河﨑秋子のレビュー一覧

  • ともぐい
    読後、心が静かに震えた作品。
    荒々しく、猛々しく、むき出しの熊爪の生き方を想い、死に際の静けさの中に、感動があった。
    熊でもなく、人でもなく、ただただ、生まれ、朽ちるまでの狭間でひたすらに生きる事をしていた。
    熊になれなかった熊。
    人にはなりきれなかった、熊爪。

    最後、犬が戻ってきてよかった。
  • ともぐい
    熊と熊のともぐい。
    熊と人間のともぐい。
    人間と人間のともぐい。
    動物も人も、命あるものはみな命を食らって生きている。
    そんな事実を、血肉の香りが漂ってくる圧倒的な描写と熱量で突きつけてくる。

    人間にも熊にもなれない熊爪が希求したのが「ともぐい」だ。
    赤毛と熊爪のともぐい――種を超えた「ともぐい」...続きを読む
  • ともぐい
    自分の親さえ知らない主人公は、狩猟を生業とする男に拾われて育った。生まれて此の方生活の大半を山に依存している。街に出ないわけではない。必要最小限のものを買うために遠い街まで出かけるのだ。金がない。狩猟で得た肉や毛皮・山菜等を売り、銃弾、酒米と僅かな物資を買う。主人公の名前は、稚児の頃、狩猟で得た熊の...続きを読む
  • ともぐい
    熊爪さんの生き様

    生まれ育った環境に順応できるか、できないようならどう生きるか。

    自分は切り開いて行けるか考えさせられる。


    久しぶりに読んだという感触の大きい本でした。
  • ともぐい
    熊文学。緊迫感のある狩の描写が素晴らしかったです。
    ゴールデンカムイという漫画でも熊との戦いがよく描写されるのですが、実際はこういう生きるか死ぬかの二択なのだろうなと思いました。
    話の本筋ではないのですが、とにかく主人公の狩の相棒である犬がいい子すぎて…。犬好きには特に刺さること間違い無しです。犬文...続きを読む
  • ともぐい
    「新たな熊文学の誕生!」と聞いて楽しみにしてた。いい意味で思っていたのと違っていた。「人も獣なのかもしれない。いや、獣なんだ」と感じた。
  • 清浄島
    道立研究所に所属する研究者としての職責と向き合う土橋さんの姿に、今、モヤモヤしている私のパートのお仕事の悩みなど一掃されました。人間の命、愛玩動物の命、野生動物の命、寄生虫の命… 比べることなど意味はなく、ただ、自分のできる最大限を尽くすことしかないのですね。
  • 介護者D
    介護、小型犬のペット、アイドルの推し、どれも自分のなかでは引っかるところのない要素だらけなのに、気がつけば一気読みしていた。しかも、どの要素もリアリティがあって(小説家なら当たり前かもしれないが)驚いてしまった。

    琴美は派遣先の会社の契約が切れるのを期に、父親の介護をするため東京から札幌の実家に帰...続きを読む
  • 介護者D
    126介護で辛く暗くなるところを、推しがいたことでつまらない毎日に一瞬の光が差す。懸命に前向きに生きる一人の物語。北海道の毎日が伺えてよかったです。
  • 介護者D
    まだ30代で父親の介護をすることになった琴美。彼女の支えは女性アイドルグループの推し活。
    介護というのは終わりが見えないし、よくなることはない。周囲の人たちの言葉に傷ついたり、イラついたりする。すごくわかる。推し活に心を支えられる気持ちもすごく共感した。
    それなのに推しのグループがコロナ禍で活動でき...続きを読む
  • 鳩護
    単行本で読んで、文庫本で2度目です。
    見た目は表紙のようにかわいい白い鳩。しかしその鳩には・・・という、河崎さんならではの動物感のある物語。
    それだけでなく、日常の女子のリアルな、甘すぎない生活も描かれていて、これまでの作者の小説とは別の分野を切り拓いたエンターティメント小説になっている。ゾワっとさ...続きを読む
  • 清浄島
    河崎秋子氏の本を読むときは、身構える。その中身はいつもヘビーで、特に動物を扱うときは、自分にとってやりきれない内容を含むことが多いからだ。そのショック受けた後遺症の元になったのが、ヒグマとペットの犬を扱った『肉弾』だった。そのストレートな描写に打ちのめされた。(いや、『颶風の王』からすでにその強烈な...続きを読む
  • 清浄島
    久しぶりに一気読みしてしまった。それぐらい、次の展開が気になる内容だった。礼文島も根室も訪れたことがあり、描かれている風景が自分の思い出と重なったからかも。主人公はいい人に恵まれているな。
  • 清浄島
    「発展と病は隣り合わせ。人間が活動するかぎり病原体もまた大きな移動をする」「人と物の流れが感染症の拡大を引き起こしてきたことは人類の歴史が証明している」コロナの死者1日で500人超え、過去最悪なのに、また移動奨励GOTO。なんなんだろう…「動物実験でもそうだが、研究の上で殺生は仕方ない。だがそこで何...続きを読む
  • 清浄島
     これまで2度、渡道しました。キタキツネのエキノコックスには注意しました。礼文島は2~3度訪れました。河﨑秋子さん、作品の幅をどんどん拡げてらっしゃいます。「清浄島(せいじょうとう)」、2022.10発行。昭和29年当時、呪いの島と言われた礼文島に、札幌の道立衛生研究所の土橋義明32歳がエキノコック...続きを読む
  • 清浄島
    北海道礼文島で多発した寄生虫による感染症「エキノコックス症」から島民の命、暮らしを守るための闘いを描いた作品。
    エキノコックスは中間宿主であるネズミを食べたキツネや犬、猫が終宿主となりその体内で成虫が卵を産み、それが糞とともに体外に排出される。
    なんらかのきっかけで人がその卵を摂取すると、肝臓肥大や...続きを読む
  • 介護者D
    前半、というか読み始めて半分以上は、はっきり自分の思いを伝えられずにいる琴美にイラつく思いでいたが、施設への入所を決断した父と、解散コンサートで、きっちり琴美を認識してくれた「ゆな」の姿に涙が止まらなくなった。
    「推し」の存在と価値の重さは当人にしかわからないけれど、人が生きていくうえで、とてもとて...続きを読む
  • ともぐい
    明治のころ、北海道の山中で狩猟や山菜採りなどで生計を立てている熊爪。人の社会に馴染めず獣の道理は守りながら暮らすが、それも破綻し半端者になったと個人的には思う。主人公をそれほど好きにはなれないが、物語としてすごく感動した。『ともぐい』というタイトルから著者は、人も獣も誰かを傷つけ、自分もまた誰かから...続きを読む
  • ともぐい
    死んだ後の自分の体を同じ山に生きる獣に喰われたい、てのは自分には絶対に理解できない感情なんだけど、人間だけは特別って思い上がっているからなんだろうなぁ、と思う。
    色々と考えさせられ、揺さぶられるテーマが散りばめられた作品だったと思う。
  • ともぐい
    2023年下期直木賞受賞作品

    直木賞作品であり一読しました。
    熊文学いや野獣文学いや動物文学の傑作とい言えるでしょう。
    熊との闘いリアルな描写は圧巻です。