あらすじ
観応の擾乱は、征夷大将軍・足利尊氏と、幕政を主導していた弟の直義との対立から起きた全国規模の内乱である。室町幕府中枢が分裂したため、諸将の立場も真っ二つに分かれた。さらに権力奪取を目論む南朝も蠢き、情勢は二転三転する。本書は、戦乱前夜の動きも踏まえて一三五〇年から五二年にかけての内乱を読み解く。一族、執事をも巻き込んだ争いは、日本の中世に何をもたらしたのか。その全貌を描き出す。
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室町初期に起きた観応の擾乱の解説する書籍。観応の擾乱は足利尊氏、直義、直冬、高師直らの対立によるものだが、対立軸が明確でなく、配下の武将もくっついたり離れたりでなかなか複雑でわかりにくい。観応の擾乱が何だったのか一言でいうことはできないが、訴訟、恩賞の制度を革新しつつ将軍に権限が集約する過程とのことで、なるほどと思った。
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目まぐるしく変化する情勢、登場人物の感情の揺れ……、ダイナミックな歴史の動きを感じながら読みました。院の先輩だからというわけではないですが、本当に面白かったです。
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#兄弟喧嘩 に違いないが意味不明な戦いが #観応の擾乱
読書感想というか忘れないための備忘録
1.尊氏引籠りで直義が実権掌握
2.直義、師直を憎み暗殺試みる
3.逆襲を受け直義出家、南朝へ
4.直冬追討の合間に直義が逆襲
5.惨敗尊氏、謎の将軍大権保持
6.直義求心力失い、義詮の復讐
7.俺はまだ本気じゃない(尊氏)
8.スゲエよ将軍(南朝を味方に)
直義は本領安堵・恩賞を軽く見たのか、初期の武将たちは常に不満あるようで、初期のほゞ将軍Ⅱ直義は吝く、武将たちに利益をもたらさなかった。
直義監修の太平記だけ師直の微笑ましい悪行があるらしい=つまりほゞ善人執事だが、直義は攻撃し、反撃の師直は御所巻(尊氏邸取り巻き)で要求を通す。
落ち目の直義・直冬の義親子だったが、禁断の南朝勢力を使い尊氏に師直(滅亡)は敗北する。
尊氏「師直が負けた、俺は将軍、だから恩賞は俺が決める、師直殺した上杉死ね、政治は義詮がやる、直義補佐ね」認める直義
※なぜだろう、読解力が無いのかな、キ〇ガイの言い分
子を亡くしやる気なし直義は、南朝に寝返った導誉・円心を討伐に行く尊氏親子の出陣を、自分抹殺と思い脱出。仇敵だった南朝から追討宣旨を執る導誉=尊氏
【恩賞の彼方へ】
義詮は所領安堵認定システムを簡素化した (´・ω・`)
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日本史上最大の兄弟喧嘩といえば、室町幕府創始者の足利尊氏と弟、直義の対立だ。2人の争いは、北朝と南朝、尊氏の側近と2人の息子を巻き込み、3年間もの内戦「観応の擾乱」に発展する。
この内戦、敵味方が目まぐるしく移り変わり、とにかくややこしい。尊氏と直義がそれぞれ南朝に降伏したり、京都を占拠したり。尊氏の実子で直義の養子、足利直冬が反尊氏で挙兵したり。
なんで、こんなに複雑なことになってしまったのか。それは、主人公である足利尊氏の決められない性格にある。後醍醐天皇や直義、南朝と対立はするものの、心の底から憎めない。誰に対してもいい顔をして、みんなと仲良くしたい。
そんなリーダーとしての素質に欠ける尊氏に愛想を尽かしたのが、弟直義であり、腹心の高師直であり、息子の直冬や義詮だった。そして、ズルズルと内戦が拡大、長期化していく。
ズバリ観応の擾乱前に尊氏が直義を殺ってしまえば、人材不足の南朝もすぐに降伏しただろうし、息子義詮への権力譲渡もスムーズだっただろう。その一方、観応の擾乱を経験したからこそ、尊氏は40代にして、将軍として成長したことも事実。その結果、周囲は幕府に忠誠を誓い、後の3代目義満の時代に全盛期を迎える。
本書はなじみの薄い南北朝時代の武将が多く登場し、読んでいて混乱する。しかし、足利尊氏が「漢」となるための成長記として読んでみると、意外とすんなりと理解できる。
