カート・ヴォネガット・ジュニアのレビュー一覧

  • タイタンの妖女

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    いままで出会った中でいちばん、なんというか判断に困る物語だった。
    ユーモラスなのか哀しいのか、感動的なのか単なるドタバタ劇なのか。教訓めいた説話のようでもあり、そのじつ何の意味も読み取れないほど難解だった気もする。
    運命と自由意思、そういったものは確かにテーマの一つではあるのだろうが、それだけでこの物語全てを片付けることは到底できない。

    ただ確実なのは、他のどんな物語よりも奇想天外で荒唐無稽だったこと。陳腐な表現だがオンリーワン、そうとしか言い表せそうにない。

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    2025年10月02日
  • タイタンの妖女

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    これまで読んできた本の中でもトップクラスで難解だった。
    『この世界は全て何者かに決定づけられているのか?それらの運命から自由な意思は存在しないのか?』というのが本作のテーマ。本作には、その絶対的な力を持つ男ラムファードが登場するが、彼は主人公コンスタントの行く末を最後まで言い当てることはできなかった。
    この事から、作者自身も、本作のテーマに明確な答えは持っていなかったんじゃないかな。コンスタントには救いもなく不遇だったけど、最期に報われてよかったと思う。

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    2025年08月27日
  • スローターハウス5

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    随分前になるけど、これ読んだあと、東欧あたりを旅したときに、ドレスデンを訪れた。とても美しい街だった。教会の戦争を伝える傷跡なども見学したなぁ。

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    2025年04月20日
  • タイタンの妖女

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    太田光が人生でいちばん大事な本として紹介しており興味を持った。
    はじめに主人公がこれからたどる道筋を提示されるが、どのようにそれが達成されるのか全く予想がつかず、とても面白かった。
    自由意志に関するニヒリズム的な解答から、人類の歴史の隠された真実まで描く大きな規模のSFだが、等身大の人間のおかしみを通して語られるため、とても読みやすかった。

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    2025年04月02日
  • スローターハウス5

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    ごく稀に、ほんとうに元気…というよりも逆に追い込まれているのか、いまここに生きていることを実感するために、どう生きるか考えるために、生きること、死ぬことを描いた小説を、無性に読みたくなるときがある。(とても傲慢な感覚なので、言葉にするのがとても難しいです。ご不快に思われたら申し訳ありません。)

    タイトルと、そのタイトルの由縁、戦争、捕虜、ドレスデン大空襲、それを描いたSF小説。

    あらすじを読んで、このテーマがどう絡み合うのかがずっと疑問だった。ずっと読んでみたかったけれど、読むとくらってしまう性分なので怖気付いて敬遠していた。でもふと、読みたくなって手に取った。

    戦争がはじまったとき、あ

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    2025年03月23日
  • タイタンの妖女

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    はじめてのSF小説でしたが、楽しく読めたと思います。わからないことがあってもそのまま読み続けたら、どんどん繋がっていってさらに読みたい気持ちがあふれていきました!

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    2025年03月12日
  • スローターハウス5

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    ビリー・ピルグリムは検眼医
    彼はけいれん的時間旅行者で、つぎの行先をみずからコントロールする力はない。したがって旅は必ずしも楽しいものではない。人生のどの場面をつぎに演じることになるかわからないので、いつも場おくれの状態におかれている、と彼はいう。

    そんなビリーはトラルファマドール星人に拐われ、トラルファマドール星で動物園に入ることになる。

    そして人生のなかばを過ぎるころ、トラルファマドール星人から助言を受けた。「幸福な瞬間だけに心を集中し、不幸な瞬間は無視するように、美しいものだけを見つめて過すように、永劫は決して過ぎ去りはしないのだから」と。

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    2025年02月04日
  • タイタンの妖女

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    ネタバレ

    私では理解できないところが多かったので、YouTubeやWebサイトで不明点を補完しつつ理解を進めました

    他者からの解説を見て、継ぎ接ぎですが、理解を進めた上で、思ったことを書き留めたいと思います

    このお話は作者であるカート・ヴォネガットについて知る必要があると感じました

    作者の伝えたかった事は、要約すると

    「地球人の行動は全て決められており、トラルファマドール人の大したことのない出来事のために利用されていた
    だが、自分自身の身近で起こった出来事や身近な人の存在は、自分の人生において大切であり、大きな意味があるという事」

    ではないかと想像されます
    マラカイの人間関係から考慮すると、そ

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    2025年01月06日
  • スローターハウス5

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    決してわかりやすい物語ではないのだけど、まるで水を飲むようにスーッと入ってくる。そんな文章だった。
    トラルファマドール星人の時間感覚を受け入れられる人はスーッと読めると思う。
    その時間感覚ゆえの世界の捉え方、「そういうものだ」と全てを一時的なものとして受け流していく生き方は、地球人の感覚からすれば投げやりにも見える。
    それでも、数えきれない不条理が、トラルファマドール星人のフィルター(ビリーは地球人だけど)を通して語られることで、一種の癒しを得た気がした。

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    2024年11月18日
  • チャンピオンたちの朝食

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    先月読んだ、『ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを』のヴォネガット・ジュニアの小説。
    当時のアメリカに対する風刺がおもしろい。
    クェンティン・タランティーノや筒井康隆に通じる。

