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十九年ともに暮らした愛猫の玉が死に、深沢七郎、大岡昇平ら友人たちを送った昭和最後の三年間。映画や食べ物、小旅行、富士山荘での暮らしなど、身辺のできごとや気持の照り降りを、簡潔で心に響く文章で綴った、著者最後のエッセイ集。 〈巻末エッセイ〉武田 花
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Posted by ブクログ
武田百合子最後のエッセイ集。 相変わらずたんたんと日常を書いているのだが、富士日記なんかと違って公開前提の文章だからか、書くことに慣れてきているのか、わかりやすくユーモアがある感じ。 1日六回温泉に入って湯治をして若々しくしている人に、内心(年中温泉入っているだけなら若くなったってどうだというのか)...続きを読むと突っ込んでいたり、温泉のアヒルが食べられちゃう運命なのをさらっと書いていたり、愛猫の葬式をやるくだりで「飼い主のこういうときの気持ちを納得させ」る金額は五万円前後と得心しているところとか、面白くてくすりとしてしまった。 しかし、夫を早くに亡くして出戻りの娘と2人暮らし、友人も次々亡くなっているようで、いろいろ旅行なんか行っているけれどどうにも寂しい感じがつきまとう。夫のちょっとした思い出に触れるときの優しい手つきの文章なんかには切なくなった。文章に感情が露骨でない分、より深さを感じさせるというか…。 この本を出して翌年には武田百合子本人も亡くなっているようだけど、そんな自身の死の予感もあったのだろうか、と思ったりした。
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