野谷文昭のレビュー一覧
-
-
-
Posted by ブクログ
世界文学の最高峰が生み出した10篇の物語。
読み始めると止まらなくなるダイソンみたいな本だった→
「巨大な翼をもつひどく年老いた男」→天使なんだけど描写が容赦ないし、物語の中で歓迎される存在でもないという凄まじさ。
「この世で一番美しい水死者」田舎の集落感がめちゃくちゃ出ていて面白い。不思議な話なんだけど、登場する人々はリアル。
「光は水に似る」ものすごく描写が美しい→
映像で観てみたい気がする。「電球割ったら光の洪水が」ってすごいな。
「大佐に手紙は来ない」雰囲気最高。もどかしい感じ、じれじれと待つ感じ、なんか、ラテンアメリカって感じ(どんなんや)
「純真なエレンディラ〜」はヤバい。怖 -
Posted by ブクログ
『百年の孤独』文庫版を予約したのに先だっての本書。
ノーベル賞作家という肩書きを知らなかったとしても、まずこの筆力に目を奪われる。
魔術的リアリズムの旗手と呼ばれているマルケスだけれども、神話的な要素のない作品もある。
「大佐に手紙はこない」はその例で、内戦前後のコロンビアでの老いた大佐が困窮しながらも亡き息子の軍鶏を人生の鍵として大切に扱う話。
超現実的な部分は一切ないのだけれども、そのかわりメタファーに溢れる。
ただ、このメタファーも含めてすべて読みやすい。
同様に神話的な要素が含まれた作品も、とにかく読みやすい。
文化的背景がだいぶ異なる我々日本人からみた南米の文学なのに、本当に読みや -
-
-
Posted by ブクログ
想像をはるかに絶する
衝撃的な残虐な行為が
静かな筆致で描かれていく
なんども 本を閉じて
ふうっ の ため息が出てしまう
「闇の奥」を書いたコンラッドは
この本の主人公ロジャー・ケイスメントを
「イギリスの(正しくはアイルランド)バルトロメ・デ・ラス・カサス」
と呼んでいたそうだが
ケイスメント本人ではなく、彼を主軸に置いて著者バルガス・リョサの筆致を通すゆえに、より鮮明に、より印象深く、「帝国主義」「被植民地」のおぞましい実態が浮かび上がってくる
むろん、これはイギリス国を始めとする当時の植民地政策をとっていた全ての国の犯罪行為の暴露でもあるが、戦争行為を歴史の汚点と -
Posted by ブクログ
ネタバレ2010年のノーベル文学賞受賞作家の最新作。
とはいってもスペイン語版がでたのが2010年なので
もう11年も前です。
これまでのリョサの本とは異なり、いわゆる歴史小越です。
実在の人物アイルランド人のケイスメントの人生を振り返る話。ケイスメンとはコンゴでそしてペルーで原住民の人権が蹂躙されているのを見聞きし、その問題の解決に取り組む。
その過程でアイルランドの問題も未開の部族の問題から敷衍すれば理解できることに想到する。コスモポリタンであるケイスメントがナショナリストになっていくという皮肉。
そしてケイスメントは同性愛者である。
理想と現実の間に挟まれながら、ケイスメントは突き進む。真剣 -
Posted by ブクログ
エピローグと訳者あとがきがぬくもりに満ちていて、本文に接する姿勢が変わる。掟破りだとしても、これらを先に読むことをオススメする。
語りかけるような講演集。きわめて個人的なようで、それでいて多くの人の心を動かすような。
第4夜 仏教、第5夜 詩、第6夜 カバラが俄然面白かった。翻訳も良いのだろうが、読んでいて心地よく深淵に至る。第7夜 盲目について、はその極致だ。打ちのめされる名文だ。
・私も自分の運命が、何よりもまず文学的であると常に感じてきました。つまり私の身には悪いことはたくさん起きるが良いことは少ししか起きないだろうという気がしたのです。でもけっきょくのところ何もかも言葉に変わって -
-
-
-
Posted by ブクログ
名作だ。しかし、やるせなくて読んでしんどい作品が多い。解題にも書かれていて、そのような作家なのだと知る。現実的な描写の中に幻想的なものがしれっと同居してるのはすさまじく、現実味が強すぎて、少し心が疲れてしまった気がした。
ラテンアメリカ文学としてボルヘスは大好きだし、コルサタルも楽しめた。たしかに同じ香りを感じるが、それとは明確に違う地に足のついた「つらい」現実感が迫る。
しかし、この中では「聖女」がとびきりに気に入った。なぜならば、やるせないだけでなく、その中に希望があったからだ。人生はやるせないことの連続で生きてゆくのであって、そのなかに少しでも希望が欲しいとぼくは思うのだ。たとえそれが -
Posted by ブクログ
ラテンアメリカ文学を読むぞ!と息巻いて全然手を出せていなかったのですが、ついに気になっていたマルケスを読む。
前半の、庶民のやるせなさを強く感じるリアリズム小説より、後半のザ・マジックリアリズム!という感じの、色鮮やかでファンタジー要素が含まれる小説のが好きだった。
ファンタジーと言っても、中庭で見つかった天使は年老いていて、日差しと雨にさらされる鶏小屋に入れられて放置されるし、水死体の話やら、おばあちゃんに娼婦にさせられた娘の話やらがあるし、人生の残酷さは伝わってくる。
それでもラテンアメリカの太陽が連想される、鮮やかなイメージの話が多いので、不思議とあまり暗い気持ちにはならない。なんかその -