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観応の擾乱は、征夷大将軍・足利尊氏と、幕政を主導していた弟の直義との対立から起きた全国規模の内乱である。室町幕府中枢が分裂したため、諸将の立場も真っ二つに分かれた。さらに権力奪取を目論む南朝も蠢き、情勢は二転三転する。本書は、戦乱前夜の動きも踏まえて一三五〇年から五二年にかけての内乱を読み解く。一族、執事をも巻き込んだ争いは、日本の中世に何をもたらしたのか。その全貌を描き出す。
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Posted by ブクログ
室町初期に起きた観応の擾乱の解説する書籍。観応の擾乱は足利尊氏、直義、直冬、高師直らの対立によるものだが、対立軸が明確でなく、配下の武将もくっついたり離れたりでなかなか複雑でわかりにくい。観応の擾乱が何だったのか一言でいうことはできないが、訴訟、恩賞の制度を革新しつつ将軍に権限が集約する過程とのこと...続きを読むで、なるほどと思った。
目まぐるしく変化する情勢、登場人物の感情の揺れ……、ダイナミックな歴史の動きを感じながら読みました。院の先輩だからというわけではないですが、本当に面白かったです。
日本史上最大の兄弟喧嘩といえば、室町幕府創始者の足利尊氏と弟、直義の対立だ。2人の争いは、北朝と南朝、尊氏の側近と2人の息子を巻き込み、3年間もの内戦「観応の擾乱」に発展する。 この内戦、敵味方が目まぐるしく移り変わり、とにかくややこしい。尊氏と直義がそれぞれ南朝に降伏したり、京都を占拠したり。尊...続きを読む氏の実子で直義の養子、足利直冬が反尊氏で挙兵したり。 なんで、こんなに複雑なことになってしまったのか。それは、主人公である足利尊氏の決められない性格にある。後醍醐天皇や直義、南朝と対立はするものの、心の底から憎めない。誰に対してもいい顔をして、みんなと仲良くしたい。 そんなリーダーとしての素質に欠ける尊氏に愛想を尽かしたのが、弟直義であり、腹心の高師直であり、息子の直冬や義詮だった。そして、ズルズルと内戦が拡大、長期化していく。 ズバリ観応の擾乱前に尊氏が直義を殺ってしまえば、人材不足の南朝もすぐに降伏しただろうし、息子義詮への権力譲渡もスムーズだっただろう。その一方、観応の擾乱を経験したからこそ、尊氏は40代にして、将軍として成長したことも事実。その結果、周囲は幕府に忠誠を誓い、後の3代目義満の時代に全盛期を迎える。 本書はなじみの薄い南北朝時代の武将が多く登場し、読んでいて混乱する。しかし、足利尊氏が「漢」となるための成長記として読んでみると、意外とすんなりと理解できる。
再読、この明快さは名著の要件を備えている。 複雑な情勢をわかりやすく解説する良書。尊氏、直義、高師直など、従来の認識とは異なる人物像を納得感ある形で提供しています。鎌倉から室町時代は、結構血なまぐさい時代だったことを再認識しました。個人的には「応仁の乱」より面白かったです。おススメ。
私にとってお城巡りの醍醐味は、その場所で時空を超えた感慨を味わうことです。650年以上前の時代、結果的には主流派となったタフな室町幕府初代将軍足利尊氏と二代義詮が反主流の尊氏の弟の直義、尊氏の庶子直冬の争いに、高師直や佐々木道誉などに南北の朝廷を交えた主導権争い。 この時代「あれ、あなたは尊氏派?」...続きを読むとか「今から南朝に参加ですか?」のオンパレードです。学生時代に私本太平記の文庫本を楽しく読んだ世代としては馴染みの世界です。特に兵庫県在住者として恥ずかしながら初めて登城した、尊氏が抜けなかった光明寺や、義詮が留まった石龕寺は要害の地にあり、当時を創造するのに絶好の地でした。また書写山や石清水八幡宮も今ではロープウェイやケーブルカーでお手軽ですが、籠城するには最適地であったと思いました。 それにしても京都を守護することは戦術的には愚作であることも改めて認識しました。 本書で充分に時空の旅を楽しめますが、一読では難しいところもありましたので、再読すべく太平記の横に並べて置きます。
室町幕府初代将軍の足利尊氏と、その弟直義。足利家の執事として最初期の政治を仕切っていた高師直。鎌倉幕府から建武親政を得て室町幕府に至る最後の動乱(観応の擾乱)について書かれています。この勢力が勝ったり負けたりと激しく争うのですが、なぜこれほどまでにややこしい状態になってしまったのかが、紐解くように理...続きを読む解できます。尊氏の政治への執着の低さといってまとめてしまえるのですが、それも含めて一人の人間も、その都度で変化激しいというところが、リアルに現代の自分でも理解できるところがありました。 理非糺明は訴訟の基本として当然というのが常識ですが、それが鎌倉幕府の弱体化に絡んでいて、室町幕府では訴訟の簡素化という目的に向かって一方的に裁可する形になります。そしてそれを多くの人が喜んだというところ。今の日本の政治や会社の組織からみて、学ぶところがあるのではないかと感じました。
