カート・ヴォネガット・ジュニアのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
読んでいて、どうすればいいのかわからなくなって、馬鹿みたいにぼろぼろぼろぼろ泣いてしまった。
ヴォネガットの作品はこれが初読だが、読む前からからそうなる予感はしていた。きっと泣いてしまうし、きっと辛いだろうと。その通りだった。
「カート・ヴォネガット・ジュニアの『ローズウォーターさん~』は、この作家が世界に宛てた、一番新しい、一冊の怒りのラブ・レターである」(ジュディス・メディル)
怒りのラブ・レター。まさしく。
これは愛についての物語である。そして金についての物語である。
一人の男が限りない愛と、限りなく限りないくらいの金を、その身に背負って、生きる話である。
誰を救えばいいのか、という話ではない。
何を変えればいいのか、という話でもない。
世界はあるがままに。そして人間もありのままに。
みじめな人生に電話での話し相手と、わずかなお金を。
何も変わらない世界に小さなユーモアを。
そして、新しい命へ「ようこそ」と。
そうそう、あとはこれ。
「なんてったって、親切でなきゃいけないよ」。 -
Posted by ブクログ
*えり*
富と愛をひとびとに分け与えようとする、とある大富豪と、
彼を取り巻く人々の物語。
ローズウォーターさんに助けを求める人々は、
多くが金銭を求める人々ですが、
中にはほんのささやかな愛情だけを求めている人もいます。
ローズウォーターさんはその全てに応えようとします。
彼に何が起こってそのような行動をとるに至ったのか?
また、彼の行動によって、周囲に何が起こったのか?
「無償の愛」は、限りない困難に満ちています。
果たしてそれは実現可能なのか?実現するには、一体何が必要なのか?
「人間を人間だから大切にする」ということは、シンプルですが気付きにくい事です。
笑いと悲しみと真実が散りばめられたお話でした。
読んでいて色々な所で悲しくて泣きました。
また読み返したい本です。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ『
「俺は神様に一度きいてみたいと思ってるんだ。この下界じゃとうとうわからずじまいだったことを」
「というと、どんなこと?」
そうたずねながら、ホステスは彼の体をベルトで固定する。
「いったいぜんたい、人間はなんのためにいるんだろう?」
』
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『
「() ちょっと耳の痛いことを言わせてもらいましょう。お気に入ろうが入るまいが、ずばりこうです―あなたの財産は、あなたの目から見たご自分と、他人の目から見たあなたに関する、最も重要でかつ唯一の決定的要素である、ということ。金を持っているから、あなたは特別な人間なんです。金がなければ、一例をあげると、あなたはいまマッカリスター・ロブジェント・リード・アンド・マッギー法律事務所の古参経営者の貴重な時間を、こうしてとりあげることもできないのですぞ。
もし、あなたがお金を投げだせば、あなたはまるっきりただの人に成りさがってしまうのです。」
』
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『
「()-いかにして役立たずの人間を愛するか?
いずれそのうちに、ほとんどどすべての男女が、品物や食糧やサービスやもっと多くの機械の生産者としても、また、経済学や工学や医学の分野の実用的なアイデア源としても、価値を失うときがやってくる。だから―もしわれわれが、人間を人間だから大切にするという理由と方法を見つけられなければ、そこで、これまでにもたびたび提案されてきたように、彼らを抹殺したほうがいい、ということになるんです」
』
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まるでニコ動のアホでカオスな動画を見ているような爆笑を誘う作品。訳わかんないんだけどなぜか笑えて、なぜか心に刺さり、なぜか現代の何かを痛烈に批判しているようなショックを与えてくれる。
相続した財産によって金持ちだから働かないアル中のローズウォーターは自衛消防団の運営と巷の落伍者からの電話相談及び小切手による無償援助を営んでいる。親戚や一般人からはその“無駄な”行いがやはり理解できず、彼を精神異常者としてみなそうとして、てんやわんやする。
大雑把に括って利益を行動の指針とする人には、彼の“無駄な”行為が理解できない。だが、現代の、実利主義というか、金本位制というか、“それをやるといくらになるの?OR何がどう変わるの?”という錬金術的な価値観を取り払って彼を見れば結構まともなのかもしれない。例えばマザーテレサのような生き様はまさにローズウォーターの実在人物版(資本を金から自分の体におきかえただけ)だけど、結局のところはどうだろうか。
