野谷文昭のレビュー一覧

  • ガルシア=マルケス中短篇傑作選

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    南米文学の巨匠である著者の中短編集。南米文学の生活をありのまま描いた作品やマジックリアリズムを描いたものまで様々であるがその根底には人生における理不尽さややるせなさを肯定も否定もしない価値観が表れている。また、『純真なエレンディラ〜』には母殺し的な要素も感じられた。

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    2025年06月04日
  • ケルト人の夢

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    コンゴとペルーにおける原住民の虐待を告発したアイルランド人にしてイギリス外交官、同性愛者の、実在した人物であるロジャー・ケイスメントの伝記小説。
    最後はアイルランド武装蜂起に関わって絞首刑になる。
    面白かったけど、ハードカバーの500ページ以上の本なので、読みにくい(物理的にね)事甚だし。
    リョサの本は「都会と犬ども」「緑の家」もおもしろかつた。

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    2025年04月26日
  • ガルシア=マルケス中短篇傑作選

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    ガブリエル・ガルシア=マルケスの中短編集。
    いくつかの作品は読んだことがあった。だがそれでも退屈するようなことはない。一気に読むのがもったいない作品ばかりだった。
    前半は『百年の孤独』のマコンドを彷彿させるような作品が多かったように感じる。
    そして後半は『エレンディラ』に収録されている作品がいくつかあるせいか、どこか寓話的な雰囲気を感じた。
    傑作選と付けられてるだけあって、どれも傑作と言える密度が高い作品だった。
    自分は安さに釣られて文庫版で読んでしまった。だが、読み終わってから単行本で欲しいと思ってしまった。

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    2024年09月23日
  • 鷲か太陽か?

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    シュルレアリスム的(幻想的で少し悪夢的)な作品集。散文詩と短編小説が三十数作収録されている。メキシコの地名やこの地域の先住民文明であるアステカ文明のモチーフを織り込んだ作品が多い。
    「青い花束」は『20世紀ラテンアメリカ短篇選』(岩波文庫 赤 793-1)にも採録されている短編小説。この同じ短篇選に「トラスカラ人の罪」が採録されているエレナ・ガーロはオクタビオ・パスの最初の結婚相手。

    自分はアステカ神話に興味があり、ラテンアメリカ文学も少しずつ読んでいくなかで出会った一冊。ゆっくり噛み締めながらまた何度でも読みたい。

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    2024年07月16日
  • ガルシア=マルケス中短篇傑作選

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    世界文学の最高峰が生み出した10篇の物語。
    読み始めると止まらなくなるダイソンみたいな本だった→

    「巨大な翼をもつひどく年老いた男」→天使なんだけど描写が容赦ないし、物語の中で歓迎される存在でもないという凄まじさ。
    「この世で一番美しい水死者」田舎の集落感がめちゃくちゃ出ていて面白い。不思議な話なんだけど、登場する人々はリアル。
    「光は水に似る」ものすごく描写が美しい→

    映像で観てみたい気がする。「電球割ったら光の洪水が」ってすごいな。

    「大佐に手紙は来ない」雰囲気最高。もどかしい感じ、じれじれと待つ感じ、なんか、ラテンアメリカって感じ(どんなんや)
    「純真なエレンディラ〜」はヤバい。怖

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    2024年07月06日
  • ガルシア=マルケス中短篇傑作選

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    『百年の孤独』文庫版を予約したのに先だっての本書。
    ノーベル賞作家という肩書きを知らなかったとしても、まずこの筆力に目を奪われる。
    魔術的リアリズムの旗手と呼ばれているマルケスだけれども、神話的な要素のない作品もある。
    「大佐に手紙はこない」はその例で、内戦前後のコロンビアでの老いた大佐が困窮しながらも亡き息子の軍鶏を人生の鍵として大切に扱う話。
    超現実的な部分は一切ないのだけれども、そのかわりメタファーに溢れる。
    ただ、このメタファーも含めてすべて読みやすい。
    同様に神話的な要素が含まれた作品も、とにかく読みやすい。

    文化的背景がだいぶ異なる我々日本人からみた南米の文学なのに、本当に読みや

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    2024年06月08日
  • ガルシア=マルケス中短篇傑作選

