カート・ヴォネガット・ジュニアのレビュー一覧

  • 母なる夜

    Posted by ブクログ

    ヴォネガットの著作では、自己の体験を強く反映しながらも、読み終わってから主人公がどんな人間だったか思い出せないことが多かったりするけれど、本作は妙に記憶に残る。
    それは、主人公が、自分のやってきたことをごまかそうとせず、そして最終的に自分の意志で選択をするからなのだろう。

    0
    2013年02月14日
  • チャンピオンたちの朝食

    Posted by ブクログ

    ただただ面白いとしか言えないこの作品は非常に「面白い」。登場人物2人が徐々に近づいていくドキドキや、作家自身の登場、作家のイラストなどなどのテクニックも素晴らしいけど、人を深く描写するのはさすがのカート・ヴォネガット・ジュニアですね。

    0
    2012年06月17日
  • ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    現代版の異邦人。
    新自由主義社会において、人類愛を語ることは異端なのか。
    カートボネガットのシニカルな問いかけがそこにはある。
    異常という日常。
    ボネガットの皮肉に満ちた文章の中で、
    彼の純粋で無垢な人間愛が浮かび上がってくる作品。

    「あんたがローズウォーター群でやったことは、断じて狂気ではない。あれはおそらく現代の最も重要な社会的実験であったかも知れんのです。なぜかというと、規模は小さいものだけれども、それが扱った問題の不気味な恐怖というものは、いまに機械の進歩によって全世界に広がってゆくだろうからです。その問題とは、つまりこういうことですよーいかにして役立たずの人間を愛するか?」

    0
    2012年03月26日
  • ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを

    Posted by ブクログ

    お金持ちは富を分配しろ!って庶民は思うけど、
    本当に人のために尽くしたらどんなことになっちゃうのか・・・

    中流階級以上にはキチガイと思われ、
    貧しい人々には神と崇められ、
    それでも本人は首尾一貫しているのが滑稽であり、切なくもある。

    しかし最後の妻に会いに行くところからの超展開はすごかった。
    え、火事?え、テレポート?記憶喪失?え、ケンカ?いつの間に???
    ぜんぜんついていけなかった(笑)
    主人公もなかなかついて行けてませんでしたが。
    ・・・ということは、狙い通りの効果だったのかもしれません。

    彼のやったことは最後に他者の言葉によって説明され、そうしてようやく周りが理解できる意味を持つ。

    0
    2011年08月30日
  • プレイヤー・ピアノ

    Posted by ブクログ

    「第二次世界大戦ののち、わたしはしばらくシカゴ大学に通った。人類学科の学生であった。当時そこでは、人間個々人のあいだに(優劣の)差異というものは存在しないと教えていた。いまでもそう教えているかもしれない。もうひとつ人類学科で学んだのは、この世に、奇矯とか、性悪とか、低劣といわれる人間はひとりもいないということである。わたしの父が亡くなる少し前に私にこういった。「お前は小説のなかで一度も悪人を書いたことがなかったな」それも戦後、大学で教わったことのひとつだ」
    (本書あとがきより、引用されていたヴォネガットの言葉)
    ここにヴォネガットという作家の「素」とでも言うべきものが凝縮されている。悪人のいな

    0
    2011年07月15日
  • チャンピオンたちの朝食

    Posted by ブクログ

    狂気を帯びた事件に関係したりしなかったりする人物とか出来事が、ユーモアやら愉快な挿絵やら皮肉やらSFやらを交えつつ公平に丁寧に描かれてる。最後、急にぐだぐだになるとこも含めてどこか愛しい。その他いろいろ。

    この世界で思考して選択して行動することができる生き物はあなただけで、それ以外の全てはあなたに刺激を与えてその反応を確かめるために創造主が作った機械なのですよ。その他いろいろ。

    0
    2011年06月11日
  • ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを

    Posted by ブクログ

    ものすごく皮肉な物語で、くすくす笑ってしまう。最後は傑作。読み終わってすぐの感情はどこか「アルジャーノンに花束を」と似ている。歪んだ社会と、一人の男の「愛」の形とが似るのかな?よく分からない。これ、日本よりももっと雇用や保険などがシビアなアメリカではもっと辛らつに、その分面白く受け止められるのではないか。

    0
    2010年06月24日
  • プレイヤー・ピアノ

    Posted by ブクログ

    第三次産業革命により全ての生産手段が機械化、自動化され、一部の技術者や公務員を除く人々は皆閑職しか与えられずにいる、そんな近未来のアメリカが舞台。人事が全てパンチカードで機械によって振り分けられ、技術者や公務員と一般人との居住区が分けられているという、効率・能率優先主義の社会に疑問を持つ人たちが革命を起こすという話でした。機械化による雇用数削減という問題よりも、作中に描かれている格差が今の私たちにリアルに迫ってきます。SFというカテゴリーに入っていますが、それが好きな人も嫌いな人も読める作品です。むしろ、SFという枠を超えた作品であると言えます。長編ですが、すらっと読めるのでおすすめ。

