小林多喜二のレビュー一覧
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「代表の9人は、銃剣を擬されたまま駆逐艦に護送されてしまった。それは、一枚の新聞紙が燃えてしまうのを見ているよりも他愛なかった。ーーーー簡単に、片付いてしまった。」
民主主義が当たり前になった現代では、寧ろ社会主義/共産主義という言葉そのものに若干のアレルギーを感じてしまう。しかしこの作品を読み、日本の民主化への戦いが如何に困難な道を辿って来たかということを微小だが知る事ができた。
1920年代の民主主義はあくまで支配階級の時代であり、現代のような富のbroadな配分には微塵の配慮も無かった。この時代に生まれていたなら、自分も間違いなく搾取される側の人間として酷使され、マルクス•レーニン思 -
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ー蟹工船ー
マルクスは労働力の商品化を唱えたが、蟹工船では、労働者(人間) が器と化している。その器とは、「労働」という機能を果たすための器である。家畜ならば、働けなくなっても、 その肉を食らうことができるが、壊れた器は捨てるしかない。なので、蟹工船の労働者たちは、家畜にも劣る扱いを受けている。作者はこれを、ぼかすことなく明確な言葉で、寒々と した海や船を背景に描いている。虐げられた労働者は、少しずつ、抵抗の方法を模索し、こわごわと実行しいく。その中で、大金持ちがその手下を従え、その手下が労働者を絞り上げるという図式に「国」 が加担していることが見えてしまう。手下はここでの労働を「お国の ため -
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メモ
・独特な言い回しに苦戦
・資本主義と帝国主義の関係
・赤化が歴史で習ったようなマクロなレベルでなく、一人一人の労働者から見たミクロなレベルで描かれている(教科書で学ぶのとはやっぱりちがう)
・はじめは、皆同じように不満を抱いているのに、資本家に対して何も行動を起こせず、過酷な労働環境を受け入れ、病を抱えていく労働者たちに対してもどかしさを感じた。しかし、そのように思うのは私自身が「資本主義」と「社会主義」という枠組みを当然あり得るものとして認識、学習しているから。当時の労働者たちにはその知識が欠けていた。学びの大切さはここにあるなと。(→選択決定のプロセスに大きな影響)
また、不満 -
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[ 内容 ]
日本中で『蟹工船』が読まれているという光景を、いったい何人の人が予想しただろうか。
小林多喜二の描いた世界なんて、すでに遠い昔話だと、誰もが思っていた。
が、現代日本の若い人たちは、リアルを感じながら読んでいるのだという。
本書では、なかなか一般の目にふれることのない小説・評論・戯曲を集めた。
『蟹工船』ではじめて多喜二と出会った人は、ぜひ他の作品にも目を向けてほしい。
どれも濃厚な味と匂いのある作品ばかりである。
登場人物たちが、歪みきった社会との闘いに人生を燃焼させる姿は感動的だ。
そして、この作品が昔話ではなくなってきた日本の行く末に、不安をおぼえる。
[ 目次 ]
失業 -
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小林多喜二の「蟹工船」はあまりにも有名な小説です。ですが、読んだ事がなく、また興味も持てませんでしたが、ふとした時に「読みたいなぁ!」と衝動的に思って、購入しました。
蟹工船は蟹を捕まえて処理する船の中での出来事に関するお話ですが、リアリティがありすぎて、読むに耐えないくらいでした。
なんだかこちらもその場にいるような気がして、異臭とか、漂ってきそうな気分でした。
力強い文体に惹かれました。
一九二八・三・一五も、特高に暴行されるお話ですが、小林多喜二も共産党だったため、やられました。
その経験に基づいてかかれたものでしょうか……。
あまり詳しくはないので、分かりません。
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Posted by ブクログ
はじめてプロレタリア文学というものを読んだ。当時の時代と現代では、労働環境の充実さなどが全く異なるので、当たり前だが共感できる部分は少ない。この本は共感ではなく、当時の民主化を辿る日本の社会運動とその背景とはどういうものだったのか、1920年代の共産主義ブームとはどういうものだったのかを把握するための勉強のために読むべきだ。
「蟹工船」目当てで読んだが、この話は「主人公」としての視点がなく、いわゆる神視点の俯瞰的な描き方をしている、というのもあり、非常に読みづらくわかりづらかった。その点、「党生活者」にはきちんと主人公がいて読みやすく、また弾圧を恐れながらも日陰で運動に尽力する共産主義者たち -
Posted by ブクログ
ストライキがテーマの2編からなる本書。カニ漁は現在でも借金で首が回らなくなった人たちの末路なんかで冗談に取り上げられるほどの過酷な労働環境が本書を読んで伺えます。しかし、美味しい蜜を吸えるのは常に一定の人物のみ。労働者は18時間以上、あくせく働けど、見返りなんて雀の涙ほどしかなく、それに加え、労働環境は最低で、劣悪な環境の寝床と極僅かな食事しかありません。上に逆らえば、ただ肉体的懲罰が待っているという、江戸時代の遠島を思う様なものばかり。次第に労働者の中でフラストレーションは募り、いずれそれは爆発し、…。今でいうブラック企業への報復のパイオニア的な話なのだと読んでて思いました。
党生活者も -
Posted by ブクログ
古本屋で、目につき購入しました。お恥ずかしい話ですが、小林多喜二さんは学生時代の歴史の教科書にボールドで記載されていた人という程度の知識しかなく、読み始めました。
政治的なことは、あまりよくわからないのですが、100年ほど前の日本では、共産主義的な考えがこれほどまでにタブーだったということが、よく理解できました(小林多喜二さんの末路についても、少し調べたのですが、むごい最後を迎えていて衝撃を受けました。)。
文章としては、古いこともあり、読みづらさもあったのですが、なんとか我慢して最後まで読みました。
共産主義は資本主義のアンチテーゼ的な位置付けかと思うのですが、小林多喜二さん達が戦った