カート・ヴォネガット・ジュニアのレビュー一覧

  • スローターハウス5

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    ネタバレ

    栞を使わずに7日間かけて読んだ。栞を使わないので次にすでに読み終わった場所を読んでいることもあった。題名がピチカートファイブみたいでいいですよね。かっこいい。今思いついたけどプレオー∞の夜明けとも似てる気がする。あれも戦争の話だ。
    戦争の話なんだよな。小説の存在するひとつの意味として後世に伝えるっていうのがあるとおもっている。僕がこれを読んで、ドレスデン爆撃について知ることができた。それはほんとうに大事なことだった気がする。

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    2021年09月29日
  • スローターハウス5

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    普通、物語のはじまりが思い出からだったり、思い出がはさまれたりすると情緒がただようのである。が、この小説は「けいれん的時間旅行者」という思い出の進行、なんとも読者は不思議な気持ちにさせられる。

    主人公ビリー・ピルグリムは現在、過去、未来を行ったり来たりしている「けいれん的時間旅行者」。そうなったのは戦争に召集され、襲撃を受け敗退、逃げ出した森の中で死ぬ思いをした時。

    そこから過去に行くのだが、その過去が現在や未来へ続き、また現在へ戻るという複雑な経過。夢かうつつかまぼろしかということになるのだが…。

    過去現在未来は一瞬、一生は一瞬。つまり、中国のことわざ「一炊の夢」、だから一瞬一瞬を大切

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    2021年09月13日
  • スローターハウス5

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    著者が体験したドレスデン爆撃がテーマ。スローターハウスとは食肉処理場のことで、旧日本語版タイトルは『屠殺場5号』となっていた。ヴォネガットらしくユーモアは散りばめられているが、決して楽しく明るい物語ではない。戦争という殺戮について語るためにはこのような形にならざるを得なかったのだろう。1章はこの本を書いた舞台裏のような話になっており、全体を読み終えた後に読み返してみるとより一層胸に来るものがある。「大量殺戮を語る理性的な言葉など何ひとつないからなのだ。」

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    2021年04月04日
  • スローターハウス5

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    1945年2月。捕虜としてドレスデンにいたカート・ヴォネガットは、連合国軍によるドレスデン爆撃を目の当たりにした。長年その体験を小説にしようと考えてきた彼は、ビリー・ピルグリムという男を創造する。ビリーは同じくドレスデン爆撃を生き残ったが、帰国後にトラルファマドール星人に捕まって以来〈けいれん的時間旅行者〉となって、過去・未来の区別なくランダムに時空を飛び回ることになった。PTSDに悩まされる帰還兵の心理をSFに落とし込んだ反戦小説。


    あからさまに兵士のトラウマからくるフラッシュバックを題材にした作品なので、「SF…?」と疑問符を浮かべながら読んでしまったけど、本文中に「二人とも人生の意味

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    2020年09月13日
  • タイタンの妖女

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    「アンク」が「UNK」になった、
    「私」が「俺」のなるなど、ちょっと変化。
    太田光の解説が秀逸。

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    2023年08月21日
  • スローターハウス5

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    不思議な世界。凄く惹き込まれて、あっという間に読み終えた。
    戦争の悲劇が不思議な描写で描かれてる。なぜかぐいぐい食い込んでるくる、不思議な本。別の著書も読んでみよう。

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    2019年12月07日
  • スローターハウス5

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    そういうものだ。で完結させられる主人公の周りで起こる時代も場所も超えた様々な出来事。行ったり来たりして混乱するかなと思いながら、読みきれた

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    2019年11月26日
  • タイタンの妖女

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    SF。
    序盤は、設定も会話も奇妙で、なんとも分かりづらい感じ。
    4章、舞台が火星に移ってからは、ストーリーが進んでいくのが分かり、読みやすくなった印象。
    水星の生物"ハーモニウム"の描写がとても好み。
    エピローグは、何故か良い話っぽく終わって、読後感は爽やか。
    SFとしても、冒険ものとしても、単純に奇妙な物語としても見所があり、有名作品であることにも納得。

