あらすじ
若者は本当に保守化したのか。本当に生活満足度は高いのか。自分を肯定する若者は多いのか。現状を肯定するようになっているのだろうか。
「若者論」で時に印象論として語られるこれらの事柄は、すでに豊かになった今の日本社会で、若者たちが革新を求めず、現状を肯定するようになったことのあらわれとして捉えられ、広い意味で若者が保守化したという言説にも結びつけられている。
本書では、大規模社会調査データに基づき、若者の「今」を客観的に描き出す。権威主義、政治、現在志向、幸福、消費、労働、ジェンダー、高学歴志向等の幅広いトピックを扱い、若者の意識の中にある「分断」に着目しながら分析する。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
マスメディアで印象論によって語られる現代若者像の切り取られ方に辟易していたのでデータに基づいた検証を行っている本書を手に取った。
若者を男/女、大卒/非大卒で分けて様々な検証がなされており様々興味深い結果・考察が導き出されている。
LEGsという定義は本書で初めて知ったため非常に興味深かった。
一方、採取されたデータについての考察内容が著者の印象と無関係ではないと感じる部分もあり、この分野(人間科学、社会学)のデータ分析の難しさも感じられた。
自分たちが所属する階層も対象に含めて論じる必要がある以上は主観を完全に取り除くことは不可能と思うが、統計データを用いることで限りなく客観的であろうとするアプローチの試行錯誤にこの分野の研究の面白みがあると感じた。
Posted by ブクログ
若者に関する定量的調査からみた分析は珍しく、興味深い。ただし、調査対象や範囲が限られることから、因果関係が正確に分析できていない懸念を感じる。本書では学生が範囲外になっているが、「学歴」が確定する前の小学生にもすでに「若者の特徴」がみられることから、それらの現象の理由を「学歴」にもとめるのは間違いであるように思う。
むしろ因果を逆にした方が納得しやすいがどうか。セルフディレクションが強い人は前向きな好奇心が功を奏し高学歴になる。コンベンショナリティを持つ人は学ぶことに好奇心をもてず低学歴になる、など。