イ・ランのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「お姉ちゃんの長女病」が心に残った。
全編を通して出てくる家族という呪いに力尽き果てた姉が印象的だった。
姉にはどうしても大好きな家族が必要だったけど、必死に守ってきたその家族は姉のことを搾取することしか考えていなかった。
本当に誰も正しく愛する術を学ばなかったし、持たなかったんだなと思う。
著者の素直な言葉から、これまでつけられた無数の傷から回復しようともがく思いがよく伝わってきた。愛すべき友人たちがどんどん失われていく箇所も壮絶だった。
著者の人生に穏やかな日が1日でも多く訪れてくれることを願ってしまうような、祈ってしまうような本だった。 -
Posted by ブクログ
苦しい。けれど傷を見せてくれるように紡がれる言葉から目が離せない。私は幸運なことにとても死と暴力から遠い人生を今のところ歩んでいる。本当に大切な人を失ったことがまだなく、自分自身も一度も死にたいと思ったことがない。だからこそ、こうして身近な死をたくさん経験して、失いながらも生きる言葉にしてくれていることが本当にありがたい。
何より、「カッコの多い手紙」を読んで以降、ずっと猫のジュンイチのことが気がかりだった。
この本の目次を開いて、ジュンイチが先に眠ってしまったことを察して、まだ本文を一文字も読んでいないのに泣いた。最後の方の、恐らくジュンイチとの別れについて書かれているであろう箇所を読む -
Posted by ブクログ
イ・ランもいがらしみきおも好きな作家なのだが、まずはその組み合わせにびっくりした。
読み進めていくと、意外にも二人の共通点がとても多いことに驚かされる。とくに二人が家族の宗教から受けた影響や達観した人生観が色濃く出ているところは読みごたえがあった。
お互いにとても誠実にしたためられた往復書簡は読んでいて気持ちが良いし、まさに世代・性別・国境を超えて育まれた友情を感じた。
個人的には、『はちどり』のキム・ボラ監督が帯文を書いていたり、いがらしみきおから『哀しき獣』の話が出たり、イ・ランが教え子目線でイ・チャンドン監督のことを書いていたりするのも激熱だった。 -
Posted by ブクログ
はじめ、わ、横書き! とおどろいて、それから後書きにお母さんが寄稿していることでまたびっくり。
よみすすめていくと、けっこう母親との相克を題材にした作品がちょこちょこあるので(キョンヒ台風とか)それはきっとテーマのひとつなんだろうなと思い、そうなるとあとがきがまた、いっそう重く感じられたり(^_^;;
じつは、毎日、お風呂に入りながら一編ずつ読んでいたのだが、どこからでも読めるし、それぞれの作品の感触がちがって、全体としてとてもよかった。
表題作の「アヒル命名会議」は、大丈夫なの?と思うくらい神がひどい(笑) 神がこしらえたアヒル様生物を命名することになって、サタンがduckはいかがでしょう -
Posted by ブクログ
出張で行った高松市の素晴らしい書店、ルヌガンガで購入。
血縁との葛藤の苦しみや寂しさを知っているつもりだったけれど、著者の家族の苦しさを読むと、自分は甘えてるのだろうかと思う。
猫のジュンイチとの二十年間の愛を誇らしいというランさんを羨ましく思った。
子どもとの関係は、自分が人間として欠けている部分、未熟な部分に向き合う辛さもあるし、親にしてもらえなかったことを、見よう見まねで親として子どもにしてあげるときに、苦しい気持ちになることがある。相手が別個の人間だから、ずっと触れていられる時間は赤ちゃんから幼児期くらいまで、その分言葉で話し合って、分かち合えることも多いのかもしれないけれど。
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Posted by ブクログ
イ・ランもいがらしみきおも、どちらも好きな作家なので嬉しい。
韓国、日本と遠距離での文通のやり取りをまとめた本なのだけれど、今LINEやSNSのようにオンタイムでやり取りが可能になってしまう時代だからこそ、文通って素敵だな〜〜と思った。イ・ランさんは知的好奇心がとても強く、この世の色んな事を知りたい、感じたいって熱量がある人なのだなと。その熱量の球を、優しく受け入れるいがらし先生の大人の余裕、というか人間力…
世代も、国籍も、性別も違う(生まれ育ってきた環境もしかり)2人の手紙のやり取りからは、お互いアーティストとして、1人の人間として尊敬し合う純粋な感情が伝わってきた。