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    2019年10月08日
  • ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを

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    和田誠の表紙と題名にひかれて手にした高校生の頃。中身はほとんど覚えてないけど「愛は負けても親切は勝つ」て文章だけは刻み込まれた。

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    2019年07月12日
  • ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを

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    他の多くのヴォネガット作品と共通して、エリオット・ローズウォーターの行動原理は第二次大戦でのトラウマに端を発している。軽く可笑しく展開している物語のなかで、戦争中に誤って少年を刺し殺してしまう述懐だけが異様に生々しく、温度が違っているように感じた。終盤でエリオットが大勢の子どもを持つ、という第三の選択は、唐突なアイデアのようでいて、実は最初から追い求めていた救済のかたちだったんじゃないだろうか。

    最後の最後で病んだ資本主義社会が転覆する爽快感を味わった後で、ここのところディストピアな妄想ばかりたくましくして、魅力的なユートピアなんて全く思い描けていなかったことに気づき、なんとなく淋しい気持ち

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    2019年05月14日
  • スローターハウス5

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    SF。戦争。
    タイムトラベルや異星人やらが出てくるSF作品であることは間違いないが、非常にリアルで生々しい。
    残酷な描写も多いが、なぜか感動的。
    なんとも不思議な魅力に溢れた名作。

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    2019年04月20日
  • スローターハウス5

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    時空を縦横無尽に駆けめぐる
    不思議なストーリー。
    小説というメディアならではの仕掛け。
    悲惨な現実へのシニカルな視線も印象的。

    戦争映画の逆回しのシーンが
    有名だが、やはり独創的だった。

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    2018年12月15日
  • ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを

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    ネタバレ

    貧しき人々に惜しみなく財を与える億万長者・ローズウォーター氏」を狂気の塊として扱うこの作品。他のヴォネガット作品よりはあっさりしているなあと読み進めていたけど、以下のフレーズは、「生産性」という言葉に揺れる今の日本にとって暗示的な内容だった。

    「規模は小さいものだけれども、それが扱った問題の無気味な恐怖というものは、いまに機械の進歩によって全世界に広がってゆくだろうからです。その問題とは、つまりこういうことですよ──いかにして役立たずの人間を愛するか?  いずれそのうちに、ほとんどすべての男女が、品物や食糧やサービスやもっと多くの機械の生産者としても、また、経済学や工学や医学の分野の実用的な

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    2018年09月25日
  • スローターハウス5

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    わたしはキリスト教的決定論を信じるタイプである。
    運命はすでに決まっていてあとは神に導かれるまま生きるだけ だからこそ臆せずに自らをしっかり持って貴重な一日を生きることができるから。
    あの時ああしていれば、わたしがこうしたせいで、という後悔の仕方はしない。自分がどのように行動しても遅かれ早かれその出来事は起こったのだとおもう わたしが後悔するのは失われてしまったものを大切にできなかったことについてだけであり、愛情とか、穏やかな時間とか、そういうものを十分に受け止められなかったことは心に引っかかり続ける
    ビリー・ピルグリムはそのような後悔さえしない。それは運命を先に知っているからということにな

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    2017年06月07日
  • スローターハウス5

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    けいれん的に起きる時間旅行のせいで最初のうちはとても読みにくく感じたが「そういうものだ」と思ってからは引き込まれた。捕虜生活、ドレスデン爆撃の、渦中にいながらもどこか達観した、俯瞰するような視点は『夜と霧』やら『If This Is A Man』など多くの死に触れ生き延びたもの独特の何かを感じさせる。幸せな時から地獄へとたびたび行きつ戻りつする時の流れは死しても抜け出せない牢獄(作中の表現を借りれば琥珀に閉じ込められた虫)に閉じ込められた意識であり感情であると思うと、非常に壮絶で、苦しい。そういうものか?