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    日常の切り取り方が、(わたしたちが普段過ごす日常と作者が想定する「日常」の乖離を鑑みても)鮮烈に感じられた。
    生々しい人間の感情や生活の垢じみた、湿っていて暗い雰囲気と、寓話のような美しさが同居している稀有な作風だと感じた。

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    2024年03月30日
  • ガルシア=マルケス中短篇傑作選

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    最高。
    ラテンアメリカに蓄えられてきた奇蹟の力をこうして味わえる幸せ。なんでさっさと読まなかったのか。

    ある種の"物語"を勝手に期待する男たちが読者とともに裏切られる構造は、前期のリアリズム小説にも見出される。

    同じアンチ=リアルな短編小説としてカフカを連想したが、カフカは悪い予想が裏切られないという悪夢の因果律に支配されてて、ガルシア=マルケスはよい期待が裏切られがち、なのかも。

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    2023年03月21日
  • ケルト人の夢

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    想像をはるかに絶する
    衝撃的な残虐な行為が
    静かな筆致で描かれていく
    なんども 本を閉じて
    ふうっ の ため息が出てしまう

    「闇の奥」を書いたコンラッドは
    この本の主人公ロジャー・ケイスメントを
    「イギリスの(正しくはアイルランド)バルトロメ・デ・ラス・カサス」
    と呼んでいたそうだが
    ケイスメント本人ではなく、彼を主軸に置いて著者バルガス・リョサの筆致を通すゆえに、より鮮明に、より印象深く、「帝国主義」「被植民地」のおぞましい実態が浮かび上がってくる
     むろん、これはイギリス国を始めとする当時の植民地政策をとっていた全ての国の犯罪行為の暴露でもあるが、戦争行為を歴史の汚点と

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    2022年03月22日
  • ケルト人の夢

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    ネタバレ

    2010年のノーベル文学賞受賞作家の最新作。
    とはいってもスペイン語版がでたのが2010年なので
    もう11年も前です。
     これまでのリョサの本とは異なり、いわゆる歴史小越です。
    実在の人物アイルランド人のケイスメントの人生を振り返る話。ケイスメンとはコンゴでそしてペルーで原住民の人権が蹂躙されているのを見聞きし、その問題の解決に取り組む。
    その過程でアイルランドの問題も未開の部族の問題から敷衍すれば理解できることに想到する。コスモポリタンであるケイスメントがナショナリストになっていくという皮肉。
     そしてケイスメントは同性愛者である。
    理想と現実の間に挟まれながら、ケイスメントは突き進む。真剣

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    2021年12月22日
  • 七つの夜

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    エピローグと訳者あとがきがぬくもりに満ちていて、本文に接する姿勢が変わる。掟破りだとしても、これらを先に読むことをオススメする。

    語りかけるような講演集。きわめて個人的なようで、それでいて多くの人の心を動かすような。

    第4夜 仏教、第5夜 詩、第6夜 カバラが俄然面白かった。翻訳も良いのだろうが、読んでいて心地よく深淵に至る。第7夜 盲目について、はその極致だ。打ちのめされる名文だ。

    ・私も自分の運命が、何よりもまず文学的であると常に感じてきました。つまり私の身には悪いことはたくさん起きるが良いことは少ししか起きないだろうという気がしたのです。でもけっきょくのところ何もかも言葉に変わって

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    2019年07月15日
  • 七つの夜

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    <神曲>を題材にはじまる七夜の講演録。ひとつひとつとても面白い。その話の内容、ものごとの感じ方、捉え方が詩的でとてもいい印象を受ける。読み通した時に感じたことは孤独ではない感じだった。

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    2017年12月18日
  • 七つの夜

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    第四夜 仏教
    矢とは「私」という概念であり、我々ん突き刺しているあらゆるものの概念である。我々は無意味な問題で時を無駄にしてはならない。〜宇宙は有限か無限か。ブッダは涅槃の後、生きているのか否か。そんなことはすべて意味がない。重要なのは、我々が自分に刺さっている矢を抜くことだ。それはつまり悪魔祓いであり、救済の法なのです。

