松岡亮二のレビュー一覧
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教育格差の話だが、就学前に格差が生まれていることと、隣人効果の大きさが印象的だった。
意識的な養育によって生活を構造化すること、そして同様の意識を持った家庭が集まる地域・コミュニティに属することが、教育に大きなメリットとなるのこと。実際、今の新興住宅地に引っ越してからは、いわゆる放牧状態の子どもやポイ捨てのようなモラルの欠如を目にする機会が明らかに減った。駅前には学習塾が3つもあることを考えると、地域全体の規範意識の高さと教育に対する意識の高さ、またそのメリットも納得である。
意識的な養育は幼児期から始まる。家庭では読書で多くの言葉に触れ親子で会話することで言語技能をつけ、机につく習慣をつけ、 -
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ネタバレ地域による学歴格差はいつの時代もあり、世帯収入や学歴などの住民の社会経済的な格差拡大へつながり、児童・生徒の学歴達成を左右し得る教育環境の差になる。
23区で教育意識が高いのは、「大都市だから」ではなく、「近隣住民の大卒割合が高いから」である。すなわち、集合的な階層(近隣階層)によって、人々の選択、行動、意識は変わる。
どの高校に入ったかで大きく異なる高校生活を送ることになり、学校間で卒業後の進路に大きな差がある。
中流階級の親は子どもの生活に意図的な介入を行うことで望ましい行動、態度、技術などを形成しようとする「意図的教育」を行うのに対し、労働者階級・貧困家庭の親は大人の意図的な介入が -
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出身地域・親の学歴によって子どもの最終学歴は異なり、それが収入、職業、健康等様々な格差の基盤となる、そうした教育格差はどの社会にもどの時代にも存在することをデータを基に立証しています。
日本では、1970年代半ばに高校進学率が9割を突破し、2009年には四年制大学の進学率が5割を超えました。しかし、(70~80年代のデータがないので立証は難しいですが)「大衆教育社会」と呼ばれるその頃からSES(社会経済的地位)による影響が強まる階層化社会は始まっていたことは、当時の実態から伺えます。そして、教育意識の地域格差は2000年代以降確実に拡大しているのです。
アメリカの研究によると、中流家庭は「意図 -
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事実に基づいて、教育格差について知ることができる本。解決できた社会はないが、よりベターな方向に向かう作者の姿勢が好印象でした。
以前『教育という病』という本を昔読んだのですが、その本と共通して、データをとってちゃんと検証することが必要と書かれていました。当たり前だとは思うんですが、こと日本においては教育となると個人情報がからんで継続的なデータ取得と結果のトレースは行われていないようです。
面白いと思ったのは、
学校に求められているのは、「教育(子供が社会に適用できるようにする)」と「選別(能力によって格付け、適切な進路に割り振る)」の2点だということ、学力テストを行い、適切な偏差値の高校や -
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日本の教育が直面する問題について、「子どもの貧困」「国語教育」「英語入試改革」「共通テスト」「EdTech」「学費」など20の論点から概観することができる本。多くのデータが取り上げられており、説得力がありました。
教育政策は政権が「レガシー」を残すための「思いつき」。「大学入試英語」やコロナ禍で突如沸き上がった「9月入学」問題を引き合いに出しながら、この本はそう断じます。
思いつきではなくデータに基づく政策作りの重要性を。データを生かすことの大切さが繰り返し強調されていますが、埼玉県学力・学習状況調査を主導する大根田頼尚さんの「統計上だといろいろな結果が出ますが、当てはめる子どもは一分の一の -
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裏の帯にこうあります----<「緩やかな身分社会」この国の実態。>
教育格差についてざっくり言うと以下のようになります。父が大卒の子は大学進学率が高い。そして大学進学率には地域格差・学校格差もしっかりある。父大卒と関係ある条件だけれども、経済的に恵まれて幼少時から習い事をしていると大学進学率が高い。親の、教育に対する肯定的意識の多寡も子の進学に影響するのでした。
個人的には、これらはでも、未就学時点ですでに薄く感じていましたよ。習い事したいなあって思う動機のなかにはこういうことを察している部分がありました、振り返ると。
教育システムは選別機能を持っている。社会自体もそれを望んでいる。た -
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本質要約:文句を言うだけでは勝者になれない
5章までの事実データと解析、考察を踏まえての本質を抽象的なまとめとしたが、教育格差において、制度や政策には当然プロコンがある
敗者は「文句たれ」で勝者は「変化に(素早く)適応する者」と言うのが事実だろう
制度が悪いなどと他責でいてはいつまでも勝者に移れず、変わったルールの中で「どうすれば勝てるか」を自責で考える勝者との差は開く一方で、勝者たちは勝っている以上、サイレントマジョリティである
これは、あらゆることに一定言える本質でもあるが、「教育」においてはこの「スタンスの取り方」で恩恵/損を受けるのが子どもたちであることは、最も重要で忘れてはならない -
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『現場で使える教育社会学』を教科書に、各章のメイントピックのサマリー、追加インプットを経て、各グループのやり取りと授業後のレポートが一冊の新書としてまとめられている。
まずこの形式が面白いなと思って手を取った。
投げかけられた問いを自分も考えながら、こういうバックグラウンドを持つ人はこんなふうに考えるんだな、なんて眺めていると、一部だけではなく、取り上げられなかった人のレポートも読みたくなった。
「知って」「想像する」=「配慮する」ことの大切さを語る人が多かったが、率直な想いを語れる人や言葉にならない言葉を必死に紡ごうとする学生がいることが心強く思えた。
想像するにはきっと原体験が必要 -
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親の社会階層や居住地域、学歴が子どもの教育機会にどのように影響するかを探り、教育格差がどのように形成され、維持されているかを解明した本。
徹底したロジックとデータ主義によって、日本の教育格差が今にはじまったことでなく、「緩やかな身分社会」として再生産されていたという事実を突きつける。
本書前半では、就学前の幼児教育から小・中・高校に至るまでにどのように教育格差が拡大していくかを辿り、後半では「ではどうすれば良いか」への提言もなされている。
日本はアメリカに比べ、教育に関する大規模調査データが圧倒的に不足しているため、限られた調査結果から現状分析せざるを得ないらしい。
本書は教育格差につ