朝日新聞取材班のレビュー一覧
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ここまで深刻でありふれているのかと愕然とした。加害者はどこでどう間違え、この犯罪が発覚した後どう反省するのか──そういったところにも目を配るあたり、本書が本気で性加害をなくそう、あるいはその実態を知らせようとしている気概を感じる。
加害者にとっては一瞬だが、被害者にとってはそれが永遠に続く。本書でも触れているがフラッシュバック、唐突にやってくるその怖さもあるが、誰からも理解されない孤独があまりにも切実で、どうしてそうなってしまうのか、理解に苦しんだ。被害者こそ救われるべきなのに、誰も手を差し伸べない。この現実は変わるべきだと強く感じた。 -
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ネタバレブク友さんの感想を読んで、興味を持ち、読んだ本。
非常に濃いドキュメンタリーだった。
青葉被告が何を考えて犯行に至ったのかが、よく分かる筋道になっていた。
妄想性障害と診断されたというが、その妄想がどのような内容かを詳細に語れるというだけで心神喪失とはいえないのではないか、と私は感じる。
しかしそれが妄想を自分が正しい、と信じ込み、修正できない状態というのが、理解しにくい。
確かに青葉被告は過酷な人生を送って来たと思うが、京都アニメーションに勤めていて、頑張っていた人の中にも努力して努力して、その立場を勝ち取った人もいたと思うのだ。生活保護を受けて、周囲に応援されるような環境になかったのもあるのだろうが、少なくとも自分も認めている定時制高校時代の幸せな時期に友人がいて日常的に話すような関係性を作っていれば、こんなことにはならなかったのに、と思う。
京都アニメーションの手がけたアニメのタイトルが被害者遺族の意見陳述に出てくるたびに、大変な努力をして夢を叶えた方々だろうに、と無念さを感じる。
認知症の方に、「それは間違っている」と指摘するのは禁句だというが、妄想性障害にも同じことが言えるのだろうか。
同様の事件に秋葉原無差別殺人事件が取り上げられていたが、私は京アニ事件の3年後に起こった北新地ビル放火殺人事件を思い出す。こちらは被疑者が死亡したため、詳しい犯行動機を被疑者から聞き出すことは叶わなかった。拡大自殺と解釈されている。
また他の拡大自殺の事件として川崎市登戸通り魔事件も思い出した。
京アニ事件と違うのはやはり青葉被告には明確な自殺の意図は見えないところだろうか。
小説が盗用された、という自分の中での宝物が奪われてポッキリ折れてしまった、という状態だったが、そもそも人の考えることに、そこまでの独自性があるわけではなく、自分が考えた特別は誰かが既に見出していることが非常に多いのだということに、それまで生きてきた中で感じたことがなかったのか。
有名な漫画家とシンガーソングライターとの間に盗作騒動が起きたことがある。
アレ?この曲、あれに似てない?なんていうこともある。
それくらい、人の考えることは千差万別なようでいて、似通っている部分もあるのだということを小説を書いている時に思い至らなかったのだろうか。
妄想は妄想でしかない。
現実では放火して36人もの人を殺したのだ。
「一年後、小説家…」
社会的不遇からくる閉塞感から逃れたいと思う人は多分沢山いる。
そういう心理からセカイ系と呼ばれる物語が好まれるのだと後半の解説に書かれていた。
異世界転生や死に戻りなどのライトノベルも同じ起源かもしれない。
辛い現実を一時忘れて小説の中で幸せを感じるだけならそれでいいのだけれど、そうはいかないものなのだろうか。
そんな簡単に物事がうまいこといくばっかりな訳ないだろうが、と思う。 -
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最近の学校の先生は忙しすぎる、という声はよく
聞きます。
確かに一昔前と比べて、保護者への対応や授業以外
にこなすべき案件は増えているのでしょう。
しかし本当の原因は給与体系にあると、この本は
主張します。
「教員給与特措法」、いわゆる「給特法」というものが
あり、残業代を支払う必要がない規定なのです。
つまり先生は「働かせ放題」なのです。
コレでは仕事が減るわけありません。
民間企業は残業代という人件費が減るからこそ、