お金というカミさま。まさにカネさま。カネさまの前では万人が平等。この宗教は至ってシンプルだ。何の解釈も定義も必要としない。カネを多く持てばそれだけ富み、カネがかかればそれだけ価値があると誰もが認める。あれば便利。ないと不便。カネさまを篤く崇拝すれば、その恩寵(衣食住から社会的認知からアイデンティティの確立まで)を受けることが出来る。しかしカネさま法治下の人間はその恩寵と同じくらいの束縛に悩まされる。カネさまの御心を失うかもしれないという恐怖にも苛まれる。カネさまを信じない人・持たない人は衣食住含め社会から徹底的に排除される。カネさまは信者を使って彼らを非人間にする。信者としても、カネさまの力に影響されず幸せに生きる人間は、カネさまに東奔西走する自分の存在をちっぽけなものにする脅威にもなりうるから必死だ。
しかしお金の時代はそろそろ終わるんじゃないんだろうかと個人的に思う。んな馬鹿なと思うが、歴史を見れば今まで何度も“有り得ない、不可能だ”と思われてきたことが実現してきたわけで有り得なくも無い。過去は病に翻弄され、王さまに翻弄され、神さまに翻弄され、戦争に翻弄され、そして経済に翻弄され、、、。未解決の部分もあるが幾度も人間は乗り越えてきたんだし。(作品内での小説では人間は自殺する以外死ぬ方法がなくなったので自殺を奨励している。)
“地球が丸い?あんた馬鹿?”とその時代の100人中100人(つまり100%)が信じて疑わなかったことが今の世では“平面な地球世界を亀が支えて、その下を象が支えて、、ってあんた馬鹿?”になっているわけだ。特に閉塞感、が時代の言葉になっているような今は、案外世界を変えていけることが出来ると思う。ミクシィやスカイプなど金にならない行動が増えてきているのもカネさまの持つ求心力が分散しつつある傾向なんでは??
そんなこんな色々刺激を与えてくれるとんでもない作品です。 -
Posted by ブクログ
あらゆる仕事が機械化された時代が背景の小説。(もはやそんなに遠い未来のことでもなさそうだ。)バーもすべてが機械化されて回転寿し屋のように酒が回ってたりする。オープンしたての頃はその目新しさで話題を呼び、大盛況となったのだが、すぐにつぶれてしまう。その数ブロック先に、生身の人間がカウンター内に立ち、ジュークボックスが置かれているバーがあったのだ。結局はみんなそこへ帰っていった。
そしてここから革命が生まれることになる。この酒場の描写箇所だけはこれがいつの時代だといっても通じる。外へ出れば、未来世紀ブラジルなんですけれど。人間が集まる場は人間を求める。酒場は永遠なんじゃないかと希望を持てた。ただ嬉しかった。 -
Posted by ブクログ
ヴォネガット初の長編小説。1952年。
500ページ近くあり、かなり長いが、やはりヴォネガットは長編がいい。
最初の長編ということもあり、いつものノリとはちょっと違う。
まず、なんと言っても時系列順に物語が進んでいる。これはヴォネガット的に珍しい。
それから、トラルファマドール星人もキルゴア・トラウトもいない。
あんまりイカレた人は出てこない。しかしながら、「イリアム」という地名が登場する。
この先何度も出てくるこの地名、わたしは実在の都市だとばかり思っていたら、
架空なんだそうな。うーん、やられた。
そんなオーソドックスな手法で書かれたこの作品だが、
中盤くらいからだんだん箍が外れてくるの感じた。
序盤は、短編集にあるSFっぽいノリなのだが、主人公のポールが郊外に家を買うあたりから、
なんというかいつものヴォネガットだなぁと思った。
途中途中でさしはさまれる「ブラトブールの国王(シャー)」のエピソードは、
その後の作品に(形を変えてではあるけれど)引き継がれているように感じる。
わたしが感じる「ヴォネガットらしさ」とは、運命に逆らえずにどんどん流されていく視点にあると思う。
その変化を見つめる視点はいたって冷静で、どう抗ったところで引き戻されるものでもない。
その状況がそんなに「しっちゃかめっちゃか」なものであっても。
ヴォネガット文学の面白さは、彼が誘ってくれるその「しっちゃかめっちゃか」に乗ることにあると思う。
確かに皮肉もあるし、教訓もあろう。政治批判、文明批判、大いに結構。
ニヒリストとしてのヴォネガットは超一流。
しかし、そのニヒリズムは「しっちゃかめっちゃか」があってこそ映える。
彼は批判の対象について、是正を求めるような聖人ではない。
求められた是正が実行されたところで、絶対もとの鞘に納まることはない。
きれいに解決するわけはない。
そこまで描いてくれるから、わたしはヴォネガットを信じるし、
「あーでももうしょうがないじゃん」という人や事項が
あっちこっちに存在することは、認めなくちゃいけないんだ。