河﨑秋子のレビュー一覧
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単行本で読んで、文庫本で2度目です。
見た目は表紙のようにかわいい白い鳩。しかしその鳩には・・・という、河崎さんならではの動物感のある物語。
それだけでなく、日常の女子のリアルな、甘すぎない生活も描かれていて、これまでの作者の小説とは別の分野を切り拓いたエンターティメント小説になっている。ゾワっとさせるところは変わらないのでご安心を。
中身のことは単行本で書いたので、なぜ川上和人さんが解説をしているのかを書いておきたい。
川上さんは鳥類学者で、フィールドワークに重きを置いている、つまり実際に海鳥の調査のために孤島に赴く。ハエが大量に口に入ってきても、ネズミが海鳥を全滅させる様子を目の当たりに -
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河崎秋子『鳩護』徳間文庫。
『鳩護』に選ばれた者の数奇な運命を描く不思議な小説。これまでの河崎秋子の小説とはテイストが異なり、中村文則の『掏摸』に雰囲気が似ている。
主人公の小森椿という女性会社員の漏らす仕事の不満がどこか滑稽で、やや深刻なテーマの中で一服の清涼剤になっている。
ある日、マンションに独り暮らすアラサー会社員の小森椿が外の物音にベランダを見ると、真っ白な鳩が蹲っていた。鳩は怪我をしているらしく、飛び立つ様子もなく、仕方なく暫くの間、面倒を見ることにした。白鳩は椿に懐き、椿もハト子と名付け、可愛がる。
そんな中、椿は会社の帰りに幣巻と名乗る怪しい男に「お前は俺の次の『鳩護 -
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河崎秋子氏の本を読むときは、身構える。その中身はいつもヘビーで、特に動物を扱うときは、自分にとってやりきれない内容を含むことが多いからだ。そのショック受けた後遺症の元になったのが、ヒグマとペットの犬を扱った『肉弾』だった。そのストレートな描写に打ちのめされた。(いや、『颶風の王』からすでにその強烈な印象はあったのだけれど!)
犬や猫はペットとしての付き合いしかない。家畜の最後を目にしたこともない。北海道では野生動物ともよく出会うし、それを喜びともしている自分が、いつもつきあたる問題だ。心してかかる。
結果、確かに残酷な現実ではあったが、過去の作品とは印象が全く違う物語だった。
それは、登場人 -
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「発展と病は隣り合わせ。人間が活動するかぎり病原体もまた大きな移動をする」「人と物の流れが感染症の拡大を引き起こしてきたことは人類の歴史が証明している」コロナの死者1日で500人超え、過去最悪なのに、また移動奨励GOTO。なんなんだろう…「動物実験でもそうだが、研究の上で殺生は仕方ない。だがそこで何らの感情も波打たなくなった者は、いずれ研究のためだと人を殺生することにも戸惑いを持たなくなる」「島で今生きてる人のためじゃありません。これから島で生きていく人のためです。いまは正しくなくても、将来正しくあるためにやるべきことをやっている」捕食システムにうまく乗っかり繁殖し子孫を広げ続ける巧妙な寄生虫
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ネタバレこれまで2度、渡道しました。キタキツネのエキノコックスには注意しました。礼文島は2~3度訪れました。河﨑秋子さん、作品の幅をどんどん拡げてらっしゃいます。「清浄島(せいじょうとう)」、2022.10発行。昭和29年当時、呪いの島と言われた礼文島に、札幌の道立衛生研究所の土橋義明32歳がエキノコックス症研究・対策で派遣され、長きにわたり苦労を重ねる物語。特にネズミ、キツネ、犬、猫と、野性のみならず飼い犬や飼い猫までエキノコックスが寄生しているかいないかの解剖検査を。人間のため動物を犠牲にするやるせなさ。感染症は怖いけど、読んでていたたまれなくなりました。礼文島は清浄島になり、エキノコックスは撲
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ネタバレ北海道礼文島で多発した寄生虫による感染症「エキノコックス症」から島民の命、暮らしを守るための闘いを描いた作品。
エキノコックスは中間宿主であるネズミを食べたキツネや犬、猫が終宿主となりその体内で成虫が卵を産み、それが糞とともに体外に排出される。
なんらかのきっかけで人がその卵を摂取すると、肝臓肥大や肝硬変などをもたらし、死に至ることもある。
昭和29年に道立衛生研究所から礼文島へ感染経路を調べる現地調査のため派遣された土橋は、日々、野犬の剖検に没頭するが、エキノコックスの痕跡を見つけられず、衛生研究所は11名の調査団を島に送る。
そして、野生動物だけでなく、島民が飼育している犬や猫まで全て捕獲 -
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若い女性が狩猟雑誌を見かけて興味を持ちハンター(女性なのでハントレス)になる、というとライトな表現だけれど、主人公のマチがしっかりしすぎてだいぶただものでない。
北大のシーンなど読みながら景色が浮かんできて、主人公の家が円山の極太で(親が老舗菓子店の専務やらオリンピアン)できた親だし、自立心のあるよい子だけどどこかドライなのが、北の厳しい大地で育つサラブレッドなんだろうなと読み進めた。
マチと共に狩猟免許の取り方をまなび、ハンターの心得を学べた。今後、無理解にクマの駆除にクレームつけたりするようなことがなくなり、良識あるハンターが増えるといいなと思った。続編読みたい。 -
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裕福な家庭の育った女子大生がふとしたきっかけで狩猟に興味を持ち、ハントレス(女性ハンター)として一人で熊に立ち向かうようになるまでを描いた作品。
河崎さん、何だか雰囲気が変わってきましたね。デビュー当時はとても重苦しく暗いけど力強い作品と言う印象が強かったのですが、最近は『森田繁子と腹八分』など随分と軽快になって来ました。本作も、狩猟を扱いながら、やや軽めの爽やかなエンタメ作品です。さすがに力のある作家さんで面白いのですが、どこか読み始めに当たってちょっと躊躇するような「河崎さんらしさ」が失せてきたような気がします。動物を殺すことについてはニュートラルの立場ですけどね。 -
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ネタバレ第170回直木三十五賞
血生臭く、力強い作品だった。
タイトルの「ともぐい」の意味、ラストの展開をどう受け取るのかを言葉にできず、色んなレビューを読んでみた。
そんな中、「己が負けた相手に食われ死ぬのが自然の摂理」という内容の一文を見つけて腑に落ちた。
太一を助けたくだりから
→1人で生きてきたつもりが熊爪自身も負傷し人の世話になる
→赤毛との対決で死ねず自分は獣でも人間でもない半端もんだと思う
→温もりを求めて陽子と生活を始める
→陽子は母として生きる決意をし、熊爪を殺して出ていく
の流れが秀逸だと思った。
ラストで殺す必要があったのか?と思わなくもないけど、人にも獣にもなれず遺伝子を