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デビュー作にして芥川賞受賞作『貝に続く場所にて』に続く、最注目の受賞第一作!
「フローラが失踪した」。旧東ドイツの小さな街に広がる噂が、歴史に引き裂かれた少年と少女の物語を呼び醒ます。分断の時代を越えて、不在の肖像をたどる旅。
「不在の者が失踪した後、静寂の表層と化した過去に踊り込もうとする言語がここにある。」
ーー多和田葉子
「傷だらけの歴史、その交差点に花開く魂の仮面劇。生命のリアルはどこに宿るのか。新次元の世界文学が誕生した。」
――亀山郁夫
旧東ドイツに位置するその街では、誰もが自分の「肖像面」を持っていた。面に惹かれて移り住んだ三人の女たち――望、グエット、ディアナは、失われた「顔」を探して、見えない境界を越えていく。いくつもの時間が重層する街で、歴史と現在、記憶と幻想が交差して描き出す、世界の肖像画。
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Posted by ブクログ
豊潤で繊細で明確で曖昧な、圧倒的なイメージの芸術作品に触れたかのような読後感。その想像力と創造力は僕の許容範囲を遥かに超えていて、たぶんこの小説が持つポテンシャルの半分も理解できていないような気がする。それでも、言葉の積み重ねによってこれだけのイメージを表現することができるという「文学」の可能性に、読後の今、打ち震えています。この著者を輩出するためだけに芥川賞ってあったんじゃないの?と思えるくらいに。フローラの失踪から始まるこの物語は、その肝心のフローラが何者なのかまったく明かされないままに進んでいきます。おそらく架空の町である南マインケロートで織り成される、「面」をめぐる様々な記憶と因縁と感情や想いの物語。肖像面、眠り顔、裏顔、顔のパスポート、肖像保管所、面作家、などといった聞き慣れない名前がたくさん出てきて戸惑うけれど、ここではそれが当たり前のように溶け込んでいる町。旧東ドイツという歴史的な宿命を負った町。アジアからは遠く離れた町。人の想いや人生は様々な相を成し、さらには層を成し、面に刻まれたレールを辿ってまたどこかへ旅立って行くのでしょう。
頻繁に織り込まれる「町の三叉路」、「写真展の写真」などの小道具が効果的。
透明感のある文章に酔いしれました。
Posted by ブクログ
とんでもなく美しい小説。
満月、半月、新月。それぞれが私たちに見せる面もあれば見せない裏側の面もある。そこに存在するはずなのに私たちには見えない。それは人の顔にも言え、他者に見せる顔を表の顔とするならば、自分ですらはっきりと見えない裏の顔も存在する。しかし表の顔とは他人を自分の言葉や印象、都合に合わせる時に切り取って被ったり被らせたりする面のようである。表の顔である面は、他者に判断され勝手に被らされる面であり、自らの本当の顔である裏の顔を見る必要がないと判断される為の「顔のパスポート」である。
面に惹かれて移り住んだ三人の女性の二人ーー望とグエットは表の顔によって、他者からアジア人という面を貼り付けられる。貼り付けられた面を剥がすこともできず、アジアというレッテルを貼り付けられ、裏の顔を見られることはなくなる。
もう一人の女性であり面作家であるディアナは、通常、表しか描かれない面の裏に顔を刻む。彼女が描く裏顔は、表と一体でありながら、境界を超えて交わることのないものである。表と違い、緻密に刻まれる線は、密かに顔立ちを浮き上がらせ、被った本人に、面を被らされている鏡像よりもずっと正直に自分を裏切る。
著者のデビュー作である「貝に続く場所にて」でも感じたけれど、人の感情を、当人が処理する情景と緻密に組み合わせて、読者に突き付けてくる文章が凄い。
年々変化していく自らの顔を肖像面として保存する文化のある南マインロケートに、面に惹かれた三人の女性が移り住む。面に刻まれる時間の変化。面に留まる歴史。面が指し示す現実と幻想。
全てを超えて交わるいくつもの次元が、面を通して描かれるーーー
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小説・文芸
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