カート・ヴォネガット・ジュニアのレビュー一覧

  • 母なる夜
    ヴォネガットの著作では、自己の体験を強く反映しながらも、読み終わってから主人公がどんな人間だったか思い出せないことが多かったりするけれど、本作は妙に記憶に残る。
    それは、主人公が、自分のやってきたことをごまかそうとせず、そして最終的に自分の意志で選択をするからなのだろう。
  • チャンピオンたちの朝食
    ただただ面白いとしか言えないこの作品は非常に「面白い」。登場人物2人が徐々に近づいていくドキドキや、作家自身の登場、作家のイラストなどなどのテクニックも素晴らしいけど、人を深く描写するのはさすがのカート・ヴォネガット・ジュニアですね。
  • ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを
    現代版の異邦人。
    新自由主義社会において、人類愛を語ることは異端なのか。
    カートボネガットのシニカルな問いかけがそこにはある。
    異常という日常。
    ボネガットの皮肉に満ちた文章の中で、
    彼の純粋で無垢な人間愛が浮かび上がってくる作品。

    「あんたがローズウォーター群でやったことは、断じて狂気ではない。...続きを読む
  • ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを
    お金持ちは富を分配しろ!って庶民は思うけど、
    本当に人のために尽くしたらどんなことになっちゃうのか・・・

    中流階級以上にはキチガイと思われ、
    貧しい人々には神と崇められ、
    それでも本人は首尾一貫しているのが滑稽であり、切なくもある。

    しかし最後の妻に会いに行くところからの超展開はすごかった。
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  • プレイヤー・ピアノ
    「第二次世界大戦ののち、わたしはしばらくシカゴ大学に通った。人類学科の学生であった。当時そこでは、人間個々人のあいだに(優劣の)差異というものは存在しないと教えていた。いまでもそう教えているかもしれない。もうひとつ人類学科で学んだのは、この世に、奇矯とか、性悪とか、低劣といわれる人間はひとりもいない...続きを読む
  • チャンピオンたちの朝食
    狂気を帯びた事件に関係したりしなかったりする人物とか出来事が、ユーモアやら愉快な挿絵やら皮肉やらSFやらを交えつつ公平に丁寧に描かれてる。最後、急にぐだぐだになるとこも含めてどこか愛しい。その他いろいろ。

    この世界で思考して選択して行動することができる生き物はあなただけで、それ以外の全てはあなたに...続きを読む
  • ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを
    ものすごく皮肉な物語で、くすくす笑ってしまう。最後は傑作。読み終わってすぐの感情はどこか「アルジャーノンに花束を」と似ている。歪んだ社会と、一人の男の「愛」の形とが似るのかな?よく分からない。これ、日本よりももっと雇用や保険などがシビアなアメリカではもっと辛らつに、その分面白く受け止められるのではな...続きを読む
  • プレイヤー・ピアノ
    第三次産業革命により全ての生産手段が機械化、自動化され、一部の技術者や公務員を除く人々は皆閑職しか与えられずにいる、そんな近未来のアメリカが舞台。人事が全てパンチカードで機械によって振り分けられ、技術者や公務員と一般人との居住区が分けられているという、効率・能率優先主義の社会に疑問を持つ人たちが革命...続きを読む
  • ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを
    おもしろかった。今の世界、アメリカ、日本の暗部を深くえぐりだしてる気がする。
    ヴォネガットはすごいと思う。
  • ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを
    ヴォネガット後期で繰り出される「乾いた笑い」と、
    前期で用いられる、ラストにオチを持ってきて問題の昇華を図る手法が交差した秀作だと思った。
    ヴォネガットは「スローターハウス5」と「チャンピオンたちの朝食」で
    転換期を迎えたんだなぁと改めて思う。

    エリオットの狂気はなかなかすごいものがある。
    こんな...続きを読む
  • チャンピオンたちの朝食
    →「スローターハウス5」の後に書かれた1973年の作品である。
    この作品には、魅力的なヴォネガットの自筆イラストが多数収められている。
    そして、段落の前には「→」がつけられている。

    →「人生は危険だよ、それは知ってる。それに、苦しみもいっぱいある。
    だからといって、まじめなもんだとは限らんよ」
    ...続きを読む
  • ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを
    『惜しみない愛を与える』
    とっても素敵な言葉です。
    でも、人間が他者全員にそれをしようと思うとどうなるのか??

    ローズウォーター氏はすっごいお金持ち。
    仕事をしなくても財団から、毎月たくさんのお金が入ってくる。
    彼はそのお金を自分自身を、貧しい人たちのため、惜しみなく差し出していく。
    『貧しくても...続きを読む
  • ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを
    最後の1ページに驚いた。
    本書では、エリオットがウ゛ォネガットの化身となっているだろう。
    キルゴア・トラウトもまたそうなのだが。

    1982年に日本語訳が出版されたみたいだから、もう20年以上も経っているのに、色あせていない。人間の不変の本質=愛をいささかのユニークさを含めた小説といえよう。

    去年...続きを読む
  • プレイヤー・ピアノ
    読みやすいヴォネガット入門編かな。酷評の対象にされがちな本作だけど、彼の気持ちが素直に表れてるんじゃないかと。
    失敗が見えていても壊さなければならない。
    そんな人間への優しさを感じる一冊。
  • スローターハウス5
    四次元的に時間が入り乱れる奇妙な構成、淡白な登場人物、個人にはどうしようもない巨大過ぎる戦争。
    無慈悲に襲いかかる死、希望、絶望、運命の全ては始めから決まっていたもの。So it goes. そういうものだ。
    この強烈な皮肉は戦争の当事者しか描けないと思った。
  • スローターハウス5
    古典的なSFで、著者のヴォネガッドの実際の戦争体験が元になっているということだが、自分にその手の歴史的な知識がないため内容が良く理解できない。

    ラスト近くの有名な一節だが、なぜ主人公がそう思うに至ったかが上手く飲み込めない。

    自分にとっては読み進めるのが難しい難解な部類の本だった。映画化もされて...続きを読む
  • タイタンの妖女
    今時の「見事な伏線回収!」とか「今年一番泣ける小説!」「衝撃のラストにあなたは震える」などおよそそういった小説たちに最近どっぷり浸かっていた自分にとってはなんじゃこりゃ?と、どう解釈していいのか、どう感情移入していいのやらよく分からず眉間にシワを寄せながら読んでました。ただ読んでる途中で太田光さんが...続きを読む
  • タイタンの妖女
    悪くはなかったけど、自分にははまらなかった。
    SFの名著らしいが…うーん
    読む前は妖女を幼女と勘違いしていてファンタジー的な話かと思っていたが全然違った。
    しかも妖女生きてないし。
  • タイタンの妖女
    地球、火星、土星が舞台となる壮大なSF。シニカルが効いていて、オチもなかなか良かったが、個人的にはそこまでハマらなかった。
  • タイタンの妖女
    ところどころ理解しづらい部分もありましたが、SFの名著と言われるだけあります!メッセージ性もあり面白かったです!自由意志、神、宗教といったテーマが扱われていて、壮大でコミカルな物語でした!YouTubeで解説を少し見てまた読もうと思いました!