吉川徹のレビュー一覧
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ネタバレ日経での吉川さんのコラムより興味を持ち、この本にたどり着きました。
まず、自己紹介の話がなるほどなと思いました。
確かに、何かしらの場で自己紹介をする時、何を話そうかと迷います。趣味といっても今と少し前では違うし、仲よくしている集団も色々で、なにか出身などの固定的なものを話すとそれはそれでありきたりで...みたいな感じで。
このアイデンティティが流動的であるということは現代を、特に若者の現状をよく表している語であると思いました。若者はアイデンティディが「無い」のではなく、誇張するとすれば「ありすぎる」のではないかなと思いました。
再帰的近代は、非○○が増えていく時代ということから、たしかに -
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日本で現在働いている、現役世代について、
2015年の調査を元に学歴・世代・性別で8つに分けて考察したもの。
若年の非大卒男性をLightly Educated Guysレッグスと呼んで、
今後の世代の主要な担い手として支援・協力していくことを重要視する視点は、とても新鮮だった。
学歴社会はもう終わったとか、ほとんどが大卒だというような話をよく聞くが、実際は(意外と)そうでもなかった。そのくせ、じぶんの周りには同程度の学歴の人しかいない、ということを意識している人は少ないと思う。
私自身、その通りで、特に働き出すとその傾向は強いような気がする。
だから?収入面でも世代・性別・学歴でかなり明 -
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ネタバレ格差を論じるにあたり、なかなか表面に出てこないもの、それが学歴。
「格差」ならぬ「学差」という言葉に著者の主張がこめられている。
学歴をまっこうから扱うのは勇気がいるし、普段の会話でも話題にしにくい。
しかし、ニートやフリーター、非正規雇用などなど、現在の雇用問題を扱う際に、大卒か非大卒かで考えるとクリアに理解できるというのも本当だと思った。
先行き不透明な社会で、子どもは長期的な視野で行動するのは難しい。
でも、大卒か非大卒かでどのようにその後の人生が変わってくるのかは、教える必要があるのではないかと思う。
マーケティングなどにも応用できるっていうのは、なるほどと思わせられた。 -
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大阪大学大学院人間科学研究科准教授(計量社会学)の吉川徹(1966-)による、学歴社会の社会学的考察。
【構成】
第1章 変貌する「学歴社会日本」
第2章 格差社会と階級・階層
第3章 階級・階層の「不都合な真実」
第4章 見過ごされてきた伏流水脈
第5章 学歴分断社会の姿
第6章 格差社会論の「一括変換」
本書で論じられている学歴とは、有名進学校の受験競争や国公立や有名私立大学間の優劣を問題にする「学校歴」とは一線を画している。端的に言えば大学卒と非大学卒の間に横たわる大きな溝としての学歴分断が主題である。
昭和から平成にかけて起こった学歴社会における大変化とは、大学進学率の絶対値が上 -
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データに基づいた社会学者の格差論。
GCOEかなんかのプロジェクトの成果の一部が本にまとめられたもので,こうやって社会に還元されるのは,いいことだ。
学歴で格差ができるというのは,分かっていても大っぴらには言いにくい現象だけど,データを使って淡々と今の社会状況が説明されている。
「そもそも学校制度とは,子供を学校で教育した結果としての本人の能力や適性に応じて職場に送り込むパイプシステムであり,学歴に応じて職が決まってしまうのというのは,学校制度にそもそも期待されていた機能である。ただ,そうやって決まった職によって,ステイタスや報酬が大きく異なり,その後の人生が大きく影響されてしまうという現象が -
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ネタバレ迷信が社会通念に及んで結果として人口減少まで至るなんて何とも奇妙だし不思議だ、と思い読んでみた。
元を辿ればメディア発信だったと知ってとても驚いた。SNSでも反証記事が逆に炎上して拡散されるケースはあるからそれと同じことなんだろうなぁ。拡散されたデマが時代時代で良いように捉えられ使われた、と。(別軸だけど「夜桜お七」の元ネタがこれと知ってへぇ〜となった)
この本にも書かれていたけどこの年に産むことを恐れているのではなく社会的不利益を被ることを恐れているのだから、データを解析し昭和のひのえうまで不利益を被った人はほとんどいなかった、むしろ得した人もいたと結論づけたこの本は重要だと思う。
こ -
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1906年明治の丙午
1966年昭和の丙午
そして、来年が2026年令和の丙午
「丙午」は、何の根拠もない迷信や陰謀論的なものなのですが、来年はどうなるでしょうか。
日本は既に少子化が根付いています。
川柳にするなら「毎年が ひのえうまかな 令和の世」とは、言い得て妙です。
1966年昭和の丙午の時は「丙午(ひのえうま)年の生まれの女性は気性が激しく、夫の命を縮める」という迷信をマスコミなども流していたようです。
信じていなくても、周囲からの同調圧力に逆らえない社会だったのでしょう。
60年経って、当然そのような事実はないことは皆わかっています。
今こんなことを言おうものなら、○○ハラ -
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普通に面白かった。
文章も平易で読みやすく、図解やグラフもわかりやすい。
サブタイトルが『江戸から令和の迷信と日本社会』とあったので、てっきり民俗学的な話かなと思ったら、違った。
社会学の本だった。
ひのえうまについての基礎知識と、60年ごとにあるこの年に生まれた女性についての理不尽な言説についての解説と、来年はこのひのえうまだけど、どうなるかなって感じの展開。
ひのえうまの女が云々かんぬんは、腹立ちしかないのだけれど、それが生じた背景についての丁寧な洗い出しは実に面白かった。著者自身がひのえうまの生まれということもあり、本人は『やや好事家的な蓄積の総まとめ』とのことだが、今の時代必要なもので -
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丙午とは、干支の組み合わせで60年おきにやってくる。この年生まれの人は気性が激しいといった民俗的迷信によって出生数が減る傾向にあり、実際に1966年には前年比で40万人もの減少が見られた。そして2026年がその年に当たり、明治・昭和と続いた出生数減少の影響が発生するのだろうか。
丙午生まれの女性は気が強く嫁の貰い手がいない―という根拠のない迷信によって、この年の出生数は10-20%程度減少してきた。そして明治の丙午(1906年)、昭和の丙午(1966年)を詳細に紐解いていくことで、それぞれの社会情勢に合わせた現象が見えてくる。それは家父長制のイエ本位の結婚から、個人の自由が高まってきた時代の