アントニオ・ダマシオのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
第一線の脳科学者による意識、情動、自己認識に関する研究と論考。
「意識」を複数の階層に分解することで、一般的に思われているその高尚さを鮮やかに解体してみせる。
自分なりの解釈では、身体状態を追跡するマッピング群の集合(原自己)が、中核意識によってその変化が捉えられ続け、蓄積されていく中で、比較的まとまりのある「自己感」へとアメーバ状に育っていったものが我々が通常考えている「意識」(拡張意識)ないし「自己」と読んだ。
ここで面白いのは、原自己そのものは非意識的なプロセスであり、原自己の変化を中核意識が二次的に表象すること自体が自己感の発生点だという点。このあたりの論理構造はベイトソンのダブルバインド理論を着想したが、実際には矛盾を統合しているのではなく、劣勢な信号を捨象することで単一の経験を強制的に作り出していることが大宗なのかなとも思う。だからこそダブルバインドの超克が難しいのかなとも。
末尾の「意識は感情である」という一節がなぜだか妙に刺さったのは、著者の価値観や願いが前面に出ていたからかも。
名著には間違いないが、この領域は色んな人が色んなことを言っているので一回自分なりに整理してみたいなと思わされる、その意味でも自分としては価値のある読書体験だった。 -
Posted by ブクログ
タイトルとパラ読みで即買いした一冊。
著者はフランスの心理学者です。
原題は「Psychologie de la Connerie」というもので、「Connerie」とは、愚かなことや愚行という意味ですが、英語にすると、bullshitとか卑俗な四文字単語の表現になるようです。
日本語の単なる「バカ」よりもっとタチの悪い意味のような気も…
ただ、本書で取り上げられるのは、勉強ができない、無知である、IQが平均以下、などということではありません。
なぜ人間はバカなことをしでかしてしまうのか、というのが本書の大きなテーマのようで、その定義や世界は実に奥深いものです。
以前読んだ「ファスト&スロー」(ダニエル・カーネマン)や「知性の罠」(デビッド・ロブソン)にも通じるところがあります。
本書では、世界の錚々たる知性が、「バカ」についてあらゆる角度から真面目に考察を加えていきます。
印象に残るキーワードを列記すると、認知バイアス、ヒューリスティック、アンカリング、偶然への期待、錯誤相関、常識の欠如、知性の欠如、ハロー効果、ナルシシズム、フェイクニュース、トートロジーなどなどですが、心理学や脳科学の領域にまで踏み込んでおり、実は読み応えある学術的な書物であったりもします。
自分自身も、本書で示すバカの定義に色々と思い当たるフシがあるのですが、少なくとも自分がバカであることを自覚していれば、愚かな行動や思考を未然に防げそうです。 -
Posted by ブクログ
様々なバカがあちこちに蔓延する現代、そもそもバカとは何なのかを考察している一冊。
「頭が悪い人」がバカなのか、あいつをバカだと思っている私とあなたはバカではないのか…などのバカげた深遠なる探求へ本書が読者を導きます。
天才には限界があるがバカには限界がなく、しかも彼らは増殖しているように見えるほど目立つ性質を持った生き物です。
様々な専門分野からバカを考察した結果では定義も様々となるわけですが、子供=バカなのかという問いには一貫してNOとなります。
思慮不足、経験不足から引き起こされるバカげた結果は“粗相”であり、もたらされる結果がどんなものかわかっていながらバカげた行動を起こしてしまう大人こそがしっかりと成長したバカなのです。
故に知性とバカは無関係であり、猛獣などに襲われた際にアルゴリズム的知性で「逃げるべきか留まるべきか」などと考えるよりも合理的知性で「とにかく逃げろ」と即決するべきで、状況に応じて知性を使い分けられない人間がバカなのだと考えさせられました。
もし自分がバカをやらかしてしまった場合にも触れられており、やはりというか当然というか…謝罪が一番効果的なようです。
しかし、本書は紛れもなく良書です。
バカをただバカにするのではなく、入念な研究と考察により親身になってバカがどのようにバカなのかを解説しています。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ『ビジョンとともに働くということ』(山口周 中川淳)で【ソマティック・マーカー】を知り、その関連書を読みたいと思って手に取った『ダマシオ教授の 教養としての「意識」 機械が到達できない最後の人間性』(アントニオ・ダマシオ)。
ソマティック・マーカーというのは、本書著者が出した《意思決定において情動的な身体反応が重要な信号を提供するという仮説》であり、
簡単に言えば、《人が何かを実行しようと思った時の判断には、身体感覚や感情が不可欠》というものです。
「え、大事な事を体の感覚と感情で決めちゃっていいの」と思いますが、
過去の経験によって生まれた情動(身体感覚)・感情を記憶する部分である眼窩前頭皮質が除去された事で、
今まで通りの行動ができなくなくなり、同じミスを繰り返したり、意思決定ができなくなったりした事例があったそうです。
今回の本では、その感情を出す人の意識はどのようにして作られているかが書かれており、
❶ホメオスタシス(体外環境が変化しても体内の環境を保つために内分泌系、自律神経系、免疫系などに変化が起きる機能)由来の感情。
[ホメオスタシスの例]
暑い時、体温を下げるために汗をかく。
寒い時、体温を上げるために体を震えさせる。…etc。
❷情動的感情(記憶から呼び戻された今この瞬間の私、最近の私、遠い昔の私についての知識)
の2つで出来上がってるとの事で、
答えを出すのが難しい物事を「疑問には答えがあるし、難問は解ける」とずっと研究し続けるダマシオさんって、すっごいチャレンジャーだなって思いました。
「私たちの感情や近くの客体と主体な同じ生物の内部に共存するので「相互作用が可能になる」と読んだ時には、
《大笑いする事を続けたらガン細胞が減った話》や『マカン・マラン』(古内一絵)の《満たされない気持ちより先にお腹を先に満たして気持ちを整理する話》を思い出しましたし、
体と気持ちは繋がってるから体にとって良い事をしないと、
気持ちの面に表れるんだと思った1冊でした。