石沢麻依のレビュー一覧

  • 饒舌な名画たち 西洋絵画を読み解く11の視点

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    とても良くまとめられた本でした。
    掲載されている絵画もそうですが書かれている内容もとても興味深く、著者の石沢麻依氏にも興味を持ちました。
    11の視点でまとめられた絵画たちは、それぞれが思いもしない視点だったりしてそれだけでも成る程と思う物でした。
    リアルを描いたものでもどこか遊び心のような隠しアイテムが描かれてあったり、ゲームのクエストのようなものを攻略本を追って楽しんでいるかのようでした。
    画家もこれだけ丁寧に解説されていたら工夫した甲斐がある…と感激なんじゃないかな。

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    2025年08月31日
  • 水都眩光 幻想短篇アンソロジー

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    ネタバレ

    •『ラサンドーハ手稿』高原英里
    この作品が最初で良かった。退廃的な世界観、暗い路地裏から話しかけてくる仮面たち、ひょっとして私たちの世界でも起きているかもしれないよと錯覚させるような精神が入れ替わるストーリー。百点満点です。

    •『串』マーサ•ナカムラ
    奇妙なお役目がグロい!
    連綿と続いていくんだなと主人公の微笑みで感じます。なんだか鬱りたくなるのに爽やかで奇妙な読後感。

    •『うなぎ』大木芙沙子
    あーっ、純文学!うなぎが臍から出てくる超自然的現象はさておき、不良と仲良くしているところをいい子ちゃんの家族(になりかけの人と母親)に見られたくないっと顔を背けてしまった…小さなしこりが今も残り続け

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    2024年02月18日
  • 月の三相

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    月の三相とは、"新月""半月""満月"。月の光が変容を受け入れてくれる。面に惹かれて旧東ドイツの南マインケロートという街にやってきた3人の女性の名にも月が含まれている。面は、欺瞞を表し針鼠にも変貌する。髑髏もまた面である。抽象的な印象だが細かな描写であり想像力が掻き立てられ瞼に映像が映し出される。エーミールとクララ…フランク、フローラ、歴史に引き裂かれる。フランクの拘りの蝶に結びつく物。トマスの蝶へのトラウマ。奇妙な『眠り病』という流行病。人魚姫や茨姫に例えられたり、いくつもの次元が交差するような肖像面の物語。

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    2022年11月16日
  • 貝に続く場所にて

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    ネタバレ

    難解なことは間違いないですが、すごく好きでした。この先何度も読み返して、そのたびに新しいメッセージを受け取るのだろうという気がします。情景の描写が繊細で静かで、世界の解像度が高い人なんだなと思いました。当事者意識を持てなかったゆえにほとんど忘れてしまった東日本大震災のこと、そわそわしていたコロナ禍のこと、臨場感を帯びて思い出されました。寺田寅彦が出てきたのには驚いたなあ。

    「太陽系の惑星群から外されて準惑星になっても、冥王星がその軌道上を動くことに変わりはないでしょう。惑星の小径を海王星で打ち止めにしても、それは私たちの認識の広がりが変化を受け入れただけで、その先にある冥王星そのものが消えた

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    2025年11月23日
  • 貝に続く場所にて

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    かなり幻想的な設定で初めのうちは何が何だかわからなかった。ただ、各所に散りばめられた魅力的な表現がとても好みであることも作用し、何度か繰り返し読む事で食らいついていけた。解釈が正しいかどうかわからないが、誰しもが抱える思い出したくない記憶に対して、目を背ける弱さと立ち向かう強さの両方を持ちうる人間の面白さが素敵に描かれていると感じた。

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    2025年10月31日
  • 饒舌な名画たち 西洋絵画を読み解く11の視点

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    面白く読みました。絵画の解説書的なものは基本好きですが、この方の文章もまた素敵でした。絵画はアトリビュートがわかるとさらに面白いです。知らなかった作品もあって楽しめたし、改めてヒエロニムス・ボスの「快楽の園」ちゃんと見てみたいなーとと思いました。両翼を閉じた状態の外パネルを見たのは初めてでそれも良かった。大昔に何も知らずにプラド美術館行った自分にこれを見て来いって行ってあげたい。

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    2025年05月31日
  • かりそめの星巡り