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南北朝時代から室町時代初期までは、大半の人達に敬遠される時代なのだが、一番の理由はやはり、足利尊氏、直義兄弟という、それまで極めて仲が良かった二人が文字通りの「骨肉の争い」を起こしていまった観応の擾乱にある。
南北朝時代というが、実質的に南朝は観応の擾乱が起きるまでは楠木正成は無論のこと、新田義貞、北畠顕家ら名将達が次々と戦死して弱体化していた。
ところが、観応の擾乱という大乱のおかげで存続し、日本史屈指の混沌の時代が始まるわけだが、詳しくは本著を。
何故こうなってしまったのかが分かります。
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足利尊氏と直義との争い、観応の擾乱を詳しく紹介している。
直義も尊氏も、兄弟で直接対峙しなければならないときは、積極的にイニシアティブを取らないので、権力の空白が生じ、流れを掴みきれない様子である。それが大量の追随者を生みながら、大量の裏切り者を生み出す結果となったように思う。
高師直の専門家でもある筆者の研究により、歌舞伎の師直像の淵源が見えたような気がする。太平記を読む良いステップになった。
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再読、この明快さは名著の要件を備えている。
複雑な情勢をわかりやすく解説する良書。尊氏、直義、高師直など、従来の認識とは異なる人物像を納得感ある形で提供しています。鎌倉から室町時代は、結構血なまぐさい時代だったことを再認識しました。個人的には「応仁の乱」より面白かったです。おススメ。
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私にとってお城巡りの醍醐味は、その場所で時空を超えた感慨を味わうことです。650年以上前の時代、結果的には主流派となったタフな室町幕府初代将軍足利尊氏と二代義詮が反主流の尊氏の弟の直義、尊氏の庶子直冬の争いに、高師直や佐々木道誉などに南北の朝廷を交えた主導権争い。
この時代「あれ、あなたは尊氏派?」とか「今から南朝に参加ですか?」のオンパレードです。学生時代に私本太平記の文庫本を楽しく読んだ世代としては馴染みの世界です。特に兵庫県在住者として恥ずかしながら初めて登城した、尊氏が抜けなかった光明寺や、義詮が留まった石龕寺は要害の地にあり、当時を創造するのに絶好の地でした。また書写山や石清水八幡宮も今ではロープウェイやケーブルカーでお手軽ですが、籠城するには最適地であったと思いました。
それにしても京都を守護することは戦術的には愚作であることも改めて認識しました。
本書で充分に時空の旅を楽しめますが、一読では難しいところもありましたので、再読すべく太平記の横に並べて置きます。
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室町幕府初代将軍の足利尊氏と、その弟直義。足利家の執事として最初期の政治を仕切っていた高師直。鎌倉幕府から建武親政を得て室町幕府に至る最後の動乱(観応の擾乱)について書かれています。この勢力が勝ったり負けたりと激しく争うのですが、なぜこれほどまでにややこしい状態になってしまったのかが、紐解くように理解できます。尊氏の政治への執着の低さといってまとめてしまえるのですが、それも含めて一人の人間も、その都度で変化激しいというところが、リアルに現代の自分でも理解できるところがありました。
理非糺明は訴訟の基本として当然というのが常識ですが、それが鎌倉幕府の弱体化に絡んでいて、室町幕府では訴訟の簡素化という目的に向かって一方的に裁可する形になります。そしてそれを多くの人が喜んだというところ。今の日本の政治や会社の組織からみて、学ぶところがあるのではないかと感じました。
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「室町時代」というのはどうにも派手な戦国時代に飲み込まれてしまって日本史でも影が薄いが、著者も指摘するとおり200年も続いた長期政権であり、その成立背景は大変興味深い。
