武田百合子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
作家夫婦の過ごす富士山麓の別荘。何気ない平凡な日常が独特の感性で瑞々しいものになる。日記文学の不思議な魅力。
作家武田泰淳の妻の百合子。富士山麓で夫と過ごした昭和39年7月から51年9月までの日記。中公文庫で全三巻。そのうち中巻は昭和41年10月から44年6月まで。
赤坂の自宅と富士山麓の別荘との往復の暮らし。毎日の買い物と少しずつ変化する季節。ちょっとした自然の描写が面白い。ごくごくありふれた日常であるのにこれだけヴィヴィッドに描かれるのが不思議な魅力を創り出している。筆者独自の感性と世界観が産んだ奇跡なのだろう。
中巻の大きな出来事は愛犬ポコ。あまりに唐突な出来事に驚き。筆者の喪失感 -
Posted by ブクログ
平凡な日常の中にこそ人生の楽しみは隠れていることを教えてくれる。
武田泰淳、百合子夫妻は富士山麓に別荘を買い求める。そこでの暮らし、極めて平凡な、食事や季節の変化を記録しただけの日記。なのになぜこんなに面白いのだろう。
まだ高速道路の開通する前の時代。甲州街道経由か国道246号経由か。当然トラックが多いし、事故も多い。渋滞は少ないが。
ちょっとした買い物と地元の富士吉田の人々との会話の羅列。構成がなくとも、淡々と続く日々。武田百合子の視点の斬新が本書の魅力の多くの部なのだろう。
何か楽しいことがないか、刺激がないかと求める向きには、本書の視点は極めて有用であろう。
別荘というだけで非日