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    2017年02月24日
  • プレイヤー・ピアノ

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    ネタバレ

    機械が高度に発達し、コンピュータEPICACによりIQと適性を認められた極小数の管理者と技術者が支配する未来のアメリカ。大多数の人間は職を失い、自尊心をも失いかけていた。

    第三次世界大戦中に人手不足のため機械への依存が高まると、機械は飛躍的に進歩し、EPICACと呼ばれるコンピュータにより全てが決定されることとなった。この組織を作り、発展させたジョージ・プロテュース博士の息子、ポール・プロテュース博士は高い地位にあったが、このような世界を徐々に疑問に感じ始めた。ポールより出世が早かったがその地位を投げ打った旧友フィナティー、夫を出世させることにしか頭に無く、何事に関しても口出しする妻のアニー

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    2015年04月25日
  • ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを

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    序盤、エリオット・ローズウォーターがなぜこのような慈善の人になったのか、また彼を取り巻く貧しく不運な多くの人々の描写などが、まるで演劇の舞台を基礎から創っていくかのように細かく丁寧に描写される。この状況説明を読みこむのに時間がかかり、「この作品はタイタンの妖女みたいに自分には向いていないのか?」と思いきや、中盤から愛すべきエリオットという人が掴めるようになる(それまでの丁寧な描写がここで効いてくる!)と、どんどん面白くなっていき、最後高みに飛び立って、ストンと終わる。

    でも。
    私にはエリオットのような人間愛はきっと寂しく思えてしまうだろう。彼の妻が、彼を愛していても寂しかったように。彼の父が

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    2013年10月15日
  • チャンピオンたちの朝食

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    ヴォネガットの小説はいつも話の筋になかなか掴みどころがない。
    そしてこの作品は今までにましてストーリーが掴めなかった。
    読んでいて、いるのかいないのかも分からない透明のウナギを捕まえろ!と命令されている気分。
    狂った登場人物たちによる、でたらめな事実が箇条書きで続いていく。
    訳者のあとがきによると、“ヴォネガットが書いた最も直接的なアメリカ批判の書”なのだという。
    確かにその通りで、“ヴォネガットらしい”宇宙を感じさせられる途方もない視点から見たアメリカという国を、
    かなり痛烈な言葉で批判したり皮肉っている文章が多く目に付いた。
    例えば、コロンブスがアメリカ大陸を発見した“1492年”について

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    2013年07月31日
  • プレイヤー・ピアノ

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    「誰かが不適応のままでいなければいけない、今の社会に対して疑問を持っていなければならない」という信念を持って小説を書く(出版は許してもらえない)夫。とそんな夫を誇らしいと思う妻のエピソードが1番好き。
    読んで1番に考えたのは「ブラフーナ!生きよ!」という言葉。うん、私もブラフーナ!あと、どんなに文明が発達しても人は人と触れ合って成長するんだ、うん。
    それにしても、何でポールみたいな人がアニータと結婚したんだろな。

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    2013年07月10日
  • ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを

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    もしも完全に利他的な人間が、働かなくてもお金の手にはいるような大金持ちだったら?
    これはヴォネガットのいつものユーモアと皮肉と笑いをまじえて大金持ち、エリオット・ローズウォーターの生き方を描いた小説。

    エリオットの周囲にいる人間たちを同じ人間とも思わないような俗物らしいエリオットの父親は、誰をもを愛していると言っているエリオットに対し、特定の人間を特定の理由で愛する自分たちのような人間は、新しい言葉を見つけなければいけないと嘆く。
    エリオットが「役立たずの人間」に奉仕するときの「愛」とはどんなものなのか?
    住民たちのもとを離れ、もう戻りたくないと思いながらも、まだ見もしらぬ子どもたちのために

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    2013年06月07日