河﨑秋子のレビュー一覧
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十勝で畑作を営む家族と周辺の人々の点描。
するりするりと読みやすい文章で苦痛なく読めました。200ページちょっとでもフォントが大きめで、ボリュームもそこまでではないのだと思います。
章ごとに各家族や周囲の人々の視点で仕事や将来、人生の振り返りといったそれぞれの抱える思いが、丁寧に語られていきます。面白いっちゃ面白い。しかし、全体を通したなにか訴えかけてくるテーマ、というのは特にないような。私にはわかりませんでした。
家族それぞれの葛藤や、向き合う姿も、劇的な何かとかはなく本当に「そうなるだろうな」という感じのものです。現実的ではあるが面白みがあるわけでは…。
要するに「すっと読めたけど、でもこれで作者は何を訴えたかったのか、はちょっとわからない」という感じです。別に訴えたい何か、というより、北海道の農家の生活をただ描きたかった、という感じなのかもな、と思いました。
でも、それにしては「北海道らしさ」は文面からは特に感じなかったかな…どこの地方でもこんなもんかな、という。 -
Posted by ブクログ
各章で主人公を変えながら、十勝の一地域に暮らす数軒の家族を描いた作品です。
何代か続く畑農家、やり手のメガファームの社長一家、移住してきたカフェの夫婦など、畑農家の仕事や農村特有のコミュニケーションに鬱屈を抱えた人々が主人公です。
確かに舞台は河崎さんの地元・十勝です。しかし時代小説が、舞台が過去であるというだけで、テーマ的には現代小説と変わらない事が多いように、この小説の中で起きる問題も、少し色を変えれば、都会の例えば商店街でも起きる内容です。ですから、読みながら「これは河崎作品である」という事を強く意識する事は有りませんでした。
最終的に主人公たちは変わります。でもそれは、全てのしがらみを振り切る様な力強い一歩ではなく、しがらみを負いながらもかろうじて前を向くと言った調子です。リアルと言えばリアルだけど、爽快さは余りありません。
悪くは無いのですけれど。河崎さんの特長だった力強さは影を潜めた作品でした。 -
Posted by ブクログ
⚠️この作品には「鳩」と「馬」の負傷・死亡描写が含まれます。
この作品に登場する「鳩」と「馬」には、古くから人間の都合で使役され、ときには人間によって命を奪われてきた動物だという共通点がある。鳩は伝令として、馬は農耕や移動手段として、彼らの生体能力を人間に利用されてきた。ときには人間の都合で引き起こされた戦争で、彼らの多くも犠牲になっている。
現代ではその役割が科学技術に置き換えられ役割を果たし切った彼らを、今度は利用価値がない厄介者として扱うのは、あまりにも人間の身勝手ではないだろうか。
鳩の人間とともに歩んできた種としての歴史に、想いを馳せてみてほしい一冊でした -
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マチはトレイルランニングを趣味としていて、山を自由に駆け回って楽しんでいるけれど、何か物足りなさを感じている。そんなとき偶然に開いた雑誌がきっかけで狩猟に興味を持つ。
大学時代も社会人として生活するなかても、自身の考え方や物事の捉え方、経済的な立ち位置が、一般的な標準値の範疇から少し外れていることに疎外感を感じてもいた。
狩猟免許も取って、猟友会のメンバーに恵まれてハントレスの経験を積んでいくうちに、一対一で獲物を追い仕留めることになる。その時に、野蛮を得た、とマチは感じる。これはなにかと比べることのない自由を得たということだろうか。
狩猟のシーンでは、山に入れば何がいるかもわからないままに熊笹を踏み分け、藪を潜り抜けて進み、雨が降れば泥を含んだ靴で歩き続ける、そんな過酷な自然がリアルに描かれている。もしも、自給自足の生活を余儀なくされたとしたら、狩猟生活よりも土を耕し種を蒔き作物を収穫する農耕生活を選びたいと思ってしまつた。
さまざまな動物たちが山を下りて人との境界線を越えてきている今、それに対峙するハンターの方々の感じ方にも思い至ることができた。 -
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農業=スローライフとは限らない・・・
3つの短編で森田繁子(農業コンサルタント)が活獣害問題や経営改革や後継問題などを解決していく物語。
農業=スローライフと一般的に考えてしますけど、そんなに単純ではない。
そして、農業関係を通していろいろな悩みを抱えて生きているのだと感じます。
森田繁子のちょうどいい落とし所を模索するのも良かったです。
お互いが8割(腹八分)納得いく形を見つけるのにも感心しました。
誰もが憧れる、スローライフも完璧ではないため、どこまで許容できるか考える必要がありますね。
続編も出ても面白い小説だと思います。
森田繁子の半生も気になりるところです。 -
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ネタバレ文庫版を手に取り。表紙の鳩がかわいいなと思いましたがストーリーはなかなかハードと言うか想像していたような明るめの話ではありませんでした。読後思えば河﨑先生が書くならさもありなん、なんですが。
なんだか不思議な話でしたね。非現実的という意味ではファンタジーなんでしょうけれど少しホラー要素やお仕事小説の趣もあり独特の世界観です。
主人公が若い女性なのに疲れ果てていておじさんのような愚痴や行動を取るのが独特の味わい(?)で親近感が湧きました。でも本作の好き嫌いは結構分かれそうな気がします。
ともぐいを最近読んでしまったせいか、やはり迫力や訴えるものについては比べてしまいました。
話の内容的にはおそらく、本作の方が好きだという人が多いように思いますが、自分はともぐいの方が作品としては好きでしたね。
競走馬についての描写が良かったですね。馬の繁殖については世間では知らない人の方が多いと思うので。