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季節のうつろい、そして夫の病。「忙しくくたびれて」日記を付けられなかった二年間をはさんで、ふたたび丹念に綴られた最後の一年間。昭和四十四年七月から五十一年九月までの日記を収録。田村俊子賞受賞作。【全三巻】 〈巻末エッセイ〉武田 花
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Posted by ブクログ
とうとう読み終わってしまった。 最初は刊行するつもりでなかった日記は、むき出しでありのままが綴ってある。 百合子さんは、目にしたものを切り取るのがうまくて、感性の人だなと思う。 夫の泰淳さんが体を悪くされてからの後半は、胸をつかれるような場面もある。 一つひとつの布をパッチワークしたみたいに、日々連...続きを読むなっている。 遠くからみたら、一枚の絵のように、グラデーションが際立っている。 読んでると元気がもらえて、ずっと楽しかった。
上中下巻、ゆっくりゆっくり読んだ。 読んでいるあいだ心が穏やかで贅沢な時間だった。 好きな箇所→ 「はんぺんなど無意味」 「この景色、あすこからここまで全部あたしのものだぞ」 「台所の椅子に腰かけて、ドアを開けておいて、夕焼や花の様子を眺めたりしながら煮物をする、この、ゴッドファーザーのような気分。...続きを読む」
『富士日記』三巻を再読して思ったこと。 百合子さんがお世話になった人に必ずといっていいほどお礼を渡している、その姿勢がさすが大正生まれだな、と。 奔放な人と思われがちだけど、実は律儀。 あと、聡明だから色々なことが見えてしまって、辛いだろうけど、書くことで発散していたんだろうな。 飾らない、ありのま...続きを読むまの自分をさらけ出している所が本当に魅力的。 辛い時にも百合子さんがいるからと思い、この三巻を蔵書としている。
途中で主人(武田泰淳)の病気及び死後の話が出てきたり、日記の中断が出てきたりしていた。 ネコの話が出てきてさらに主人の病気の悪化で山荘の日記ではなく、東京でのことが書かれるようになってきた。主人の死の記載で終わるかと思っていたら、入院前の記載で終わってしまった。しかし、あくまで陽気な話として持って...続きを読むいきたかったのであろう。
読み終わっちゃった 山荘の日々が優しくて温かくて寂しかった 毎日の食事が美味しそうで読んでて幸せだった
私は泰淳没後の百合子さんの随筆も何冊か読んでみたけど、彼女の良さが一番「生きて」いるのはやっぱりこの『富士日記』と『犬が星見た』の日記においてだと思う。 この2冊においては、文章のキレ・表現の新鮮さ・着眼点の独特さにおいて、他の一切の追随を許さない。こんな文を書く人がいたのかと、読んでいて何度も信...続きを読むじられない気持ちになった。 今まで本を読んでいて、自分が好きな本ですら、その著書を生まれつきの天才だと感じたことは一度もなかったけど、武田百合子さんはその例外でした。彼女はマジモンです。
小川洋子さんが「死の床に着いた時、枕元には富士日記を置きたい」と紹介されていたので読んだ。私にとっても宝物になった。上中下巻をエンドレスループで読み返しています。今は3周目。
武田泰淳が亡くなる前の記録。下巻は病と死の予感が孕む。糖尿病からの脳血栓、胃癌転移の肝臓癌。医療者からみるとハラハラしてしまう食事や生活。業務で生活指導をするが、暮らしの中の家族の愛や魂の孤高さを痛いほどに教えられた。視点によって愚かかもしれない。でも、その人物史は誰が何と言おうとも、その人の全てで...続きを読むできあがっていて、正しいも過ちもない、かけがえのないものだ。死後、世に出る予定ではない日記を清書し出版された経緯は、奇跡的でありがたい。おいしいものは、ぜんぶ、毒なのかなあ。でも、おいしいってしあわせだよな。
富士日記もこれで最後。泰淳さんの病気や死も書かれているのだろうと手にするのに躊躇していた。いい加減、カタを付けようと読む。 忘備録的な日記は変わらない。朝、昼、晩の献立や管理所で買った食材や酒、煙草の金額などが上編、中編と変わらず書かれている。不思議と馴染んで、ゆっくり読み進める。 大岡昇平夫妻や...続きを読む大工や植木屋、隣の家守の老夫婦に人々との交流の合間に、ふっと息を飲む一文が挟まれる。 (引用) 九時、山に戻る。灯りという灯りを全部つけた。谷底に浮かんだ盆灯籠のような家に向って、わたしは庭を駆け下る。むろあじを焼いて冷たい御飯を食べた。主人は生干しのいかを焼いて、それだけ食べた。食べながら、今日見てきたことや、あったことをしゃべった。帰ってくる家があって嬉しい。その家に中に、話を聞いてくれる男がいて嬉しい。 終盤で泰淳さんの病気が顕かになってくる。大岡昇平との病人談義が変に可笑しい。くどくどしくなく、最低限のことしか書いてないが、胸に刺さっってくる。 巻末は泰淳さんの短かな文章。そして、娘の花さんの山荘の顛末と両親の位牌に触れた一文で終わる。
読み終わった、上・中・下の3巻 僕の経験としては、「魔の山」以来だろうか 富士日記を読もうと思ったきっかけは「読書の日記」である。 日記っていいな。 武田さんと百合子さんのやり取りの中で、同じ話を何度されようとも何度でも聞いてやると言ったようなものがある。 それだけで、素晴らしい関係だなと思う。 時...続きを読む々クスッと笑えるような描写、ほっこりするところもあって、楽しく読めました。 長い旅路だったな。
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