ジョージ・ソーンダーズのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
「訳者あとがき」で岸本佐知子さんが、「描かれるのはたいてい八方ふさがりの現実で、その現実をなんとかしようとあがく人物たちのドタバタがどうしようもない悲哀と笑いを誘い、最後には彼らへのいとおしさに、不思議としんみりさせられる」とあるが、まさにその通りの読後感の話が多い。様々な奇想も面白い。
バッドエンド寄りの話も多く(てかほぼそう)、それもいいんだけど、ハッピー寄りの結末を迎えた話にはすごくグッときてしまった。
「もしも誰かが最後の最後に壊れてしまって、ひどいことを言ったりやったり、他人の世話に、それもすごいレベルで世話にならなきゃならなくなったとして、それがなんだ?なんぼのものだ?」「そこに -
-
Posted by ブクログ
独裁者の誕生と破滅、人と国の破壊を描いた寓話。玩具のようなロボットのようなキャラクターが住む国のお話、絵をイメージすればユーモラスなはずなのに、読むのがしんどくて参った。国土を削られ、財産を奪われ、生き残るすべがどんどんなくなっていく。きつい。独裁者の方もどんどん脳が壊れてまともじやなくなっていって、こちらもきつい。
きついきついばかり言っているけど、ほんとに、ユーモアがユーモアに見えないくらいしんどかった。どこかで「抱腹絶倒」と紹介されていたけど、うそでしょ?ってくらい全然笑えなかった…
ディストピアものは若いうち、あと平和な時代に読んだ方がいいと痛感。今はリアルの世界が過酷すぎる。あと -
Posted by ブクログ
人ひとりしか居られない程小さな国、内ホーナー国
それを取り囲む外ホーナー国
内ホーナー国民は7人おり、両国の境、外ホーナー国内の一時滞在エリアで常に6人が入国を待っている
国民の姿形は無機物と生物のツギハギ
この奇妙で童話のような世界観で語られるのは国同士・人同士の争い
きっかけは外ホーナー人であるフィルによる内ホーナー国批判の演説
フィルの演説は力強く煽動的であるのだが、興味深いのは、脳が外れてしまった時に為されることが多い、ということ
本書は2011年に刊行されているが、フィルの語りにはドナルド・トランプ氏であったり、小泉進次郎氏であったり、多くの政治家の姿が重なる…
この物語は政治家批判 -
-
-
Posted by ブクログ
独裁者が誕生する様子や、同調圧力に流される集団心理などが、ブラックユーモアで語られる寓意に満ちたディストピア小説。
国民が、一度に一人しか住めない極小国と、その周囲を取り囲む大国の物語。ある日、大国の国境警備員が巡回中に、小国からの侵犯を発見。騒動を大国の論理を押し付けて収めたのは、たまたま近くのカフェにいた中年男のフィル。この男、脳がはずれて地面に転がるたびに熱狂的な演説を繰り返し、次第に民衆を魅了していきます。対して、この男が独善的な要求を小国に突き付けるたびに、小国は疲弊していき……という話。
脳がはずれると書くと、面喰らいますが、そもそも登場人物たちが荒唐無稽・奇妙奇天烈な容姿なた -
-
-
-
-
-
Posted by ブクログ
2022年、ある政治家が、別の政治家の弁舌の巧みさをヒトラーのようだと発言し、研究者や政治家、マスコミを中心に論争が巻き起こっている。
また、あるテレビ番組で、ヒトラーとなぞらえることはヘイトスピーチだと語った研究者に対し、批判が殺到した。研究者の所属する大学は彼を解雇しろという抗議の声が上がった。
どれも、SNSという小さな国の中で。
読むにつれて、上記の事象を考えずにはいられなかった。
「この本は、世界を過度に単純化し、〈他者〉とみなしたものを根絶やしにしたがる人間のエゴにまつわる物語なのです。」
(p.153,訳者あとがきから著者の言葉)
フィルはヒトラーであり、我々自身でもある。 -
-
-