業務効率化や無駄な仕事の削減に一生懸命です。
しかし、先生の自担や効率化なんて聞くと保護者側
は「それってサービスの低下を招くのでは?」
という懸念を抱く人もいるらしいです。
でも教育は「サービス業」ではありません。
今まで当たり前のように先生に対応してもらって
いた部活や、問題児対応などは「サービス」だった
のかもしれないです。
しかしこのような件は外部に委ねることにより、
本質である「教育」に力を入れてもらうのが本筋か
とこの本では主張されています。
「サービス」の質は下がるが、「教育」の質は上がる。
これが本来目指すべき姿なのでしょう。
国の根幹は教育にあります。国民全体が関心を示し、理解を進めるべき一冊です。 -
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現在の韓国の問題点を4章構成で伝えてくれます。第1章「少子化」第2章「高齢化」第3章「移民」第4章「ソウル集中」です。
私は第1章の少子化と第4章のソウル集中に特に興味を覚えました。韓国の出生率は0.72と日本の1.20と比べてもかなりの少子化となっています。(5P)
そうであるにもかかわらず、女性は子供を生もうとしません。その理由は育児にお金がかかるからというものです。そして、勤めている女性が妊娠・出産することでキャリアが途絶え、再びキャリアを積むことが難しくなるというものです。
愕然としたセリフがあります。『以前、知人女性から「妊娠した」と報告されたことがある。祝福したものの、「内心「はっ?」と思った。自分の状況がわかっていないんだなって」。その知人も、薄給の会社に勤め、持ち家でもなかった。』(50P)
妊娠したことを報告して、状況が分かっていないと思われるような社会というのは非常に悲しいと思いました。妊娠したと聞くと祝福し、みんなが出産を応援するような社会とならないと子どもを生まなくなり、社会が消滅するように思えました。
第4章ではソウルに行かなければ、人生の負け組となるような風潮があるため、多くの中高生がソウルの大学を目指すのですが、そうなるとソウル以外の都市の高齢化が進み、衰退している状況に心を痛めました。韓国がバランスよく発展する国となることを願っています。この本は現在の韓国の置かれた状況を分かりやすく教えてくれます。韓国に関心がある方にはお薦めします。ありがとうございました。 -
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その日、朝日新聞を広げて1面を見たときは衝撃だった。子どもへの性暴力に関するルポルタージュが大きく掲載され、他の記事よりも先に目に飛び込んできたのだ。だが私の第一印象は「なぜ『今さら』?」だった。そして記事を読み始める前にはこうも思い浮かんだ-「これって昔テレビでやってた『ウイークエンダー』の再現フィルムみたいに、扇情的になるおそれがない?」と。
しかし読み進めれば、取材班キャップの大久保真紀記者の、従来の同種の報道から一歩踏み出そうとする意思はすぐに伝わった。それは記事に一種の“やさしさ”としてにじみ出ていた。新聞記事にはたしか「読んでいてつらくなったら、無理に読まなくてもいいです」という趣旨の断り書きが付けられていたはず。相手に対して断定口調で正論を言い切ることが正しいという風潮がはびこる中で、それに抗うかのようにまず当事者に寄り添おうとする姿勢から、愚直なまでに「あなたは決して悪くない」と言い続けていたのが印象的な連載だった。
しかし大久保さんたちが単に寄り添うだけの受け身ではないこともすぐにわかった。大久保さんたちが目指したのはおそらく、被害に対して様々な形で苦しみを抱える当事者の“恢復”であり、さらに言えば、わたしたちの先入観の撤廃だ。
わたしたちが「子どもへの性暴力」と聞くとき、まず思い浮かべるのは、幼い子どもが見知らぬ人に人気のない所に連れ込まれて受けるという類型だろう。そこで大久保さんは被害と加害の関係を細かく検証することで、性暴力のパターンをこの本で大きく広げて示している。これからこの本を読む人への一助として、長くなるが例示したい。
・父親から娘への性加害。問題の1つは、母親が必ずしも娘の味方になってくれないこと。
