海保眞夫のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレまたレビューで無知をさらけだしにきた。
善と悪との絶えざる闘争。人間は善と悪という二元性を併せ持つ存在として描き出される。
私のお気に入りは、変身がたび重なる中でジキルがアタスンに対して、「自分で自分が信じられない」と言い放って、現実世界についての判断をゆだねてしまうシーンである。
これはまさにスティーブンソンが、善と悪との闘争の中で、自分を見失う人間の姿を克明にえぐり出した場面と言える。
人は、認識において「一貫性」を求めたがる。ある部分までは、理性的な判断によって対処が行われるが、対応できない部分に関しては、拒絶し遠ざける傾向にある。善と悪という正反対の事象が並立し、自己矛盾を日々生成する。そしてその断絶が大きくなり対処できなくなったとき、結果的に人をある種の絶望=思考停止状態に追いやるのではないか。
ジキルは彼の研究内で人を「二元的存在」として結論づけるとともに、多元性をもつものであることを示唆する。
社会的動物として、様々な役割を期待される人間は、大小様々なコミュニティの中に適した自分を創造し、時と場合に応じてそうした自分にアクセスする。しかし、それは究極的には二元論的世界観に収斂されていくというわけであろう。
社会が複雑化している今も、善と悪に引き裂かれる・あるいはそれを使い分ける人間存在の永遠的宿命。ジキルはその宿命からの脱却を試みた一例である。