広瀬恭子のレビュー一覧
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イスラエルという国の成り立ちから現代まで、イギリス、アメリカ、ロシア、アラブ諸国、そして、パレスチナ人。それぞれの言い分と行動、それに対する反応、プレーヤが多すぎて理解が追いつかないが、争いは争いしか生まない。距離的にも歴史的背景への理解も遠い分、複雑だから揉めるのは仕方ないくらいの認識だったが、これが現代における最大の人道危機と言われる理由に恥ずかしながらようやく触れることができた。
イスラエルに批判的な内容だが、これを書いたのはイスラエル出身でイギリス在住のユダヤ人、自身も当事者でありながら膨大な調査から、発信し続ける勇気がすごい。 -
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久しぶりにパレスチナ問題の勉強。
いやいやたった200ページの新書本だが内容が濃かった。さすがは早尾貴紀の監訳。
読み飛ばすつもりが、第1章に目を通しただけで結局メモりながらの時間をかけた学習になった。チャッピー君にも長々と教えてもらった。
第1章「紛争はいつ、どこではじまったのか?」
・この紛争の本質は宗教ではなく「植民地化」
・「土地を新しく国家として開拓しようとする
人々」と
「そこに住んでいる住民」 との衝突だ。
・紛争の起点は古代ではなく、
19世紀末のヨーロッパにある。
こんな感じでしっかりと書かれている。作者はイスラエル生まれの著名な学者で、いつかは読まなければいけないと思っていた人だ。
パレスチナ、ガザのことを学びたい人は必読だと思いますよ。疲れた。もちろんいい疲労感だ。
そうそうこれだけは書いておこう。
※1882年夏、ヤーファーに上陸した最初のシオニスト入植者たちは、農業に関する知識をまるで持ち合わせていなかった。そのほとんどは東欧の町で育った元大学生で、そもそも農業には不向きだ。彼らはパレスチナの農民の助けを借り、土地の耕し方を覚え、作物を育てた。パレスチナの農民たちは、無知な理想主義者の若者らを、ほぼ確実に訪れる飢餓の運命から救っているつもりだったにちがいなく、シオニストの計画が自分たちのことをどう見ていたのか、想像だにしなかっただろう。しかし、初期のシオニストのプロパガンダのなかでは、パレスチナ人はよくて自分たちの生まれ故郷の異邦人、悪く言えば旧約聖書の時代からユダヤ人のものだったはずの土地を横領した者と見られていた。すでにこの段階において、シオニストの思想家らは、パレスチナへの移住をヨーロッパの反ユダヤ主義から逃げるための決死の策ではなく、パレスチナを奪うための基礎固めと考えていた。
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" 一世紀以上にわたりパレスチナ人がいかに不当な仕打ちを受けてきたかを知ったみなさんが奮い立ち、連帯して彼らの闘争に加わり、世界のどこにいても弾圧に抗議して立ち上がることを願っている " (「おわりに」より引用)
帯にも強調されている通り、ユダヤ系イスラエル人パレスチナ史研究家によるパレスチナ史解説(入門)書である。引用文中にもある通り本書内ではパレスチナ人に対する弾圧虐待などの歴史が描かれており、その積み重なることは夥しく、読んでいるとパレスチナ人の視点に入り込みすぎているのではないかと感じたが、しかし先に述べた通り著書はユダヤ系イスラエル人であり、公平性には問題がないと思われるため本書の内容は事実なのだろうと思われる。
タイトルに「ゼロから理解する」とあるが、実際に知識がほぼゼロの状態から読み始めても問題なくわかりやすく、タイトルに偽りなしと言っていいだろう。本書では、パレスチナ·イスラエル間の問題が、よく(第三者である我々による平和のための干渉を放棄する言い訳として)用いられる「宗教戦争」ではなく、パレスチナを都合の良い植民地として見るユダヤ人側と、脱植民地化を目指すパレスチナ人の抵抗であるとして、新たな視点を提示している。またイスラエル側の言い分に頻出する「ハマスはナチ」「ハマスはテロ組織」といった主張がどのように生じてきたかなども簡易な言葉で解説されており、大変わかりやすい。
「イスラエルとパレスチナの対立について、何が問題なのか、どういう経緯を経てきたのか知りたいが何を読んだらいいのかわからない」という人にぜひ読んでほしい、おすすめの1冊。 -
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ブラウンのミステリ短編集第三弾。エド・ハンターシリーズから2作品入ってボリュームたっぷりの最高に楽しい一冊!→
シカゴ・ブルース大好きな私はエドたちがでる2作品がイチオシだけど、それ以外ももちろん良作。
「5セントのお月さま」は皮肉が効いていてマル(大衆が求めるのは月ではなく……?)
