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医師ジーキルは自ら発明した秘薬によって凶悪な人物ハイドに変身するが、くり返し変身を試みるうちにやがて恐るべき破局が……。人間の二重性を描いたこの作には天性の物語作家スティーヴンスン(一八五〇―九四)の手腕が見事に発揮されており、今も変わることなく世界中で愛読されている。映画化されることに実に七十回という。
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Posted by ブクログ
内容は有名なので内容は知っていました。映画や舞台ではジーキル博士を主人公としているものが多いですが、原作では前半は友人のアタソン弁護士からの第三者目線での「善良なジーキル博士と、悪行のハイド氏の関係は?」という謎の物語、そして後半は2つの手紙によりその謎の回答となっています。 私は内容は知っている状...続きを読む況で読んだのですが、知らずに読んだら前半はアタスン弁護士と一緒に謎を不思議に思い、後半はジーキル博士の焦燥感を感じながら読んだだろうなあ。 ※※※以下ネタバレしています※※※ 私が知っていたのは「薬により、善のみのジーキル博士と、悪のみのハイド氏に分かれる」ということだけだったので「もともとジーキル博士は善意の人で、善意から研究をしたんだけど、悪に乗っ取られてしまった」のかと勘違いしておりました。 しかしちゃんと読んでみるとジーキル博士は若い頃から悪行の二重生活を送っていた、ということなので、すると薬が利かなくなったのは、薬によりハイド氏の悪が本性だと暴かれたってことでしょうか。 小説の根本にはキリスト教思想とかあるのかなあ。人間の性質は神が作ったのだから、科学的に悪意に飲まれてないけないよとか、 現在読者としては、人間には善と悪があり、どうしても悪のほうに惹かれてしまうが、それを認めてできれば善行を行おうとするのが人間だよね、というようにも考えた。 === 弁護士のアタスンは、親戚のリチャード・エンフィールドから「その建物の出入口で、凶悪な人相のハイドという中年男がぶつかって転んだ少女を足蹴にした様子を見た」ことを聞く。 エンフィールドとアタスン弁護士が気になったのは、通行人に詰め寄られたハイド氏が慰謝料として支払ったのがヘンリー・ジーキル博士の小切手だったということだ。 ※冒頭はアタスンとエンフィールドの関係やら会話やらに行を費やすのだが、エンフィールドの出番はここだけ。 ジーキル博士は50代の温厚で品行方正で知られ、アタスン弁護士の顧客でもあったのだ。そしてアタスン弁護士はジーキル博士から「自分が死ぬか行方不明になるようなことがあったら、遺産はハイド氏に譲る」という遺言書を預かっていた。 ジーキル博士はハイド氏に恐喝されているのではないか?と気にになったアタスン弁護士は、ジーキル博士の長年の友人ヘイスティー・ラニョン医師を尋ねる。しかしラニョン医師は「昔はヘンリー・ジーキルとは友達だったけどさ、彼の最近の科学的主張があまりにバカバカしいのでもう友達辞めたよ」と言う。(ラニョン先生は明るく豪快な印象なのでこんな口調で書きたくなる 笑) 数日後、ジーキル博士を訪ねたアタスン弁護士は、その住居でハイド氏と鉢合わせる。聞いた通りの凶悪で人を不快にさせる風貌。アタスン弁護士がジーキル博士に問いただすと「その気になればハイドを追い出すことができるのだ。今は遺言状のままにしてくれ」と言ってそれ以上のことを答えようとはしない。 1年後、ついにハイド氏が大事件を起こす。ある老紳士をステッキで撲殺したのだ。ハイド氏は姿を消した。 アタスン弁護士はジーキル博士にハイド氏の行方を問うと「ハイド氏とは関係を絶った。彼はもう現れない」と言う。ジーキル博士は慈善事業に力を入れるようになる。 平穏な日々が続いたかと思ったが、ジーキル博士の様子がおかしくなる。