【感想・ネタバレ】「諜報の神様」と呼ばれた男 連合国が恐れた情報士官・小野寺信の流儀のレビュー

あらすじ

イギリスの情報機関、MI5が徹底監視の対象として“個人ファイル”を作った唯一の日本人武官がいた。第二次世界大戦時にストックホルム駐在武官を務め、ポーランドやバルト三国、ドイツの情報士官たちと「情(なさけ)のつながり」を結んで深奥部に迫る秘密情報を数々手に入れ、連合軍側から「枢軸国側諜報網の機関長」と恐れられた男――小野寺信である。小野寺は、独ソ開戦や、アジアでの英軍の動き、さらに原爆開発情報など、様々な重要機密を探り当てていた。さらに、ヤルタ会談の直後には、ソ連がその3カ月後に対日参戦をするという情報まで掴んでいたのである。なぜ彼は、欧州の地で価値ある情報を入手できたのか。それは、小野寺が多くの人々と誠実な人間関係を結んだからこそだった。さらに、彼が心底からの愛国者であったことが、他国の愛国者からも信頼される要因となったのである。日本人として誇るべき一人の情報士官の生き方に迫る、感動の書。

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Posted by ブクログ

明石元二郎と小野寺信を学んだ瞬間、日本近代史への見方が180度変わってしまった。なぜ戦争に負けたか?とか、日本のリーダーシップの問題云々だとか、もはや論じることに1mmの価値も感じない。

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2021年08月12日

Posted by ブクログ

太平洋戦争時にスウェーデン武官を務めた小野寺信少将について、インテリジェンスオフィサーとしての役割を中心に、背景となる前半生も含めて解説。少し長かったり、まとまりがなかったり読んでいて辛い時もあったが、影で活躍した小野寺少将の功績に光を当てるものとして非常に興味深かった。

特に、関心を持ったのは以下の点。
・小野寺は年間20億円もの諜報費を使っていた
→ 今の日本ではそこまで諜報に金は使っていない。ODAや自衛隊の装備に金を使う前に情報ではないかと。

・同盟国のドイツ、ハンガリーのみならず、親日的な欧州小国士官(フィンランド、ポーランドら、エストニア、ラトビア)から情報を得る。実は、リトアニアでポーランドの協力を得て同じインテリジェンス活動に従事していたのが杉原千畝で、ソ連情報を見ていた小野寺の統括下にあった。杉原のユダヤ難民救援は、実はポーランド士官の退避ルートとしてポーランドの要請で準備していたが、士官の多くはカチンの森で虐殺され、代わりにユダヤ人救援ルートとなった。

・ロシア語・ドイツ語に堪能で、相手への金銭支援も含めて近づく能力

・情報はギブアンドテイクが基本。

・マーケットガーデン作戦の開始情報(ドイツに提供)やヤルタ密約によるソ連の対日参戦(ポーランド亡命政府経由)のインテリジェンスを得ている。ヤルタ密約は、ロンドンのポーランド亡命政府の情報部長ガノからの直々の提供・警告(ソ連に占領されたポーランドのようにはなって欲しくない)であった。
→ このヤルタの情報は活かされなかった。的確に情報を集めても情報を使いこなせるトップがいないとダメというケース。また、本情報は参謀本部作戦課で握りつぶされたという話もあるが、そうだとすれば、情報に政策の色をつけていることになり、情報の中立性は確保されるべきだった。

・また、1944年のロシアのフィンランド 制圧時にフィンランドから、ソ連やアメリカの暗号解読情報を得ている(ドイツにも提供)。これは同時にフィンランドから米英にも提供され、ヴェノナ文書解読にも一役買っていると見られる。

・情報期間を通じた敵側との秘密工作
→ 小野寺武官と岡本公使の確執にもあるように、どのチャネルで交渉するかはなかなかの難しい話。出先機関の間、本省間でのパワーバランス、メンツなど様々な要素が絡んでくる。

・日本とポーランドの特殊関係。日露戦争時の蜂起支援や捕虜厚遇、シベリアでのポーランド孤児救出などで、ポーランドの対日感情が向上。対ソ情報分析(暗号解読)では他の追随を許さなかったポーランド軍情報部からの情報技術支援を受ける。ポーランド占領時には、情報機関の接収の持ちかけがあったが、ドイツを気にして受けなかったものの、非公式の協力は継続。

・エニグマの初期解読を行ったのもポーランド。これが英に提供。

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2021年08月10日

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