小林多喜二のレビュー一覧
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ネタバレ「おまえたちをどだい人間だなんて思っていないよ」
プロレタリア文学の代表作
序盤、425名の乗組員が見殺しにされる苛烈さに慄く
資本主義のもと人間性を剥奪され、虐使され、生命まで搾取され、交換可能な労働力として消費される労働者の描写に、著者の怒りが刻まれている
著者の小林多喜二は特高警察から残酷な拷問を受け、29歳の若さで虐殺された
自宅に戻った多喜二の遺体は、ペンを握る右人差し指が無残に折り曲げられていたそうだ
権力に抗し、弱い者や虐げられた者の側に立った若者の生命が国家権力によって奪われてしまったわけだけど、それは過去に限った話だろうか -
Posted by ブクログ
「代表の9人は、銃剣を擬されたまま駆逐艦に護送されてしまった。それは、一枚の新聞紙が燃えてしまうのを見ているよりも他愛なかった。ーーーー簡単に、片付いてしまった。」
民主主義が当たり前になった現代では、寧ろ社会主義/共産主義という言葉そのものに若干のアレルギーを感じてしまう。しかしこの作品を読み、日本の民主化への戦いが如何に困難な道を辿って来たかということを微小だが知る事ができた。
1920年代の民主主義はあくまで支配階級の時代であり、現代のような富のbroadな配分には微塵の配慮も無かった。この時代に生まれていたなら、自分も間違いなく搾取される側の人間として酷使され、マルクス•レーニン思想に陶酔していた事だろう(事実おそらくはそんな思想を知る間もなく1日々に必死に喰らいつき死んでいっただろう)。
そう考えると、今この時代に、自由が確立された民主主義の中にも労働者の権利が確立されている事が如何に奇跡的な事実であるか考え直す事ができる。
ーー非合法の共産党下で活動を続けた小林多喜二は、29歳の若さで拷問により虐殺された。 -
Posted by ブクログ
「航船」でなく「工船」としている点でこの航海は「航海法」のグレーゾーンと認識され、出稼ぎ労働者(船員)たちが人権なしの奴隷のような扱いを受けていたという。そんな悪しき閉じた世界が世界人権宣言が出されて20年近くも経った昭和40年代まであったというのも驚きだ(作品設定では昭和初期となっている)。
人権宣言のような秩序が生まれても、こういう「閉じた世界(権力に一般人が抗えない特別な空間)」にまでルールが浸透するには何十年もの歳月を必要とするのがわかる。でもこのような「秩序の枠組み」は時間はかかれど、ひとりひとりが望む限り着実に浸透していく。そして現代はインターネットも存在する。浸透速度は上がると信じたい。この2点は今後も持ち続けたい希望だ。 -
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メモ
・独特な言い回しに苦戦
・資本主義と帝国主義の関係
・赤化が歴史で習ったようなマクロなレベルでなく、一人一人の労働者から見たミクロなレベルで描かれている(教科書で学ぶのとはやっぱりちがう)
・はじめは、皆同じように不満を抱いているのに、資本家に対して何も行動を起こせず、過酷な労働環境を受け入れ、病を抱えていく労働者たちに対してもどかしさを感じた。しかし、そのように思うのは私自身が「資本主義」と「社会主義」という枠組みを当然あり得るものとして認識、学習しているから。当時の労働者たちにはその知識が欠けていた。学びの大切さはここにあるなと。(→選択決定のプロセスに大きな影響)
また、不満を抱く労働者のなかでもヒエラルキーが存在し、その異なる階層のうち複数が強調して動くときに集団は大きく動くことをストライキが示していた。同時に、社会運動の匿名性の重要度を労働者たちが身をもって経験する点に情報の流入を統制する政府の大きな力を実感した。 -
Posted by ブクログ
日本の代表的なプロレタリア作家、小林多喜二の代表作「蟹工船」が収録されています。
プロレタリア文学自体は小林多喜二以前にも存在していたのですが、「蟹工船」が雑誌「戦旗」に連載されたことで、プロレタリア文学が脚光を浴びるきっかけとなりました。
武者小路実篤らの"白樺派"、菊池寛らの"新思潮派"などと異なり、小林多喜二ら"戦旗派"は、低賃金でこき使われる労働者の権利を主張し、現実と立ち上がる力を民衆に啓蒙するような内容となっています。
ただ、小林多喜二氏の作品は、労働者への啓蒙に加えて、共産主義へ先導するような内容となっています。
プロレタリア自体は低賃金労働者を示す言葉ですが、日本のプロレタリア文学は自由競争への警鐘、共産主義あるいは社会主義的の主張が交じることが多いので注意が必要ですね。
収録作は「蟹工船」と「一九二八・三・十五」の二作です。
各話の感想は以下の通り。
・蟹工船 ...
プロレタリア文学の代表的な作品です。
戦旗は三・一五事件がきっかけで作られた合同組織全日本無産者芸術連盟(ナップ)の機関紙として発行されました。
蟹工船は戦旗に連載された作品で、本作により日本中の低賃金労働者は決起し、戦旗はプロレタリアの旗手となりました。
また、本作がにより小林多喜二は後に不敬罪により起訴、投獄されることとなります。
内容は過激で、共産党賛歌がすぎると感じるところもありましたが、命さえも奪いかねない拷問のような労働環境の中、共産主義という夢のような制度に憧憬を抱くのは仕方ないと感じました。
漁獲したカニを缶詰にする蟹工船「博光丸」、オホーツクの極寒の海が舞台となっており、そこでは貧困層からかき集めた労働者に対し、非人道的な酷使がまかり通っています。
特定の主人公はおらず、その船の上での地獄のような有様が書かれた内容となっています。
脚気に侵されて動かない脚を動かし、凍傷で動かない指を動かして働く労働者を様は酷いの一言につきます。
今がどれだけ恵まれた状況であるか、ということを実感できる内容と思います。今が極楽であるというわけではありませんが。
なお、文体は独特で、ストーリーのつながりがぼやけていて、直前まで菊池寛や芥川龍之介を読んでいたこともあってか、思ったより読みやすくないと思います。
普段文学を読まない人が挑戦する場合は少し気合が必要と思います。
・一九二八・三・十五 ...
三・一五事件を題材にした作品。本作も戦旗に連載されました。
題材が題材故に、無産政党や共産主義的な考えが表に出た内容でした。
ただ、共産主義運動家達をある晩、急に検束し、拷問にかけてゆく内容で、特に拷問シーンの比重が高く、読みにくい作品ではないように思います。
特高警察による、善良な市民への不当な拷問描写を克明に書いた本作は、当然、特高警察の怒りを買い、小林多喜二は警察に要注意人物として目をつけられることとなります。
本作も特定の主人公がいるわけではないですが、思想を持って活動をしている人々一人ひとりが主役であるような書き方になっていて、それぞれの人は活動家だが、それに至る生き方があり、生活があり、家族がある。
そんな人々を突然拘束し、目を覆うような酷い拷問にあわせる様が書かれていて、事件の告発という感じを強く受けました。
どれだけ忠実なのだろうか、と思うくらい、拷問描写はとにかく凄まじいです。
その後、小林多喜二自身も拷問死したことを思うと、そういう時代だったんだろうなあと思いました。