「球形の食屍鬼」「殺しのプレミアショー」は謎解き部分が好き。
「愛しのラム」は読み進めると感じる違和感の→
正体が分かった瞬間に「ああッ……」ってなる。
「どうしてなんだベニー、いったいどうして」はラストに「うわぁぁぁ」ってなったなぁ。
「死の警告」のなんとなく感じるコミカルさや「最終列車」の余韻など、ブラウンは空気を描くのが上手いんだよなぁ、としみじみ。
最高のコース料理でした。満足! -
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これは、かなり面白かった。発掘者が、遺跡を見つけ、過去の歴史を明らかにしていく、興奮が手に取るように伝わってくる。
ツタンカーメン王の話は、ドキドキした。現場を開けるときの、待ちきれない思いがたまらない。あるいは、ラスコーの壁画を見つけた、牛だよ!牛!という驚きに満ちた声。
冒険とは、こんな気持ちだろう。いまは日本に留まっているが、いつか世界をまたにかける仕事をできるようになりたい。自分の目で、世界中のあらゆるものをみてみたい。
そのためには、目の前のことを一生懸命やることだ。どこかにつながっているはずの、この道を行くしかない。残りわずかな20代で、できる限り色んなことに取り組もう。 -
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ネタバレ入植者植民地主義は、古典的な植民地主義とは決定的に異なる。古典的な植民地主義者は、未開の人びとに近代化をもたらすと考えたのに対し、入植者植民地主義者は、近代化するのは土地であり、人ではないと考えた。土地を手に入れるためには、そこに住む人びとは脇に追いやるべき不都合な存在になった。ユダヤ人は大規模に土地を買い、パレスチナの先住民は農場から追い出され町への移住を余儀なくされた。酪農や農作業から締め出され、貧困街が作られた。多くの村がなくなった。同じ所に住むことはそこの文化が続けられていくということ、村の歴史本のページが増えていくということ。資産の多寡でその歴史の正当性を持つ国が変わるのだろうか。強制に人を移住させるのは痛ましい。
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ネタバレ目次
・5セントのお月さま
・へま
・女が男を殺すとき
・消えた役者
・どうしてなんだベニー、いったいどうして
・球形の食屍鬼(グール)
・フルートと短機関銃のための組曲
・死の警告
・愛しのラム
・殺しのプレミアショー
・殺意のジャズソング
・死の10パーセント
・最終列車
『5セントのお月さま』『フルートと短機関銃のための組曲』『死の警告』が初訳。
フレドリック・ブラウンのSF短編全集が出たとき、どうしてSF限定なのだろうと思った。
ミステリの短編もそこそこあるのに。
『最終列車』が収録されたアンソロジーには、これが最後のアンソロジー未収録作品とあったような気がするけれど、その後にこれが出たということは、つまりまだ未訳の作品が眠っている可能性があるというわけか。
『真っ白な嘘』とか好きだったので、なんとか頑張って全集を刊行してほしい。
買うから。
エド・ハンターシリーズは長編のイメージが強かったけど、短編もあったなあと懐かしく思い出した。
今の作品に比べると、テンポがゆったりとして、必要なことはすべて書いてあるけれど、最後に大きく話が動くという展開は、まどろっこしく感じるかもしれない。
だけどこのテンポに慣れ親しんで育った私には、久しぶりに大きく呼吸ができるような気持ちで作品を読んだ。
ドキドキはしたけども。
『球形の食屍鬼』と『殺意のジャズソング』が特に好きかな。
落としどころの意外性が。
読後感は全然違うけど。
とにかく東京創元社さま、短編全集完全版をぜひ出版していただきたいのです。
お願いします。 -
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最近にわかにはまっているフレドリックブラウンの短編集。
各短編をコースになぞらえ、オードブルから始まり食後のコーヒーで締めるフレドリックブラウンのフルコースが味わえるという美味しい1冊でした。
以下お気に入り作品。
「殺意のジャズソング」
友人と中古車販売業を営む主人公。ある日友人が何者かに暴行される事件が起こり、犯人の目星がつかないまま、今度は昔の音楽仲間の一人が殺される。
最後のオチが予想外だった。信頼できない語り手。
「死の10パーセント」
