効」(伏尾美紀)
昭和の時代に起きた事件を平成、令和の視点で刑事が追う小説でした。まさに自分が育った時とも重なる時代を考えながら読みました。犯人を追う刑事達の焦りにも似た渇望、迫力には引き込まれました。戦争の風がまだ色濃く残る昭和の事件を昭和の刑事と平成、令和の刑事がどう追って行くのかにも。今日はニュースで世田谷区一家斬殺事件関連の報道を聞きましたが、現実の未解決事件が思い出され、どうして犯人が捕まらないのか?その真相背景は何なのか?せめて小説の中にカタルシムを求めたのかもしれません。
それにしても、この小説を書き上げた作家さんは凄いと思います。フィクションですが、我々の現実に起こっ -
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令和六年、アパートの一室から変死体が発見される。遺体の男性は『兜町の異端児』と呼ばれ、天才的な相場師として名の知られた男だった。押し入れのスーツケースから一冊の本が出てきて、その本には「警察の皆様へ」と書かれた封筒が挟み込まれていた。亡くなった男は、昭和四十九年に起こった『佃島一家四人殺傷事件』の重要参考人だった、というが。若手刑事の藤森菜摘は、昭和の時代から続く刑事たちの執念を継ぐようにして、未解決事件を追っていく――。
昭和100年の『今年』のうちにこそ読んでおきたい本作は、ひとつの事件をめぐって、昭和、平成、令和と刑事たちの想いが繋がれていく様子を丁寧に描きながら、そこに現代史を語 -
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昭和100年を前に。
もっと色んな作家さんによる昭和100年を意識した作品が出ると思いきや出ない。
大作は売れない世の中。
出してもね、な風潮はそうだろなと。
まさにな来年は出るんでしょうか。
そこにがっつり真正面から挑んできた作品。
恥ずかしながら初読の作家さんですが、
540ページからなる大作に、昭和100年に真正面から挑み、
時代背景と警察組織と捜査員の思いと。
時代の違いを感じさせながらバトンを渡して、令和の今に全てを白日の下に晒した…のか?
もんのすごい大作でキレイに閉じてるのだが、
幽霊の正体見たり枯尾花
ではないが、真相は、推理よりもだいぶこじんまりした感あり、だからこそリア -
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いやー面白かった。圧倒された警察大河小説です。
物語は50年前に起きた凄惨な一家殺傷事件に関与していたと思われる男性が、アパートで亡くなっていたところから始まります。50年前に起きた事件は未解決であり、昭和・平成・令和と時代を経て、捜査を担当した刑事の思いが繋がれていく過程が詳細に描かれています。50年前に起きた事件は、時代背景や多くの人間関係が関与しておりなかなか複雑でしたが、ラストの伏線が回収されていく過程はお見事です。
内容はもちろんのこと、登場人物も魅力的で、それぞれの時代で事件を解決しようと愚直に捜査する刑事たちの熱意に胸が熱くなりました。思いの継承が事件の解決に繋がる。昭和の時代に -
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ネタバレ今年のミステリー1位はこれだった。
こんなに分厚いのに一切ダレるとこがない。
数ページ読んだ時からめっちゃ読みやすくてスルスル入ってくる、これはもう当たりの感覚。何十冊か読んでるとたまにこういうのに当たるから読書はやめれませんね。
今年が昭和百年って聞いてたけど、そんな興味なかったのにこの本を読んだ後やと勝手に当事者みたいに感慨深くなっちゃうくらい面白い。
昭和編から始まるけどまずもう湯浅と鎌田のコンビが最高!凸凹コンビを地で行くような2人、王道だけどそれをちゃんと描くのも難しいよね、これはほんとこの2人のおかげで最後までいったかな。特に鎌田が好きすぎて最後は泣けました。
実際にあった事件、天 -
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昭和100年の内に読み終えた…(笑)
いやいや、一気読みの勢いだったんだけど…
もったいなくてチビチビ読んだ…
昭和に浸りながら…
昭和49年 佃島
春の嵐のその夜中、夫婦と娘が殺されたり…(笑…昭和よね…)
一人息子は生き残る
その事件より24年前、函館で一家殺害事件がおこる
この未解決事件との共通点を見つけた刑事の鎌田と湯浅
少しずつ事件の真相に迫っていくが、最後のパズルが埋まらない…
二人の刑事の執念は平成、令和へと受け継がれていく
そして2024年(令和6年)
事件の容疑者の一人が変死体で見つかる…
現場に臨場した女性刑事が未解決事件を引き継ぎ調査を始める…
とにかく昭和という時 -
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私は小説の舞台の一つである、横須賀生まれであることから、この本との運命的な出会いを感じました。実際にある地名や風景描写の中で、実在しないであろう児童施設が見えるような気がしました。
40代後半以降の人にとっては、昭和から令和までの記憶もあり、実際に起きた様々な事件が、小説の中に織り込まれている事で、フィクションであるはずの小説が自分の記憶と混じり合い、不思議な読書体験となったと思う。
最後の令和編が始まる前に一度紙に登場人物や、状況をざっくり書き出しておさらいしてから最後の章を読みました。
複雑に絡み合っていた事件が、最後のバトンを受け取った藤森により、スルスルっとほどけていく瞬間 (しかし彼 -
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昭和、平成、令和を合わせて、今年でちょうど百年になる。
近年、殺人罪の公訴時効が廃止され、未解決事件の特集を観ることも多くなった。
この本のタイトルを見た時、この二つの事を書いているんだろうと予測がつき、興味があったので読み始めた。
凄惨な一家殺人事件を捜査をしていく中で、実際に昭和、平成で起きた誰もが知っている事件が小説の中に登場してくることで、私は途中この小説の殺人事件がフィクションだと忘れてしまう錯覚に陥り、最後まで事件解決を祈りながら物語に入り込んでいた。
警察の執念のリレーも実り、最後のページで被害者の明るい未来も覗けた気がして心地が良い。
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550ページに及ぶ大作である。物理的な厚さだけでなく内容も重厚であり、迷子にならないように張り詰めながら読み進め、遂に読み切った後には、ストーリーの余韻と謎が解き放たれた充足感がある。タイトルに見られるように、昭和から平成、令和と紡がれていき、未解決であった事件を追う刑事たちの執念も引き継がれていく。登場する刑事たちの人間味ある個性も魅力を添えている。冒頭、本書の主軸をなす昭和49年に発生した事件の場面から始まり、一転、令和6年のアパートで起きた変死体の調査へと移る。二つの事件はどこかで繋がるのか、と予見を持ちながら読んでいくと、昭和29年に函館で起きた事件、戦前の満州からの引き揚げ、身寄りの