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    2024年10月23日
  • タイタンの妖女

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    ネタバレ

    壮大な時間軸で語られる物語。
    どんな苦難に見舞われても何処か優しさを感じる文体。
    ヴォネガットの魅力に思わず引き寄せられてしまう。

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    2024年07月26日
  • タイタンの妖女

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    とても良かった!
    SF吸いてえ〜〜!!欲が満遍なく満たされた…
    読んでいる間はどうしてそんな酷い事するの!?みたいな気持ちだったのだけれども、
    読み終えた後は爽快感がすごい。
    次から次へと起こる予想だにしない出来事と、ハードSFな世界観にぐんぐん引き込まれた。
    正直とても疲れたけども、もう一度読みたい。

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    2024年05月26日
  • タイタンの妖女

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    Audibleにて。

    「私を利用してくれてありがとう。たとえ、わたしが利用されたがらなかったとしても」
    「僕に命の贈り物をありがとう」

     登場人物たちの別れに際しての言葉。感謝により締め括られた別れの時。いかんともしがたい運命に翻弄されつつも、人生の価値を見つけられたという何よりの証左だろう。美しい物語だったな。

     トラルファマドール星人が辿った歴史は、哲学を失った生命体の末路だと思える。目的のための争いではなく、争うことが目的となっていく。暇を弄ぶようになった人間に、ろくなことは起こらない。

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    2024年05月12日
  • スローターハウス5

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    ヴォネガットの半自伝的名作。
    ありとあらゆる理不尽を「そういうものだ」と一言で言い表すセンスに脱帽。
    戦争を肌で体験している人にしか描けない境地。

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    2024年01月04日
  • スローターハウス5

    ネタバレ 購入済み

    過去と今

    カート・ヴォネガットは自身が体験したドレスデン爆撃をもとに、この小説を執筆したらしい。
    自身で体験されたことあって、表現は、生々しく、そして、ユーモアに書かれている。

    ただし、物語として見ると、少し味気ないのかなと思う。
    同じ作者の作品のタイタンの妖女の方が、ストーリーとしては好きだ。
    場面がコロコロ変わるのだけど、そこまで印象が残るような、物事は起きないから、多分味気ないと感じたのだと思う。

    トラルファマドール星人は4次元の目を持っていて、時間を自由に行き来することができるという。
    だから彼らは宇宙の終わりも知ってるし始まりも知っているそう。
    主人公も、作品中人生の時間の枠で、様々な瞬間

    #感動する

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    2023年07月23日
  • タイタンの妖女

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    ネタバレ

    この世の原理はカルヴァンの予定説的摂動()であり、然もその予定は神ならざる力に拠りもたらされる!みたいな。

    予定説のヨの字も出てこないんですけど、これは予定説です。

    唯一、作中のハーメルンの笛吹き男的登場人物のモデルがF・ルーズヴェルトてのが気に入らなかったけど、面白かった!

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    2025年10月26日
  • スローターハウス5

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    人間の自由意志を否定したくなるほどの大量の死をもたらす戦争をトラルファマドール星人式の世界認識で追体験する。彼ら曰く全ては同時に存在しており、死は一時的なものなのである。

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    2022年11月12日
  • スローターハウス5

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    ネタバレ

    SFというより本気の戦争小説でした。
    翻訳なので実際の文章はわからないけど、ただ少なくともこの文章は読みやすくて良かったです。さりげなく散りばめられた目を引く文章の数々。ヴォネガットの場合は、美しいとか迫力がある系よりも含蓄に富んだ文章で、言葉のゆるい空気以上に直接的に語りかけてくる。異星人、時間跳躍、第三者視点(人称)。体裁だけ見たら特殊でいざ思い起こすと複雑多岐に渡る内容なのに、それを簡潔に読ませようとする作者の力量が凄い。現実の物事を語る上で非現実の目が巧く作用しておりSFだから伝わるモノもあることを思い知らされた。加えて全体的にブラックユーモアのある文体が悲壮感を増します。

    主人公の

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    2021年10月02日
  • スローターハウス5

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    『タイタンの妖女』に引き続き、ヴォネガット二作目。こちらも私にたいへん刺さる作品で、これは作家読みするやつだな...という気持ち。笑い(というか朗らかさともいうべきか)もありながら、戦争をこう切り取るのかと、面白かった。実際に体験した人の感覚としてこういうのもあるのだろうというのが、しっとり伝わってきた。人生は不条理であることを、柔らかく受け止めるというか。そういうものなんだろうなあと、ひしひし。広島の記述には、む、と思ったけど、そこは訳者あとがきでケアされているので最後まで読んで落ち着いたし、やはり反射的にむと思う自分がいるんだなと認知したのもなかなかの体験だった。
    そして私は最後の一文を、

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    2021年09月04日
  • 母なる夜

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    アメリカのスパイとしてナチスドイツに仕えた男が、戦中・戦後の出来事について綴った手記という形をとっている。一人称でありながら、心情はとてもドライに描かれる。ハードボイルド的といっても良いかもしれない。彼はユダヤ人迫害の正当性など何一つ信じていないのに——彼自身が言うところの分裂症的に——表向きは完璧にナチスの手助けを続ける。生き延びるために罪を背負わざるを得ない、このような人物を一体どう捉えればよいのだろう。どこまでも辛い物語だが語り方には優しいまなざしが感じられ、そのギャップが強く印象に残る作品だった。

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    2021年04月04日