遅読な自分は半年くらいかけて、ちまちまとこの小説を読んだ。岡田斗司夫のオススメで、太田光の愛読書という触れ込みで興味を持った。
全体の構造を把握しながら一気に…という読み方よりは、毎日5ページずつくらいの方が、次から次へと展開していくこのストーリーを無理なく楽しめたかもしれない。まるで短編集を読んで
...続きを読むいるみたいに次々と物語の筋が移っていく。そして最終的には1冊の本が総体として「人生とは何か」ということを仄かに伝えてくれるような感じがあった。
物語の細部は思い出せないけれど、得体の知れない異星人が宇宙の果てに「よろしく」と伝えるために、これまでの地球の歴史を操作してきたというとんでもない発想は、どこか皮肉めいているようで、深い愛があるような感じがしてよかった。我々の存在理由はそんな大それたものではない、けれどどこかの誰かの役に立っている、そんな感覚が心地よかった。
大金持ちのコンスタントの生涯が踏み躙られ、未来も何もかもを手にして新しい宗教を立ち上げようとしたラムファードの生涯も踏み躙られる。そんなキャラクターたちが最終的には「誰かに利用されることが最大の幸福」というところに辿り着く、その一連の流れが美しかった。
今までSFと言えば、「こんな世界だったら人類はどうなる?」といったことを思考実験するようなもののイメージが強かったので、本書のような宇宙冒険物は新鮮で面白かった。が、当初、予期していたような話の内容ではなかったので、ちょっとしっくりとは来ていない。しばらくはこの手の小説は読まなくてもいいかな。