カート・ヴォネガット・ジュニアのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ごく稀に、ほんとうに元気…というよりも逆に追い込まれているのか、いまここに生きていることを実感するために、どう生きるか考えるために、生きること、死ぬことを描いた小説を、無性に読みたくなるときがある。(とても傲慢な感覚なので、言葉にするのがとても難しいです。ご不快に思われたら申し訳ありません。)
タイトルと、そのタイトルの由縁、戦争、捕虜、ドレスデン大空襲、それを描いたSF小説。
あらすじを読んで、このテーマがどう絡み合うのかがずっと疑問だった。ずっと読んでみたかったけれど、読むとくらってしまう性分なので怖気付いて敬遠していた。でもふと、読みたくなって手に取った。
戦争がはじまったとき、あなたはまだ子供だった。戦争で犠牲になるのはいつも子供達。第1章でメアリの語る憤り、そして「ジェノヴァの善良な人びと、万歳!」
善良な人びと、万歳。愛すべき隣人たち。
すべてが失われた焼け跡で鳥がいう。
何度も何度も、この部分を読み返してしまった。
ドレスデンの大空襲は、ケストナーの戦争日記にてお母さんからの手紙で出てきたような気がする…
とにかく、ありのまま 自分の手で 試行錯誤しながら…悩み抜いて…でも時に軽やかに… そんなふうに書かれていて、読んでいてなんだか、ふわふわと気持ちが軽くなるシーンや、ビリーの感情に呼応して泣き出してしまうシーンや、なんとも滑稽ですこし笑ってしまうシーンや,切なくて寂しい、でも永遠なんだ、と安心するようなシーンが
痙攣的に訪れて。なんだかよくわからないんだけれど、とても、読めてよかった、と思えた。
"そういうものだ"と繰り返されることばは、
諦めのようでいて、不条理なようでいて。軽やかなようで、ずしんと重く響くような。
起きたことなんだ、そういうものなんだ、そこに、やるせなさを感じるということは そういうものだ、と理解しようとしているようで、ぜんぜん納得できていないように感じるのだ。
日々感じている不条理さ、不甲斐なさと、実際にそのことが自分の身の回りではじまった その時に自分はどう生きるのかどう振る舞えるのか、そういうことを日々考えている。そういうことを考えて気が滅入ったり、落ち込んだりする私に、ビリーが、ヴォネガットが、寄り添ってくれた。そう、そう思えた。 -
Posted by ブクログ
ビリー・ピルグリムは検眼医
彼はけいれん的時間旅行者で、つぎの行先をみずからコントロールする力はない。したがって旅は必ずしも楽しいものではない。人生のどの場面をつぎに演じることになるかわからないので、いつも場おくれの状態におかれている、と彼はいう。
そんなビリーはトラルファマドール星人に拐われ、トラルファマドール星で動物園に入ることになる。
そして人生のなかばを過ぎるころ、トラルファマドール星人から助言を受けた。「幸福な瞬間だけに心を集中し、不幸な瞬間は無視するように、美しいものだけを見つめて過すように、永劫は決して過ぎ去りはしないのだから」と。
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ネタバレ 購入済み
過去と今
カート・ヴォネガットは自身が体験したドレスデン爆撃をもとに、この小説を執筆したらしい。
自身で体験されたことあって、表現は、生々しく、そして、ユーモアに書かれている。
ただし、物語として見ると、少し味気ないのかなと思う。
同じ作者の作品のタイタンの妖女の方が、ストーリーとしては好きだ。
場面がコロコロ変わるのだけど、そこまで印象が残るような、物事は起きないから、多分味気ないと感じたのだと思う。
トラルファマドール星人は4次元の目を持っていて、時間を自由に行き来することができるという。
だから彼らは宇宙の終わりも知ってるし始まりも知っているそう。
主人公も、作品中人生の時間の枠で、様々な瞬間を旅するのだけど、あれは思い起こしているのか、実際にその瞬間に行っているのか、わからなかったのだけどどっちなんだ?
トラルファマドール星人は宇宙の終わりを知っているけど、誰も止めるつもりはないらしい。
トラルファマドール星人はそれを受け入れているのか、だから主人公も旅するけど、結局同じ事をその時するのか、よくわからない。
もう一度読んでみると思う。
そうすると色々わからなかったこともわかるかも
最後に僕はこの文を見た時、少し感動した。
神よ、願わくば私に、変えることのできない物事を受け入れる落ち着きと、変えることのできる物事を変える勇気と、その違いを常に見分ける知恵とを授けたまえ。
変わるのは、想像以上に難しい。
多くの人の悩みだと思う。
だから皆、自分の生まれた時の才能や、自分の問題を人のせいにするのだと思う、
主人公のように僕達も変えられないことを受け入れて、変えることのできる事を今変えていくことが大事なんだなと読んでいて思った。
ありふれた哲学本に書いてありそうな、
内容の感想になったね。 -
Posted by ブクログ
再読
2026.3.27
言葉で表せない戦争という惨劇の前でただ立ち尽くしてしまう感覚
繰り返される「そういうものだ」 この後には「と言うしかない」と続くのではないか
ラスト付近のこの言葉は無力な個人が、それでも生きていくための祈りだと思う
「神よ願わくばわたしに変えることのできない物事を受け入れる落ち着きと、変えることのできる物事を変える勇気と、その違いを見分ける知恵をさずけたまえ」
2022.11.12
人間の自由意志を否定したくなるほどの大量の死をもたらす戦争をトラルファマドール星人式の世界認識で追体験する。彼ら曰く全ては同時に存在しており、死は一時的なものなのである。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ1952年に書かれた近未来小説。
現代を言い当てているようなところだとか、
現代からつながっていく近未来を感じさせるところもあります。
全体としてはレトロな未来ですけどね。
たとえば、個人のもつIDカードがパンチカードだったりする古さがあるし、
半導体はでてこなくて、真空管がでてきます。
駒を動かす盤ゲーム(チェスみたいなものかな?)
で人間を負かすための機械がつくられたり、
機械に仕事をとってかわられてリストラされたり、
格差のある階級社会になっていたり、
21世紀を予見している(洞察している)ところがでてくる。
内容そのものもとてもおもしろいです。
また、
AとBという対立があって、
たとえば作者はAの意見に同調しているとすれば
Aの意見をいうひとの描写やセリフはかきやすいのだろうけど、
ヴォネガットくらいになるとBの描写やセリフも卓越している。
敏腕弁護士以上に、
いろいろな立場や主張を理解してくみあげて表現する力があるよなあ、
と思いました。
この時代であっても、
機械に仕事を取って代わられないことが大事なんだよ、
という見抜きがあります。
社会に参加して役に立つ喜びややりがいは、
これからAIや機械が発達しても、
人間からむしりとられるべきではないのでしょうね。
作中にありましたが、ひとは、
二流の機械になるか、
機械の被保護者になるかの二者択一におちいるべきではないのです。
今後どういう形で機械が発達していくかわかりませんが、
そういうところは押さえないとおけませんね。
MITなんかじゃ、デジタルの次はバイオだ、と
もっと遠くを展望して未来を見透かしていたりするようですが、
いやはや、どうなることやら。
非常におもしろく読めました。