征夷大将軍足利尊氏という名前だけは有名で、「とにかく何かした」みたいに扱われがちなところ、しかしその時代を拡大していけば生き生きと立ち回る武士や天皇がそこにいるのである。
大枠だけは有名で細部がよくわからないというのは歴史研究ではよくあることで、しかも有名な小説になっているとあるエピソードが史実なのか創作なのか、史実として伝わっている創作なのか、そこを一つ一つ明らかにしていかなければならないわけで、いうなれば出来上がっている模型をいったん全部ばらして、一つ一つのパーツを確かめて、偽物を除外し、時には新しいパーツを採用して組み上げる途方もない作業である。
本書で取り上げられた感応の擾乱は1350年から52年というわずか2年程度の出来事であるが、勢力も趨勢も目まぐるしく入れ替わる。今でこそ居ながらにして全国どころか世界のニュースも調べられるご時勢だが、当時の人々はどうやって情勢を知っていたのだろうか。敵だと思って戦っていたら、実は味方の味方になっていた相手だったなんてことはなかったのだろうか。
情報だけでなく、実際に登場人物たちも京から九州、そして北陸を経由し関東なんて風に全国を移動する。敵を大群で囲んでいたかと思えばいつの間にか瓦解し逆に追い込まれていたりする。そういった目まぐるしい情勢の変化が、押さえつつも生き生きとした筆致で描かれる。著者も楽しんで書いていることが伝わってきて非常に好ましい。
以前に読んだ「奪われた『三種の神器』」(渡邊大門著)においては南北朝期の皇室の混乱が描かれていたが、本書はそれを幕府側から見ているということになろうか。本書だけでもとても面白いものだが、歴史というのは(あるいは知識全般に言えることとして)多面的に見ることでより面白くなるように思う。
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「逃げ上手の若君」を読み、中先代の乱の後の時代を知りたいと思い手に取った新書。
予想以上のカオス。1日ごとに敵味方が入れ替わり何が何だか……という状況なのだが筆者の筆が確かに状況を把握させてくれる。
足利尊氏とその執事高師直一派と、尊氏の弟足利直義の一派に分かれて起こった室町時代初期の内乱である。本当に昨日の敵は今日の味方、今日の敵は明日の味方と状況が目まぐるしく変わる。
師直派が優勢になり直義が隠居したと思ったら直義の元に武将が集まって内乱が混沌としていく。
本文にあった通り「こんなにも優劣が変わる内乱はなかなかない」のだ。1年間のうちにあっという間に誰が優勢で誰が劣勢なのかが入れ替わる。巻末の年表がありがたかった。
何故この乱が起こるのかの理由は丁寧に解説されている通りわかる。忠義だけではなく恩賞と領地の安堵の話であると。よく理解できる。
わからないのは何故この乱を防げなかったのか。なんかどこかでこの同族での争いを防げるきっかけがあったように思えるんだけれども、実際どこにもないから短期間であらゆる情勢がめちゃめちゃになる内乱が起きたんだな。
最後が「この乱が起きたことで室町幕府は長期政権を保つことができた」「それだけ統治機構をまるっと変える内乱であった」という結びに少し救いを見た。
足利家関連、南北朝関連の文献を他にも読みたい。
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日本史は詳しくないし、漢字も覚えづらいから読むのが大変だった。同じく中公新書の「応仁の乱」は泥沼すぎて途中から訳がわからなくなったが、こちらはなんとか流れを追うことができた。戦争の歴史は読んでいて面白いから、それなりに楽しめることができたと、思う。
