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ロシアによるウクライナ侵攻から1年。現場でしか知り得ない豊富な取材ルポを、10の論点のもとに構成。実際に現地で何が起きたのか。虐殺の全容、原発の恐怖、世界の未来──。様々な角度から戦争を浮き彫りにする一冊。
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Posted by ブクログ
戦争前からウクライナに滞在していた記者による、戦争初日から三日目にキーウを脱出するルポを読むと、外からネット経由で見るしかなかった当時の状況を内側から見ることができる。 戦争開始当初はニュースを見たり読んだりしては泣いていた。いまは慣れてしまって、毎回泣いたりはしなくなった。でも侵攻当初の記事を読み...続きを読むながら涙が次々と溢れてくる。 チェルノブイリ原発が侵攻当日に占領されていたことを、この本を読んで今更知った。 「ジェノサイド条約は、国や人種、民族、宗教に基づく集団を破壊する意図による行為を「ジェノサイド」と定義しており、犠牲者の人数は関係ない。ウクライナ系を特定して殺害する行為があった場合、ジェノサイドとみなされる可能性もあるだろう。」p.89 「2019年に「リベラルな価値観は時代遅れになった」と断言して世界を驚かせたプーチン氏が、武力に訴えて隣国に独善的な価値観と歴史観を押し付けようとしているのが、今回の戦争の本質的な構造だ。」p.285 「ウクライナを舞台とする「バイデンの戦争」は、米国が中国と覇権を争いながら、民主主義国家を中心とする国際秩序の維持にどの程度までかかわるのかを示したともいえる。 そこで見えてきたのは、同盟・友好国が米国に期待できる役割は、ますます限られてきている、という現実だ。日本は、中国やロシアという専制的な核保有国と隣り合い、台湾有事や北朝鮮の核開発という脅威にも直面している。安全保障環境の激変を理解しながら、ウクライナ情勢への米国の向きあい方を注視していくべきだ。」p.289 「ウクライナ危機が世界に教えたことの一つは、中国が米国に抱く不信の抜き差しならない根深さだ。ウクライナの領土や主権、罪のない市民の命が犠牲になっているにもかかわらず、中国が米国との対立を見据えた自国の戦略利益にこだわる姿を私たちは目の当たりにした。戦争の帰結がどうあれ、この先に待つのが一層分断を深めた世界であることを私たちは覚悟しなければならない。」p.290 「米中対立の下、中国でも勇ましい言葉が幅をきかせているが、「中米間のコミュニケーションの質が落ちている。(双方の)『政治的正しさ』におもねる政治ショーがあふれ、多くの疑心やパニックを生んでいる」⁽崔天凱 前駐米大使⁾といった懸念の声もある。ウクライナの悲劇をアジアで繰り返さぬために米中と地域諸国に今こそ求められるのは、互いの意図を見定め、緊張をコントロールするための冷静で重層的な努力だ。」p.294 「ロシアが今後、攻勢を強めてウクライナの国土を広範囲に占領したり、ゼレンスキー政権を転覆させたり、といった展開は、2023年1月現在、考えにくい。 それにつれて、冷戦後に世界が培ってきた国際法の順守や主権の尊重、人権擁護などを基軸に置く国際秩序への影響を懸念する声も、次第に静まってきた。 当初は、ロシアが軍事的な成果を上げることによって「力任せの秩序が到来するのではないか」「新冷戦が復活しかねない」などの懸念が取りざたされた。その後、こうした言説は下火になり、「ロシアには結局、歴史の流れを変える力などなかった」との認識が広がりつつある。 青山学院大学の菊池努名誉教授は、こう語る。 「現在はむしろ、新たな世界のはじまりではなく、ソ連という『帝国』が崩壊する最終段階にあたると考えられる。歴史の流れからみると、今回の侵略は、帝国崩壊の際にしばしば生じる血なまぐさい事件の一つだ」 菊池氏は、「ロシアにうかがえるのは、強かった時代へのノスタルジーと、自分たちの現実の力との間に生じたギャップに、耐えられなくなった姿だ。失われた栄光を折り戻すため、非合理的な行動や現実を無視した暴力に訴えたといえる」とみる。 そして、ロシアをウクライナ侵攻に突き動かしたのは、「『二流国家として軽んじられてきた』という屈辱感だろう。世界から一目置かれる国家としての地位を取り戻したかったのではないか。それは、『冷戦』が名実ともに終わりを告げようとしていることも意味する」と指摘する。」p.295‐296 まだソ連も冷戦も終わってなかったのか。とっくに終わったものと思い込んでいた。 プーチンの中では終わっていなかったのかも。でも、プーチンの夢はソ連を飛び越してエカテリーナ二世の時代っぽいけど。 「ロシアとの安易な妥協は侵略戦争の容認であり、国際秩序の崩壊を招く恐れが否定できない。軍事大国の攻撃に常におびえて暮らす世界を、次世代に残すべきではない。 問題解決の第一歩は、ロシアに占領を許したままでの停戦などではなく、ウクライナからのロシア軍の全面撤退に他ならない。」p.296 「「ルールに基づく国際秩序」の擁護を責務と位置付けてきた日本には、その理念を具体的に実現する努力が求められている。」p.297
現地取材を中心にウクライナ戦争の400日を総括する本。 というわけで、ことさらに新しい話しはないわけだが、さまざまな人々のインタビューなどを通じて、やはりこの戦争は(この戦争だけに限定されるものではないが)許されないという思いが強まる。 そして、ここまで来てしまったものが、どう終結しうるのか、未...続きを読む来への希望はあまりみえない。 やはり、人間は、それぞれのストーリーを生きているのだなと思いつつ、それはプーチンも同じ。どう人のストーリーを変えることができるのか、と考えると、より難しさを感じてしまった。
購読している新聞が朝日新聞なので半分くらいは既読記事だったが、まとめられていることによって戦況の流れを理解できた。そして、新聞で日々目にしていても自身にとっては遠い国の戦争だと受け止めていたことを認識し愕然とするのでもあった。ただ活字を追っていただけだったのだ。 一年も続くとは思わなかった戦争は、今...続きを読むもまだ終わりは見えない。
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現地取材400日で見えた 検証 ウクライナ侵攻10の焦点
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