住居に引きこもり来客を拒むようになったのだ。 その頃、ラニョン医師が病死する。ラニョン医師はアタスンに「ジーキル博士が死ぬか行方不明になったら開封すること」という手紙を遺した。 ジーキル博士の遺言状と同じような「行方不明になったら」だ。ジーキル博士は行方をくらまさなければいけない理由があるのだろうか? ある夜アタスン弁護士のところに、ジーキル博士の執事のプールが助けを求めてくる。「ご主人様の元で長年勤めておりますが、今ご主人の研究所にいるのは主人のジーキル博士ではありません。体格も声も全くの別人でございます。あれは何者なのでしょう。そして主人のジーキル博士はどこに行ってしまったのでしょう」と言うのだ。 アタスンはジギル博士の研究所に駆けつけ、プールとともに扉を壊して中に入る。そこには、ジーキル博士の服を着たハイド氏の屍体が横たわり、ジーキル博士の姿はどこにも見つからなかった。そして机には、ジーキル博士からアタスン弁護士宛の手紙が置かれていた。 物語前半は、「紳士のジーキル博士が凶悪なハイド氏の関係は?!」という謎。そして物語後半は、アタスン弁護士に当てられたヘイスティー・ラニョン医師とジーキル博士からの二通の手紙で、前半の謎の答えとなる。 【ラニョンからの手紙】 「友人で科学議論の相手であるジーキル博士から突然『私の研究所から薬を持ってきてくれ』という手紙が届けられたんだ。理由分からないけど必死の様子が読み取れたから薬を取ってきたんだよ。 そこへ乱暴者のハイド氏が乱入してきて私が取ってきた薬を飲んだんだ。 すると!なんと!小柄で凶悪で中年のハイド氏が、自分の目の前で大柄で温厚で初老のジーキル博士に変わったのだ! ああ、あんなもん見ちまったらびっくりしちまって、自分の人生ももう長くはないよ。」 【ジーキル博士からの手紙】 「私は温厚で善良で人付き合いの良い紳士で通ってきたけど、若い頃から悪の快楽への欲求を強く持ってきた。若い頃は二重生活を送ってきたけれどジーキル博士としての名前が上がると難しくなってきた。そこで実験を繰り返し、人間の善と悪を完全な分離させる薬を発明したのだ!これを飲むことにより、善のみのジーキル博士、悪のみのハイド氏に自在に変身することができるようになった。 初めは薬により、ジーキル博士としての善良な社会生活と、ハイド氏としての悪行や暴力を入れ替えて暮らしていた。 だが薬を飲まなくてもハイド氏に変身するようになってしまった。(ラニョン医師の手紙はこの頃のもの。外出先で急にハイド氏になってしまったので、友人ラニョン医師に研究所から薬を手に入れてもらった) その後もジーキル博士でいられる時間はどんどん短くなってゆく。その中で必死の研究を続けたが、ハイド氏に変わった時にその研究を阻害される。私の中から善意のジーキル博士が消え失せ、悪行のハイド氏に成り切ってしまうのは時間の問題だろう。ハイド氏は殺人者として処刑されるのだろうか。その時にはジーキル博士である自分はもう消え失せている。それならジーキル博士最後の意思が残っているうちに、自分の人生を終わりにしよう」
ジーキル博士とハイド氏。二重人格、解離性同一性障害をテーマにした不朽の名作。二重人格者や解離性同一性障害者を表すとき、いまだにジーキル博士とハイド氏と言葉が使われていることにこの小説の偉大さがわかります。100年以上も前のお話だけれど、全然古臭くない。むしろ現代に通じる内容です。
