小林多喜二のレビュー一覧

  • 蟹工船・党生活者

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    小林多喜二「蟹工船・党生活者」
    国家体制として、今や手練手管を尽くした独裁的な手法になりつつある共産主義は、この2作品と登場人物(作者の生涯も含めて)で如実にわかるように、もっと切実な思いと公平な理論から提唱された主義だっただろう。そこには確かに、プロレタリアの悲痛な叫びと清貧な生活とが描かれている。
    物語中途でもあるように、資本家と労働者は、切っても切りはなせない関係だ。労働者がいなければ資本家は存在しない、というか存在しても意味がない。だから手を取り合って、それぞれの特徴や強みを発揮した対等な関係が理想だ。しかしそうはいかない。死ぬまで駒として利用され、死んだら経費が浮くと考えるか、新しい

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    2025年04月06日
  • 蟹工船・党生活者

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    この時代の労働者がどんな感じで働いてたかめっちゃ細かく書かれていて、読んでて面白かった。
    あと、書かれていて面白かったところです。蟹工船は船舶じゃなく、工場だからということで航海法が適用しないが、工場法も適用されないのである。

    党生活者では、主人公の共産党員が、工場などで工場労働者を奮起させて、ストを起こそうとしている。治安維持法下での共産党員の生活がありありと分かる作品だった。


    両作品とも、読むことで1番得られるものとして大きいのは、その当時がありありとわかる事だと思う。

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    2024年12月21日
  • 蟹工船・党生活者

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    わかりにくい部分もあったものの、引き込まれる内容のプロレタリア文学。
    構成が秀逸。
    方言や時代の前提(川崎船など)が一部わからない部分もあったものの、徐々に労働者の状況が説明され、自然と共産思想に近づいていく様が段階的に描写されていた。
    人を使う側/使われる側という構造は今の時代にも通じるものを感じた。
    また、当時の情勢でこの本を発した小林多喜二が凄惨な最期を遂げたのもわかるなと思ってしまうような(この本を書いた時点で資本家ひいては国家権力に疎まれる構造かと思うが)秀逸な作品だった。

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    2024年10月07日
  • 蟹工船 一九二八・三・一五

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    蟹工船は再読。歴史的意義を鑑みて★5。内容はとにかく暴力的描写がきつい。3.15事件を共産党員側の立場で見ることができるのはすごいことだと思う。小説に描かれたような暴力により多喜二は死ぬわけだが、その死に方により小説の真実性を裏付けることになる皮肉。

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    2024年09月26日
  • 蟹工船・党生活者

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    プロレタリア文学というものを初めて読んだ。文学というものの存在意義、文学の持つ力、芸術性、それら全てを感じられる作品であった。文学とは、芸術とはこうあるべきであると思う。

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    2024年06月02日
  • 蟹工船・党生活者

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    プロレタリア文学の代表作。

    行き過ぎた資本主義への抑制、という観点では、現代社会においても、共感できるところ、学ぶべきところはあるのだろう。
    最後に監督が解雇され、自分もまた大きな社会構造の歯車でしかないことに気づかされる。
    厳しい労働環境を具体的に描く一方、この終わり方を以って社会構造全体の問題として提起することの効果はあるのだと思う。(文中にも、そのようなことは触れられているが)

    小林多喜二自身は、国家権力に抹殺されたわけでが、この作品が今なお読み続けられているということは、イエスキリストではないが、殉教者として将来への影響を却って大きくしているのだろう。

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    2024年01月21日
  • 蟹工船 一九二八・三・一五

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    蟹工船に集められた人たち。
    彼らは日雇い労働者のようなもので、かつては土地の開墾や炭鉱で働き、たまたま今回はここに流れ着いた。
    淡々と描かれる労働の描写は返って凄惨さを増す。
    ひどいの一言では済まない感情が湧く。
    炭鉱で働いていた祖父を思う。
    昔々の話ではない。まだこのような状況が残っていたに違いないのだ…
    戦争だけが祖父母の代の代名詞ではない。
    過酷な過去を背負い、生きていくのはどんな心情だったことか。いくら年月が過ぎて幸せを手に入れても、拭いきれない思いがあったはず。
    一般的にはプロレタリア文学として知られる本書であるが、個人的にはそんな想いを起こさせる小説だった。

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    2022年09月21日
  • 蟹工船 一九二八・三・一五

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    かなり政治的なところがあるので今まで遠ざけていたが。思い切って読んでみることにしました。かつて日本にあった理不尽かつ残酷な労働環境の実態がありありと伝わってきました。こういったプロレタリアートの考え方は100%賛成は出来ませんが、そうでなくとも楽しめる(?)作品です。

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    2021年04月04日
  • 蟹工船 一九二八・三・一五

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    小林多喜二の「蟹工船」と「一九二八・三・一五」を読んだのは約30年前。
    30年前も岩波文庫で読んだが、今度はワイド版岩波文庫。

    最初に読んだときは、

    漁夫たちは寝てしまってから、
    「畜生、困った! どうしたって眠れないや!」と、体をゴロゴロさせた。「駄目だ、伜が立って!」
    「どうしたら、ええんだ!」―終いに、そういって、勃起している睾丸を握りながら、裸で起き上がってきた。大きな体の漁夫の、そうするのを見ると、体のしまる、なにか凄惨な気さえした。度肝を抜かれた学生は、目だけで隅の方から、それを見ていた。(蟹工船 p56)