・先生から教え子への性加害。問題の1つは、先生が愛情や好意を前面に出して(もちろん保身のための虚偽の場合もある)、教え子がそれを加害だと認識しにくいこと。また、女性の被害だけでなく、男性教員から男性の教え子へ、または女性教員から男性の教え子への加害もあること。
・保育園での性加害。問題の1つは、幼児自身が被害だと認識しにくいことや、被害があってもそれを誰かに伝えるのが難しいこと。
・児童養護施設での神父からの性被害。閉鎖された状況で逃げ場のない年少者をいたわるという表向きで、立場を利用して自己の性欲を満たそうとする行為。元ジャニーズ事務所社長が立場を利用して所属タレントを性的に凌辱していた事例も被害者側の声として出てくる。
…
例示を試みたものの、所感としてはこの本の事例の10分の1も書けていないと思う。それくらいこの本であげられた性暴力のケースはあまりにも多様で、当事者も様々なパターンが見いだせる。だが一方でこの本がルポを書きつないだだけで、まとまりのないばらけた印象かというと、決してそうではない。
私はその点がなぜかを考えたが、大久保さんが多くの取材を経て、ばらばらと思われるそれぞれの事象に共通する1本の芯というか核を見出したからではと考えた。そしてそこにこそ、性暴力で受けた被害者の心の傷を寛解する要素があるのではないだろうか。単なるルポとしての連載から一歩進み、その点の気づきのヒントにまで迫った大久保さんの仕事は一定の評価をしたい。
他方で、私が気づいた点を書いていく。まず1つめ。性暴力は最近になって急に噴き出した問題ではないこと。ルポでは60歳代や50歳代の方の告白が多くみられる。これは被害当時言わなかったことを、この問題に敏感になった現代に改めて言い始めたのではない。性暴力がもつ複雑な要因によって、年数を経ないと言い出せなかったというこの問題特有の事情が含まれている。
(だから性暴力の被害はなくならずに過去から現在まで起こり続け、被害者の数が積み上がり続けているという意味で、冒頭で私が感じた「今さら」は間違っている。)
つまり問題の解決には、被害者に対して、いかに相手を責めていると思わせずにアプローチをするかが重要となる。これは自分の家族が被害者になった場合を想像すればわかるが、頭では理解していても実際の相手への働きかけ方は極めて難しい。
2つ目は性暴力問題に関するマスメディアのあり方の再確認だ。事件を速報性をもって載せる新聞の役割はわかるが、その一方でジャニーズ問題やマイケル・ジャクソン問題は噂レベルでは世間にも聞こえてきていたのに、新聞などのメディアが性暴力問題として積極的に報道したことはなかったと考えている。つまり大久保さんが真摯な姿勢で問題にあたっているのは理解するが、そもそも新聞社として、大きな権力に対峙して問題に立ち向かう覚悟を横に置いたままでの対応は、本末転倒だと思うのだ。外国メディアが報道するまでジャニーズ事務所の犯罪的行為を見て見ぬふりをしていた記者集団が、後追いで何か言ったところで問題の核心に迫れるのかというもどかしさが正直に言ってある。厳しいようだが私は大久保さんを含めた新聞社員が、結局は自分の記者人生を賭ける手前の安全地帯に身を置いたままチマチマと記事を書いているという、サラリーマンゆえの理想と限界とのギャップも目に入った。 -
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朝日新聞に連載されたルポ。魂の殺人というだけあって何十年も影響があったり新しく家族を形成してもそちらに影響が出るなど深刻。能力のある方が性暴力を受けた事で未来が閉ざされるのは言語道断だろう。
読んでいくと卑劣の見本市になっており陰鬱になるが教師など立場を利用した性暴力は本人達の言い逃れ(本書での加害者は基本的にこのパターンだけど)は醜悪。障害者への性暴力は回復への道を閉ざさせておりご家族の方の話を読むに辛くなる。
被害者が加害者になるケースもあり、加害者になって初めて認知というかケアされるというのも酷い話だ。
自分は高校生の頃全寮制の学校に行っていたが性暴力を何回か目撃している。止められなかった自分も不甲斐ないが寮も学校も全く黙殺しており本書を読んで思い出した次第である。実名(もちろん仮名でも)で取材に応じた方々の勇気に敬服すると共に癒される事を願う。 -
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関西万博が2025年4月13日に開幕した。
