亀田俊和のレビュー一覧
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足利尊氏・直義・直冬の兄弟父子の争いを、関わった人物たちの動機や行動の細かな解釈と室町幕府の統治機構の確立の沿革の叙述とを絡めて総合的に記述。寺社や家格の高い武士に依拠する直義と新興勢力を基盤とする高師直の対立という従来の視点を相対化し、プレーヤーたちの動機・動向をより複雑に、より立体的に描き出す一方で、終章では擾乱の原因を「尊氏―師直が行使する恩賞充行や守護職補任から漏れ、不満を抱いた武士たちが三条殿直義に接近しつつあるところに、足利直冬の処遇問題が複雑にからんで勃発したこと」(227頁)に求めている点で、従来の擾乱像を乗り越える新たな像を打ち出すことに成功している。また多くの一次史料から、
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歴史モノは文庫、新書ともに戦国時代以降の近世、近代しか読んでないに等しいから、中世以前はまことに暗い。よって観応などという元号は知る由もないが、「室町幕府を二つに裂いた足利尊氏・直義兄弟の戦い」なるサブタイトルが気になった。戦は「役」「変」「乱」と表されるものの、「擾乱」とは何ぞや。地元史で騒擾事件ってのがあり、「擾」とはゴタゴタのお騒がせってな意味である。尊氏と直義の兄弟喧嘩、内輪もめってことか?読んでまさにその通り。尊氏、直冬の親子喧嘩もあって、南朝と北朝の分裂ドタバタ劇まで絡め、地味でせこい戦の割りにおもしろい。高師直(こうのもろなお)、すぐ忘れるんだろうが、執事にして不思議な実力者であ
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室町幕府の創成期に全国規模の内乱となった、
足利尊氏と直義の骨肉の争い。
観応の擾乱の全貌を描き出す。
足利一族の兄弟、親子、親族。執事である高師直の一族。
恩賞と領地が絡んで全国の諸将たちは離合集散し、
まさに昨日の友は今日の敵状態。
更に、北朝と南朝も巻き込む。
丁寧に分かり易い文章で書かれ、
適切に史料を提示していて、興味深く読めました。
特に関連年表、観応二年はすごいものです。
月並みな感想ですが、尊氏は運が良かったなぁと。
随分危ない場面も多く遭遇してます。
状況次第では、尊氏が死んでた可能性だってあるし、
室町時代自体無いとか、南朝が支配する世になるとか。
また、骨肉の争いとは言え -
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「応仁の乱」がベストセラーになるなかで、さらに地味なテーマを投入してきた。さすがは中公。日本史好きは泣いて喜ぶね。
人気や知名度はいまいちだけど、将軍と弟の対決、父と子の確執、裏切りを次々と繰り返す家臣団、第三勢力としての南朝、奥州から九州まで広範な舞台……と話題には事欠かない。ここまで要素を詰め込んでおいて、どうして人気がないのか。
読んでて思うのが、兵を動かすこと戦闘を行うことの感覚が、現代とは全く違うんだな、ということ。簡単に挙兵して、簡単に寝返る。寝返っても再び帰順すればすぐ許される。交渉のちょっとした駆け引きくらいの感覚っぽい。幕府といえども絶対的権力・軍事力を持っているわけでなく諸 -
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教科書の説明からすれば、一行程度の出来事。
しかし、そのなかではめまぐるしく勢力が変わる二年間の大混乱。
やる気スイッチが入るのが遅い尊氏。
燃え尽き症候群と微妙なやる気、保守的な弟・直義。
逆にやる気に満ちた一部の周囲。優勢劣勢で流動化の限りを尽くす各将。
所領や官位を目当てにがんばったのに、それを保証してくれるハズの男は微妙なやる気と現状維持の塊。
そんな不穏な休戦期間に立ち上がるあっちの人やこっちの勢力。
常時殺意と殺気に満ちた南朝。
九州で暴れまわる嫌われっ子(理由不明)・直冬。
突然やる気スイッチの入る尊氏。
叔父とも父親とも仲良くできない義詮。
あまりに当たり前のことだが、歴史は人