弁護士アタスン氏の古い友人である医者のジーキル博士には恐るべき秘密が隠されていた。 アタスン氏の住むロンドンの街では不気味な人物ハイド氏に関する奇妙不可解な事件が起きていた。アタスン氏は友人であるジーキル氏とハイド氏に謎の接点があることが分かってくる。 アタスン氏はついに友人のラニョン医師の手記とジ...続きを読むーキル氏の陳述書から真実を知ることになる。 この『ジーキル博士とハイド氏』は従来より人間心理の二重性に触れた作品として知られている。ジーキル氏は資産家の家に生まれ、幼い頃より努力と徳の節制した生活をしてきた。しかし、彼は欲望に旺盛であり、そういった欲望を節制により抑圧してきたのである。 だが、のちに人間本来の二元性に気づいたジーキル氏は善悪二元の完全分離を夢見て、ついにその秘薬を完成させた。 人間誰しもが持つ善悪を分離するという発想もさることながら、邪悪な面を凝縮したハイド氏は善の部分がなく歯止めがないため、次第にジーキル氏自身が変身をコントロールできなくなるという展開は、人間の心理をよく分析した筆者一流の怪奇ストーリーである。
いや、面白かった。 古い本だし、読みづらいのは仕方あるまいと高をくくっていたのだが、そんなことはなかった。 読みやすく、しかもリズムのよい展開、ひきつけられる巧みな心理描写で、即座に読み終わった。 数時間だったと思う。中島敦はあんなにかかったのに…笑 有名な話なので結末を知ってしまっていたから、後...続きを読む半に向けて謎がとかれるワクワク感は少なかった。(十分に楽しめたけれども) もし知らずに読んだら、結末にどれほど驚愕しただろうかと思う。 人間のこころの闇をとらえている。 ひとは誰でも彼のようになりえるのだろう。 もっと専門的な内容かと思ったが、そんなことはなく、エンターテインメント的だった気がした。 読んでよかった。
こんなに悲しい話だなんて思わなかった。 自分じゃない自分に支配される恐怖。ジーキル博士が死んだのは命が終わったときじゃなくて戻れなくなった瞬間なんだろうな。 あー泣きそう
二重人格の代名詞。ずっと昔に読んだが、ミュージカルを観たので再読した。人間、抑圧されすぎていたらダメになるんだなあ。自分らしく生きないと綻びが生じてくる。
何となく知っていたキャラクターだったけど、小説として読んだのは初めて。 ジキル博士がハイド氏になる過程、ジキル博士の苦悩がよくわかった。 面白かった。、
多重人格の代名詞といっていいくらいストーリーが有名なので、今さら読んでも面白くないかな、と思っていたけれど、そんなことはなくとても面白かった!善良な人格であるジキルが主格だったはずなのに、何回も変身をしているうちに、邪悪なハイドの人格が大きくなっていく。そのことに気づいたジキルのことを思うとゾクリと...続きを読むさせられる。二通の手記で終わる構成も好き。特に、ジキルの手記の、悪との葛藤部分は読み応えがあった。
アタスン氏の語りにより進められる、博愛家で有名なジーキル博士と残忍なハイド氏の奇妙な関係。なんとなく二重人格の話?という印象を持っていたのですが、読んでみると、そんな単純な話ではありませんでした。 良い人と思われたい。だけど、欲望のままに自分を満足させたい。清さや愛を求める心と、罪や享楽を求める欲望...続きを読むを併せ持つのは、いたって普通な人間の姿だと思います。だけど罪にふけりすぎると結果自分自身を滅びへと招いてしまう。でも相反する二つの心を持っているのはつらい。人の持つ葛藤をこの物語はよく現していると思います。 そう、そして、ジーキル博士に言いたいのは、そんな罪人のあなたを主は愛している、ということです。
名前だけは聞いたことのある有名な作品。二重人格の男が主人公ってことしか知らなかったんだけど、ここまで高尚な作品だったとは…。ペラペラの本だけど凄く読み応えがあって、とても面白かった。善と悪の戦い。最後には悪に屈してしまった博士が切ない。人は悪しき心には勝てないのかな…。ハイド=hide(隠れる)とい...続きを読むう命名にも感服。時の洗礼を受けた作品はやっぱり損なわれない魅力があると改めて実感。2011/353
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ロバート・ルイス・スティーヴンスン
海保眞夫
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