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足利尊氏・直義・直冬の兄弟父子の争いを、関わった人物たちの動機や行動の細かな解釈と室町幕府の統治機構の確立の沿革の叙述とを絡めて総合的に記述。寺社や家格の高い武士に依拠する直義と新興勢力を基盤とする高師直の対立という従来の視点を相対化し、プレーヤーたちの動機・動向をより複雑に、より立体的に描き出す一方で、終章では擾乱の原因を「尊氏―師直が行使する恩賞充行や守護職補任から漏れ、不満を抱いた武士たちが三条殿直義に接近しつつあるところに、足利直冬の処遇問題が複雑にからんで勃発したこと」(227頁)に求めている点で、従来の擾乱像を乗り越える新たな像を打ち出すことに成功している。また多くの一次史料から、尊氏や直義や師直の人柄をあらわすエピソードを適度に配置し、彼らの志向を浮き彫りにし、あわせて従来の人物評価を覆そうとしている伝記的側面と、訴訟の簡略化に代表される幕府の統治機構の整備という制度史的側面がうまく組み合わさっている点も好印象。
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室町時代が混沌を極めていたのはなぜなのか。一つの考え方ができるような本であったと思う。
足利直義と執事・高師直との対立から尊氏と直義の対立へと変わる様。南朝を取り巻く様子など、高校で日本史を専攻したが、あまり室町時代の動乱期に興味をもてなかった私が、面白いと感じながら読むことができた。
ただ、様々な人が登場してくるので混乱してしまうと思われる。
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戦には長けていたが政治に興味がなかった尊氏と、戦に弱く政治運営も今一つに見える弟・直義。そこに高師直が政治に加わることで対立が深まっていった感がある。擾乱自体は約2年だけの内乱だが、南北朝というややこしい時代背景に、生え抜きの家臣、寝返る家臣など、その時代を生き抜くには標準的であろう保身が、また読むものを混乱させる。尊氏も直義も、本気で相手を討ち取ろうとしていないように見え、それが擾乱という混乱をもたらした大きな要因に思えた。
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歴史モノは文庫、新書ともに戦国時代以降の近世、近代しか読んでないに等しいから、中世以前はまことに暗い。よって観応などという元号は知る由もないが、「室町幕府を二つに裂いた足利尊氏・直義兄弟の戦い」なるサブタイトルが気になった。戦は「役」「変」「乱」と表されるものの、「擾乱」とは何ぞや。地元史で騒擾事件ってのがあり、「擾」とはゴタゴタのお騒がせってな意味である。尊氏と直義の兄弟喧嘩、内輪もめってことか?読んでまさにその通り。尊氏、直冬の親子喧嘩もあって、南朝と北朝の分裂ドタバタ劇まで絡め、地味でせこい戦の割りにおもしろい。高師直(こうのもろなお)、すぐ忘れるんだろうが、執事にして不思議な実力者であった。
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室町幕府自体が歴史の授業の中でも影がうすいこともあり「観応の擾乱」自体知りませんでした。
室町幕府と言えばあまり成熟していないイメージでした。
がこの戦いの中で自己改革をしていたんだと初めて知ることができました。
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室町幕府の創成期に全国規模の内乱となった、
足利尊氏と直義の骨肉の争い。
観応の擾乱の全貌を描き出す。
足利一族の兄弟、親子、親族。執事である高師直の一族。
恩賞と領地が絡んで全国の諸将たちは離合集散し、
まさに昨日の友は今日の敵状態。
更に、北朝と南朝も巻き込む。
丁寧に分かり易い文章で書かれ、
適切に史料を提示していて、興味深く読めました。
特に関連年表、観応二年はすごいものです。
月並みな感想ですが、尊氏は運が良かったなぁと。
随分危ない場面も多く遭遇してます。
状況次第では、尊氏が死んでた可能性だってあるし、
室町時代自体無いとか、南朝が支配する世になるとか。
また、骨肉の争いとは言えど、攻め切れなかった直義と直冬。
一族の棟梁、嫡男という立場は、
親兄弟でも下克上な戦国時代とは
異なっていたのかなぁと思いました。
そして、あれほど激しく敵対してた
山名氏とか桃井氏とかが、滅亡していない。
敗者にも寛容だったのも、驚きでした。