    のような強烈な描写に圧倒され、それが小林多喜二の作品のイメージになっ

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    2020年04月20日
  • 蟹工船・党生活者

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    最初はプロレタリア文学として、その思想的背景が嫌であえて避けていた。
    間違いだった。

    少なくとも「蟹工船」は、共産主義やその周辺の思想的な記述はポツポツと出るだけ。
    しかも見かけ上は過度の共産主義賛美な箇所は見当たらなかった。
    作者の意図を度外視すれば、この小説の面白さはイデオロギー(団結、反権威など)とは別のところにあると思う。
    現代に生きる我々としては、例えば多彩な人物の登場であるとか、セリフを多用した臨場感や濃密な空間を設定し、そこで起こる出来事や感情の動きを一つ一つ追うとかといったいわばオーソドックスな手法から、小説的面白さを汲み取ることができるのではないか。

    そもそも「蟹工船」の

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    2024年12月03日
  • 蟹工船 一九二八・三・一五

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    下級労働者達の苦闘のお話。いや、面白かった。後半は実は読めてないんですが、面白かったです。
    赤化とはこの様に行われるのかと笑いつつも、恐らく今現在でも通用するであろう悲惨な労働現場で働く方々のお話でした。

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    2011年08月16日
  • 蟹工船・党生活者

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    かつての共産党員は、共産主義活動に走った人としてだけでなく、民主主義の礎を作るために奔走したと捉え直すと深みが増す。小林多喜二はその最中で殺されてしまったが、この作品は共産党員の魂が殺されない終わり方で彼のメッセージがビンビン伝わってくる。その置かれた境遇を考えれば、感情を排してなるべく起きたことにフォーカスした淡々とした語り口であることも評価できると思う!

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    2025年11月11日
  • 蟹工船・党生活者

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    時代の緊張感が感じられた。太平洋戦争というものが、前線の軍人・銃後の国民以外にも悩み戦い、命をかけることになっていたという事実を知ることができた。官民以外の切り口からの戦争を感じられる作品。個人的には「党生活者」の方が没頭できた。

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    2025年10月22日
  • 蟹工船・党生活者

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    昔、三浦綾子の「母」を読んでから、心にあった「小林多喜二」。
    以後、時折、瞬間的なブームになる「蟹工船」を、ついに読んでみた。

    著者の最期が頭にあるから、よくこういうことを書けたなと、緊張感を持って読み進める。内容的にも息が詰まる。

    当時の季節労働者。自らの志願や、斡旋屋からの騙し、農村の長男以外の過酷さ。階級的社会活動。
    そして、非合法の政党?の活動が、どのような下で進められ、活動者を増やしていったのか。。
    息が詰まる。

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    2025年10月19日
  • 蟹工船・党生活者

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    ネタバレ

    題名について聞いたことはあるもののどんな内容か全く知らなかったため、読んでみました。

    一言で表すとこの本が書かれた時代のことがよくわかる内容でした。

    労働者が搾取されていた時代に待遇改善を求めての活動と、今では考えられないような行動をしており、現代でも海外ではストライキ等ありますが、日本では全く聞かないので昔はやっていたのだなと思いました。

    本を読むだけで労働環境の悪さが伝わってくるため、やはり名作とは感じました。

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    2025年08月03日
  • 蟹工船・党生活者

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    蟹工船の情景描写が凄い。
    その時代を生に表す小説って感じがして、読んでるだけで昭和初期を生きている感覚がする。

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    2025年07月24日
  • 蟹工船・党生活者

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    ネタバレ

    汚い、つらい船
    労働者たちが徒党を組んで立ち上がったらリーダー格だけどっか連れてかれて、そっかリーダーがバレたらこうなるわなって気づいたくだり

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    2025年03月17日
  • 蟹工船 一九二八・三・一五

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    現代でも、資本主義である以上は資本家の方が「賢く」「(フィジカル的には)効率よく」暮らせる。
    実務でがむしゃらに体や手やを動かす存在より、意思決定の主体になれば「成功者」と言われる。

    肝心なのはその成功者さんたちが、全体で見た時にいかに過酷な環境を強いることがないか。そうできないシステム(法律や規制)、そうさせない技術(AIやロボット)があるか。なのだろうと推測された。

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    2024年11月26日
  • 蟹工船 一九二八・三・一五

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    「蟹工船」からは文学、「一九二八・三・一五」はルポのような雰囲気を感じた。三・一五というタイトルや、明らかな日本名を完全に無視できるなら、同時期のロシア文学と言われても違和感がない。

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    2024年11月23日
  • 蟹工船・党生活者

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    北海道出身として読んでおかねばならない気がしたので、買っておいた本。読んでみた。
    まず、この本を読むまで赤とかプロレタリアとか知識も興味もなかった。

    「蟹工船」は北海道人ならなんとなく読み進めることが出来るレベルの強い方言が強烈な作品だと思う。主人公のいない作品、というのも面白い構造だなと思う。
    「党生活者」は当時の共産党の組員(?)たちがどんな風に生活しているかを覗き見るような作品であったと思う。

    どちらも、現代の日本からは考えられない「闘争」が描かれている。日本の近代史年表を読むくらいならこの作品等を読んでいた方がよほど当時の情景がありありと目に浮かぶ気がする。
    極限状態の生活の中でも

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    2024年11月14日