【感想・ネタバレ】月の三相のレビュー

あらすじ

デビュー作にして芥川賞受賞作『貝に続く場所にて』に続く、最注目の受賞第一作!
「フローラが失踪した」。旧東ドイツの小さな街に広がる噂が、歴史に引き裂かれた少年と少女の物語を呼び醒ます。分断の時代を越えて、不在の肖像をたどる旅。

「不在の者が失踪した後、静寂の表層と化した過去に踊り込もうとする言語がここにある。」
ーー多和田葉子

「傷だらけの歴史、その交差点に花開く魂の仮面劇。生命のリアルはどこに宿るのか。新次元の世界文学が誕生した。」
――亀山郁夫

旧東ドイツに位置するその街では、誰もが自分の「肖像面」を持っていた。面に惹かれて移り住んだ三人の女たち――望、グエット、ディアナは、失われた「顔」を探して、見えない境界を越えていく。いくつもの時間が重層する街で、歴史と現在、記憶と幻想が交差して描き出す、世界の肖像画。

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Posted by ブクログ

とんでもなく美しい小説。
満月、半月、新月。それぞれが私たちに見せる面もあれば見せない裏側の面もある。そこに存在するはずなのに私たちには見えない。それは人の顔にも言え、他者に見せる顔を表の顔とするならば、自分ですらはっきりと見えない裏の顔も存在する。しかし表の顔とは他人を自分の言葉や印象、都合に合わせる時に切り取って被ったり被らせたりする面のようである。表の顔である面は、他者に判断され勝手に被らされる面であり、自らの本当の顔である裏の顔を見る必要がないと判断される為の「顔のパスポート」である。
面に惹かれて移り住んだ三人の女性の二人ーー望とグエットは表の顔によって、他者からアジア人という面を貼り付けられる。貼り付けられた面を剥がすこともできず、アジアというレッテルを貼り付けられ、裏の顔を見られることはなくなる。
もう一人の女性であり面作家であるディアナは、通常、表しか描かれない面の裏に顔を刻む。彼女が描く裏顔は、表と一体でありながら、境界を超えて交わることのないものである。表と違い、緻密に刻まれる線は、密かに顔立ちを浮き上がらせ、被った本人に、面を被らされている鏡像よりもずっと正直に自分を裏切る。

著者のデビュー作である「貝に続く場所にて」でも感じたけれど、人の感情を、当人が処理する情景と緻密に組み合わせて、読者に突き付けてくる文章が凄い。

年々変化していく自らの顔を肖像面として保存する文化のある南マインロケートに、面に惹かれた三人の女性が移り住む。面に刻まれる時間の変化。面に留まる歴史。面が指し示す現実と幻想。
全てを超えて交わるいくつもの次元が、面を通して描かれるーーー

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2026年01月26日

Posted by ブクログ

月の三相とは、"新月""半月""満月"。月の光が変容を受け入れてくれる。面に惹かれて旧東ドイツの南マインケロートという街にやってきた3人の女性の名にも月が含まれている。面は、欺瞞を表し針鼠にも変貌する。髑髏もまた面である。抽象的な印象だが細かな描写であり想像力が掻き立てられ瞼に映像が映し出される。エーミールとクララ…フランク、フローラ、歴史に引き裂かれる。フランクの拘りの蝶に結びつく物。トマスの蝶へのトラウマ。奇妙な『眠り病』という流行病。人魚姫や茨姫に例えられたり、いくつもの次元が交差するような肖像面の物語。

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2022年11月16日

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