落合尚之のレビュー一覧
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エチカに罪を告白した弥勒でしたが、ふたたび首藤が近づき、彼のいる世界へと弥勒を導こうとします。弥勒は、自分がエチカの隣に立つことはできないと考え、一度は首藤の誘いに応じますが、けっきょくは彼のように非情を貫くことのできない自分自身に気づくことになります。そんな彼にエチカは、彼の罪を「取り返そう」と呼びかけます。
さらに五位検事も弥勒の家を訪ねてきます。御子柴の自供によってすでに事件は解決に向けての筋道が敷かれていましたが、五位はエチカと同じ罪を「取り返す」という言葉で弥勒を説得します。
弥勒の心の揺らぎとその帰結が描かれる巻です。ただ、首藤が弥勒の心をこれほどまでに揺さぶったエチカという存 -
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五位検事にしだいに追いつめられていく弥勒は、ヒカルの顧客リストの中から地位のある人物に働きかけることで、操作を攪乱しようと図ります。その結果、警察の上層部とヤクザがひそかに結託して、ヒカルとヤクザの間で現金の受け渡しをおこなっていた御子柴遥(みこしば・はるか)が犯人にまつり上げられることになり、弥勒に対する嫌疑はひとまず晴れることになります。
しかしこのことで、事件を起こすことでみずからが強者であることを証明しようとした弥勒の目論見は潰えてしまいます。それゆえ、彼の不安定な心は少しも休まることなく、ついに彼はみずからの罪をエチカに告げることになります。
本巻の最後に再び首藤が登場します。今 -
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弥勒に警察からの呼び出しがあり、事件を担当することになった検事の五位蔵人(ごい・くろうど)が、弥勒の発表した小説「収穫者の資格」について議論を交わしながら、少しずつ弥勒を追いつめていきます。一方で弥勒は、姉の婚約者である石水留仁(いしみず・りゅうじん)と会うことになりますが、彼は友人の矢住が制止するのも聞かず、彼らに悪罵を投げつけ、その場を立ち去ります。
その後、キクオの子どもたちと彼のお別れをするエチカにふたたび会うことになった弥勒は、姉と母の愛や矢住らの友情の暴力性を訴えます。しかしエチカは、そんな彼のなけなしの自尊心から発した最後の抵抗すらも、広く深い愛で包み込もうとします。 -
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意識を失い病院に運び込まれたミロクは、同じ病室にいる飴屋菊夫(あめや・きくお)というアルコール中毒の男から、彼の身の上話を聞かされることになります。
冴えない学校の教師だったキクオは、柿本という男子生徒たちから使い走りのように扱われていましたが、そんな彼にただ一人、園山英知香(そのやま・えちか)という女子生徒だけが心を寄せてくれていました。ところが柿本は、キクオにエチカをレイプさせ、その様子を裏ヴィデオとして販売しようとする計画を立てます。柿本に逆らえないキクオは、服を脱がされたエチカの姿を見て獣欲に駆られ、彼女をレイプしてしまいます。しかしエチカは、キクオの3人の子どもたちを世間から守るた -
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今回は、弥勒の思想を決定づけた過去のエピソードが描かれています。
大学生のインターンシップで「沢渡洋行」という会社で働くことになった弥勒は、周囲に打ち解けることができず、相変わらず無気力な日々を送っています。そんな彼に、首藤魁(すどう・かい)という不良社員が「外に出て世界に触れてみろ」と声をかけます。
その一方で、盛岡から弥勒の姉が彼のもとを訪れます。彼女は、弥勒を大学に進学させようとし、そのために上司のセクハラに耐えていました。首藤は、彼女の自由を縛っているのは弥勒ではないかと指摘し、さらに彼に「お前の文学で彼女を救ってみせろ」と語ります。 -
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ヒカルのことを取材したいと言って彼女に接近した弥勒でしたが、彼に警戒心を抱いたヒカルは援助交際の上納金を支払っているヤクザに働きかけ、弥勒を牽制します。しかし、彼の言葉によって初めて、これ以上自分を傷つけるようなことを続けたくないと考えるようになったリサが彼に接触し、そのことがきっかけとなって弥勒の殺人計画は実行に移されることになります。
罪を犯した者の気持ちを理解しようとすることは、それが善意から発するものであったとしても、犯罪者自身の「悪」を彼から奪い取ることにほかなりません。とはいえ、宗教的な背景を排して現代日本社会のもとで犯される殺人事件を描いた本作では、主人公にそのような「悪」を担 -
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有名大学に進学するも、大学に通わず引きこもり生活を続けている裁弥勒(たち・みろく)は、ある日援助交際をしている女子高生の島津里沙(しまづ・りさ)に声をかけられます。彼の異様な様子に気づいたリサは、彼のもとから逃げ出しますが、その後弥勒は、リサが仲間の女子校生の馬場光(ばば・ひかる)に命じられて売春行為をおこなっていることを知ります。リサがヒカルたちの言いなりになっている姿を目にした彼は、自尊心を失ったリサと彼女を食い物にするヒカルに対して激しい怒りを覚え、ヒカルを殺害するという計画を頭に思い描きます。
ストーリーやキャラクター設定などは、ドストエフスキーの同名の小説とかなりの程度で対応してい -
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古き名作をリメイク。最近の映画、漫画、アニメなどによく見られる。
こちらもそのひとつ。
リメイクものは、名作どのように噛み砕いていくか、作者の力量の見せ所だが、この漫画はその中でもかなりイイ線を言っていると思う。
この漫画は犯罪を美化したいのではなく、魂の救済を描いているわけだが
主人公が超えてはならないラインを超えてしまっただけに、どうしても重く苦しい話になってしまう。
ラストは、ある程度予想した通りだったが、気持ちのよいラストだった。
ただ、ヒロインであるエチカに人物的な深みがなく
意味もなく暴力的だったり、女性としての魅力が
感じられなかったのが残念。
お姉さんもそうだが、作者の女性へ