ジョージ・ソーンダーズのレビュー一覧
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ネタバレすごく短いのだけれど、心に響く内容だった。
『年をとるにつれて、あなたという自分は小さくなり、愛情が増えます。(中略)親になったら、それは自分が小さくなる過程の正念場です。』という言葉に納得。子育てって、なんでこんなにも自分の時間ややりたいことを犠牲にしないといけないんだろうって思うことがあるけど、そうだからこそ子どもとの結びつきは強くなり愛情が育つんだろうなあと実感。
『もっとやさしいひとになること』確かに、人間がみんなこのことを目指せば戦争や強盗や貧困や色々なことが解決できるように思う。年を重ねること、人を愛すること、大切な人を失うこと、子どもを育てること、私たちの人生はすべて『もっとやさしいひとになる』ためにあると考えたら素敵だ。 -
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「人生で大切なたったひとつのこと」
“Congratulations,by the way George Saunders”
著者 ジョージ・ソーンダーズ
訳者 外山滋比古・佐藤由紀
こちらは、著者のジョージ・ソーンダーズ氏が2013年5月11日、自ら教授を務めるニューヨーク州の名門校シラキュース大学教養学部の卒業式でスピーチされた内容が本となったものです。ユーモアたっぷりの短いスピーチ原文に、日本語訳がつけられていて、日本語と英語で味わえます。
『20分間の原稿を用意していたが、卒業式の二日前に8分間と聞かされ、余分なところを削り心から伝えたいことだけを話した』
著者のある時期の後悔についてふれ、心から伝えたいのはー「わたしが人生でもっとも後悔しているのは、「やさしさがたりなかった」ということです。」
それに対して、「いちばんに温かい気持ちで、もっとも好ましい人として覚えているのは誰ですか?」ー「あなたに対して誰よりも優しかった人でしょう、きっと。」ー
そして、二つの質問が投げられます。
(ネタバレになるので、控えます。)
「やさしいひとになる」ということを追求していった先で、『そして八十年後のある日、あなたが百歳、わたしが百三十四歳になり、わたしたちがみなうんざりするほどやさしく、愛情たっぷりになったら、わたしに短い手紙を書いて、あなたの人生がどうだったかを教えてください。とても素晴らしかったよ、と、あなたが書いてくることを願っています。』
と、ユーモアたっぷり語り、愛情たっぷりに締めくくられています。
凝縮された中に、著者の心からの、すべての世代の人たちに贈られた素敵なメッセージが詰まっています。スピーチには、相手への心からの想いが詰まっていますね。伝わるものがあります。
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あとがきの【復刊によせて】で、翻訳者の一人である佐藤由紀さんが、外山滋比古先生から
「日本人にとって、面白くてためになりそうな海外の本を翻訳しませんか?と提案され、「簡単に読み通せるから、これはいい。それに何度も読んで考えることができる」と、即断されたそうです。2016年に海竜社から出版され、2024年KADOKAWAから復刊された、「小さくて、とびきり幸せな本なのです。」。
素敵な本の復刊、ありがとうございました。 -
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ネタバレNHK「理想的本箱」、「戦争が近づいた時に読みたい本」の回で初めて知り、今日ようやく読むことができた。
中編程度の長さで、文章も決して難しくなく、児童文学のような雰囲気もあるので、活字に慣れていない人でも読みやすいのではないだろうか。
登場人物たちは機械の部品や植物、触手などで出来ている不思議な生物たち。
しかしその発言内容や行動は、人間にとても近く、特にSNSを見ていると差別主義者やヘイターがよく口にするような言い分のオンパレード。
そして完全に「善人」と言える人物はいないし、完全に「悪人」と言える人物も存在しない。
見たこともない不思議な生物たちの滑稽とも言えるような争いの話なのだが、その行動はナチスをはじめあらゆる人間(もちろん日本人も)が繰り返し、戦争に突入してきた流れの縮図であり、創作内のことでありながら全く他人事とは思えない。
最後、突如現れた創造主によって彼らは解体され、作り直される。
その時創造主はフィルの体は使わず、「モンスター」と名付けて象徴とした。
組み直された本ホーナー国の人々は正体不明のフィルを恐れるけれども、その中にフィルを恐れず、むしろ美しいものと感じる人物が現れーーー話は終わる。
創造主は本来の性質は「善」だと言った。
しかしフィルの部品を取り除いても、結局フィルの火種を摘むことはできなかったのだ。
ナチズムにも、レイシズムにも完全な“終わり”はない。
「いつまで先の戦争の話をしているんだ」と戦争反対を訴える人々を冷笑する人々がいる。
ホーナー国のように、現実でも火種はいつどこに芽生え、再燃するかわからないのだ。
だからいつまでだって訴えなければいけないと改めて感じた。
戦争反対。
憲法改正反対。
第二、第三のフィルは“生まれる”のだ。それはもう防ぎ用がない。
だから民衆は常に目を光らせ、のさばらせないように注意しなければいけないのだ。 -
