河﨑秋子のレビュー一覧

  • ともぐい
    壮観で圧巻されました。
    この手の時代物は読むのに時間がかかるのですが、本作はずーっと引き込まれました。

    山暮らしをしながら相棒の犬と狩りをしながら生きる渋い仙人的な山男の話
    時代は日露戦争前で舞台は北海道の山

    最初は淡々と獣を狩って山の一部となり静かに暮らすスタイルだが、他所から熊が来るところか...続きを読む
  • ともぐい
    現代社会で衣食住にそれほど困ることもなく、生々しい生活などしていない、したことのない私でも、生きるために生きた熊爪の気持ちがこんなにも胸に迫る。

    太一を助ける場面、熊との対峙、息をするのも忘れて読み進め、熊爪が息をする場面で自分もほぅっと息をする。目の前で起こっていることを見ているような圧倒的な描...続きを読む
  • ともぐい

    ハードボイルド小説でした、始めは。
    明治の世。
    熊爪という名の男は山奥に住み、猟をして暮らしている。自分が食べて、残りの肉や毛皮などは町に売りに行き、米や銃弾を買う。その暮らしが熊爪の全て。それ以外の行動、感情はすべて無駄なもの。
    しかし、町へ出るということは他人と関わるということ。その関わりの中...続きを読む
  • ともぐい
    陽子をもらうタイミングがもう少し早かったら、ラストはどうなっていたのだろうか。未来に思いを馳せる気持ちが芽生えたところで、この結末はせつなかった。自然や猟の描写が超リアル。特に太一への応急処置は、もうすごかった。熊爪の雪解けような感情の変化を追うのが楽しかった。
  • ともぐい
    いつかは読んでみたいと思っていた河﨑秋子をついに読んだ。
    直木賞「ともぐい」に圧倒された。山に生きる猟師が鹿を仕止め、解体し、毛皮や肉にする場面からぐいぐいと引きづられっぱなしだ。赤毛の熊を倒すところで終わっても満足できた。はたして熊爪の死まで描く必要があったのだろうか。
  • ともぐい
    「ともぐい」の意味を考える。
    人(生物的に)でありながら、動物的かつ合理的な思考の熊爪は果たして人間(社会性を保つ意味で)になれるのかどうかの物語だと思う。
    最終的に、陽子に殺される(狩られる側になる)=熊と同類。同類同士が命をかけて戦っていたので、共喰いと表現したのか。
    陽子に狩られることで熊に成...続きを読む
  • ともぐい
    仕事で北海道へ行くことが多く、
    雪と広大な大地に身を包まれながら大自然を肌で感じることが多いですわたしです。

    阿寒は釧路方面で、
    森の中で生きていく野生の狩で生計を立てている男性の姿が上手く書かれています。
    弱肉強食の世界で生きていく術を身につけて
    最後は殺されることで人間としての性を味わった主人...続きを読む
  • 清浄島
    道立研究所に所属する研究者としての職責と向き合う土橋さんの姿に、今、モヤモヤしている私のパートのお仕事の悩みなど一掃されました。人間の命、愛玩動物の命、野生動物の命、寄生虫の命… 比べることなど意味はなく、ただ、自分のできる最大限を尽くすことしかないのですね。
  • 介護者D
    介護、小型犬のペット、アイドルの推し、どれも自分のなかでは引っかるところのない要素だらけなのに、気がつけば一気読みしていた。しかも、どの要素もリアリティがあって(小説家なら当たり前かもしれないが)驚いてしまった。

    琴美は派遣先の会社の契約が切れるのを期に、父親の介護をするため東京から札幌の実家に帰...続きを読む
  • 介護者D
    126介護で辛く暗くなるところを、推しがいたことでつまらない毎日に一瞬の光が差す。懸命に前向きに生きる一人の物語。北海道の毎日が伺えてよかったです。
  • 介護者D
    まだ30代で父親の介護をすることになった琴美。彼女の支えは女性アイドルグループの推し活。
    介護というのは終わりが見えないし、よくなることはない。周囲の人たちの言葉に傷ついたり、イラついたりする。すごくわかる。推し活に心を支えられる気持ちもすごく共感した。
    それなのに推しのグループがコロナ禍で活動でき...続きを読む
  • 鳩護
    単行本で読んで、文庫本で2度目です。
    見た目は表紙のようにかわいい白い鳩。しかしその鳩には・・・という、河崎さんならではの動物感のある物語。
    それだけでなく、日常の女子のリアルな、甘すぎない生活も描かれていて、これまでの作者の小説とは別の分野を切り拓いたエンターティメント小説になっている。ゾワっとさ...続きを読む
  • 清浄島
    河崎秋子氏の本を読むときは、身構える。その中身はいつもヘビーで、特に動物を扱うときは、自分にとってやりきれない内容を含むことが多いからだ。そのショック受けた後遺症の元になったのが、ヒグマとペットの犬を扱った『肉弾』だった。そのストレートな描写に打ちのめされた。(いや、『颶風の王』からすでにその強烈な...続きを読む
  • 清浄島
    久しぶりに一気読みしてしまった。それぐらい、次の展開が気になる内容だった。礼文島も根室も訪れたことがあり、描かれている風景が自分の思い出と重なったからかも。主人公はいい人に恵まれているな。
  • 清浄島
    「発展と病は隣り合わせ。人間が活動するかぎり病原体もまた大きな移動をする」「人と物の流れが感染症の拡大を引き起こしてきたことは人類の歴史が証明している」コロナの死者1日で500人超え、過去最悪なのに、また移動奨励GOTO。なんなんだろう…「動物実験でもそうだが、研究の上で殺生は仕方ない。だがそこで何...続きを読む
  • 清浄島
     これまで2度、渡道しました。キタキツネのエキノコックスには注意しました。礼文島は2~3度訪れました。河﨑秋子さん、作品の幅をどんどん拡げてらっしゃいます。「清浄島(せいじょうとう)」、2022.10発行。昭和29年当時、呪いの島と言われた礼文島に、札幌の道立衛生研究所の土橋義明32歳がエキノコック...続きを読む
  • 清浄島
    北海道礼文島で多発した寄生虫による感染症「エキノコックス症」から島民の命、暮らしを守るための闘いを描いた作品。
    エキノコックスは中間宿主であるネズミを食べたキツネや犬、猫が終宿主となりその体内で成虫が卵を産み、それが糞とともに体外に排出される。
    なんらかのきっかけで人がその卵を摂取すると、肝臓肥大や...続きを読む
  • 介護者D
    前半、というか読み始めて半分以上は、はっきり自分の思いを伝えられずにいる琴美にイラつく思いでいたが、施設への入所を決断した父と、解散コンサートで、きっちり琴美を認識してくれた「ゆな」の姿に涙が止まらなくなった。
    「推し」の存在と価値の重さは当人にしかわからないけれど、人が生きていくうえで、とてもとて...続きを読む
  • 清浄島
    腹が異様に膨れて死に至る、寄生虫による感染症・エキノコックス症。
    礼文島の地域病とされていたエキノコックスの調査のため、土橋は島に上陸するが、島で生活するうち独自の風習やエキノコックスによる差別などに直面していく。

    エキノコックスについては多分史実の通り描かれてるんじゃないかと思う。
    昭和20年代...続きを読む
  • ともぐい
    普段読まないジャンルの本だが、直木賞受賞作なので読んでみた。

    生き物は喰うか喰われるか、ひたすら生きることの厳しさ。
    熊爪の獣のような血生臭さ、熊との死闘本能の描写、迫力が凄くて圧倒された。

    読後感は、やはり苦手な分野だけど、すごいものを読んだと思えた作品。