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    2015年03月20日
  • ガルシア=マルケス中短篇傑作選

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    マルケスの著書を読むと「どこへ行っても、どんな時代も人間の営みって変わらず大体こんな感じかもな」という安堵とも諦めともつかない気持ちになる。
    決して読後感が良いとは言い難い作品が多いのだが、丁寧に描き出される「現実なんてそんなもんだ」というやけっぱちな諦念感は不思議と居心地が良い。

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    2025年06月07日
  • ガルシア=マルケス中短篇傑作選

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    はじめは読み慣れないジャンルだったからとっかかりを見つけるのに苦労したけれど、事前に解説を読んでいたこともあって途中から楽しく読むことができた。
    特に「この世で一番美しい水死者」、「純真なエレンディラと邪悪な祖母の信じがたくも痛ましい物語」、「光は水に似る」が好きだったな。
    百年の孤独を読む前にガルシア=マルケス作品がどのようなものか体験することが目的だったけど、これもしっかりと面白くてよかった。
    百年の孤独も楽しみだな。

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    2024年09月29日
  • フリアとシナリオライター

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    バルガス・リョサの半自伝的小説とのこと。ラジオ局に務める青年、その青年のおばにあたる離婚歴のある女性(青年の妻になる)、ラジオドラマの人気シナリオライターが織りなすコミカルなストーリーに、ラジオドラマのストーリーが挿入されており、おもしろおかしく読める一冊。ストーリーが輻輳するという点で、お得感があります(笑)

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    2024年03月01日
  • ガルシア=マルケス中短篇傑作選

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    名作だ。しかし、やるせなくて読んでしんどい作品が多い。解題にも書かれていて、そのような作家なのだと知る。現実的な描写の中に幻想的なものがしれっと同居してるのはすさまじく、現実味が強すぎて、少し心が疲れてしまった気がした。
    ラテンアメリカ文学としてボルヘスは大好きだし、コルサタルも楽しめた。たしかに同じ香りを感じるが、それとは明確に違う地に足のついた「つらい」現実感が迫る。

    しかし、この中では「聖女」がとびきりに気に入った。なぜならば、やるせないだけでなく、その中に希望があったからだ。人生はやるせないことの連続で生きてゆくのであって、そのなかに少しでも希望が欲しいとぼくは思うのだ。たとえそれが

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    2024年01月14日
  • ガルシア=マルケス中短篇傑作選

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    ラテンアメリカ文学を読むぞ!と息巻いて全然手を出せていなかったのですが、ついに気になっていたマルケスを読む。
    前半の、庶民のやるせなさを強く感じるリアリズム小説より、後半のザ・マジックリアリズム!という感じの、色鮮やかでファンタジー要素が含まれる小説のが好きだった。
    ファンタジーと言っても、中庭で見つかった天使は年老いていて、日差しと雨にさらされる鶏小屋に入れられて放置されるし、水死体の話やら、おばあちゃんに娼婦にさせられた娘の話やらがあるし、人生の残酷さは伝わってくる。
    それでもラテンアメリカの太陽が連想される、鮮やかなイメージの話が多いので、不思議とあまり暗い気持ちにはならない。なんかその

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    2023年09月23日
  • ガルシア=マルケス中短篇傑作選

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    なんだか癖になる文体。
    読んでいて映画のようだと思った。

    この光景を映像で見たいと思わせるような描写が沢山あった。

    シュールな要素もあり。

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    2022年08月17日
  • 七つの夜

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    1977年に77歳のボルヘスが語った、7つの主題についての講演録。圧倒的な知性と芳醇な感性が、丁寧な口調から滲み出ているその語り口がまずは心地よい。神曲や千一夜物語の楽しみ方を解説し、仏教やカバラといった非キリスト教を紹介しつつ悪夢や詩、盲目について語るそれは主題が相互に絡み合い、ボルヘスという一つの書物を形成する。書痴とは即ち書知の快楽を求める者を指すのだと言わんばかりに、晩年の肯定感に満ちた姿は何より魅力的である。ちなみに、彼の仏教観は鈴木大拙氏の言う「即非の論理」をかなり正確に理解したものだと思う。

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    2013年07月06日