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Posted by ブクログ
富士日記もこれで最後。泰淳さんの病気や死も書かれているのだろうと手にするのに躊躇していた。いい加減、カタを付けようと読む。
忘備録的な日記は変わらない。朝、昼、晩の献立や管理所で買った食材や酒、煙草の金額などが上編、中編と変わらず書かれている。不思議と馴染んで、ゆっくり読み進める。
大岡昇平夫妻や大工や植木屋、隣の家守の老夫婦に人々との交流の合間に、ふっと息を飲む一文が挟まれる。
(引用)
九時、山に戻る。灯りという灯りを全部つけた。谷底に浮かんだ盆灯籠のような家に向って、わたしは庭を駆け下る。むろあじを焼いて冷たい御飯を食べた。主人は生干しのいかを焼いて、それだけ食べた。食べながら、今日見てきたことや、あったことをしゃべった。帰ってくる家があって嬉しい。その家に中に、話を聞いてくれる男がいて嬉しい。
終盤で泰淳さんの病気が顕かになってくる。大岡昇平との病人談義が変に可笑しい。くどくどしくなく、最低限のことしか書いてないが、胸に刺さっってくる。
巻末は泰淳さんの短かな文章。そして、娘の花さんの山荘の顛末と両親の位牌に触れた一文で終わる。
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