開催に向けた動きは約12年前の政治的な出会いから始まったとされる。
その間にさまざまな問題があり、幾度となく頓挫したであろうことは薄々感じてはいた。
これは、朝日新聞取材班のルポであり、その当時の会話や写真なども含まれていて、どんな思いを背負って開幕までに漕ぎ着けたのかがよくわかった。
未読ではあるが『大阪・関西万博「失敗」の本質』の本が出版されていて、ノンフィクション・ライターの松元創さんのインタビューまで掲載されている。
この開催前から失敗と銘打った本の出版も凄いことだが、大阪在住の者としては「失敗」とは言ってほしくはないのである。
第1章 維新混迷
第2章 膨らみ続けた経費
第3章 海外パビリオン騒動
第4章 夢洲が招いた危機
第5章 万博への直言
いくつかの内容にニュースで見た記憶があるものもあって、少し前だと思っていたのにけっこう年月が経っていたんだなぁと感じながら深層を知って、より万博会場へ行きたいと思った。
5月と6月と2回万博に行ったが、まだまだ見ていないところはたくさんある。
もっと足を運びたいとは思うのだが、これから暑くなると体力がもたないだろうと…次は9月に。
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関西万博が開催され、友人や知人も足を伸ばしてみに行くことも増えている。とはいえ、どこかあまり自分ごととして捉えられず、テレビを見ないからか余計に、情熱的に情報を追えていない自分がいることに気がついた。改めて、万博の実態ということで手に取ってみた一冊だが、大規模な国際プロジェクトの予算管理、工程管理の難しさを痛感した。誰が悪い、等を責める論調が多いが、この規模の国際展示を各国と調整しながら成し遂げる上で、完璧に成立することなど到底不可能だろう。鼻から、不測の事態がつきものという前提で取り組むのが健全だとする思ってしまう。現職では総合商社のファイナンスに携わる中で、数千億円規模のEPC契約やIPPなる国際プロジェクトを見ていると、マイルストーン設定の重要性や、不履行時の処理をどう取り進めるかの規定がしっかり盛り込まれているかどうかで、最終的なランディングの精度が大きく変わっているように思う。日本が取り組んだ2回目の大阪万博、大きな事故事件が起きずにまずは無事に終えることを祈りたい。
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新聞の記事で連載されているルポをまとめたものなので、紙面で読んだことのある内容もいくつもあったものの、とにかく、ただただ胸が痛い。あまりにも壮絶で苛酷な事実の連続に、仕事柄こういう事例はこれまで何度も見聞きしたことがあって、それなりに耐性があるつもりだった私でさえ苦しくなった。読み終えられないかもしれないとさえ思った。なので少しでも被害経験のある人は、心身に不調をきたすかもしれない。要注意。
支援者として取材されている人物に、複数私の知人がいた。これまで手にした著作の著者や、私自身が受講したセミナーの講師も何人も登場していて、彼らはこれまでと変わらない姿勢で、被害者支援に携わっているのだなあと感慨に耽る。
取材班のキャップを務めた大久保真紀記者は、彼女の担当する記事が私の関心の高いものが多くて、これまでもいくつもの記事を紙面で読んだり、著書を読んだりしていた人物。彼女の丁寧で一貫した姿勢で臨む取材は非常に示唆に富むものが多く、私が信頼して読んでいる記者の一人だ。
本連載はまだ継続中。辛い記事が多くて胸が痛むことばかりだが、引き続き注視しながら、私自身、仕事でも関わることがある事象なので、取り組むべき課題を考えていけたらいいなと思う。 -
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子どもの頃に性暴力を受けた男女の告白に幾度も涙し、胸が押し潰されそうな気持ちになった。まず、被害者たちの勇気ある告白に畏敬の念を示したい。
彼等のその後の人生は、さまざまだ。被害の記憶に蓋をして忘れ去っていたのに、小さな出来事がきっかけで思い出してしまう人、誰にも言えないまま心に傷を抱えてきた人…。
本書では、被害者たちの話にとどまらず、日本社会の性犯罪に関するデータや、PTSDの具体的な症例、性犯罪にあった子どもが起こしやすい行動など多岐に渡って説明がなされている。私自身、この本で知る知識も多く、性暴力が被害者に与える大きすぎる悪影響について思い知らされた。
