石沢麻依のレビュー一覧
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ネタバレ•『ラサンドーハ手稿』高原英里
この作品が最初で良かった。退廃的な世界観、暗い路地裏から話しかけてくる仮面たち、ひょっとして私たちの世界でも起きているかもしれないよと錯覚させるような精神が入れ替わるストーリー。百点満点です。
•『串』マーサ•ナカムラ
奇妙なお役目がグロい!
連綿と続いていくんだなと主人公の微笑みで感じます。なんだか鬱りたくなるのに爽やかで奇妙な読後感。
•『うなぎ』大木芙沙子
あーっ、純文学!うなぎが臍から出てくる超自然的現象はさておき、不良と仲良くしているところをいい子ちゃんの家族(になりかけの人と母親)に見られたくないっと顔を背けてしまった…小さなしこりが今も残り続け -
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ネタバレ難解なことは間違いないですが、すごく好きでした。この先何度も読み返して、そのたびに新しいメッセージを受け取るのだろうという気がします。情景の描写が繊細で静かで、世界の解像度が高い人なんだなと思いました。当事者意識を持てなかったゆえにほとんど忘れてしまった東日本大震災のこと、そわそわしていたコロナ禍のこと、臨場感を帯びて思い出されました。寺田寅彦が出てきたのには驚いたなあ。
「太陽系の惑星群から外されて準惑星になっても、冥王星がその軌道上を動くことに変わりはないでしょう。惑星の小径を海王星で打ち止めにしても、それは私たちの認識の広がりが変化を受け入れただけで、その先にある冥王星そのものが消えた -
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ネタバレ著者、石沢麻依に、美術について語らせようと考えた編集者の勝利!?
実に、面白い一冊だった。
前著、エッセイの『かりそめの星巡り』にも収録されていた日経新聞の連載「美の十選」でも、その芸術への造詣ぶりを遺憾なく発揮していた。
「その色は白に半ば杭を打つように鮮やかで、私はその色彩を頼りに立っていた。」
こんな、芥川賞受賞作内での、変にこねくり回した表現も、実際の絵画というモチーフの説明としては、妙にハマっている気もした。とはいえ、まだまだ、もっと普通に書けばよいのに、と思う記述も多い。
「失われた顔は時間の回廊を通り抜け、思いがけず誰かの中にこだますることもあるのだろう。」
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久しぶりの純文学ということに加え、石沢さんの文章がとても難解なので、これは久々に頭が沸騰しました。
たぶん、石沢さんが描写せんとされていたことの半分も理解出来ていたか怪しい…
それがとても残念で申し訳ない気持ちでいっぱいな読書になってしまいました。
あああ、わいに読解力があれば…!
しかし読み進めるうちに、この難解さはわざとなのではないか、震災や震災被害者を描くに辺りあえてなのではないか、とも思ったり。
このアプローチでなければ、恐らく石沢さんの半径の中で起こった震災という人知を超えた物事を受け入れ、納得し、自分の中のあるべき場所にしまうということができなかったのではないか、とそんな風に思っ -
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そんなに長くない小説なのだが読み進めるのに時間がかかった。緩急というものはなく、こちらの小休憩を許してくれない地続きの文だからだ。
とはいえ、この作者の感性と小説内にちりばめられた技法みたいなものが凄いなと思いながら読んだ。
9番目の準惑星となりさがった冥王星と、9年前の東日本大震災。冥王星はずっと外周を回っているわけではなく、海王星の内側にも入ってくる。そんな軌道に呼応するように震災時の記憶を思い起こしたり避けてみたり。各々の人々や土地がもつ記憶と持物(アトリビュート)。惑星の小径になぞって様々な記憶もなぞっていく。何度も出てくる主人公の歯(の疼き)は彼女のアトリビュートで、野宮のは帆立貝の