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高校の日本史の教科書で名前だけは覚える「観応の擾乱」だが、これがこんなに短期間で形勢が極端に変動し、地滑り的な離合集散が続くダイナミックなものだとは知らなかった。また、観応の擾乱以降、「努力が報われる政治」が定着し、室町幕府の全盛期につながったという点で、観応の擾乱が初期室町幕府にとって重要な意義を有するものであるということを理解することができた。足利尊氏、足利直義、高師直などの人間像も興味深かった。
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良書。
観応の擾乱というドマニアックな領域ながら、
非常に丁寧な説明でわかりやすい。
ただ、当然ながら人を選ぶ。
歴史系に興味のない方だと、おそらく最後まで読み切るのがかなり苦痛だと思われる。
ある程度歴史に興味・関心のある方ならかなりおすすめ。
個人的には初期室町幕府のありようと、
尊氏のあり方がかなり印象が変わったかな。
とても面白かった。
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面白かった、のだが、知らない登場人物が多くて、今ひとつ入りこめない。しかし、今まで知らなかった尊氏、義詮、直義、師直を知ることができた。
次は義満を知りたい。
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大河ドラマ「太平記」を思い出しながら,読みました。
あまり知識のないところでしたが,非常にドラマティックな内容で,面白く読めました。
本当によく分からないのが,尊氏が実子の直冬を疎んじた理由です。
尊氏の直冬の扱いが酷いからといって,それを周囲の者が不満に思ったことが観応の擾乱の原因の一つというのも,いまいちピンときませんでした。
この点については,今後,研究が進んで,新たな知見が発表されることを期待したいです。
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「応仁の乱」がベストセラーになるなかで、さらに地味なテーマを投入してきた。さすがは中公。日本史好きは泣いて喜ぶね。
人気や知名度はいまいちだけど、将軍と弟の対決、父と子の確執、裏切りを次々と繰り返す家臣団、第三勢力としての南朝、奥州から九州まで広範な舞台……と話題には事欠かない。ここまで要素を詰め込んでおいて、どうして人気がないのか。
読んでて思うのが、兵を動かすこと戦闘を行うことの感覚が、現代とは全く違うんだな、ということ。簡単に挙兵して、簡単に寝返る。寝返っても再び帰順すればすぐ許される。交渉のちょっとした駆け引きくらいの感覚っぽい。幕府といえども絶対的権力・軍事力を持っているわけでなく諸勢力との関係で成り立っていることの表れだろうし、すぐに沸騰して喧嘩っ早いという中世日本人のメンタリティもあるだろう。
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「観応の擾乱」とは南北朝時代にあった足利尊氏・直義の兄弟間にあった権力争いである。本書ではこれを多彩な一次資料を引用しながら簡潔にまとめられていて、とても読みやすかった。著者はこれまでにあった「足利尊氏は朝敵」という歴史観に異を唱えており、そこにも共感ができた。
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権力をめぐる骨肉の争いのストーリーとして、「ゴッドファーザー」や「ゲームオブスローンズ」、「吾妻鏡」なんかと似てる。違うのは勝者が敗者を排除し権力を奪うことなく、敵味方主従問わず勝つ→許して復権→裏切るの繰り返しなところ。煮えきらないところがもどかしい。
個人的に三十年前の大河ドラマの印象が強く、陣内孝則や高嶋政伸、柄本明の顔を思い出しながら読んだ。
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室町時代の初め、いわゆる南北朝時代に起こった、足利高氏とその弟足利直義による争いが観応の擾乱。一緒に腐った鎌倉幕府を倒して、新しい世の中を作る…はずが、なんで殺し合うような兄弟・家族喧嘩になってるの!?という中世日本史の謎の一つ。そんな観応の擾乱について詳しく解説した新書だ。