加害者側の視点も出てきたのが新鮮だった。彼らが過去に何を経験してきたのか、もしかするとそこに要因があるのかもしれないが、自身が苦しんできた経験を克服、解決しないまま大人になり、今度は自分が加害者になるという悲惨な状況に自覚的になってほしいと思った。被害者のための長期的なケア、本書で繰り返された実践的な「性教育」の重要性はもちろんのことながら、加害者への適切な処罰、化学的去勢やGPSの埋込など、彼らが二度と犯行に手を染めないような法改正も迅速に行うべきである。
なんの罪もない真っさらな子どもたちが、いかなる犯罪にも巻き込まれず、すくすくと育っていける社会を創りたいし、それを諦めたくないと強く思った。 -
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【目次】
はじめに なぜ事件は起こったのか
第1部 事件に至る経緯
第1章 青葉被告の生い立ちから
1.【事件当日】十数分間の逡巡の果てに……
2.【幼少期】親の離婚,そして貧困
3.【高校時代】「お前ならできる」恩師の言葉に背中を押され
4.【高校卒業後】夢追い,東京へ。逮捕,そして派遣生活に
第2章 事件は止められなかったのか
5.【2008年以降】「金字塔」の落選。そしてネタ帳を燃やした
6.【2018年以降】「盗作された」募る不満。支援拒み,深まる孤立
第2部 証言の記録
第3章 青葉被告は何を語ったのか
1.143日間の公判で語ったこと
2.記者との20分間の面会で語ったこと
第4章 青葉被告の治療にあたった上田医師の思い
3.死刑判決が出た後もずっと考え続けていること
第5章 公判で語られた遺族や負傷者の思い
4.長男のために青葉被告に伝えたかったこと
5.受け止めることができない,娘がいない現実
6.長女のたくさんの寝顔を写真に収めていた夫
7.突然奪われた,世界にたった一人の姉
8.現場に駆けつけることを妨げた巨大な黒煙
9.どうしても見届けたかった,最期まで頑張った娘の姿
10.夢半ばで命を奪われた息子
11.上半身に一番重い「Ⅲ度」の熱傷を負った女性
第3部 社会に突き付けられた課題
第6章 同じような事件を繰り返さないために
1.「底辺」自称し孤立。ロスジェネ世代,青葉被告と加藤元死刑囚の違い(雨宮処凛)
2.非正規雇用の拡大は社会全体に様々な危機をもたらす(橋本健二)
3.事件を起こす前に「誰かの顔を思い浮かべて」(大友秀逸)
4.その時代特有のゆがみから,事件の教訓を導く(吉岡忍)
5.夢破れた人でもやり直しがきく社会へ(阿部真大)
6.「無敵の人」を「無敵」でなくすのは相互接触(與那覇潤)
おわりに 何ができるか問い続けて -
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予想以上に自分の中に重たいものが残った。生い立ちこそ違うが、就職氷河期下にキャリアアップに繋がるような就職が出来なかった青葉被告の行動や考え方が自分の当時をなぞるようで悲しくなった。
起こしてしまった事件の大きさに軽々しく減刑をした方がいいなどとは言えないが、青葉被告の罪は自分たちが住んでいる社会がもたらしている自分は、この本を読んでいて感じた。
最近、仕事で統合失調症を発症したことがあり今は薬を飲みながら一緒の職場で働く同僚がいる。他の同僚たちの配慮があるとは言い難い厳しいダメ出しに、心を砕きながら毎日頑張っているがなかなか理解が得られない様子を間近で見てきた。
本書の終盤でも書かれていたことだけど妄想に囚われた人に声をかけ続け関係を断たないことが、その人を「無敵の人」にしない方法だと思う。無敵を無効化する(失いたくないものを持たせる)ことが、京アニ事件の再発を防止するために自分ができる数少ないことの一つだと思う。
ちゃんと知れて良かった。やっぱりニュースの切り抜きや見出しだけで、わかった気になっちゃダメだ。 -
Posted by ブクログ
戦争前からウクライナに滞在していた記者による、戦争初日から三日目にキーウを脱出するルポを読むと、外からネット経由で見るしかなかった当時の状況を内側から見ることができる。
戦争開始当初はニュースを見たり読んだりしては泣いていた。いまは慣れてしまって、毎回泣いたりはしなくなった。でも侵攻当初の記事を読みながら涙が次々と溢れてくる。
