河﨑秋子のレビュー一覧
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ネタバレ 購入済み
河﨑秋子さん、こういうカジュアルなのも書くんだ〜、と思いながら読みました。
舞台が東京で、出版社勤めの女性小森椿が主人公。
部屋のベランダに白鳩が迷い込んできて、好きでもないのに面倒をみていたら、「お前は次の鳩護だ」と先代の鳩護の幣巻という男に言われ。その後、初代や何代かの鳩護の夢を見て、最後、「ヤバい男」の鳩護をぶん殴って終わる…。
と、書き出すとよくわからない話になってしまったけど、なかなか爽快だった。
スピンオフの短編もついていて、ちょっとオトク感もあったり。 -
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ネタバレ重い話でなかなか読み進められず…
礼文島、道東に行ったときのことを思い出しながら少しずつ読み進め、
約1年かけて読み終わった…。
ちょうど先日NHKの北海道道で礼文島のトド撃ち猟師が、昔エキノコックスの際に繋いだ犬を撃ったら大層苦しませてしまい、それ以来、獲物が苦しまないように一発で仕留めているというドキュメンタリーが放送されて、島民の苦しみや歴史の生々しさを感じた。
木の実をつまんで食べることができないとか、本州では聴いたことなかったので…登山のときキイチゴとかそのまま食べていた。札幌に親が遊びに来て、そのへんにはえてたグミの実を取って食べていて、ダメ❗️といったらポカンとしていたので観光 -
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ネタバレ大正末期、ネズミ被害に頭を悩ませる人間が
天敵であるキツネを礼文島の野に放った。
P258
〈良いことだと思ってやったことが
後の世で悪いことを引き起こしちまう〉
寄生虫による感染は、どのように起こったのか。
昭和29年、解明するため島へ派遣されたのは道立衛生研究所の土橋。
研究を進める間に下されたのは
終宿主となる可能性のある動物、キツネ、イヌ、ネコを全て処分すること。
島民、土橋にとって過酷という他ない決断だった。
エキノコックス撲滅のためとはいえ
飼っているイヌ、ネコを供出し処分させるなんて。
河﨑さんが描くのは今回も命について。
驚いたのが、P387
おわりに書かれていること。 -
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河﨑秋子さん初読み『鳩護』の感想と概要になります。
概要です。
パッとしない日常を過ごす小森椿は、今日も通勤を邪魔する鳩の糞に苛立ちながら出社する。まともに仕事をしない先輩の不満を胸に抱きながら帰宅したある日。ベランダに白い鳩が落ちていた。奇妙な白い鳩との出会いから椿は鳩護の存在を知っていく。
感想です。
初読み作家さんですが読みやすくて、椿の心の中での愚痴や白鳩と次第に仲睦まじい関係に変わっていく様を読んでいると、何度か笑みが零れてしまう癒しの作品でした。起承転結という面では物足りなさがあったものの、クスッと笑いたい方にオススメです♪ -
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寄生虫感染症なのに礼文島の風土病とも言われた「エキノコックス症」に対する公衆衛生学者と町議、役場職員の闘いを描いた作品です。
河崎秋子さん。私はこれまで「次から次に強い文章でたたみ込んで来ます。」「なにせ河崎さんの作品は構えてしまいます。重くて暗い。」などという感想を書いてきましたが、今回はかなり印象が違います。柔らかくなった。良い意味で力が抜けてきた感じがします。
まだ正体も定かでないエキノコックス症に誠実に立ち向かった人々、主人公の若手研究員・土橋、役場職員の山田、村議の大久保、土橋の上司・小山内、そして学生の沢渡。それぞれ見事な造形です。みんな柔らかく影を引きずっていて、その分深みがあり -
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読書備忘録759号。
★★★★☆。
ドキュメンタリーかと思うばかりの物語でした。
吉村昭を読んでいるのかと勘違いするくらい。笑
物語はエキノコックス感染症撲滅に人生を掛けた人々の戦いを描く。
時は大正。礼文島を山火事が襲う。森林の再生の為に苗木を植えるが植えたそばからネズミが食う。
ネズミを駆除するために千島からキツネを連れてくる。そして、キツネにはある寄生虫が巣食っていた・・・。
時は戦後の昭和29年。
北海道立衛生研究所の研究員土橋義明は礼文島に向かう船上にいた。
礼文島で度々患者が報告される奇病の調査の為だった。
奇病はエキノコックス感染症。肝臓に寄生虫が巣食い、最終的に死に至る -
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エキノコックス症という言葉を昔どこかで聞いたことがあり、北海道に行ったときはよく意味も分からずキツネに触っちゃだめよという言葉だけが先走ったまま何も知らずに過ごしてきた。
この本を読んでようやくその寄生虫の存在と、キツネに限らず犬や猫にも存在することを知る。利尻島は有名でよく聞く名前だが、礼文島はわき役でその歴史も知らなかった。この小説は礼文島を郷土愛のように書かれており懸命なエキノコックス撲滅に多くの犠牲を払い、いつしか”清浄島”という称号を手にするも、決してエキノコックスは絶えず、現在も日本の全土に存在する不治の病となっていることに驚いた。
研究員や、役所担当者、議員や島の住人達、そして次 -
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ネタバレ読んで楽しい話ではありません。しかし北海道に住むものとしては知らないことにはできない話でした。なかなか終焉しない感染症に見舞われている今、かつて謎の感染症と思われていた寄生虫による病との闘いの物語が世に出てきたのは自分には時代の要請だったのでは、という気がしました。
河﨑先生がこの物語をいつから構想されていたのか存じ上げませんが、よくぞこの重い話を書かれたなと尊敬の念を覚えるとともに、北海道にはまだまだ日本の他地域にはない物語の素材が未発掘のままあるのではないかとも考えました。この物語をどの時代まで描き、どのようにまとめるか、終わらせるか悩まれたのではないかなぁと勝手に想像しました。今も現実 -
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ネタバレ昭和29年北海道の離島、礼文島の出身者から相次いで発見された「エキノコックス」。
腹が膨れて死に至る感染症を撲滅すべく、北海道立衛生研究所の研究員である土橋が奮闘する。
流行拡大を防ぐためにキツネ、野犬、野猫のみならず飼育されてる犬猫までも処分という決断に至るまで。
まるで映像を見てるかのような描写だと思った。
それほどの熱量が、ガンガン伝わってくる。
生死に関わることを追求し、やるべきことを恨まれながらもやるからには覚悟が必要。
土橋とは性格が合わないのか…と思っていた役場の山田、議員の大久保、大学生の沢渡は礼文島を離れた後も交流するほどになるのは、彼らが土橋の気持ちをよくわかっていた