河﨑秋子のレビュー一覧
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農業コンサルタント森田繁子が、その型破りな行動で、悩めるクライアントを救うという物語。
森田繁子のキャラが良すぎて、物語が進むにつれ、どんどん好きになってしまった。基本は農業に似合わない濃いメイク、派手な服装で戦闘力高め。ただTPOにあわせてスタイルを変える柔軟性もある。そして謎の経歴と人脈。
ご飯を凄いスピードで、且つ美味しく食べるところが好き。食べることに真摯に向き合う姿勢が更に人を惹き付ける。
彼女の謎が深まったところで、その謎に迫る「森田繁子の向う脛」が、絶妙なタイミングで入る。
キャラ一本だけと思いきや、獣害問題、後継者問題などの本質にも切り込む。
彼女のモットーは食べるこ -
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ネタバレ'24年 第170回直木賞。初読み 河﨑秋子さん。
面白いかどうかは別なんだけど、すごい本を読んだ気がする。
直木賞も納得なのだけど、純文学のようでもあった。
明治初期、北海道白糠町の猟師 熊爪。来歴はほぼ不明。人との関わりは獲物を最低限の金品に換える時に下山する程度。野生のヒト科ヒト属ヒト。
生死を賭けた猟師と羆の戦いの物語かと思ってたら全然違ったw
第二部とも言える、町から貰った陽子の出産育児を通して描かれる後半に、熊爪というヒト⇒人の生命の哲学が。
目の治療をした場面と、赤毛を仕留めた後の射精が非常に印象的。「見えるのに見ない、楽に生きられるのにそうしない」「理解できない、 -
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ネタバレ美味しそうに食べさくさくと仕事をし礼儀正しく人の機微にも通じている森田繁子さん。
ビジュアルには圧倒されそうだけれどこんな人好感持たずにはいられないでしょう。
どんな人生を歩んできたのかもさることながら、ちょっとワケアリそうな娘と孫の話が向こう脛(泣き所ってことでしょうね)という章でチラ見せされているのがとっても気にかかります。
それにしてもでてくる食べ物がみんな美味しそう。読後装丁を見返すと繁子さんのようにお腹が鳴りそうです。
続きが楽しみな一作が登場しましたね。次はどんな人たちが出てきて、どんな風に手腕を振るうのか、モリシゲさん2作目早くも待ち遠しいです。 -
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ネタバレ「愚か者の石」と「森田繁子と腹八分」を読んで北海道小説河崎秋子に注目、追いかけてみようと読んだ3作目がこの本。いやいや、またまた全然違うテイストの小説。
人間と獣の違いってなんなんやろ?どこからが人間でどこからが獣なんやろって、読んでる最中は夢中でも、どこかに境界線を意識させられている。
主人公熊爪の生き様は、単純明快。生きて猟をして飯を食って排泄して、時々町に出て肉や毛皮や山菜を売った現金で米や調味料を仕入れて、女を買う。
猟のことや山で生きていくことの手間は惜しまないが、人間らしい面倒くさいことは極力省略したがる。壮絶なミニマリズムライフである。
中盤以降、熊爪の生活に迷い熊と盲目の -
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愛情という感覚を知らずに育った熊爪の生きざまが興味深かった。
シンプルでより動物に近い生き方。
街の人々の混沌とした関係や感情になじまない。
その素朴さに魅かれ面白がった良輔の気持ちは、よくわかる。
己の弱さのためだけに、熊として強く立派で素晴らしい赤毛を殺してしまったときの熊爪の気持ちは、言葉で表しにくい痛みだと感じる。
自分の醜さと弱さを痛感したことと思う。
あそこで、熊爪は終わったのだと思う。
陽子の気味の悪さ。
名前からして存在を欺いているかのようだ。
この物語において、女はこわい。
どの女も、こわくて気味が悪い。
男のシンプルさ・愚かさが引き立つように思った。
私には、熊爪の最 -
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釧路から西へ10km程離れた白糠(しらぬか)の山中が主な舞台となっている。
そこに熊爪と称する猟師が、一頭の名の無い猟犬とともに住んでいる。
熊爪は、銃弾などの必要最低限の物を求めに白糠の人里に下りるが、基本は山中で自給自足の暮らしを送っている。
唯一人間社会と繋がりを保っているのは、毛皮や鹿肉などを高額で買い取ってくれる門矢商店の主人、井之上良輔とその同居人たちに限られていた。
地元の人達は、山男の得体の知れない熊爪を忌み嫌っていたのだが、良輔は分け隔てなく親しみを込めて熊爪と接してくれた。
時代が進むに従って、漁港を中心にした牧歌的な白糠の町にも、近代化の波が押し寄せて来る。
好人物だっ -
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ネタバレこの本の作者って「愚か者の石」の河崎秋子やんな?と思ってしまった。こんなコミカルというかユルめの作風もできるんや。
派手目の化粧とスーツパンプスに深紅のBMWで登場する、50代農業コンサルタント森田繁子の目線で現代日本の第一次産業の問題をテーマにした連作短編小説。
シカの駆除問題から、スローライフブームを皮肉る1作目、ヤギ牧場経営を描いた2作目、Uターン帰農の若い夫婦と祖父のすれ違いから農家の後継ぎ問題をテーマにした3作目。
後半の作品になるにつれて、テーマが身近になってくる。それが意図されたものかはわからないけど、読んでて引き込まれていく構成にもなっていた。
連作短編の魅力である、登