チェルノブイリ原発が侵攻当日に占領されていたことを、この本を読んで今更知った。
「ジェノサイド条約は、国や人種、民族、宗教に基づく集団を破壊する意図による行為を「ジェノサイド」と定義しており、犠牲者の人数は関係ない。ウクライナ系を特定して殺害する行為があった場合、ジェノサイドとみなされる可能性もあるだろう。」p.89
「2019年に「リベラルな価値観は時代遅れになった」と断言して世界を驚かせたプーチン氏が、武力に訴えて隣国に独善的な価値観と歴史観を押し付けようとしているのが、今回の戦争の本質的な構造だ。」p.285
「ウクライナを舞台とする「バイデンの戦争」は、米国が中国と覇権を争いながら、民主主義国家を中心とする国際秩序の維持にどの程度までかかわるのかを示したともいえる。
そこで見えてきたのは、同盟・友好国が米国に期待できる役割は、ますます限られてきている、という現実だ。日本は、中国やロシアという専制的な核保有国と隣り合い、台湾有事や北朝鮮の核開発という脅威にも直面している。安全保障環境の激変を理解しながら、ウクライナ情勢への米国の向きあい方を注視していくべきだ。」p.289
「ウクライナ危機が世界に教えたことの一つは、中国が米国に抱く不信の抜き差しならない根深さだ。ウクライナの領土や主権、罪のない市民の命が犠牲になっているにもかかわらず、中国が米国との対立を見据えた自国の戦略利益にこだわる姿を私たちは目の当たりにした。戦争の帰結がどうあれ、この先に待つのが一層分断を深めた世界であることを私たちは覚悟しなければならない。」p.290
「米中対立の下、中国でも勇ましい言葉が幅をきかせているが、「中米間のコミュニケーションの質が落ちている。(双方の)『政治的正しさ』におもねる政治ショーがあふれ、多くの疑心やパニックを生んでいる」⁽崔天凱 前駐米大使⁾といった懸念の声もある。ウクライナの悲劇をアジアで繰り返さぬために米中と地域諸国に今こそ求められるのは、互いの意図を見定め、緊張をコントロールするための冷静で重層的な努力だ。」p.294
「ロシアが今後、攻勢を強めてウクライナの国土を広範囲に占領したり、ゼレンスキー政権を転覆させたり、といった展開は、2023年1月現在、考えにくい。
それにつれて、冷戦後に世界が培ってきた国際法の順守や主権の尊重、人権擁護などを基軸に置く国際秩序への影響を懸念する声も、次第に静まってきた。
当初は、ロシアが軍事的な成果を上げることによって「力任せの秩序が到来するのではないか」「新冷戦が復活しかねない」などの懸念が取りざたされた。その後、こうした言説は下火になり、「ロシアには結局、歴史の流れを変える力などなかった」との認識が広がりつつある。
青山学院大学の菊池努名誉教授は、こう語る。
「現在はむしろ、新たな世界のはじまりではなく、ソ連という『帝国』が崩壊する最終段階にあたると考えられる。歴史の流れからみると、今回の侵略は、帝国崩壊の際にしばしば生じる血なまぐさい事件の一つだ」
菊池氏は、「ロシアにうかがえるのは、強かった時代へのノスタルジーと、自分たちの現実の力との間に生じたギャップに、耐えられなくなった姿だ。失われた栄光を折り戻すため、非合理的な行動や現実を無視した暴力に訴えたといえる」とみる。
そして、ロシアをウクライナ侵攻に突き動かしたのは、「『二流国家として軽んじられてきた』という屈辱感だろう。世界から一目置かれる国家としての地位を取り戻したかったのではないか。それは、『冷戦』が名実ともに終わりを告げようとしていることも意味する」と指摘する。」p.295‐296
まだソ連も冷戦も終わってなかったのか。とっくに終わったものと思い込んでいた。
プーチンの中では終わっていなかったのかも。でも、プーチンの夢はソ連を飛び越してエカテリーナ二世の時代っぽいけど。
「ロシアとの安易な妥協は侵略戦争の容認であり、国際秩序の崩壊を招く恐れが否定できない。軍事大国の攻撃に常におびえて暮らす世界を、次世代に残すべきではない。
問題解決の第一歩は、ロシアに占領を許したままでの停戦などではなく、ウクライナからのロシア軍の全面撤退に他ならない。」p.296
「「ルールに基づく国際秩序」の擁護を責務と位置付けてきた日本には、その理念を具体的に実現する努力が求められている。」p.297