    0
    2009年10月04日
  • ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを

    Posted by ブクログ

    おもしろかった。今の世界、アメリカ、日本の暗部を深くえぐりだしてる気がする。
    ヴォネガットはすごいと思う。

    0
    2009年10月04日
  • ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを

    Posted by ブクログ

    ヴォネガット後期で繰り出される「乾いた笑い」と、
    前期で用いられる、ラストにオチを持ってきて問題の昇華を図る手法が交差した秀作だと思った。
    ヴォネガットは「スローターハウス5」と「チャンピオンたちの朝食」で
    転換期を迎えたんだなぁと改めて思う。

    エリオットの狂気はなかなかすごいものがある。
    こんな夫に振り回されたら、そりゃ嫁はうつ病が発症するわ、と思った。
    が、やはり特筆すべきは、父親との対決シーンだろう。
    このくだりは、ものすごい迫力がある。オチについては、ニヤリと笑う感じ。
    ヴォネガットらしいといえばらしいけど、らしくないといえばらしくないかな。
    思想としてはヴォネガットらしいのだけど、

    0
    2009年10月04日
  • チャンピオンたちの朝食

    Posted by ブクログ

    →「スローターハウス5」の後に書かれた1973年の作品である。
    この作品には、魅力的なヴォネガットの自筆イラストが多数収められている。
    そして、段落の前には「→」がつけられている。

    →「人生は危険だよ、それは知ってる。それに、苦しみもいっぱいある。
    だからといって、まじめなもんだとは限らんよ」
    など等、キルゴア・トラウトの名言が多数収められている。
    トラウトの短編小説のあらすじも、たんと収められている。
    召し上がれ!

    →化学物質のせいで狂っているのは、ドウェイン・フーヴァーに限ったことではない。

    →その他いろいろ。

    0
    2009年10月04日
  • ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを

    Posted by ブクログ

    『惜しみない愛を与える』
    とっても素敵な言葉です。
    でも、人間が他者全員にそれをしようと思うとどうなるのか??

    ローズウォーター氏はすっごいお金持ち。
    仕事をしなくても財団から、毎月たくさんのお金が入ってくる。
    彼はそのお金を自分自身を、貧しい人たちのため、惜しみなく差し出していく。
    『貧しくても心優しい人たち』であれば、いい話。
    でも人間いい人ばかりじゃない。
    『貧しい上にどうしようもない人たち』だってたくさん居る。
    生きている限り誰にだって価値はある。
    それは正しい。綺麗ごとでもありますが、正論です。
    だから、困っているなら助けてあげたい。
    助けてあげることだって悪いことじゃない。寧ろ立

    0
    2009年10月04日
  • ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを

    Posted by ブクログ

    最後の1ページに驚いた。
    本書では、エリオットがウ゛ォネガットの化身となっているだろう。
    キルゴア・トラウトもまたそうなのだが。

    1982年に日本語訳が出版されたみたいだから、もう20年以上も経っているのに、色あせていない。人間の不変の本質=愛をいささかのユニークさを含めた小説といえよう。

    去年亡くなられたことが、本当に悲しい。


    カート・ウ゛ォネガットさん、あなたに神のお恵みを

    0
    2009年10月04日
  • プレイヤー・ピアノ

    Posted by ブクログ

    読みやすいヴォネガット入門編かな。酷評の対象にされがちな本作だけど、彼の気持ちが素直に表れてるんじゃないかと。
    失敗が見えていても壊さなければならない。
    そんな人間への優しさを感じる一冊。

    0
    2009年10月04日
  • スローターハウス5

    Posted by ブクログ

    時間旅行できるってところが羨ましく思いました。この小説では「そういうものだ」「云々」がやたらと出てきますね。小説に出てくるトラルファマドール星人のクセなのかな。

    0
    2025年11月28日
  • タイタンの妖女

    Posted by ブクログ

    1959年に書かれた古典的SF小説です。
    ストーリーがあちこちに飛ぶので難解なところがありますが、最後につながるので気にせず読むと良いと思います。
    でも、思っていたものとは違っていて、全体的には難解でした。

    0
    2025年10月13日
  • タイタンの妖女

    Posted by ブクログ

    何十年ぶりの再読。
    一種独特の世界観で唯一無二の小説だと思う。
    個人的にはスローターハウスが好きだが、この本もいいね。

    25/09/02 35冊目

    0
    2025年09月08日
  • タイタンの妖女

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    なんかあちこち場面が飛ぶので楽しいが、これだけ長い割に、あったことはそんなになかったように感じた。かといって無駄にダラダラ書かれてるわけじゃないし不思議な感じ。

    0
    2025年08月17日
  • スローターハウス5

    Posted by ブクログ

    SF作品というのかなんと言うのか時空を飛んで時間旅行をするのですが、作者が実際に体験したドイツドレスデンでの爆撃による大殺略も描からています。と言っても、重く残虐に描かれているのではなく、他の部分と同じように淡々と感情も平坦に描かれています。全編そんな調子でいつの間にか最終ページの最後の文章に行きつきました。

    0
    2025年08月13日
  • タイタンの妖女

    Posted by ブクログ

    難解なSFと言ってしまえばそれまでだが、ザ・SFという読み応えがあった。
    決定づけられた運命を旅する主人公を通じて、自由意志は存在するのかという問題を考えさせられた。
    この自由意志という命題にはテッド・チャンの作品にも通ずるところがある。

    0
    2025年07月28日