ある意味問題作とも言えるかもしれない直木賞受賞作、とうとう読みました。
いやすごかった。
ついにこういう北海道を描く作家が出てきたと思いました。
いや、河﨑先生がデビューしたときからそう思ってたけど、この人は男とか女とか人間とか動物とか言う区別なく荒々しくある命そのものを描き出す作家なのだなぁとつく
...続きを読むづく思いました。
熊爪という人間の、他人との相互理解を拒否する孤絶した生き方の凄まじさと揺らぎに息を飲みつつ一気読みしました。
熊爪が赤毛と対峙した時に赤毛に感じた「正しい怒り」「正しい憤り」という表現に痺れました。命がけってこういうことなのだなと、文を追いながら何度も息詰まるような感覚がありました。
しかし、どんな鍛練や思考形成をたどればこんな話を書こうと思えるのか?
羊飼いをして、本作の舞台となった白糠やさらにはニュージーランドまで行ってその研修をして経験を積んだという話を何かで読んで、すごいなぁとは思っていたけれどそういう経験も本作を生む下地になっているのだろうか?
羊飼いと熊と戦う話との間にはものすごく乖離があるようにも思うけれども河﨑先生の中では地続きになっているのだろうか?才能、はそれは確かに存在するのだろうけど才能だけではやはりこのような話は書けないのではないだろうか、と本作を生み出すに至った下地をもっと知りたいと思いました。
本作を好き、という人はあんまりいないかもしれない。でも圧倒的に惹きつけられて目が離せなくなってしまった人は続出してることでしょう。
好き嫌いを超える作品の魅力というか魔力ともいうか、そういうものに捉えられて読後もちょっと呆然という感じでした。いやほんとすごいものを読んだ。
この方は今後もきっと文学史に名を残す作品を多数間違いなく生み出していくでしょうね。