個人的に、「太平記」を見た後だったので、割りとすんなり入り込めたが、応仁の乱と並び、非常に複雑な話だと思うし、中公新書は専門性が高く、易しくはない。
もっと勉強して理解を深めたいと思いました。
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教科書の説明からすれば、一行程度の出来事。
しかし、そのなかではめまぐるしく勢力が変わる二年間の大混乱。
やる気スイッチが入るのが遅い尊氏。
燃え尽き症候群と微妙なやる気、保守的な弟・直義。
逆にやる気に満ちた一部の周囲。優勢劣勢で流動化の限りを尽くす各将。
所領や官位を目当てにがんばったのに、それを保証してくれるハズの男は微妙なやる気と現状維持の塊。
そんな不穏な休戦期間に立ち上がるあっちの人やこっちの勢力。
常時殺意と殺気に満ちた南朝。
九州で暴れまわる嫌われっ子(理由不明)・直冬。
突然やる気スイッチの入る尊氏。
叔父とも父親とも仲良くできない義詮。
あまりに当たり前のことだが、歴史は人間によって作られる。
そして、現代社会の「退職理由」第一位は「人間関係」である。
今も昔も人間はあんまり変わらない。
室町時代だろうと、バサラ大名だろうと将軍だろうとそのあたりの面倒臭い人間関係、利害対立は存在していたし、そしてそれが命取りにもなる。
政治的な側面も当然あるが、この面倒過ぎる人々の動きというのもなかなかに面白い。…当人たちは大変だろうが。
あとひとつ面白かったのは、敵方に居た人でもわりと簡単に帰参できていることだろうか。
これが戦国時代なら首を跳ねられて終わり、お家も消し飛びそうだが…やり直しがきくというのは逆に新鮮。
地元にゆかりのある武将も、その許された一人だった。
道理で戦国時代の頭まで続いているわけだ、と思いながらも、地元での紹介では「足利氏に忠誠を尽くし、重んじられた」云々と書かれている。
まあ、直義も足利氏だけどさ…。「忠臣」「幕府の有力者」という印象を与える地元史跡の看板を思い出す。
「尊氏派には反抗したことあるのにね、さらに負けたし…」
となんともいえぬ気持ちになった。
しかし、よく生き抜いた、おらが町の守護大名。
Posted by ブクログ
<目次>
第1章 初期室町幕府の体制
第2章 観応の擾乱への道
第3章 観応の擾乱第一幕
第4章 束の間の平和
第5章 観応の擾乱第二幕
第6章 新体制の胎動
終章 観応の擾乱とは何だったのか?
<内容>
史料にもとづいた事実を淡々と並べ、そこに自分の解釈を挟み込む、従来型の歴史学者の本である。これを読むともともとわかりにくい「観応の擾乱」がわかりやすくなるわけではない。混沌はそのままだ。その理由は、足利尊氏にあるだろう。関わる武士たち(高師直にせよ、足利直冬にせよ)は、自分の領地獲得や名誉に固執するが、尊氏に振り回されていることは確かだ。そのことが確認できた。
Posted by ブクログ
室町時代が分かりづらい時代と言われる所以が分かった気がします。
テーマは難解ですが、事件の顛末や、背景、定説と筆者の考えが詳細に記載されており面白かったです。
Posted by ブクログ
擾乱という用語も特別な響きを感じさせる不思議な争いである。足利氏の内訌で正にシーソーゲームで、尊氏を裏切って直義に付く武将が続出。そしてまたその裏返し。後に発生する応仁の乱とも似ているようで、ドラスティックに展開していくところがオセロゲームのよう。幕府を実質的に動かしていた直義は北条氏の政治を模範として三条殿と呼ばれ、別に副将軍という役職でもなんでもない。分裂に乗じた南朝側の動きも何ともセコイ。最終的に尊氏が勝ち、直義が敗れる。二人とも実は兄弟で戦いたくなかったが、直義は実子を亡くし、尊氏は嫡子の義詮に譲りたかったその差は正に二人の気概にあった!直義の消極性が恩賞論功に出たため、直義に失望した武将が多かったとは、建武政府の過ちを繰り返しただけでは‼ 尊氏と義詮の対立もあった!この擾乱を通して尊氏が将軍としての役割リーダーシップを初めて発揮し、権力構造が確立していったという。室町時代を理解する上で興味深い1コマ。