魯迅のレビュー一覧
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岩波文庫
魯迅 「 吶喊 」 解説 竹内好
愚民の精神を改造するには、医学でなく文芸だと宣言した「自序」に始まる短編集。苦労人 魯迅の雄叫びと皮肉といったところ
儒教道徳が人を生きづらくすることを人喰いに喩えた「 狂人日記 」〜ラストシーンは、仁義道徳をまだ知らない子供に将来を託したということか?
奴隷根性の世界を描いた代表作「 阿Q正伝 」〜ラストシーンは、自序の「具弱な国民は〜どんなに頑強であっても〜見せしめの材料と、その見物人になるだけだ」を意味?
政治的な意図を持つ啓蒙小説なので、対立は匂わせるだけで、抵抗を煽るレジタンス文学というより、寂寞を憂い、民心改造を強調して -
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魯迅が漢方医学に疑問を感じ日本に留学、医学を目指していたのが、なぜ文学に道を変えたのか、という「自序」に始まり、「自国の窮状を憂え、なんとかしたい」というような短編が、冷静な描写だが叫びの迸るような作品群になっている。
中でも中編「阿Q正伝」の内容は、現代のデストピア小説にも通じるものがあっておもしろい。たしかトルストイの民話風の作品にも、短いのがあった気がする。短絡的かもしれないが両雄とも、小説の気風として大陸的なものを感じる。悲惨だけれどもおかしみがあるようなところが。
わたしが読んだのは、竹内 好訳『吶喊』
(『魯迅作品集 1』 筑摩書房1966年発行より)
「自序」「狂人日記」 -
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おまえ(祖国フィリピン)は社会的な病に苦しんでいる。わたしはみずからの自尊心さえ犠牲にして、ベールに隠された(病に苦しむ)おまえの姿を明らかにしよう。わたしもおまえの子として、おまえの欠点と弱点のために苦しまなければならない。ホセ・リサールRizal『ノリ・メ・タンヘレ』1887
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阿Q。日雇い労働者。自尊心が強い。強者には媚びへつらい、弱者には威張り散らす。強者の理不尽には理屈をつけて自分を慰める「精神勝利法」。都合の悪いことはなかったことにする「忘却術」。ちっぽけな自尊心を癒している。無知と無自覚。中国民衆に蔓延した情けない道徳観(奴隷根性)を変えなければならな -
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ネタバレ科挙試験に落ちて馬鹿にされて死んだ人と肺病の人に血の饅頭食わせる話とか、バッドエンド集?と思ったけどエッセイのような話はかなりよかった 小さな出来事が一番好き ちょっとした事なんだけど素敵な文章で書かれてて良かった
血の饅頭の意味がわからなかったけど前に胎盤を漢方薬にする話とか読んだことあったから血も薬なのかなって思いながら読んだ 肺病の人が亡くなってすぐ清明祭やってた感じだけど、1年やらないんじゃないのかな それとも1年経ってもあんなに嘆き悲しんだのか
子供を叱らないおばさんの話めちゃこわだった ああやって罠にはめる人いるんだよな
阿Q正伝は故事とか有名なセリフを知ってて頭良さそうなのにやっ -
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東京で近代文学を学んだ魯迅は
本国において、ブルジョア生活を満喫しながら共産党を擁護していた
大陸的なおおらかさというか、虫がよすぎるというのか
ポストモダンのはしりと呼べるのかもしれないし
ある意味では戦後日本を先取りする存在なのかもしれない
そういう人物だった
作品には、自虐的な認識も反映されているように思う
この本の解説では、大江健三郎や村上春樹に与えた影響について
論じられている
「孔乙己」
科挙の合格を志しながら、初級試験に受かることすらできぬまま
ホームレスに落ちぶれたアル中おじさんのプライド
「薬」
人血饅頭を万病の薬とする野蛮な風習残りし時代に
奇跡の花が咲き誇る
「故郷 -
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岩波文庫の竹内好訳を読んでから、この本を読んだ。
竹内好の日本語は見事だと思うが、原文の表現を生かし、現在の日本語で書かれた本書も大変良い。
魯迅の文体に近い訳になっているというだけでなく、注釈、解説が素晴らしい。竹内好の注釈も非常に詳しいが、この本の方がわかりやすい。例えば「阿Q正伝」で、阿Qが県城に行ったあと、(竹内訳では「城内」)田舎に帰って、県城で誰でも「麻醤」を打っていると知識を披露する。竹内の注には「ごま味噌の意、麻雀と同音。このころは上層のごく一部でしか麻雀はやらなかった。」と書かれている。藤井注は「半可通の阿Qによる『麻将』すなわち麻雀の言い間違え。」とある。この注で、阿 -
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多分大多数の人と同じく、教科書で「故郷」を読んだだけで大人になってしまったのだが、名作をきちんと読みたいと思うようになり、読んでみた。やっぱり魯迅は竹内好、と昔買ってほったらかしていた岩波文庫を読む。
原題は『吶喊』。はじめの「自序」で、魯迅が文学を志し、この短編集を書くに至った理由が綴られている。父が闘病中、名医と言われていた漢方医にかかり、高価な薬(三年霜にあたった砂糖きび、つがいのコーロギなど、)を処方された挙句死んでしまい、「漢方医というものは意識するとしないとにかかわらず一種の騙りに過ぎない」と西洋医学を学ぼうとするが、仙台の医学専門学校に留学した時、ロシアのスパイの容疑で斬首される -
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古本で購入。
魯迅の作品で読んだことのあるものと言えば、中学の教科書に載っていた『故郷』と高校の教科書に載っていた『藤野先生』くらい。
最も有名な『阿Q正伝』を読んだことがないので、いい機会だと思い読んでみた。
『阿Q正伝』について言うと、まぁおもしろくはない。
徹底して描かれるのは、革命前後の中国の民衆の愚かさだ。
阿Qという容姿・教養・財産すべてを持たない男を象徴として、彼自身、また彼を愚弄し嘲笑する街の人々を、魯迅は猛烈に批判している。
物語の最後、略奪行為に加担したと濡れ衣を着せられ阿Qは銃殺される。
しかしそれを見た民衆は言う。
「銃殺はどうもいかん。斬首のようなおもしろみがな