異世界→異世界の転移で描かれる、狼になぞらえられた強大な冒険者レカンの冒険物語開幕の巻である。
数多の迷宮のいずこかに、数十年に一度開くという異世界へと続く「黒穴」。
バグラド迷宮を制覇した<片目狼>のレカンはその黒穴を発見し、盟友<人喰い熊>のボウドと共に飛び込んで、そして……とそんな形で
...続きを読む物語は始まる。
言語の通じない異世界に足を踏み入れ、彼が大きな世界へと旅立つ前日譚のような物語が展開されているのがこの一巻だ。
前日譚なれども、数多の敵を剣でねじ伏せるレカンの姿は鮮烈に描かれている。
特に後半、コミカライズでは名も明かされなかった難敵・地竜トロンとの死闘はまさに活写。
某クロノトリガーのプチラヴォスを思わせるクリーチャーデザインの巧みさも含めて、存分に冒険者レカンの活躍を描いてくれている。
時の運にも恵まれたレカンの旅はいずこに向かうのか。
そんなワクワク感を与えてくれる一巻だった。
風景や魔獣の緻密な描写、動的な戦闘シーン、柔らかに描かれたリアル寄りの人物描写と、本格派ファンタジーの気風を感じる作風も含めて、文句なしに星五つで評価したい一冊である。
残念ながら3巻完結となってしまったこのコミカライズシリーズであるが、後追いで読んだ価値は十分ある一作だ。
この一巻のみの登場となったルビアナフェル姫のたおやかさなども素晴らしかった。星六つくらい付けたいのが正直なところだ。