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    不在、記憶、透明。それらがひとつながりのモチーフとなり、いくつもの硬質な呟きが紡がれていく。2021年秋から2024年夏にかけて月一で新聞に連載されたという第Ⅰ部がよかった。連載の続きをリアルタイムで読みたいものだと思った。

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    2025年04月29日
  • 饒舌な名画たち 西洋絵画を読み解く11の視点

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    ネタバレ

     著者、石沢麻依に、美術について語らせようと考えた編集者の勝利!?
     実に、面白い一冊だった。

     前著、エッセイの『かりそめの星巡り』にも収録されていた日経新聞の連載「美の十選」でも、その芸術への造詣ぶりを遺憾なく発揮していた。

    「その色は白に半ば杭を打つように鮮やかで、私はその色彩を頼りに立っていた。」

     こんな、芥川賞受賞作内での、変にこねくり回した表現も、実際の絵画というモチーフの説明としては、妙にハマっている気もした。とはいえ、まだまだ、もっと普通に書けばよいのに、と思う記述も多い。

    「失われた顔は時間の回廊を通り抜け、思いがけず誰かの中にこだますることもあるのだろう。」

     

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    2025年04月22日
  • 貝に続く場所にて

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    久しぶりの純文学ということに加え、石沢さんの文章がとても難解なので、これは久々に頭が沸騰しました。
    たぶん、石沢さんが描写せんとされていたことの半分も理解出来ていたか怪しい…
    それがとても残念で申し訳ない気持ちでいっぱいな読書になってしまいました。
    あああ、わいに読解力があれば…!

    しかし読み進めるうちに、この難解さはわざとなのではないか、震災や震災被害者を描くに辺りあえてなのではないか、とも思ったり。
    このアプローチでなければ、恐らく石沢さんの半径の中で起こった震災という人知を超えた物事を受け入れ、納得し、自分の中のあるべき場所にしまうということができなかったのではないか、とそんな風に思っ

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    2025年02月01日
  • かりそめの星巡り

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    遠く離れた場所と言葉が響きあう、記憶への旅。
    ドイツでの暮らしに故郷仙台の風景を重ね、愛する文学世界と過去からの声に耳を澄ませる――。
    デビュー作『貝に続く場所にて』で芥川賞を受賞した注目作家が、静謐にして豊饒な文章で綴る初めてのエッセイ集。
    新年最初の1冊目。すごく静謐とした文を書かれる作家さんだなと思った。初めて読んだけど、しんとした寒さの中で冷静に、丁寧な目線で物事を観察しているような感じ。3.11のことなど災害の記憶が深く根を下ろしているのを感じました。表紙とタイトルがとても素敵でジャケ買いしたんだけど当たりだったなあ。

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    2025年01月25日
  • 貝に続く場所にて

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    疲れた。
    設定は斬新で好き嫌いで言えば個人的には好きなのだが、主人公が向き合う記憶が登場人物の人数分以上に重なってしまい、淡々とした言葉の連なりにさらに混迷させられてしまう
    読解力不足と言われればそれまでだが、選び抜かれた言葉とその配置の中に、分かる人だけ分かれば良い的な不親切さを感じなくもない。
    と言うのはひねくれているし、そもそも言い過ぎだし、重くて深いテーマに対する静かな扱い方は好感が持てる。
    他の作品も読んでみたい。

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    2024年11月07日
  • 貝に続く場所にて

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    そんなに長くない小説なのだが読み進めるのに時間がかかった。緩急というものはなく、こちらの小休憩を許してくれない地続きの文だからだ。
    とはいえ、この作者の感性と小説内にちりばめられた技法みたいなものが凄いなと思いながら読んだ。
    9番目の準惑星となりさがった冥王星と、9年前の東日本大震災。冥王星はずっと外周を回っているわけではなく、海王星の内側にも入ってくる。そんな軌道に呼応するように震災時の記憶を思い起こしたり避けてみたり。各々の人々や土地がもつ記憶と持物(アトリビュート)。惑星の小径になぞって様々な記憶もなぞっていく。何度も出てくる主人公の歯(の疼き)は彼女のアトリビュートで、野宮のは帆立貝の

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    2024年05月15日
  • 貝に続く場所にて

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    こういう作品をスラスラと読むことのできる知性を持った人が純粋に羨ましい。自分の脳みそが残念。久々にチックショーって悔しさを感じました‥‥一生勉強と向上。

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    2023年10月28日