俳優崩れの主人公がとあるきっかけで出会った男にマネジメントされトントン拍子にスターへの階段を上っていく。男との約束は、すべての10%を取り分として男に払う、ということ。
主人公は死神とでも契約してしまったのか、悲惨な末路。そもそもその男と出会ったのが財布を拾って勝手にクレジットカードを使ってしまったからであって、悪いことはするもんじゃないなと思った。
「真っ白な嘘」「不吉なことは何も」に比べたらオチがよくわからなかったりする作品もあったけど、訳者によるものが大きいのかもしれない。たまたま上記2作品は前2冊と同じ越前敏弥氏訳のものだった。
3冊のフレドリックブラウンの著書を読んでみて、お酒を飲んだ後車を運転するシーンがたくさん出てくるんですが、飲酒運転が合法な世界なんだろうか。とかどうでもいいことが気になった。 -
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・フレドリック・ブラウン「死の10パーセント」(創元推 理文庫)を読んだ。私はフレド リック・ブラウンをほとんど知らない。どちらかと言ふとSF 作家だと思つてゐた。さうではあるがミステリー作家でもあつ た。「フレッドは“二面を持つ作家”で、SF作家としてもミステリー作家としても同じくら いよく知られていた。」(ウィ リアム・F・ノーラン「序文ーフレッド・ブラウンを思い起こして」13頁)ここではミステリー作家としてのブラウンである。本書では「序文」以外はフルコース仕立てになつてをり、 最初のオードブルから始まつて最後のコーヒーまで13編所収、うち3編は初訳で、それらはいづれも第二次世界大戦前の若い頃の作品である。
・オードブルは「5セントのお月さま」、これが「ブラウンの商業誌デビュー作で」(「編者解説」436頁)あり、初訳である。月を望遠鏡で5セントで見せようといふ男の話、最後はそれが「望遠鏡で犯行現場の見物、五十セントだよ!」(26 頁)と変はる。ごく短い作品である。記念すべきデビュー作ゆゑにオードブルにふさはしい。スープは「へま」、これも戦前の作品だが旧訳がある。ただし初出誌のみである。当時、敵国だつたドイツのスパイになれといふ、これもごく短いから、 スープにはふさはしさうであ る。以下、魚料理2,口直し1,コールドミート3,サラダ 1、ローストミート2,デザート1、コーヒー1と続く。魚や 肉料理はさすがに食ひ出があ る、いや、読み出がある。コー ルドミートの「フルートと短機関銃のための組曲」「死の警 告」は初訳、戦前のパルプマガジン発表作である。「組曲」がおもしろい。「日本の大家の有名な作品に類似のアイデアがある」(439頁)らしいが、私はそれを知らない。これも密室物なのであらうか。外から撃たれたといふのだから違ふのだらう、たぶん。個人的にはこのタイトルが気が効いていておもし ろいと思ふ。これがポイントになる。かういふ曲、フルートの 吹き方はどんな楽器でもあり、 それはミステリーにもなるのであらう。ミステリーをよく知つ てゐる人には当然のことであつても、私には決してさうではなかつた。「死の警告」には「犯人のしゃあしゃあとした登場ぶりが、最後まで主人公を苦しめるところ」(同前)とある。私にはこれよりも旧訳のある今一つのコールドミート、「球形の食屍鬼」の方がおもしろかつた。食屍鬼はもちろんグールとのルビがつく。これも戦前のパ ルプマガジン発表作、大江健三郎の「死者の奢り」みたいなも のだといふのはあまりに大雑把だが、検死局の死体置き場とい ふ点では似てゐるとも言へる。 主人公が学生であり、ここのバイトで稼いでゐる点も似てゐる。違ふのは事件性である。こ ちらは殺人事件が起きて主人公はそれに巻き込まれる。密室である。ただし、人が通れないほどの換気扇口が外に開いてゐる。主人公は第一発見者である。さてどうなるか。「金枝篇」を読む主人公ゆゑにポイン トは食屍鬼であらう。といふことで、大江とは全く別の世界が展開する。グールが出てくると ころなどはパルプマガジンにふさはしい。タイトルは原題の直訳である。勘の良い人ならばこれで犯人を推測できてしまひさうである。これ以外は戦後の作 品である。私にはエド・ハンター物2編以外はパルプマガジ ン所収作の方がおもしろかつた。さういふ作品を読んできた といふことがあるかもしれない。ブラウンであらうが誰であ らうが、古くて安つぽいけれど パルプマガジンはおもしろいのである。本書は日本オリジナル 傑作集であるらしい。短編全集もある作家である。それをこのやうに並べるのは一つのアイデ アであつた。