「室町時代」というのはどうにも派手な戦国時代に飲み込まれてしまって日本史でも影が薄いが、著者も指摘するとおり200年も続いた長期政権であり、その成立背景は大変興味深い。 征夷大将軍足利尊氏という名前だけは有名で、「とにかく何かした」みたいに扱われがちなところ、しかしその時代を拡大していけば生き生...続きを読むきと立ち回る武士や天皇がそこにいるのである。 大枠だけは有名で細部がよくわからないというのは歴史研究ではよくあることで、しかも有名な小説になっているとあるエピソードが史実なのか創作なのか、史実として伝わっている創作なのか、そこを一つ一つ明らかにしていかなければならないわけで、いうなれば出来上がっている模型をいったん全部ばらして、一つ一つのパーツを確かめて、偽物を除外し、時には新しいパーツを採用して組み上げる途方もない作業である。 本書で取り上げられた感応の擾乱は1350年から52年というわずか2年程度の出来事であるが、勢力も趨勢も目まぐるしく入れ替わる。今でこそ居ながらにして全国どころか世界のニュースも調べられるご時勢だが、当時の人々はどうやって情勢を知っていたのだろうか。敵だと思って戦っていたら、実は味方の味方になっていた相手だったなんてことはなかったのだろうか。 情報だけでなく、実際に登場人物たちも京から九州、そして北陸を経由し関東なんて風に全国を移動する。敵を大群で囲んでいたかと思えばいつの間にか瓦解し逆に追い込まれていたりする。そういった目まぐるしい情勢の変化が、押さえつつも生き生きとした筆致で描かれる。著者も楽しんで書いていることが伝わってきて非常に好ましい。 以前に読んだ「奪われた『三種の神器』」(渡邊大門著)においては南北朝期の皇室の混乱が描かれていたが、本書はそれを幕府側から見ているということになろうか。本書だけでもとても面白いものだが、歴史というのは(あるいは知識全般に言えることとして)多面的に見ることでより面白くなるように思う。
「逃げ上手の若君」を読み、中先代の乱の後の時代を知りたいと思い手に取った新書。 予想以上のカオス。1日ごとに敵味方が入れ替わり何が何だか……という状況なのだが筆者の筆が確かに状況を把握させてくれる。 足利尊氏とその執事高師直一派と、尊氏の弟足利直義の一派に分かれて起こった室町時代初期の内乱である。...続きを読む本当に昨日の敵は今日の味方、今日の敵は明日の味方と状況が目まぐるしく変わる。 師直派が優勢になり直義が隠居したと思ったら直義の元に武将が集まって内乱が混沌としていく。 本文にあった通り「こんなにも優劣が変わる内乱はなかなかない」のだ。1年間のうちにあっという間に誰が優勢で誰が劣勢なのかが入れ替わる。巻末の年表がありがたかった。 何故この乱が起こるのかの理由は丁寧に解説されている通りわかる。忠義だけではなく恩賞と領地の安堵の話であると。よく理解できる。 わからないのは何故この乱を防げなかったのか。なんかどこかでこの同族での争いを防げるきっかけがあったように思えるんだけれども、実際どこにもないから短期間であらゆる情勢がめちゃめちゃになる内乱が起きたんだな。 最後が「この乱が起きたことで室町幕府は長期政権を保つことができた」「それだけ統治機構をまるっと変える内乱であった」という結びに少し救いを見た。 足利家関連、南北朝関連の文献を他にも読みたい。
日本史は詳しくないし、漢字も覚えづらいから読むのが大変だった。同じく中公新書の「応仁の乱」は泥沼すぎて途中から訳がわからなくなったが、こちらはなんとか流れを追うことができた。戦争の歴史は読んでいて面白いから、それなりに楽しめることができたと、思う。
足利尊氏・直義・直冬の兄弟父子の争いを、関わった人物たちの動機や行動の細かな解釈と室町幕府の統治機構の確立の沿革の叙述とを絡めて総合的に記述。寺社や家格の高い武士に依拠する直義と新興勢力を基盤とする高師直の対立という従来の視点を相対化し、プレーヤーたちの動機・動向をより複雑に、より立体的に描き出す一...続きを読む方で、終章では擾乱の原因を「尊氏―師直が行使する恩賞充行や守護職補任から漏れ、不満を抱いた武士たちが三条殿直義に接近しつつあるところに、足利直冬の処遇問題が複雑にからんで勃発したこと」(227頁)に求めている点で、従来の擾乱像を乗り越える新たな像を打ち出すことに成功している。また多くの一次史料から、尊氏や直義や師直の人柄をあらわすエピソードを適度に配置し、彼らの志向を浮き彫りにし、あわせて従来の人物評価を覆そうとしている伝記的側面と、訴訟の簡略化に代表される幕府の統治機構の整備という制度史的側面がうまく組み合わさっている点も好印象。
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観応の擾乱 室町幕府を二つに裂いた足利尊氏・直義兄弟の戦い
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亀田俊和
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