岡部伸のレビュー一覧
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連合国がおそれた、インテリジェント・オフィサー 小野寺信を描いたドキュメンタリーです。
すさまじかった。読後、まず、思い浮かんできたのは、漢の軍師、張良でした。
まさに情報こそが国家の生死を決する大事であることが、伝わってきます。
教科書では無味乾燥に、無関係に並ぶ、戦争や事件が裏で巧妙につながっていることが感じられました。
遠く離れた北欧・東欧の国々について、感謝の念が沸き上がるとともに、戦後日本が国土を保ちえた幸運を感じました。
気になったことは以下です。
■インテリジェント・オフィサーの条件
・人種、国籍、年齢、宗教を超えた、あらゆる人たちとの誠実な人間関係
・祖国を失った人たち -
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ネタバレ「消えたヤルタ密約緊急電」
〜情報士官・小野寺信の孤独な戦い〜
岡部伸
ヤルタ密約というのは歴史の教科書にも記載のあるヤルタ会談でアジアに関する戦後処理を下記の内容を3人で非公開で合意したものである。(一部抜粋)
ドイツ降伏後3ヶ月以内に日本に参戦する
樺太南部及び隣接島嶼をソビエトに返還
千島列島をソビエトに譲渡
アメリカ:ルーズベルト
イギリス:チャーチル
ソビエト連邦:スターリン
当時、日本は和平交渉を不可侵条約を結んでいるソ連に仲介してもらうことで政府は考えていた。
参戦する予定のソ連に楽観的希望が強くなっている時に上記密約情報を入手し、日本に打電した情報士官小野寺信陸軍少将の -
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第二次世界大戦における情報戦(ヒューミント工作)がオムニバス形式でとっつきやすく、また内容も分かりやすく示されている。
シンガポールでの日本の優れた諜報工作、インパール作戦へのチャンドラボースの影響(ボースの熱意に押された部分もあるが、その後のインド独立の源流になったと今では評価)、終戦決定前の国体護持に関するアイルランドとアフガンからの電報、小野寺スウェーデン武官の活躍、GHQと共産主義者の蜜月など。
但し、自分的に珠玉だったのは、第六章の戦時に陸軍中心にソ連崇拝・幻想化が進んでいたこと、第七章にあるように、その裏でスターリンが着々と対日参戦の準備を秘密裏に敷いていたことだった。
いず -
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[孤人奮闘]「ドイツの敗戦から3ヶ月後、ソ連は日本に対して攻め入って来る」。日本が敗戦まで把握していなかったとされるそのヤルタの密約を、欧州に張り巡らせた情報の網から入手し、日本に打電していた男がいた。しかし、その電報が届いたという記録は残っておらず、結果として日本はソ連の対日参戦を許してしまう......。インテリジェンスの世界で「神様」と呼ばれた小野寺信という知られざる人物と第二次世界大戦中の諜報の内幕を描ききった衝撃のスクープ作です。著者は、北方領土返還交渉などの取材も務められた岡部伸。
「ここまでよく調べたな......」というのが正直な印象。岡部氏が綴らなければ歴史の彼方に消えて -
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第二次大戦中にスウェーデンで欧州情報を担当した今で言うインテリジェンスオフィサーの陸軍の小野寺信少将の記録である。杉原千畝を配下にしていた人だ。ソ連の対日参戦という極秘情報を入手打電したのに大本営で握り潰されたのを本人が知ったのは、なんと1983年だそうだ。筆者は、その後に公開された米英資料や、本人の家族に語った証言テープなどを渉猟し、どのように戦時下の異国で情報入手ルートを作り上げたかを克明に記している。本書の出だしはクドイ部分もあったが、しだいに筆ものってきてグイグイ引き込まれた。当時の日本に第一級のインテリジェンス能力があったのがよく分かる。でも、それを使いこなせないのは、変わらないのか
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太平洋戦争時にスウェーデン武官を務めた小野寺信少将について、インテリジェンスオフィサーとしての役割を中心に、背景となる前半生も含めて解説。少し長かったり、まとまりがなかったり読んでいて辛い時もあったが、影で活躍した小野寺少将の功績に光を当てるものとして非常に興味深かった。
特に、関心を持ったのは以下の点。
・小野寺は年間20億円もの諜報費を使っていた
→ 今の日本ではそこまで諜報に金は使っていない。ODAや自衛隊の装備に金を使う前に情報ではないかと。
・同盟国のドイツ、ハンガリーのみならず、親日的な欧州小国士官(フィンランド、ポーランドら、エストニア、ラトビア)から情報を得る。実は、リトア -
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イギリスのEU離脱に対する国民投票結果について、一通り復習、理解することができます。またその意味と裏側についてもある程度整理することができました。なぜ結果が離脱に動いたのか、それは歴史的な背景からどのような意味を持つのか。重要なファクターであるロシアとの関係は。そして日本にとっての意味はどうなのか。興味のある関係についてまとめて考えることができました。最後に日本の取るべき策については、踏み込んだ意見とも感じましたが、考えさせられるものもありました。
この世界は先行き不透明であり、しっかりと何が起こっているのかを見ていく必要性(決して推測で判断しない)を考えさせられました。 -
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産経新聞ロンドン支局長が、本年6月に世界を驚かせたBrexit(英国のEU離脱)の決定について、その背景と影響を分析したもの。
Brexitの影響については、既に様々なメディアで取り上げられているように、他のEU諸国の離脱はもとより、世界経済や中国など多方面への広がりが予想されているが、本書では、著者がかつてモスクワ支局長を務めた経験・知見を踏まえて、ロシアの台頭を主たる懸念として取り上げている。
著者の主な主張は以下である。
<イギリス解体>
◆離脱派勝利の背景には、グローバリズムの負け組となり、過激な排外主義に熱狂する白人労働者の反乱、情緒に流され、一部のポピュリズムの政治家に煽られた英国 -
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●:引用、他は感想
佐々木譲「ストックホルムの密使」ではじめて知り、終戦工作に関する書物では必ず目に入る名前。最近まであまり優秀なインテリジェントオフィサーとの印象は無かったが、今年の夏のNHKスペシャル”終戦 なぜ早くきめられなかったのか」を見て、俄然気になっていた。
題名にある「消えたヤルタ密約緊急電」をはじめとする、小野寺信在ストックホルム陸軍武官の諜報活動を、複数の資料を駆使して多角的に捉え、疑問点や矛盾点を解き明かそうとしている。しかし、同じ事柄に対する各資料の記述がほぼ同じ場合でも、そのまま重複し記述いるため、なかなか先に進まず、まどろっこしい。
読むと、根元博中将や杉原千 -
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ネタバレまとめと一部感想
北方領土交渉
北方領土返還のチャンスを逃して久しいが、返還請求側が交渉では有利なことを前提に、米中関係とロシアの介入等地政学的変化も考慮しつつ引き続き交渉を続けるべき。
国際情報戦
ゴーンの逃亡に際して国際的な共感が得られた背景にキリスト教宗派が関係している。そのあたりの分析する視点がソフトパワー利用には必要になると感じた。
イギリスがファイブアイズをして日本を取り込みシックスアイズにする可能性を示唆している。日本としてはこの体制には情報交換の幅が拡がるのみでなく、イデオロギーや価値観を共有する各国とサプライチェーンを構築できる経済的な連携のメリットがある。一方、同盟国の