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ネタバレ横からぽっと現れた口の達者な人物によってあっという間に国が乗っ取られ、逆らう者を手にかける様子が恐ろしかった。登場人物が人間ではなく、色んなパーツのより合わせで動いているため生々しさは少ないはずだけれど、ある日突然権力者の決定によって殺されてしまうことに変わりはないのだった。
言葉を利用して鼓舞し、揚げ足をとり、押し切り、隙をついて場を支配するフィル。ちょっとしたアイデアから始まったはずなのに、気付けば全員従わざるを得ない状況になっていて、日に日に力関係の変化していく様子が面白かったし同時に怖かった。
長い物に巻かれて自分可愛さに保身に走る者たちや、それとは逆に、おかしいことをおかしいと言える者たちの心理も書いていて、全員が非常に人間らしいのである。特に被害者を責め始めるところがリアルだ。おとぎ話のようではあるが、現実の世界で起きていることと大差はない。
意外だったのは創造主が登場したこと。争いが絶えなかったのに“お前たちは善なのだ”と語るのを見て、これは人間を信じている話なのだと思った。
あれだけ暴君だったフィルも朽ち果て、何も知らない新時代の者にとっては遺跡を見る時のような不思議な癒しとなっているラストが良かった。過去に学び、よりよい世界を夢見ることが何よりも必要な気がする。そして人類にはそれができるはずだという希望が含まれているように思った。
中篇だけれど味わい深かった。 -
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ニューヨークのとある大学の卒業式で読まれたスピーチ。最初の出だしは、よく分からず、何を伝えようとしているのか…と思ったけど、読み進めると「やさしさ」をもつことの大切さを伝えてくれていました。「やさしい人になる」言葉では簡単だけど、行動に移すのは難しくて…それよりも目の前の目標、野心いろんなものに囚われて後回しにしてしまう。でも、後回しにしちゃだめなんだな。
「人生で振り返って後悔したこと」「人生で1番温かい気持ちで最も好ましい人として覚えているのは誰?」って考えたら、自分が優しくできなかった瞬間だったり、優しくしてもらった瞬間だったりするなあ。優しさは、人生で軸になるくらい大切にしないといけないことなんだなあ。 -
Posted by ブクログ
奇妙で寓話めいた話なのに、読み進めるほどにだんだん笑えなくなってくる感覚がありました。
最初はどこか軽くて風変わりな世界観だと思っていたのに、気づけば人間の弱さや集団の怖さをかなり露骨に突きつけられています。
このブラックユーモアの効かせ方は見事で、短い作品なのに妙に引っかかり続けます。
ただ、語り口や設定の癖はかなり強く、素直に物語に没入したい人には少し距離を感じるかもしれません。
それでも、その読みにくさすら作品の不穏さに繋がっていて、読み終えたあとにじわっと残る違和感と苦味が印象的でした。
軽い読み心地の割に、意外と深く刺さる一冊です。 -
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ネタバレ日本翻訳大賞の選考委員の岸本佐知子さんの訳書。
岸本さんはエッセイ集『ねにもつタイプ』は読んだものの、遅読の僕は訳書は本書が初めてかと思ったが、かろうじてショーン・タン『セミ』だけは読んだことがあった。
これは面白い!
小国〈内ホーナー国〉が、隣の大国〈外ホーナー国〉に侵略されるお話。
二十世紀に引き続き「戦争の世紀」となった二十一世紀では、いたるところで際限もなく繰り返されているお話ではある。
作者のソーンダーズは、二〇〇五年に四冊目の著作として本書を発表した。
当時のアメリカは「ブッシュ・ジュニア」大統領の時代で、同時多発テロからイラク戦争へという頃である。/
【国が小さい、というのはよくある話だが、〈内ホーナー国〉の小ささときたら、国民が一度に一人しか入れなくて、残りの六人は〈内ホーナー国〉を取り囲んでいる〈外ホーナー国〉の領土内に小さくなって立ち、自分の国に住む順番を待っていなければならないほどだった。】(本書。以下同じ。)/
やむを得ず隣国の〈外ホーナー国〉にはみ出してしまう、そんな内ホーナー人を外ホーナー人たちは苦々しい思いで見ていた。/
【「さて、では採決しよう」とフィルが言った。「祖国のため、これ以上の暴力行為を防ぐために、われわれはこの侵略者を解体するのか、しないのか?」】/
【ああでも、とフィルは思った。なんかいま調子が悪い気がする。いまはよく考えるのことがひどくできない。あのいまいまし脳はどこイた?どこに置いテきたですか?長いことお出かけになりやがっているよ脳は。これではスバラシ名案が浮かばれないのも無理もない。俺はあの変てこなぐるぐる歩き侵略者どもに言てやりたイのだ、貴様らなんかに俺たちの気持ちがわかられますか、あのヒトデナシ人どもと隣り合わせて生きるねばならない気持ちが、あのやくざヒトデナシ連中は自分らをヒトと思い上がり、俺たちの素敵大きい土地広いをみだらに欲しがり、俺たちが広い大きい先祖土地すばらしいに住んでいるからといって憎々しい目でこっちを見る。それのこと話たい。なのに急にいま口が素敵にしゃべれない。】/
ソーンダーズと岸本さんのコラボによる名調子に酔い痴れる。/
ソナケデ、僕もドモシテモ イトコト言テやられたくナタ。
アメリカ人さんエ、
(外国人宣教師のイントネーションで)
「オウヲ シンジマスカ?」
また、〈入管〉のオマワリさんエ、
(東京オリンピックの時の〈オ・モ・テ・ナ・シ〉のリズムで)
「ヒ・ト・デ・ナ・シ!」/
ソーンダーズと岸本さんの訳書がガゼン読みたくなってきた。